2010年12月29日水曜日

ネット月刊誌「言論大阪」#9,1月、2011  2010年、大阪問題のおさらいーー問題の先に見える希望  

 よくもまあこれまで放っておいたものだ、と嘆息するような問題がいっぱい大阪にあります。しかし、逆に言うなら、一つずつ改革していけば大阪が良くなる希望を持てます。そう、問題が多いことは改革のネタが多いことなのです。今年書いたこと以外に、まだまだ改革課題があり、元経営者の目から見ると楽しみを感じるほどです。
 今年の終わりに当たり、これまで改革提案を書いてきたことをおさらいします。

大阪のメディアは弱い、創刊号
 何も変わらない。13年前に刊行された小著『大阪がかわる 地方がかわる』で指摘した時からも何も変わらない。

大阪市立 近代美術館、6月
 天王寺の市立美術館に統合することを提案。その後、天保山のサントリーミュウジアムが閉鎖され、大阪市に譲渡されることになった。用途は決まっていない。次善の策として、ここを近代美術館にしてはどうか。
 周囲の声、「大阪市は何をもたもたしているのや。こっちは余命がいくばくもないのや。絵画を長年保管してきたままでいつまで続けるのか。早く見せろ」

大阪市と周辺都市との合併、7月
 「大大阪市」構想は昔からあり、最近賛同者も出てきた。周辺都市の市長や市会議員は職を脅かされるので容易には賛成しないだろう。しかし、手前の小さなエゴを捨てて、次代のために大きく脱皮すべし。かつて東の横綱東京、西の横綱大阪であった。大関から横綱へカムバックしよう。
 橋下知事から仕掛けられた大阪市の区長と区会議員の公選は時期尚早。現状に刺激を与えるために、市会議員数を減らすこと、試みとして区長に一人か二人の民間人を任命することから改革を進めてほしい。 
 
関西の空港問題、8月。
 国交省が関空と伊丹両空港を一体化する経営組織をつくり、民営化も計画に入れた構想を具体化した。とにかく何かやらなければならない、という意識は理解できるが、関空に国内線を集約しないことには抜本的改革にならない。
 私は国営の八尾空港を伊丹空港に移転することを提唱している。旅客空港としての伊丹を廃止することで、関空がハブ空港になり、神戸空港も国内線補完の機能が生きてくる。

四つのオーケストラ、9月
 経営難にある大阪センチュリー交響楽団は、その後日本センチュリーに改名し、全国的に演奏会を行うことに決めた。しかし、大阪での定期演奏会でも赤字が出るのだから、経費がかさむ他の都市で演奏会を増やしても収益改善にならないと思う。また、地方の主催者から赤字補填を要求されるかもしれない。私の考えが間違っているのだろうか。
 私は神戸、奈良、和歌山のいずれかにオーケストラを移転することを提唱した。

大阪都構想、10月
 橋下知事さん、あなたの器量からすれば、大阪府は舞台として狭すぎる。何を改革するにも大阪市の壁にぶつかり、苛々することは当然だ。だからと言って政令都市の大阪市と堺市をばらばらにすることには論理の整合性がない。
 他方、関西広域連合ができたが、これは企業が得意分野を持ち寄る部門合併のようなもので、滋賀県から徳島県まで含む府県の上部機関としては限界がある。奈良県は参加していない。
 私は大阪府、奈良県、和歌山県の三つが合併して新しく関西県をつくることを提唱した。
 奈良市を新県庁所在地にすれば全県の中央に位置する。大阪-奈良、大阪-和歌山間の鉄道はJRも私鉄も完備しているので、奈良-和歌山間の鉄道を補強すればよい。もっとも、この時代には人が県庁まで出向かなければならない用件を減らすことが求められる。

天王寺と阿倍野の二重ブランド、11月
 大阪外向けの市場戦略のために、地域を「天王寺」で統一することを提唱した。当然、初期抵抗として反対されるだろうが、地域市民、市会議員、近鉄の総意がものを言う。近鉄は自社のビジネスにプラスになると判断すれば協力してもらえるはずだ。
 大阪市には市内観光バスがない。そこで、天王寺駅を起点として、動物園・美術館、新世界・通天閣、四天王寺、夕陽丘を巡回する小型バスを運行して観光客を呼ぶ。

梅田北ヤードとサッカー場、12月
 日本が戦略不足のためと言われワールドカップ招致に失敗した。私に言わせれば失敗ではなく、もともと目がなかったのだ。いずれアジアに順番が回ってくる16~20年先にあの強引な中国が出てきたらどうなるのか。
 今回、サッカー協会が8万人以上を収容できる主会場を北ヤードにしたのはまったく便宜的なものだった。負け戦と分かっている第一回目に名乗りを上げるために北ヤードが充て馬に使われた。大阪が災難をかぶらずに済んだ結果は良かった。
 ところが、平松市長はその後8万人以下に規模を下げたサッカー場を建設すると発言している。ワールドカップの主会場にこだわらない考えだ。どう考えてもおかしい。おかしい時には必ず裏があるから、私の推測では、ガンバ大阪が経営改善のために今の万博競技場から梅田移転を狙っているのかもしれない。
 さらに、最近、サッカー協会は東京に主会場を建設することを提案した。なんとも節操がない連中だ。
 そもそもサッカー場によって北ヤードの賑わいを狙い、あるいは経済効果に期待することは、「広いスペースを無理になんでも施設で埋める」というのは苦し紛れだと言ってよい。全国にいくつもある環境やアジアについて研究する施設をさらに建設するという案も同じ考え。これでは魅力ある北ヤードつくりにはならない。
 今月、広大な2期計画地について橋下知事は森つくりを提案し、財界の一角である関西経済同友会は緑地公園にする提案を発表した。この流れになることを望みたい。その上で、すでに計画されている施設は、東側(ヨドバシカメラ側)に一列に並べて、残る全域を公園にすれば西側(ツインタワーやウエスティンホテルがある)の新梅田シティと一体化させることができる。次代に本当に有用な施設が出てくるなら、東側の施設ビル列に追加していけばよい。
 最初から施設で埋めようとする考えは捨ててほしい。       (完)

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2010年12月13日月曜日

#42 誰にも他人事ではない医療・介護制度――若い世代にも突然降りかかる

 今月、97歳の母が亡くなりました。5年前のある日、近所に独り住まいしていた母は畳の上で転倒して腰を強打して歩けなくなり、病院に運ばれて治療とリハビリを受ける入院生活を始め、その後老人ホームに入りました。それからも肺炎と併発症で再び入院、以来亡くなるまで自宅に帰ることはありませんでした。
 施設探しと申請手続きに振り回され、見舞いに訪問を繰り返すなど大変でしたが、苦しかったことは「苦しい」と人に言えないことでした。なぜなら私の周囲に自宅介護で何倍もの苦労をしている親戚や友達が居るからです。諸君には、苦しい胸の内は友達に言って外に出してほしいと思います。
 諸君には将来の遠い日のことかもしれませんが、誰にも親の病気が生活に降りかかることなのです。今回は私の経験から知った国の制度について書くことにします。

◇ 医療・介護施設の種類
予備知識として利用できる施設を説明してみよう。

《特別養護老人ホーム(特養と呼ばれる)》 
介護保険付きの施設で、3ヶ月の滞在期間制限があり、ここで手厚い介護を受けた後に自宅に戻り、介護ヘルパーの助けを受けながら自立させることが目的。65歳以上で「要介護」の認定が入所資格。しかし、入居者の中には長期滞在の老人ホームに入るために待機している人が少なくない。介護保険のお陰で月額約4万円なので家族の負担にはならない。入所一時金不要。どこでも100~150人の待機者が居る。
《養護老人保健施設(老健と呼ばれる)》
 滞在期間の定めがなく、介護保険付きで月額4~5万円、一時金なし。ここも多数の待機者が入所待ち。
《有料老人ホーム》
 民間経営の老人ホームで月額15~16万円、介護保険適用なし。一時金1500万円(京都市の一例では2500万円)、滞在制限なし。
《療養型病院》
 療養病棟がある病院で、健康保険や老人保険は利くが介護保険なし。期間の定めなし。空き病室がないことが多いので待機期間がある。普通10万円以下であるが、中には衣類やタオルの持ちこみを許さず、リース料を高くして月額13~14万円もかかる病院がある。

 母がたどった経過
 参考までに、母の例に即して振り返ってみよう。世間にはどこにもある。
 ①90歳になっても実家で一人自活にこだわり、老人ホームへの入所を受けつけなかった。週3日介護食を受けても好き嫌いがあり、自分で料理する食事は必ずしも栄養バランスが充分でないため、だんだん体力を失っていくことが見えても自活を主張。(世間ではこれが多い)。
 ② ある日、畳の上で転倒、腰を打って病院に緊急入院。リハビリと、他に腎臓の治療も受けて三カ月期限の規制を超えて退院引き延ばしする間に順番待ちの老健にうまく入れた。
 ③ 老健も三カ月期限を超えて延長してもらった後、特養に入れる幸運。
 ④ これでずっと居れるはずが、3年半経った頃、深夜に肺炎の症状で高熱が出て病院に緊急入院。この時日曜深夜のため救急車が近隣の病院6軒から断られた。(年寄り仲間との会で、みんな急病になるなら日曜を避けよ、とジョークを言った)
 ⑤永住できるはずだった老健ホームから、入院が3ヶ月を超えると戻れないという規約によって退所させられた。
 ⑥病院で10日延長する間にソーシャルワーカーが移転先を探し、療養型病院に入った。病院は治療対象が無くなると出される。3ヶ月後ここで亡くなった。

 こんなに母を転々とさせたが、目も見えない、耳も聞こえない障害者だったからよく分からないせいか、苦にしていないことが救いだった。合掌。
 
政府介護保険と医療保険の制度
 母が介護保険と老人医療保険の手厚い支援を受けられたお陰で、家族の経済的負担は少なくて済んだ。どれだけ国の制度による経費を使ったことか。
 国に感謝する一方で、世界の先進大国の中で唯一の最長寿国になった日本では、老人医療保険の予算が毎年増え、介護保険も赤字で制度が追いついていけない上にまだ施設が不足している現実を考えた。自民党政権時代にそれなりの制度改革を行い、民主党政権も取り組んでいる。人口構成に高齢者がますます増える今、改革は容易ではない。

 アメリカの老人ホーム
 私の顔が金持ちに見えるらしく、母が施設を転々とすることを知った友達から、「有料老人ホームがいちばんええ。なんでもやってくれる」と言われた。どうしても入所先が決まらない時には、実家を担保にして銀行から金を借りて入所金を払うことも考えて一軒だけ見学した。良い施設だった。
かつて住んでいたアメリカの町にある老人ホームを想い出した。
 一つはキリスト教の関係団体が経営する有料老人ホームで、その施設の立派さに驚いた。近隣の州にも知られる有名な施設だ。広大な公園のような敷地に建屋がいくつも並び、病院もある。中には一戸建ての家もある。ここに入れるのは金持ちだけで、財産を拠出しなければならない。子供は相続できる資産が無くなるから、多くは反対するという。
 他は、郊外にある州立老人ホームで、子供は割安なここに入れたがる。自ら望んだ親は別として、無理に入れられた親はたいてい半年で亡くなると看護師の友達が言っていた。
 「老後も金次第」とはこのことだろう。悲しいかな。  (完)

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2010年11月20日土曜日

ネット月刊誌「言論大阪」#8,12月、2010 

    
    梅田北ヤードに巨大サッカー場?
     ――次代の遺物になりかねない

                 経営評論家・岡本博志

 12月2日にサッカー・ワールドカップの2018年と2022年の開催地が決まる。
 18年には有力視されるアメリカに決まると、22年はヨーロッパになるだろう。22年に立候補している日本になる可能性は低い。
 日本の弱点は、開会式と決勝戦に使われる8万人収容の施設がないことだと指摘されている。そのために、日本サッカー協会は梅田北ヤードに目をつけ、これで計画書をFIFA(国際サッカー協会)に提出した。
 資金の一部を負担することが重荷の大阪市は、当面お付き合いしているだけに見える。平松市長も本当は乗り気でないと憶測する。何よりも梅田北ヤードに巨大なサッカー場は景観のぶち壊しになる。

大阪のサッカーはバランスが取れている
 大阪のJリーグには南部のセレッソと北部のガンバの二つがあり、立地面でうまく棲み分けされている。もうサッカー場は要らない。ただし、2002年の日韓共催ワールドカップの時にセレッソの本拠地長居サッカー場が大改造されたが、ガンバの本拠地である万博公園競技場は陸上競技と併用であるため、観客席からピッチまでが遠い問題がある。
 そのため、万博公園内に新しいサッカー専用場が提案されている。しかし、建設資金の めどが立たないのでどうなるか。私はそれよりも、最近プロ野球の球場で内外野のファウルスペースを狭めて観客席を増設した例にならって、万博競技場でも陸上トラックに近付けて観客席をせり出す改良工事をする方が現実的であると思う。8万人収容は考えない。
 梅田北ヤードに巨大サッカー場を建設しても一過性の使用にとどまり、常時使われることがない。建設費も巨額なら、維持費も大阪市の財政を圧迫することになる。次代には巨大な遺物を残すことになろう。

梅田北ヤードの全体計画を見直す機会
 梅田の新ビル建設がすさまじい。阪急百貨店の高層ビルと富国生命ビルが相次いで完工したのに続いて、大阪駅ノースゲートビルも近く完成する。どれも美しいビルで地域の景観に融けこんでいる。まだ大阪駅近くの特等地にオフィスビルが建設中だ。
 この建設ラッシュのために、梅田のオフィスビルの供給が過剰になり空き室率が高い。その中で中央郵便局の高層ビル建設が2年延期された。すでに大阪駅前ビルに一時移転して業務を行っているにもかかわらず、郵便事業会社はよくぞ英断したものだ。
 他方、梅田北ヤードの一期計画は進んでいる。研究所や大学の出先機関などを中心にするナレッジキャピタルと、ホテルやオフィスビルの建設も含まれる。二期計画はまだ定まっていない。
 私が住む茨木市には国際文化公園都市「彩都」と呼ばれるニュータウン建設が今も進行中だ。1982年に計画されてから28年、「始めに開発ありき」の典型のような計画で、結局、東部、中部、西部地区が飛島に分けられる立地であり、メインは住宅開発だった。それに国際文化施設、研究所、ホテル、デパートなどで色付けし、大阪府が主体、財界、茨木市、箕面市を巻き込んだ。学者も「人類史的な貢献を目指す知的生産と文化の拠点づくりを」と謳った。
 結局、今日では、阪急グループが最大の東部地区開発から撤退、文化・研究施設の建設が計画された中部地区は土地造成もされず、西部地区だけが住宅と、中部地区に建設されるべき研究施設が建てられている。5万人の予定人口は5千人にとどまった。
 私は95年に帰国間もなく、この需要も見込めない開発計画は経営が成り立つはずがないと思い、小著『大阪がかわる 地方がかわる』(三一書房刊、1997、年)の中で書き、市民の会のホームページで論陣を張り、さらに冊子までつくって配布した。市民の関心が広まらないので、さらに2000年の市長選に出馬した。行政が経済振興と都市計画を国文都市に依存することなく、独自の地域経済の振興と投票率60%を訴えたが、知名度も組織もない悲しさ、メッセージが届かないまま投票率は前回の29%から5%押し上げただけだった。共産党候補と互角に善戦したと言われたことには大した意味がなく、実践する評論家として自己満足に終わった。国文都市について詳しくは改めて書くつもりだ。
 さて、余談に流れたが、梅田北ヤード計画は、国文都市と共通する点もあるが、違う点は梅田北ヤード計画を成功させなければならないことだ。
 現行のナレッジキャピタル計画を支持するが、全体計画は見直さなければならない。オフィスビルは過剰供給だから、全体を梅田公園として再計画し、ナレッジキャピタルのビル群はヤードの両側に配置し、真ん中を大公園にしてほしい。池もほしい。芦屋や箕面に住んでいる財界人が引っ越しに魅力を感じるような高級マンションも片側に建設する。
 かつて大阪の市民が寄付して大阪城を再建したように、梅田公園も市民の浄財によって資金を集められると信じる。私も大した足しにならないが、次代に感謝されるために寄付したい。大阪には有力な建築家や都市計画専門家の人材が得られる。彼らの構想をもう一度聴いてほしい。
 市民が昼さがり、あるいは夕方に散策し、屋台のハンバーグやアイスクリームを食べながら談笑する、ビルの一階にあるオープンレストランでは食事を楽しむ光景が浮かぶ。ジョギングの名所にもなるだろう。実現可能な夢だ。

大阪は発展を遂げた
 先日、生駒山上から大阪平野を一望した。遠くに梅田の高層ビル群が見える。そう遠くない昔、飲食や衣料小売りの店が掘立小屋のように軒を並べた梅田からよくここまで発展したものだ。先人の努力に敬意を払いたい。
 今度は今の世代が大阪の次代をつくる時ではないか。 

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2010年11月14日日曜日

#41 日本への移民受け入れをどうするか? ーー政府のビザ規制が弱い

 先日、日本人の血縁があるという中国人約50人が関西国際空港入国管理局事務所の審査で簡単に入国を許されました。彼らは入国するやいなや全員が大阪市に生活保護を申請して一旦認められたが、新聞報道などにより大阪市は驚き、入国審査のやり直しを求めたが、その後どうなったか?
 大阪市は脇の甘さを突かれて、生活保護者の申請増加に悩まされています。市民20人に一人の生活保護者を抱え、それでなくとも財政危機にあることから、国の支援を増やすことを要請しています。実際、周辺市の行政から大阪市は生活保護を受けやすいと言って、大阪市に引っ越しすることを勧めています。それどころか、四国のある市は生活困窮者に対して大阪までの高速バスの片道料金を支給して大阪市に追い払っているというのだから、ひどい話です。
 さて、今回は大阪の問題ではなく、日本政府の移民管理政策について書いてみます。また面白くない文ですが、若者諸君の時代に大きく関わることです。

◇ 情を捨てて原則につかなければならない
 前述した中国人はみんなお年寄りであり、おそらく中国にはまだまともな福祉政策がないので、生活に困窮していたことは想像がつく。日本に来ることは最後の望みであったかもしれない。中国側にも日本側にもこういう困窮者に限らず、日本に不法移民を送る組織があると言われている。利用される困窮者は本当に気の毒な人たちと思う。
 しかし、国家の統治を担う政府は、法律に従って厳しく原則を貫かなければならない。原則とは、内戦などによって国外に逃げなければならない内戦難民と、政治活動によって命を脅かされる亡命者を除いて、経済的な理由による経済難民を受け入れないことだ。これは国際標準である。
 一つ厳しい例を挙げよう。
 私がアメリカ生活中、1990年代の始めであったと思うが、アドリア海先端の海峡と100キロしか離れていない(韓国と九州の間は150キロ)アルバニアからイタリアに4万人もの経済難民が、何隻もの船で押し寄せたことがある。当時、アルバニアは共産主義の時代が終わり経済が混乱状態にあった。  
 ところが、イタリア政府は彼らをサッカー競技場に収容した後、全員をアルバニアに追い返した。メキシコからの難民に悩まされるアメリカでは注目されて新聞やテレビがこのように報道した。
 そのアメリカでは政府は移民原則を適用し、厳しく取り締まっているが、何しろ陸続きの国境は2千キロを超えるので限界がある。メキシコからの不法移民は1千万人を超えると言われる。

◇  日本への留学生増加の功罪
 今、日本に大学と日本語学校を含めて中国からの留学生が13万人に達し、このうち1万人が日本で就職すると言われる。
 なぜこんなに多くの中国人が留学ビザから就労ビザに変えて日本で働けるのだろうか?日本の大学を卒業すれば、同じ教育を受けた日本人卒業者と変わらない。母国語を話せるという違いはあるかもしれないが、それなら中国語に堪能な日本人学生と変わらない。
 アメリカの大学を卒業した日本人の中で、アメリカで就職したい留学生に対してはアメリカ政府は就労ビザへの切り替えを厳しく規制している。そのまま働けるのはインターンシップ制度で1~2年の限定期間だけだ。どの国の留学生に対しても同じ。
 日本企業は日本で経験を積ませた後、中国事業のために中国子会社で幹部として勤務してもらうことを意図していることがあるのかもしれない。インターンなら良しとしても、それでも1万人は多すぎる。就職難に苦労している日本人学生の就職機会を奪っているのではないか。不況期にはアメリカでは外国人雇用に対して強い反対運動が起きた。このような反対は日本ではまだ聞いたことがない。
 日本政府の規制、つまり原則適用が甘いのではないか?
 もう一つの問題は、多数の中国人留学生をすべて幸福にはできないことだ。むしろ多くは苦労が報われないまま、中国に帰ることを余議なくされる。彼らは帰国後反日派になるかもしれない。私が知ることで、アメリカで満足した処遇を受けた日本人は帰国後に親米派となり、そうでない場合には反米の感情を持ちやすい。
 日本への留学生、そして移住者も他国を知らず、他国ならもっと苦労したかもしれないという発想を持たない。だから日本批判に傾きやすい。
 日本政府の安易な留学生増加の旗振りは危ない。このことを認識してもらいたい。

◇  日本も移住天国になりかねない
 どの国でも国が必要とする専門職の人材を受け入れているが、一般職の人材は移住を制限している。例外はある。
 例えば、1989年に日本政府は人手不足を解消するために、法律を改正して日系ブラジル人労働者の受け入れを認めた。言葉と低賃金の問題を抱えて、その後本国への帰国者が出た。地域住民が彼らに支援の手を尽くしても、今は就職機会がない日本人が多いのだから仕方がない。政府の施策には限界がある。
 それでも外国からの移住者はこれからも増えるだろう。
 特に中国からの大量移民の恐れがいつか現実化するだろう。国内統治に難事をかかえる中国政府の努力にも限界がある。
 ひとたび混乱が起きれば、移住先として狙われるのは、台湾、ベトナム、韓国、日本の近隣諸国になるだろう。台湾の友達によれば、言葉の問題がない台湾には、すでに10万人の不法移民がいる。日本が移民天国のように憧れの国である話がこれからも流布すればどっと日本に押し寄せるかもしれない。
 日本政府は当然考えているだろうが、イタリア政府のように決断できるかどうか。
 若者諸君、これはキミらの時代の問題なのだ。

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2010年10月30日土曜日

#40 続編・中国問題ーー中国の将来はどうなるのか?ーー

 前回に続いてもう一回中国問題について書きます。お断りするまでもなく、私は中国問題の専門家ではありませんが、自由な発想を書いて皆さんの参考に供します。
 私の中国情報源を言いますと、北京に引退した農業学者の中国人と、上海に日本企業の商社経営者(何十年もの中国専門家)の二人がいます。しかし、中国政府の情報「制御」によってホームページもブログも開けないので、私から控えめにメールを送るという片側通行ですから、ホンネを聴けるのは会った時だけに限られます。それに台湾の友人との自由な交信です。ホンコン駐在のアメリカ系テレビの経済専門家がいますが、あまり交信していません。
 今回のように大きな問題が起きた時には、インターネット検索でタイ、ベトナムなどアジア各国の英字新聞を集中的に読みます。日本では主として全国紙を参考にしています。
 さて、若者諸君の時代には中国はどうなっているでしょうか?

中国はいずれ財政危機に陥る
 私の考えでは大国経済の高度成長はいつか止まる。中国も例外ではないだろう。
 これまで沿岸部を優先開発して1億人と言われる富裕層をつくり、彼らが払う税金によって潤沢な国家の歳入を得てきた。しょせん金持ちは貧者の上に成り立つ少数派であり、彼らからの税収にはいつか限界が来る。もう一つ、安い人民元のお陰で巨額の貿易黒字が政府の資金になっている。
 しかし、歳入の伸びが鈍っても歳出の増大はもう抑えられない。思いつくだけ政府の歳出を挙げてみよう。

   *人民解放軍220万人、予備役50万人、武装警察70万人の維持。
   *巨大な中央政府と地方政府の重荷。
   *急速な建艦、宇宙開発、海洋進出。

     (前回で海上保安庁の尖閣に新巡視艇配置を提案した が、最近の
報道では中国は漁業 監視 船だけでも30隻を建造するという。
とてもかなわない)
   *世界中でエネルギー資源と国策による企業買収に投資。
   *途上国へのばらまき支援。
   *全土に広がる高速鉄道、高速道路、僻地の自動車道路建設と維持保守
   *水路整備など農業振興。
   *未整備の医療福祉制度。

     (健康保険や年金の制度にいかに金がかかるか。日本の現状をればわかる)
   *北朝鮮への経済支援

中国の人口対策としての移民政策
 私の憶測では中国政府は、1子制限政策に加えて13億人の人口を減らすために国外移民政策を取っている。政府は食料も農地も仕事口も人民を国内では賄えないと判断しているのではないか。
 なぜか?例を三つ挙げてみよう。
 一つ目は、中国のアフリカ援助で、インフラ整備でも鉱山開発でも彼らは技術者のほかに数百人の中国人労働者を送り込むことだ。それに伴って、中国レストランや雑貨屋の商売をするためにさらに中国人が移住する。その後親類縁者を呼びよせる。当然、現地人の雇用をほとんどしないので、批判を受ける。それでも今後も世界中にチャイナタウンが増えていくだろう。この移民式支援は他国の支援に例を見ない。
 二つ目は、話は古いが、移民式支援の原点と言える例だ。1970年代にタンザニア鉄道の建設に10万人もの中国人労働者を送ったことだ。彼らは現地に穀物や野菜の畑をつくり、現地で自給自足体制をつくったというスケールの大きさ。なんと中国人の逞しいことか。それ以後も中国人は酷暑のアフリカに出かけて行くことをいとわない。それだけ国内事情が厳しいということだろう。今、職がない日本の若者はとてもアフリカには行かないだろう。
 三つ目は、チベットやウイグルの辺境の地に多数の漢族人が送り込まれていることだ。ロシアも事実上植民地支配をしていた周辺国にロシア人を送ってきた。かつて帝国主義時代には、ヨーロッパ諸国も日本も同じことをやってきた。私は本国人を送り込み、言語と文化を変えるという植民地支配の常套政策を中国も取っているのだと思っていたが、かつての帝国主義諸国が送った本国人の割合は10%くらいであったのに対し、中国のそれは50%を超えていることから、これは本国の人減らしだと思うようになった。

インターネット紅衛兵はどれだけ知っているか?
 その一。尖閣諸島は明治時代の1880年にはすでに琉球の一部として住民が住んでいた。日清戦争はその後の1884年であるから、この戦争で併合したということは事実に反する。中国が突然自国領土であると主張し始めたのは、1971年のことだ。ネット紅衛兵は知っているか?
 その二。日本の中国に対する無償供与と低金利融資ODA援助は、小泉政権時代に打ち切られるまで長く続いた。中国政府は金利とともに返済したと言うが、早い話、30年前と返済時では貨幣価値が桁違いなのだ。中国政府は日本から資金援助を受け、インフラ整備をしてきたことを公表していない。中国政府は日本から支援を受け、その一方でアフリカ支援をしてきたのだ。最近の例では、今回のデモが行われた重慶のモノレールも日本のODA資金で建設された。ネット紅衛兵は知っているか?
 その三。今年GDPで世界2位になる経済大国であり、しかも国連常任理事国である中国は、国連分担金を日本の1/4しか払っていない。これを知っているか?

 まあ、情報を与えられない紅衛兵が知らないのは仕方がない。しかし、日本に来ている中国人留学生は知っているだろうか。

中国政府の政体支持と政策は別
 ネット紅衛兵による反日デモで鎧の下にちらちら見えていた自国の政府批判が表に出てきた。彼らの対日理解のレベルを見れば、中国政府の政策をどこまで知っているか怪しい。紅衛兵諸君、こんな程度では国家の歳入に貢献しない、つまり税金を払わない諸君が棄民のように扱われて国外の労働に送られかねないよ。
 最近、本稿で前回の中国論#39を読んだ知人から、「あなたは中国政府支持者ではなかったのですか?」という質問を受けた。私の考えを記憶してもらっていたことが嬉しい。しかし、彼の認識は少し違う。私は中国政府の政体を支持しているのであって、政府の政策をすべて支持しているわけではない。
 説明すると、私は中国政府の政体を会社民主主義CompanyDemocracyと呼び、他の独裁者国家と区別している。それなりに英才が熾烈な競争を経て国のリーダーが選ばれるのは、会社で競争に勝ち抜いた取締役の中から社長が選ばれる体制と同じだからだ。しかも国家主席には1期5年、長くても2期10年の任期がある。私は先進国型民主主義より途上国には会社民主主義の方が建国の基礎を築くのに現実的であると信じている。言うまでもなく、リスクは伴う。
 かつて中国政府による天安門事件の弾圧をやむを得ぬ処置として消極的に支持し、会社民主主義を唱えたことに、アメリカでも日本でも非難を受けた。しかし、この考えは今も変わらない。
 先進国型民主主義を中国が実現するには、国全体の民度が高まらなくてはならない。つまり自由な教育が根付かなくてはならない。まだまだ時間がかかる。

追記。中国が首脳会談中止
 今朝この稿を書き終わってほっとした後、朝刊を手に取ると、一面で「日本側は、中国の主権と領土を侵す言論をまき散らした」として日本を強く非難し、ハノイでの首脳会談をキャンセルしたことを伝えている。中国政府は反中国世論を日本政府が陰で操作していると勘ぐっているのだろう。おそらく日本の世論形成に政府が関与していないことを知っていて彼らが国内対策を行っている。
 日本政府は、弱腰も強腰もないことを認識し、中国政府が近寄ってくるまでじっと耐えて内政に注力すべきだ。戦争を回避するような外交ではないのだから。ここにも中国政府の苦しい内政が出ている。
 私も前回と今回の稿で中国の主権と領土を侵す言論をまき散らしたことになるのか。


 

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2010年10月24日日曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#7,11月、2010

  大阪市開発と二重ブランド

 
             経営評論家・岡本博志

22日に全国紙が、「なにわ3大拠点集客合戦」という見出しで、あべのキューズタウン4月開業、と報道した。大阪市が1976年から進めてきた阿倍野再開発事業で、目玉となる最大の商業施設だという。
 私はせっかく天王寺地区を視察しながら、うかつにもこの目玉を知らなかった。自分のことを棚に上げて言うと、府民や大阪市民がどれくらい知っていただろうか。
 あべの、阿倍野、天王寺とばらばらになっているような呼称は、企業なら放置しておかない。
 今回は、まだ読まれていない読者のために、ちょうど1年前『若者塾』の#19で書いた「大阪市開発と二重ブランド」を転載することにした。

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 先日、家内と長谷寺にお参りも兼ねて紅葉見物に行ってきました。
 私は大阪南部の鉄道をよく知らないので、往きは近鉄大阪線、帰りは橿原神宮駅から南大阪線で阿倍野橋駅に出て一周してきました。南大阪線は初めて乗ります。JR天王寺駅は天王寺区、道路一つを隔てて阿倍野橋駅は阿倍野区に属しています。
 今回はここから発想を得て、二重ブランドについて書きます。大阪の地方問題でありますが、全国の読者にも大阪について知ってもらう機会になるとよろしいですね。

◇大阪市には現在梅田北ヤード、南港・咲島・夢島など巨大開発プロジェクトが計画されている。阿倍野地区開発も建設中の近鉄百貨店の高層ビルを中心に再開発が進められる。
 さて、天王寺と阿倍野とはどこなのか?東京でもどこでも府外の人たちにはどっちがどっちなのかまったく知られていない。それどころか、私も含めて大阪の住人にも区別がつかない人は少なくないだろう。
 歴史を紐解いてみると、1889(明治22)年に天王寺村と阿倍野村が合併されている。現在は天王寺区の南隣が阿倍野区で、このためJRと近鉄の駅名が別になっている。天王寺と阿倍野、これは天王寺地区とも阿倍野地区とも総称して呼ばれないことが現実にある。ビジネスで言えば、二重ブランドになっているのだ。
 地元経済界は知名度を上げるキャンペーンを進めると言っているが、現状の二重ブランドではどうにもならない。市外では天王寺の方が知名度が高い。もう一度天王寺区と阿倍野区が合併して天王寺区に統一すると良いが、改革を論理で考えない阿倍野区住民が感情的に反発するだろう。もう一つの問題は、天王寺区も阿倍野区も南北に長い行政区になっており、このまま合併するより、隣接する浪速区も含めて行政区域の線引き変更が良いと思う。従来のしがらみを超えて、次世代のため、大阪市100年の計のために統一ブランドをつくってほしい。

 松下電器が歴史ある社名を捨てて、ブランドのパナソニックに社名変更したことに驚いた。社名をブランドに統一することは時代の流れであるにせよ、本当に大胆な決断だった。天王寺を「東京の新宿」に匹敵する地位を確立するために、大阪市も決断できないはずがない。

◇そもそも天王寺の地名は四天王寺から由来している。四天王寺は聖徳太子により593年に創建され、日本最古の寺の一つで立派な伽藍配置は他のモデルになってきた。後に天台宗派になったが、現在は和宗と称して独立している。
 寺町になっている周辺を緑化などで一体化すれば魅力が増すだろう。寺と言えば京都とされるが、大阪駅から地下鉄谷町線か環状線で便利に行けるから、四天王寺にも全国の皆さんが訪ねてほしい。
 因みに、比叡山延暦寺は789年、高野山金剛峯寺は816年に創建された。

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2010年10月12日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#6,10月,2010

 大阪市は大き過ぎない、大阪府が小さいのだ――橋下知事と平松市長に論点整理を望む――

                     経営評論家・岡本博志


 大阪都構想は橋下知事が新たに提唱したのではない。私が知る限りでは、すでに府や財界が以前に大阪都構想を提唱していた。これに対し、大阪市と学識経験者からなる大都市制度研究会が大阪特別市構想を掲げて議論し、03年に報告書をまとめている。
 それ以後には表立った動きはなかったが、橋下知事が就任後間もなく大阪都構想を強く提唱してにわかに府と市の間で熱い議論を展開することになったのである。橋下知事が指摘する府と大阪市の二重行政の無駄は目につくが、だから大阪市や堺市を解体して区割りし、大阪都が一元的に全行政を担うという結論には論理の飛躍がある。
 ここでは多面的に全体を見ることによって、両者の主張の問題点を明らかにしてみたい。

なぜ大阪府だけが大阪都にするのか?
 大阪府の特異性について指摘されることは、狭い府内に大阪市と堺市の二つの政令指定都市があることだ。堺市が政令都市になる前には府政が及ばない大阪市が府のドーナッツになっているから、これが二重行政の根源だと言われた。今はドーナッツが二つになった。
 狭い面積の府に二つの政令都市があり、しかも隣接していることは決して府行政のあるべき姿ではない。次世代のためにも何か改革しなければならない。ここまでは知事の改革を支持できる。他方、隣接する横浜市と川崎市の二つの政令都市を抱え、県域も小さい神奈川県では、なぜ神奈川都構想が議論されないのだろうか?
 知事は東京都を意識している。しかし、東京特別23区はかつて首都東京市であり、同時に東京府という県制があった歴史がある。それが戦時中の1943年、東京府と東京市が統合されて、今日まで至っている。区長が公選制になったのは1974年のこと。
 
二重行政は府が過半の責任を負う
 知事が唱える府と市の二重行政の過半は府の責任だ。例えば、大阪市内に府立の施設を建設してきたのは、多分に大阪市選出の府会議員が推進してきたのだ。
 府庁移転については、私は府の施設として経営困難にあるりんくうタワーへ移転することによって、府の行政を大阪市と分離するきっかけにすることを提唱していたが、結局、大阪市の破綻ビル、WTCに移転する方向にある。さらに、府議会もりんくうタワーの一部を多目的に使える議会場に改築し、同時に現状の府議会議員を廃止して府下の市議会に常任府政委員会を設置することで、各市会議員が新府議会で府政のチェック機能を果たすことを提唱した。二重行政を改めることができる。

不祥事は大阪市が大きいせいではない
 先週、知事は大阪市を分割して大阪都特別区に再編することを取り下げた。大阪市の名前を残すことにしたのである。私は大阪市が統治するに決して大き過ぎるとは思わない。むしろ、本稿『言論大阪』#3,7月号で、大阪市が周辺の都市と合併すねことによって大大阪市に拡大することを提唱した。
 これに対し、「なぜ堺市と合併しないのか?」という意見が寄せられた。私はこの意見を予期していたが、それは中世以来の自由都市としての歴史による堺市民意識から、簡単には合併が実現しないと思うからだ。私の提唱や意見に対し異論を聴けることは本当に嬉しい。
 そもそも関前市長が手を付け始めた職員による不祥事の大掃除は、まだ道半ば。今も不祥事は後を絶たない。麻痺した綱紀の引き締めもちょっとやそっとでは進まない。きつい言い方をすれば、常習の窃盗犯がつかまるまで悪事を止めないようなものだ。市民は腹を立てているし、知事もそうだろう。しかし、大阪市が大き過ぎることと結びつけるのは論理の飛躍だ。

大阪府は奈良県と和歌山県と合併して関西県に
 「関西は一つ」とか「京阪神の連携」という言葉は何十年間も使われてきた。掛け声倒れとはこのことだろう。私は、現実には「関西はばらばら」だと思う。「関西州」にしても、兵庫県も京都府も各々が独立独歩だからいつ実現するか分からない。
 「関西州」に私は反対しないが、その第一歩として大阪府と奈良県、和歌山県が合併して「関西県」をつくることを提唱したい。「関西州」はその先でよい。
 私は47都道府県などとややこしい表現は止めて、東京都も含めて全県と言えるように改革を求めた。地方自治の月刊誌『晨、あした』(ぎょうせい刊)「出戻り市民の地方自治異見」の連載を書いた中で、95年10月号で大阪府は大阪県に、京都府は京都県に、そして北海道は北海道県に呼称変更することを初めて提唱した。北海道県は、例えば、鹿児島県が県を取って鹿児島の呼称で地域の名前としても広く使われるのに対し、現行の北海道から道を取った北海は地域名として使うことができない。「道州制」の呼称も北海道州にすることで、「分権州制」または「自治州制」に変えるべきだ。
 改革のささやかな試みとして、よそ様の県名を勝手に変えることは失礼と思い控えてきたが、ここ10年来、私の年賀状には自宅住所を大阪県と印刷している。
 因みに、明治政府による廃藩置県が行われた時、当時主要な大都市圏であった東京、大阪、京都の三つだけは県ではなく、府という呼称にされた。なんと古い歴史を引きずっていることか。
さて、関西県には障害がある。それは大阪県と接する県の知事はすべて中央省庁の出身であることだ。兵庫県知事と京都県知事は自治省、奈良県知事は運輸省、和歌山県知事は通産省という完璧な官僚知事包囲網だ。
 今こそ、民間人出身の知事に置きかえるには民力が必要だ。

平松市長と橋下知事の任期中が改革好機
 平松市長は橋下知事より21歳年長である。
 年齢差ばかりではなく、二人の違いにはどこか味わいがある。大田知事と磯村・関市長時代には会うこともなく、口もきかなかったことに比べれば、今の二人は反発し合っていても相手を受け入れている。実際、よく会っている。
 知事が論理を基礎に置き、果敢に花火を打ち上げて改革の突破口にする攻めの突撃隊長とするなら、市長は鷹揚に対応する受け身のタイプ。市長にすれば、「またあのヤンチャ坊主が余計な口出しをしよる」と腹を立てているだろうが、それでも知事を許している。
 知事の個性は天性かもしれない。人に腹を立てさせても憎まれないところがある。あれくらいの府政改革なら私にもできると自惚れているが、あの流儀でやれば嫌われてつぶされるだろう。
 どちらも民間出身であることは、大阪史では奇跡みたいなものだ。この好機に二人がじっくりと論点を整理して次代の大阪行政のあるべき姿を見せてほしい。
                                 (完)

≪追記≫神奈川県の知人から指摘がありました。神奈川県には相模原市も政令指定都市であります。

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2010年10月3日日曜日

#39 とうとう露見した中国政府の本性ーー諸君は将来をどうするかーー

 ブログとは何なのか?これからはブログよりツイッターの時代なのか?
 こういう疑問に応える意見が知友人から寄せられます。私も自問しています。しかし、私のブログには目的があるので、ブログを変えるつもりはありません。ただし、なんとかもっと面白くしたいと念じています。
 私の目的とは?それは今から10年後に『友よさらば、若者よさらば』というタイトルで本として出版するために、書いているのです。多分、有力出版社は取り上げてくれないから、自費出版の予定でプロかセミプロに原稿の選別と編集をやってもらいます。私は家族葬にする代わり、500部を世話になった知友人と交信がある若者に遺作として送ります。
 20数年前、もの書きを始めた時、生涯に10冊の本を世に出すことを決意してから、これまで6冊が刊行されました。遺作は最後の10冊目になり、残る3冊をやり遂げたいと思っています。
 私のブログは、喩えれば、大手の系列映画館が作品を上映してくれないので、小さなミニシアターで自主上映しているようなものです。

 さて、今回は今ホットな中国問題について私の発想を諸君の参考に供します。いつも長過ぎという不評を知りつつ、今回はいつもより長くなりました。まとめて書いておかないと発想が逃げてしまうので。悪しからず。

 中国政府が戦略を一段と進めた

◇ 中国政府は機会を狙っていた
 中国政府はこれまでずっと尖閣島周辺に漁業監視船と何十隻もの漁船を送り続け、日本政府がどんな対応をするかを伺っていた。中には漁船が日本領海内まで侵入し、海上保安庁の巡視艇が警告を超えて違法操業していた中国漁船の一隻をつかまえたことで、一気に外交問題化した。挑発していた中国政府と、どこかで国家としてけじめをつけなければならない日本政府との対立だ。

◇ 対中強硬派と目される前原外相への先制パンチ
 代表選挙で親中派の小沢候補が敗れた結果、新内閣で前原前国交相が外相に就任した。 中国政府は対中強硬派と見られる新外相と、新任の丹羽大使に対し、中国の外交権益を通すために先制パンチを放ったのだ。
 ニューヨークでの温家宝首相と前原外相の演説には大きな違いがあった。国際的に温厚なイメージを与えている温首相は、尖閣が中国固有の領土であることを人差し指を振り上げて行った演説は強力だった。アメリカでは、おそらく国際的にも、人差し指を振り上げることはけんか腰と見られ、マナーに反する。私もスピーチセミナーでこのように教えられた。温首相は知っていてけんか腰のジェスチャーを取ったのだろう。これに対し、前原外相のコメントはいかにも弱かった。「尖閣には領土問題は存在しない」ではまったくアピールしない。彼には「中国は70年代から急に尖閣の領土化を主張し始めた」ことを中心にして歴史的経緯を明らかにする論文をアメリカの有力紙に寄稿してほしい。

他のアジア諸国への警告
 中国政府の戦略には対日攻勢を超えて他のアジア諸国への警告がある。中国は南沙諸島と西沙諸島に関してベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾の諸国と領有権を争っている。今回の日本との紛争を見せしめにしてこれらの国を力づくで抑え込むことになるだろう。中国とはうかつに争えないということになり、手足を出せないことになりそう。
 ごく最近、尖閣よりはるか遠い南沙諸島に最新型の武装漁業監視船を配置するなど、支配海域を拡大する中国、どこまで軍事予算をつぎ込めるのだろうか?

中国政府は中国海軍に突き上げされている
 人民解放軍は今も正確には国軍ではなく、共産党の軍隊である。あくまで共産党政府の文人支配下にあるが、いつまで軍を抑えられるかは分からない。今でも政府は海軍から突き上げされているかもしれない。
 陸軍はチベットやウイグルなど少数民族による暴動を弾圧して存在感を出せるし、空軍は有人衛星の打ち上げや宇宙の軍事目的開発によって存在を誇示できる。しかし、これまで海軍は戦果がなく、存在感が薄い。
 軍人のトップというものは野心の呪縛から離れられないものだ。彼らは「ハワイの東はアメリカ、西は中国で支配しよう」、「中国はいくらでも兵士の充足をできる」とか豪語したとか。

空母の保有も彼らの宿願
 中国海軍は中古の空母をロシアから購入して技術習得をしてきた。ソ連時代、巨大な空母をアジア各国に派遣し、その威容で圧力をかけた。しかし、実際には艦載機を飛ばせなかった。戦闘機が艦から発進する時に必要なカタパルト(火薬か高圧蒸気によって加速度をつける)の技術が不足だったという。
 世界最大の空母保有国アメリカは10艦が就航している。トム・クルーズ主演の映画「トップガン」では空母を詳しく描いていたが、カタパルトは見せなかった。絶え間ない戦闘機の発着訓練を要する空母の維持には巨額のコストがかかる。最新型のロナルド・リーガンは本体のほか通信設備、戦闘機を始めとする艦載飛行機、ミサイルなど兵器を含める総建造費は2兆円以上になるそうだ。なんと日本の年間防衛予算の半分だ!
 あまりに銭食いの空母は、かつて2艦保有していたフランスは退役した後の新空母の建造は止まっているという。軽空母を保有していたイギリスは現在新艦の建造を計画中というが、どうなるか。
 中国は建造と訓練に巨額のコストがかかる空母を、それでも建造しようとしている。将軍たちの野望を止める術はなさそうだ。

ガス田開発は隠れ蓑
 私の八卦見では、中国が領海域のぎりぎりに建設したガス田設備は、資源開発を隠れ蓑にしている。本土からあれほど離れ、しかも商業ベースに合うほど埋蔵量があるのか疑問がある。実は、尖閣取りの目的のために、領海域に実効支配の楔を打ち込んだのではないか。日本との共同開発は彼らのポーズだけかもしれないと警戒が必要。
 もし海軍が太平洋進出する意を受けて、目の上のたんこぶである尖閣海域に、日本の出方を封じるために、戦闘艦を配備すると装甲も火器も弱い日本の巡視艇では抗することができない。海上自衛隊の護衛艦(駆逐艦)が出たところで、中国海軍は攻撃してこないことを知っている。
 まして、中国にはドンパチは朝飯前であり、海上自衛艦は武力衝突を避けなければならない。中国はこれまで国境紛争においてインド、ベトナム、ソ連と交戦してきた。

毛沢東と文化大革命の悪夢
 かつて1966年から3年間、毛沢東派と紅衛兵による文化大革命の騒乱が吹き荒れ、中央政府が内政の統治を失った時代があった。滞米時に中国人の女性作家が書いた中国東北部の家族史である小説”WILD SWAN”がベストセラーになった。大部の本を英語で読むことに苦を感じさせないほど、文化大革命のすさまじさが描かれていた。
 中国政府は紅衛兵の悪夢をよく知っているのだろう。今はインターネット紅衛兵が暴れて政府の統治を脅かせている。中国政府は時にネット紅衛兵を泳がせ、時に抑制するという戦術を使い分ける。内政に多くの問題を抱える政府にとって、対日外交で 一歩でも退くことは権力内での地位保全を揺るがすことにつながりかねない。守勢の日本政府と攻勢の中国政府では緊張感が違うので、日本政府の対応はどの政党の政府にも苦しい。

 鬱積した感情を日本人はどう処理するか 

中国の外交戦略
 中国海軍が太平洋に自由に進出し、大陸沿岸の広い海域を支配することが現下の外交戦略の基本であるだろう。対外的には、日米と時に対立をしながら、ヨーロッパ大国とロシアとの間で協調関係を保つことだ。
 中国市場に出遅れたロシアは急に中国に接近し、中国政府の領土支配を支持することで、北方領土問題を牽制することを意図している。彼らには小手先であろうが、何であろうが、ことに付け込むことにためらいがないことだ。さらに、両国に共通する点は、領土問題の歴史について自国民にまともな教育をしていないことだ。

日本の対中外交
 一つは、中国と国境を接する諸国、モンゴール、カザフスタン、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、インドと友好関係を深め、中国包囲網をつくること。中国はベトナムに鉄道建設の援助を計画しているが、これで経済関係を進展させて中国の影響下に置く目的が見え見えだ。最悪の場合、中国と直結する鉄道が兵員と兵器を運ぶ軍用列車に使われる。
 二つ目は、南方海域の護衛のために、海上保安庁と海上自衛隊の艦船を大型化し、装甲の武装を強化すること。中国海軍はこれを上回る艦船をつくるのに、さらに金を使わなければならない。外交は武器を使わない戦争であるが、武力で守ることも外交なのだ。
 三つ目は、最近よく言われるように、日米安保条約に従い、集団的自衛権を実行できるように解釈を変えること。中国政府に外交的圧力を高められる。

政経分離は至難の業
 かつて日中国交回復以前には政経分離という言葉が使われた。最近の日中関係ではそうは行かない。経済においては、日本が中国に依存する度合いと、中国が日本に依存する度合いに大きな違いがあるからだ。悔しいが、日本経済は中国市場なしでは成り立たないほどの関係が現実だ。
 もう一つ、最近使われなくなった言葉がカントリーリスクだ。これは投資先国にある政情不安、法整備、労使関係などの要素について投資の危険を分析することだ。私が専門にする中小企業の中には、中国に対しては「それ行けどんどん」で走ってきた例が少なくない。緊張感に乏しい印象を受ける。       

 フジタの社員が逮捕された時、なんと緊張感に欠けることよ、と思った。この外交トラブル下に、4人がカメラであちこち撮影していたというのだ。帰国した3人が記者会見で「軍事施設区域に入ったことを知らなかった」と言ったことは、まだ一人が人質になっているから、信用性を疑っているが、彼らが政治に無頓着なビジネス馬鹿と言われても仕方がない。
 報復は中国政府の体質であることをしかと認識すべきだ。

メディアに出る声、周囲の声
 なかなかすごい意見がある。
 「日本人は中国に旅行に行くな」
 「中国人旅行者の訪日を受け入れるな」
 「東京の中国大使を深夜に呼び出せ」
 「中国政府は、なんでも日本が悪い、と言うのはけしからん。毒ぎょうざ事件でも日本が悪いで、まだ謝罪もしていない」
 「漁船の破損に対して謝罪と賠償だと。ふざけるな」
 「日本にいるパンダを追い返せ」
 日本人が腹を立てていることは中国大使館が情報収集しているから本国に伝わっているだろう。それにしても、パンダに八つ当たりはやめよう。パンダに罪はないのだから。

 結び

 東アジア情勢は諸君の時代にはどうなっているでしょうか?
 諸君は中国に対してどう思っているのでしょうか?
 おそらく私の世代とは違うでしょう。私の世代には中国に親しみを持つ人たちが少なくないのです。というのは、私たちは小川環樹や吉川幸次郎(二人とも故人)の中国学者が書いた岩波新書を読み、漢文で習った論語に馴染んだ世代で、昔の中国に親しみと尊敬の念を持っているからです。今の中国人に対しては中国政府と中国人、中国人の善し悪しを区別します。
 諸君も中国政府と中国人を区別して感情を抑制してほしいと願います。今の中国政府は小さい、小さい。だから諸君には、日本人には大人(たいじん)になってほしい。ゆめ中国人観光客や留学生に不快な思いをさせるなかれ。ネット紅衛兵の来日も歓迎しよう。
 すでに、日本も核兵器を開発すべきだ、という意見がくすぶっています。小国の北朝鮮が各兵器とミサイルで大国中国を振り回していることから、将来にはもっと高まるかもしれません。
 核兵器とミサイルを持つのに、日本は基幹の技術をほとんど保有しています。しかし、先進国で技術大国の日本であっても、諸君たちは核兵器の開発には反対してほしい。核兵器を持たないことは、日本が世界で立つための平和哲学なのです。
                                   (完)

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2010年9月26日日曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#5、9月,2010

  大阪に四つのオーケストラは無理
    ーー大阪センチュリーに移転の提案 
                   経営評論家 ・ 岡本 博志

 最近、大阪の四大オーケストラ(以下楽団と略称)が行った経営改革について新聞が相次いで報道している。大阪シンフォニカー交響楽団が大阪交響楽団に改名したこと、関西シンフォニーが新たにコンサートを会員募集で開くこと、それに府の助成金が打ち切られることで経営危機に瀕している大阪センチュリーが来春から公益財団として再出発することだ。これに大阪を代表する大阪フィルハーモニーを加えると四大楽団になる。
 ここでは、特に大阪センチュリーの改革について述べてみることにする。当事者が必死で努力しているのに、こんなことを誰も書きたくないが、経営の視点から大阪の楽団市場を直視してほしいと思う。
 せめてセンチュリーは京都市交響楽団にならって大阪府交響楽団にもっと早く改名すべきだと年来思っていた。この楽団が事実上府営であったことを府民がほとんど知らないからである。
 橋下徹知事が就任以来、大阪府が抱える長年の財政危機に対して打ち出した抜本的改革の一つとして、文化関連の予算が削減されたことにより、センチュリーの年間運営費4億円の助成金が一部カットから来年度ゼロになる。センチュリーは、現在企業からの寄付を働きかけているが、経営の視点から見て今のままで存続は難しい。現実的な経営再建策があるのだろうか?

 大阪に四つのプロオーケストラは無理
 過日、全国紙が全国のプロオーケストラのリストを掲げていた。これによると、全国24のオーケストラのうち4つが大阪圏に立地している。繰り返すと、大阪フィルハーモニー交響楽団(大阪市)、関西フィルハーモニー交響楽団(大阪市)、大阪シンフォニカー交響楽団(堺市)、そして大阪センチュリー交響楽団(豊中市)である。 
 ここで、国内各地のオーケストラ事情を知らないので、滞米生活中に地方都市から出かけて、生で聴く機会があった各地のオーケストラの中から、よく知るニューヨークとシカゴのオーケストラについて紹介してみたい。
 先ず、ニューヨーク市は世界の芸術都市という面があるから、大阪と比較するには適当でないが、それでもプロのオーケストラは有名なニューヨーク・フィルハーモニーのほかにはアメリカン・シンフォニー、オペラ・オーケストラ・ニューヨーク、ニューヨーク・シティ・オペラの4つしかない。
 次に、シカゴは郊外都市を含めて300~400万人の人口であり、大阪圏と良い比較例になるだろう。ここにはシカゴ・シンフォニー、シカゴ・シビックオーケストラの二つ、オペラ・オーケストラを入れても三つしかない。
 他方、大阪圏には文楽など伝統芸能、落語・漫才、人気が定着した劇団四季のミュージカルなど多くの劇場があり、さらに宝塚歌劇とも競合している。この激戦市場においては、府の助成金があろうとなかろうと、もともと四つの大オーケストラの存続には無理がある。
 因みに、家内と私の二人暮らしの我が家では、私の文化経費に年間予算制を敷いている。大阪フィルの会員として定期演奏会のうち二人で2回、家内が友達と出かけるリサイタルなど2回、私単独で文楽に2回、プロ野球観戦2回、それに劇団四季のミュージカル新作が出ると二人で2、3年に1回が許される予算の限界だ。他の大阪人と比較して平均か、それ以上か。大阪は文化の成熟市場であり、拡大は望めないだろう。

 大阪フィル・大植英次音楽監督の改革 
 大阪フィルハーモニーの音楽監督である大植氏とは、私が滞米生活中に近くの町で奉仕クラブの役員をしていた時、彼を例会の講師として招いて以来の知己であり、その後彼はアメリカの有力オーケストラの一つであるミネソタ・フィルハーモニーの音楽監督に出世した。
 彼はエリーの音楽監督に就任後、このペンシルベニア州の西北端に位置する人口14万人の中都市のオーケストラを再建した。
 音楽監督というのは、オーケストラ運営の全体に責任があり、演奏計画から楽団員の人事権まで広く権限を持つ地位である。常任指揮者と兼務する例が多い。長年の赤字に苦しむ楽団の再建のために、彼が行った改革について、地元新聞が伝えた記事から紹介してみよう。
 先ず、彼は楽団の小グループを連れて市内の小学校回りを始め、クラシックに親しむ機会をつくる活動を始めた。親も含めて草の根からファンを掘り起こしたのである。ミネソタの音楽監督に抜擢されてからもこの草の根活動を続けた。そして、今も大阪フィルで同じ活動を続けている。
 彼は地域の会合において講師への招きを気軽に引き受けて楽団の広報役を担った。近隣の町に気軽に出かけ、持ち前の話術と明るい人柄でファンを増やした。
 さらに、彼が手を打ったことは、楽団員の約60人のうち半分を常勤から外し、練習と演奏会出演の時だけ手当を払う方式に大改革した。今流に言えば、楽団員を正規社員と非正規社員に二分したのである。当然、非難を受けたが、中都市でプロのオーケストラを永続的に維持するためにはやむを得ないことだっただろう。91年から95年までエリーで音楽監督を務めた後、ミネソタに移る時には市民が盛大な送別会を催した。そして、市街地の通りに彼の名を冠した。結局、市民は彼の大改革を支持したのである。
 きついことを言えば、センチュリーには経営者が不在であった。おそらく府の年間助成金4億円の大きさを理事も楽団員もわかっていなかっただろう。例を最近廃部した社会人野球の大企業野球部に取ると、年間経費として2億円を使っていた。4億円とは大企業野球部二つ分の経費に当たる巨額なのである。
 
 センチュリーは移転によって存続できる
 前述した全国プロオーケストラ24のリストには、関西では大阪圏のほかには京都市交響楽団が挙げられているだけで、神戸、奈良、和歌山の主要都市にはプロオーケストラがない。中国地方の大都市である岡山にも広島にも、そして四国の高松にもない。もしこれが企業なら激戦市場を離れて市場の空白地域に移転するだろう。
 従来体制のままでは通用しない時代には、変革を避けて通れない。センチュリーの楽団員は大植氏が行ったような雇用改革は望まないに違いない。それなら歓迎される新立地で再起を図ってほしい。目を転じてみれば、赤字のプロ野球球団が本拠地移転によって再生した例はいくつもある。それに、近鉄バファローズがオリックスに吸収された時、京セラドームに入った大観衆が今はほとんど消えてしまった。私は遊園地の閉鎖が決まると、急に押し掛ける群れを「にわか遊園地ファン」と呼んでいるが、センチュリーの努力に共感した支援者も一過性になる恐れがある。

 楽団運営の年間予算が8億円とも10億円とも言われるので、来年は資金集めに成功したとしても、その先は危うい。        
 オーケストラの使命とは、生の演奏を提供し、クラシック音楽の普及に貢献することではないか。使命はどこでも果たすことができる。
                      (完)
   

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2010年9月16日木曜日

#38 諸君は民主党代表選挙をどう見たか?――ヘボ八卦見の始末記

 14日に民主党の代表選挙がありました。小沢候補がまるで野党党首のように現政権を批判し続けてきました。「よくもまあ、ぬけぬけと代表選に出馬したもんだ」という巷の声に私も同感でした。
 小沢が嫌い、という声に囲まれる中で、しかも小沢自身が嫌われ者と言う中で、私は「政治は好き嫌いじゃない」と反発してきました。なぜ小沢を首相にしてはならなかったか? ここでいっしょに考えましょう。 

◇ なぜ小沢首相に反対するか?

1)小沢は政治も行政も知らない。グループ議員の一人が「小沢先生は最もよく政治知っておられる」と言っていた。異議あり。彼が知っているのは政治ではなく、政治の裏だ。彼は行政リーダーの経験も少ない。彼の長い政治キャリアの中でたった一度、25年前に自治大臣を務めただけ。当時の自治省は「小さな大官庁」と呼ばれた。わずか400人ほどの所帯でありながら各県に副知事を送り込み、後に選挙で知事に仕立てた。 戦前の内務省のように日本の地方行政を支配していた。今でも自治省出身の役人知事は多い。

2)彼は変われなかった。2006年の民主党代表選挙の演説では「まず私が変わらなければならない」と言って説得力を利かせ、菅候補を破って代表になった。その後彼は変わったか。いや、金丸師匠譲りの金権体質は変わらなかった。今の政治資金問題に関しても、彼のものさしは法律に触れさえしなければよい、という認識のままであり、政治家としてのモラルには気を留めない。

3)本当は自分の政策を持たない。彼の頭は選挙と権謀術策にしか働かないようで、政策に関しては2兆円の予算予備費のうち菅首相がとりあえず1兆円を使うと言えば、全額景気対策に使え、という挙げ足取り。菅首相が雇用創出に全力を尽くすと言えば、景気を良くしなければ雇用は生まれない、というケチ付け。菅首相の財政規律重視に対して、思い切って国債を発行する財政出動によるバラマキで選挙目当てにころころ変わるご都合主義。彼独自の政策は出てこない。

4)対中・対米外交の危うさ。小沢が600人ものグループを引き連れた対中朝貢外交は記憶に新しい。他方、アメリカに対しては普天間基地移転について党決定を覆してさらに新たに交渉すると言う。彼は東アジアにおいて脅威はないと信じている。

5)小沢派は挙党態勢をとらざるを得ない。小沢グループには少数の幹部を除いて人材がいない。だから、政治生命が尽きた鳩山や、騒動屋の西の横綱と私が呼ぶ田中眞紀子まで担ぎ出さなければならない。挙党態勢は虚名だけだった。

6)ニキタ小沢・党第一書記兼首相の資質。陳情の窓口を幹事長に一元化した小沢は独裁者そのものだった。幹事長室で知事にかしずかせて謁見した様を想像すると、昔の役人もここまで威張らなかったと思う。

◇ さて、この選挙はなんだったのか? メディアが小沢敗北の原因として喧しく報じた資金疑惑の問題は小さくはないが、それより核心の原因は小沢グループが菅首相に1イニングも投げさせないで降板させようとしたことだ。立ち上がりに不安定さがあったかもしれないが、まだ失点を取られていない時点で投手を代える監督はいない。また、アメリカでは新大統領に100日はハネムーンと言って議会が攻撃を手控える慣行がある。
 今回の選挙は、言うなれば、小沢の反乱行為であった。民主主義の名のもとになんでも許されるわけではない。従って、反乱首謀者幹部は責任を取らなければならない。小沢のみならず、自分の選挙区で小沢を支持して党員・サポーターで菅候補に敗れた鳩山、原口(総務相)、細野(元幹事長代理)は自ら民主党を離党すべきだろう。これが武士の処し方だ。
 他方、菅首相は挙党態勢の虚名にとらわれず、権力闘争に勝ったのだから、国のために最も強力な内閣と党の人事をやってもらいたい。小沢支持者は当然選挙前から負ければ冷や飯を食わされることを覚悟していたはずだ。
 小沢がやれば政界も官庁もがらっと変わると過剰期待してきた支持者たちには、巨大組織の改革がいかに難しいかが分かっていない。終戦直後に政府がガラポンされた時は破産会社で再建を早く進められたが、今は大国日本の日々の経営を維持しながら改革しなければならない。早い話、倒産した日航の再建さえ3年以上かかる。菅首相は次の総選挙まで2年あると考えて取り組してほしい。
 「やっばり頼れるのは自民党か」という声が出てきた。しかし、これはまだ早い

 私は小沢が騒動を大きくしてから出馬を止めると予測したが、外れ。選挙では菅の議員支持者が230人を超えると読んだが、これも外れ。やはり小沢グループ新人の自立はほとんどなかったようだ。締め付けがすごかったのだろう。
 ヘボ八卦見の見立てが外れた。当たるも八卦、当たらぬも八卦とはこのことか。
 
 

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2010年8月28日土曜日

#37 民主党新人議員は進路を決めよーー小鳩グループから自立する時

 8月26日、小沢前幹事長(以下敬称略)が民主党の代表選挙に出馬を表明。「騒動屋」の彼がぎりぎりまで騒動を引きずって、結局、出馬しないと予想していた私の読みが外れました。ああ、小沢よ、やはり首相になりたかったか。
 そこで、若い世代の新人議員たちが気になります。彼らがあんな厳しい修羅場に身を置けば、雑多な情報に振り回されて心が乱れることは不可避。しかし、私のように限られた情報から過去も含めて流れを追うだけの外野手は、時に情勢がよく見えることがあります。忠告屋の私が決断する材料を与えてみましょう。どうせ私のメッセージが議員に届くことはないでしょうが、せめて党員・サポーターに読んでもらうことを期待しています。

小沢グループとは?
 グループ150人と言われ、他のグループより圧倒的に多い。ところが、もともと小沢に追随してきた忠臣は20人かそこらで、他は前回の総選挙で初当選した新人議員。その多くは特に小沢に心酔してグループに入ったわけではない。彼らは当時の小沢幹事長から公認され、党の選挙資金を与えられた。当選後、政党も国会の運営も分からない、すべて何をどうしたらよいのかも分からない。とりあえず小沢に付くしかなかった。
 しかし、鳩山首相を凌ぐ権勢を誇った小沢の地位は大きく変わった。単に幹事長を辞任したというだけではなく、今も金の問題では黒灰色のままだ。後ろめたいところがあるから説明もできない。公開された政治家の資産では「個人資産ゼロ」というのは空々しい。
 新人の皆さんよ、諸君は国会に出て勉強したいと思っても、そんな暇があったら選挙区に帰れ、と小沢から圧力をかけられたという。彼自身も健康上の理由で身体が半日しか持たないと言って国会会期時間中でも午後に床屋でさぼっていた。そんな御仁なのだ。
 選挙に強い小沢はなんでもできる。諸君とは違うのだ。
 
 当選してから一年、諸君はもう自分の足で立たなければならない。新人グループでリーダーを立ててもよし、他のグループに付いてもよし、グループを持たない岡田外相に付いてもよし。
なぜなら、小沢の行く末は見えているからだ。忠臣が「国民の期待にこたえて」と言っているが、完全に感性も論理も狂っている。さらに、「衆院選のマニフェストの原点に戻る」と言う。私も、ほかに多くも、マニフェストに賛同して民主党に投票したわけではないのに、彼らにはこれが分からない。かつては、「小沢なら何かやってくれる」、「小沢に一回首相をやらせたい」という期待が根強くあった。しかし、私の周囲ではこんな期待はまったくないことも彼らには分からない。
 私の読みでは、小沢は選挙敗北後には、子分を引き連れてどれか小党と組むだろう。これは彼の歴史なのだ。いや、騒動屋病か敵対病だろう。そのたびに忠義の同志たちが離れた。これなら選挙後に挙党一致などと美名にとらわれて小沢を副総理として処遇するより望ましい。
あの亀井静香にも政府はさんざん引きずられたが、小沢はあんなものでは済まないだろう。それに亀井にはどこか明るくて愛嬌があるが、小沢はどこか陰湿で暗い。

鳩山グループも次の選挙までもたない
 鳩山は首相を辞任した直後、次の衆院選には出ないと表明した。選挙区の後援会にも鳩山グループにも相談しなかったというのだから驚く。そして、最近ではこれを撤回し、選挙に出るそうだ。なんとも軽薄な変心男であることよ。
 最近まで菅首相の代表再選を支持する振りをしていたのに、急転して小沢支持に変心した。また、親から相続した軽井沢の別荘にグループ外の議員も招いて100人を超える大パーティをやった。得意満面だっただろう。ところが、彼はこれを支持者と勘違いしたのか、落ちぶれた地位から復権の野心を持った。小沢と組んでやる、と。国内のみならず、こんな変心男が信用されるはずがないにも関わらず、政府特使のような顔をして中国に行き、今度はロシアに行った。記者会見では、「小沢先生を民主党に招いて自由党と合併したことは私の一存によるもので、今回小沢先生を支持することは大義」だと言った。こんなのは大義ではなく、単に義理か私情に過ぎない。
 鳩山グループの議員諸君よ、横の同志的結合はあるのか?もしあるなら、鳩山をグループ名誉会長に棚上げして、新しいリーダーを立てるべきだ。もう出ない「母の金」に縛られず、自立して将来の去就を考える時だ。
 次の衆院選挙では選挙に強い小沢と違って鳩山は北海道の選挙区で落選するかもしれない。もともと北海道と縁がない落下傘候補で、このていたらくでは有権者から見放される。 
 諸君もふんどしを締めなおすだけではなく、色を変えることを考えなければならないのではないか。

権力闘争を経て小鳩にさらば
 主として小沢派の議員たちが、代表選挙は権力闘争ではなく、政策で争う選挙だときれいごとを言う。嘘ばかりだ。それに鳩山も彼らも身内の人間に対して小沢先生と呼ぶ。菅首相を菅先生と呼ぶことがないのと比較して異常なことだ。
 そう、彼らはみんな小沢を強いリーダーの名で、失脚したニキタ小沢を権力者として個人崇拝しているのだ。ニキタとは本稿#33で書いた旧ソ連の最高権力者だったニキタ・フルシチョフのこと。
 考えるに、なぜ小沢は引責辞任してまだ三カ月、謹慎の身であるのに一年後の代表選挙まで待てなかったのか?政治資金疑惑を清算し、菅首相が実績を挙げられなければ、国民がもっと納得できる出馬の形を整えられるはずだ。
 また、なぜ鳩山はこの代表選挙まで首相の座に居座れなかったのか?お陰で菅首相が尻拭いの貧乏くじを引かされ、代表選挙の混乱を招いた。(本稿#32)
今回の選挙は堂々たる、そしてやるべき権力闘争だ。これによって小鳩両議員を政界から引退に追い込んでほしい。
 もう一つ考えるに、万が一、9月14日に小沢候補が勝っても、臨時国会で小沢が首相に指名されるまでは菅候補が首相の地位にある。この時、菅首相が衆議院を解散することは合法なのだろうか。
                                 

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2010年8月19日木曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#4,8月,2010

  関西3空港問題の戦略を立て直す時
  ――4空港問題として膠着状態を破るしかない――
                 経営評論家 ・岡本 博志

 年度予算制の官庁では、12月の予算申請が行政課題の区切りとなり、予算が認可されてひとまず落着する。
 継続的課題の関西3空港問題についても、次年度一年の予算認可が目標であり、認可されると次の12月までは一段落なのである。今は一段落というより、打開策が見えない膠着状態になっている。
 関西国際空港(関空)は、昨年政府の年度助成金90億円を危うく失いそうになり、大阪府・兵庫県の行政と財界が主に提案した関空、大阪空港(伊丹)、神戸空港の3空港を一体運営するという改革案をまとめたことで、75億円の予算を得た。
 他方、今年6月に国としての改革案を出すと表明していた国交省は、関空と伊丹の二つをセットにして空港の運営権を民間企業に売却するという結論を出した。これで地元関係者も国交省も、先ず一年間は休戦ということになった。予算化対策の域を出ない改革案で当面切り抜け、抜本的改革を先送りにする、これが私の意味する膠着状態だ。 
 果敢に抜本的解決を求めてきた橋下知事も手詰まりになっている。市民もメディアも関心が薄くなった今、どう打開するのか?
 いずれ、関西3空港問題が、成田・羽田問題、地方空港問題とともに全国的テーマとして、月刊誌に取りあげられる機会が来れば、私の15年に及ぶ調査研究の成果を長文の論文で発表したいと思う。ここでは、現時点でのさわりをまとめてみた。

 幻想の空港運営権より八尾空港の売却
 敷地と建屋、それに駐車場などの資産を除いた2空港運営権だけを売却するという国交省は、売却額を6千億円と予測しているが、橋下知事は高々1千億円でしか売れないと発言した。私もそう思う。海外の投資ファンドも乗り出してこないだろう。言うなれば、幻想の改革案みたいなものだ。
 これに対し、私は関西の空港問題は3空港ではなく、八尾空港を含める4空港問題としてとらえることを提唱してきた。八尾空港は国有資産であり、これを民間企業に売却する方が、関空の1兆円を超える有利子負債を軽減するための原資として現実的な方策である。現在、X字に交差する2本の滑走路を持つ八尾空港は、陸上自衛隊のヘリコプター部隊、海上保安庁・消防・警察のヘリコプター航空隊、民間飛行学校、自家用機の基地に使われている。八尾空港の面積は伊丹の1/3であるが、都心に近い立地から大企業の本社、研究所、新製品工場を一ヶ所に集中できるので、売却できる可能性が高い。何より製品を大阪の都心を通らないで関空や大阪港に運べる利点が大きい。

 「伊丹廃港」より「伊丹再活用」
 かつて超党派国会議員のグループが伊丹を、東京が震災に遭った場合に備えて、中央政府の臨時政庁にするという提唱をしていた。しかし、その後は地元の有権者からの反発を気にして運動が盛り上がらなくなっている。
 その背景には、臨時政庁の機能だけでは地元経済の振興につながらないことがある。そこで私が提唱することは、臨時政庁に加えて、八尾空港の機能をそっくり伊丹に移すことと、ヘリポートしか持たない自衛隊伊丹駐屯地の飛行基地として国内外の大災害時に救援基地の機能も加えることにある。既存の建屋には備蓄の収容力が充分だ。
 ここで関西の空港問題にある核心をまとめてみたい。
 第一に、関空の原点は、伊丹の代替空港として建設され、階を上下するだけで国内線と国際線の乗り換えができる24時間空港であった。国内線を伊丹から移すことで国際線の乗り入れも増える。
 第二に、伊丹は四囲が密集した人家で囲まれ、危険であることは昔も今も変わらない。受益者の乗客も、周辺住民にも犠牲者が出なかったことは単に幸運によるものだ。 
 第三に、私の計算では、新幹線が滑走路5本分くらいに相当し、関空の2本と神戸の1本の滑走路で関西の総需要を満たすことができる。数年前に大阪で行われた朝日新聞主催による関空問題のシンポジウムにおいて、井戸兵庫県知事がパネリストの一人として行ったスピーチの中で、都市圏人口が関西圏の1/3しかないシカゴ空港が4本の滑走路を持つことから、将来関西の総需要を満たすには3空港が必要だとする論理を述べた。これは新幹線の輸送力を意図的に無視している。
  
 混乱を次世代に残すなーー結び
 顧みれば、読売新聞神戸支局が関西新空港を考える紙上キャンペーンを、1972年から1年余にわたって週一回の連載を行ってから38年が経った(後に『裁かれる空港』として単行本になった)。ここで書かれた問題は今もほとんど変わらず、騒音と危険性から伊丹廃港を求めた住民運動はどこへ行ったのか?
 ただ今現在、兵庫県の知事と議会が伊丹存続を主張し、対する大阪府の知事と議会は伊丹廃止を求めている。かつて伊丹廃港を主張した地元の大阪国際空港周辺都市対策協議会(11市協)は、今年5月に伊丹存続を求める要請書を前原国交省に提出した。さて、国交省はどこへ行く?
 最後に一言。関空に対する批判は、あまりにもアクセスの不便にとらわれ過ぎている。関空の根幹の機能は西日本のハブ空港として、日本人、外国人を問わず関空からアジアへの路線や国内線に便利に乗りかえしてもらうことだ。従って、関空へのアクセスは二次的な問題であり、世界には空港まで遠い空港はいくつもある。大阪都心から便利な伊丹まで30分なら、関空まではプラス30分に過ぎない。
 大阪都心から関空まで10分で結ぶというリニア鉄道の完成を待って伊丹を廃港するというのでは、次世代にツケを回すことになろう。
                    (完) 

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2010年7月28日水曜日

#36 世論調査は時に有害ーー民主党は大敗しなかった

 今回の参院選挙について新聞もテレビも「民主党は大敗した」と伝えました。わずかの少数が「大敗しなかった」という意見を述べていました。確かに民主党は参院で過半数を取れなかったので負けたことになるのでしょうが、これは選挙前に予想されたことです。本稿#24(今年1月)で私も過半数を取れないと予想しています。
 先日のこと、鳩山前首相と、得意の雲隠れをしていた小沢前幹事長が、民主党敗北の原因を菅首相が消費税値上げを言ったことだとする意見を新聞が伝えました。これが本当なら、なんという厚顔の男たちか?
 今回は控えていた政治を取り上げ、加えて世論調査について考えてみます。

◇ 菅首相は貧乏くじを引いた。
 本稿#32で参院選挙までは鳩山首相に居座ることを願ったが、しょせん無責任で格好だけの男にはかなわぬことだった。お陰で後を継いだ菅首相が貧乏くじを引くことになった。なぜなら小鳩政権が負うべき選挙の敗北の責任を菅首相が責められることになるからだ。誰が後任首相であれ、民主党は今度の選挙では勝てなかった。
 ただ、菅首相が責めを負うべきことは、消費税率の10%に触れたことではなく、批判を浴びるとすぐに所得税で調整して還付すると発言して腰が砕けたことにある。その対象も年収200万円の低所得者から400万円まで発言がぶれた。これでは一国のリーダーは務まらない。私は鳩山首相に当初変身を求めたように、菅首相にも変身を期待したい。つまり、市民運動家気質からナンバーワンの権力者に完全脱皮してもらうことだ。
 世間の声は厳しい。鳩山前首相について、「なんであんなのが首相になったのか不思議」、「仮にだ、鳩山にどの大臣を任命するのか考えてみたらいい。任せられる適職がないじゃないか。その程度の玉なのだ」と言う。「彼は頭が良いのだが、バカなのだ」と、これは私。実際、官僚にも学者にも頭は良いのにバカなのが少なくない。
 相変わらず軽薄なメディアが言う。「理想主義の鳩山に対して現実主義の菅」だと。あれは理想主義ではなく、幻想主義だろう。
 菅首相閣下、前首相の轍を踏むなかれ。世論調査に揺すられるなかれ。

◇ 政治家は世論調査を超越すべし 
 実例をいくつか挙げよう。
 先ず、NHKが相撲名古屋場所のテレビ中継に関する世論調査。場所前にNHKが寄せられた多数の意見を集約すると、中継反対が60%を超えていた。だからNHKは民意に沿って中継をやめることを決定した。こんな意見は市民がOX式の一つを選択するのに一時の感情にとらわれているから危ない。加えて、この調査の欠陥は前例がないことで、過去と相対的に比較できないので信用できない。まだ選挙事前の世論調査では、同じ質問に対して調査されるので、過去のデータと比較できる点である程度信頼性がある。
 NHKが視聴者からの多数意見に基づいて中継中止を決めた時、私は家内に言った。
 「見ていろよ、名古屋場所が始まったら中継中止に反対する意見が逆転するよ」と。
 いざ場所が始まると、今度は中継を求める意見が過半になったという。移り気で、大して考えずに感情で決めるから、大衆の意見とはこんなものだ。
 民意に従うだけで結論を決めるのなら、NHK幹部も政治家も要らない。
 蛇足をひと言。NHKは4億円とも5億円とも言われるテレビ放映権料を相撲協会に払わなかった。視聴者は既得利益を失ったのだから、要求する権利がある。「ゼニを返せ!」と。これがものの道理だろう。

◇ タレント選挙の顛末は? 
 時代が変わったな、と思う。
 「タレント候補にも出馬する権利はある。しかし、いきなり国政ではなく、市会議員か県会議員から始めよ」と本稿#33で書いた。知名度で国会議員になろうなんて厚かましい、と思う私は強豪候補の谷亮子を標的にしたが、やはり彼女は強かった。
 しかし、他の元スポーツ選手、芸能人、テレビ関係者のタレント候補はほとんど落選した。
 ここでは、私がよく知る大阪の選挙結果について紹介し、皆さんの参考に供したい。
 定員3の大阪選挙区では民主、自民、公明党の候補が一人ずつ当選した。
 小沢戦略による民主党二人目のタレント候補・岡部まりは次点で落選。それでも61万余の票を集めた。彼女が選挙記事の中で「大阪は愛と人情味を持った温かさのある街」と言っていることには、そのピント外れに寒気すら覚えた。十数年前に刊行された著書の中で、企業誘致をするために大阪の長所として財界人が「大阪は人情が厚い」と言っていることに対し、こんな非論理的な考えを批判したことがある。その後講演ではいつも「交通体系が素晴らしい、不動産が割安、いつでも人材を集められる、災害が少ない」などの長所を挙げるべきだと話してきた。私のせいかどうかは分からないが、ここ10年は「大阪が人情に厚い」とは聞いたことがない。もう岡部は感性が古すぎる。こんな手で大阪人を釣れると思ったのか?
 選挙区に異色の候補が出馬した。山分ネルソンとい候補で、マレーシア出身の産婦人科医、36歳、今年1月に日本に帰化。勤めていた病院で同僚医師3人が倒れたことから、日本の医療改革のために出馬したという。マレーシアの高校を卒業後、北大薬学部卒、さらに阪大医学部を卒業して薬剤師と医師の資格を持つという英才。医師不足の改善を訴えながら、自分は医師として一線を離れて政治を目指すというのでは、私は彼に投票しない。まだ10年は早い。それでも10万票を取った。善戦だろう。私は医師に戻ってくれて良かったと思う。
 比例区には落語の桂きん枝が民主党から出馬した。選挙前に新聞が「大阪にはお笑い票が百万票ある」と書きたて、大阪お笑い芸人のスターたちが応援に勢ぞろいしたが、彼の得票数はわずか約4万8千票で落選した。大阪人はもうバカじゃない。むしろ大阪より、東京選挙区で蓮舫候補に170万票も投じた東京都民の民度が怪しい。
(文中敬称を略させていただいた)

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2010年7月4日日曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#3,7月、2010

  大阪都より大阪市を日本第二の都市に復活
   ――大阪市の面積は横浜市の半分にすぎない――
                      経営評論家・岡本 博志
  
 橋下大阪府知事が提唱する大阪都構想は人心を一新し、次世代のために大阪に活気を蘇らせる効果があることを評価できる。しかし、そのためには条例や法律を改正する法的手続きが必要である。
 私は大阪都構想や関西広域連合の前に大阪市と隣接する周辺都市を合併し、横浜市に次いで日本第三の都市である大阪市を再び第二の都市にすることを提唱したい。この新大阪市構想は、橋下知事の大阪都構想を進める障害にはならない。
 

  大阪市の面積は横浜市の半分

  先ず、下記の表をご覧いただきたい。
    
  大阪市と横浜市、神戸市、京都市の比較

           面 積 ㎢   人 口  千人
   大阪市     227       2,663
   横浜市     437       3.673
   神戸市     552       1,536
   京都市     827       1,770

 これから分かるように、大阪市の面積は横浜市の約半分に過ぎず、神戸市は大阪市の2.4倍、京都市にいたっては3.6倍もの違いがある。神戸、京都の両市とも積極的に周辺市町村との合併を進めてきた。振り返ってみると、横浜市が大阪市の人口を上回ったのは1980年代の初めであった。これに対し、大阪市は30年もの間、現状維持のままにしてきた。この間、
私が知る限りでは、経済界からも、市民からも大阪市拡大合併の話を聞いたことがないことを不思議に感じるほどだ。メディアも取り上げることがなかった 。
 今や、日本第二の都市である横浜市と大阪市の間では約100万人の開きができてしまった。「大阪市は昼間人口では今も日本の第二の都市や」、「都市の風格では大阪が上」という声があるが、世界の統計では住人人口が基準なのであり、世界中の観光ガイドや人口統計では大阪市は日本第三の都市なのである。
 正確な記述では、横浜市を「日本最大の市町村」としているが、これは東京都が県に相当し、都市に見られないことによる。しかし、戦前は東京市であった特別23区に限っても、東京は日本最大の都市であるから、やはり世界の統計では東京、横浜、大阪の順にされている。

 
  京都市と神戸市では合併を促進

 実例を挙げてみよう。
 京都市の北、かつての北桑田郡京北町山国は南北朝時代に光厳院上皇が蟄居した村として知られ、常照皇寺がある。ここは合併により現在は京都市右京区になった。その昔、京都駅から国鉄バスで2時間以上かかったこの寒村が京都市とは驚く。
 有馬温泉までは都心から六甲山を超えて電車かバスで1時間以上かかる。今ここは神戸市北区である。このような広域合併は全国にいくらでもあるだろう。
 そこで、大阪市と隣接する豊中、吹田、守口、東大阪、八尾の5市を合併すると、新大阪市の人口は432万人となり、横浜市を約70万人超えることになる。 それでも面積は410㎢で横浜市より狭い。
 驚くことはない。何十年もの間、これらの隣接市のほとんどは大阪市の市外局番06に含まれて広域経営区になってきた。神埼川の対岸に位置する兵庫県尼崎市でさえ、昔から大阪市と同じ局番06だ。大阪市営地下鉄の路線も延びており、広域行政区になっている。合併に何も感じず、動かなかったのは各市の行政だけだった。経済界も市民も動こうとしなかった。

 合併で無理やり人口を増やしてなんの意味があるのか? こう反論されるかもしれない。しかし、私は大阪市の都市としての勢いには名実ともに大事であると信じる。名とは言うまでもなく第二の都市の地位を取り戻すことである。

  平松市長に仕掛け花火を求める 

 合併構想でも何でも、友達は「大阪は地域エゴをぶつけ合うだけでバラバラ」と言う。私は言う。「大阪はどこかだらっとしていて締りがなく、感性が鈍い風土」と。
 これまで平松大阪市長は橋下知事が次々と打ち出す改革提案に振り回されて受身であったと思う。ここらで「大大阪市」を実現するために、大阪市独自の仕掛け花火を打ち上げてもらいたい。命名して「西の横綱」花火としよう。
 はたして、大阪は目覚めるか?
            (完)

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2010年6月29日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#2,6月、2010

    近代美術館の立地を天王寺公園に    
                経営評論家・岡本博志                                 

 今、大阪市が市立近代美術館の建設準備を進めている。
 建設予定地は、中之島のなにわ筋東側にある市立科学館の隣接地だ。科学館と同じ敷地には国立国際美術館があるので、集積効果を生かすことができると考えたのだろう。市はすでに土地を購入した。
 もともと一帯は阪大医学部の跡地で、現在は高層マンションが建ち並ぶ居住地域の景観をつくっている。はたして新美術館の立地として最適だろうか?
 集積という点と、大阪市都市再開発の視点を考えれば、新美術館の立地には、天王寺公園の中にある市立美術館の隣接地の方がはるかにふさわしい。
 その理由を説明する前に、再開発の視点から天王寺地区の現状を説明してみたい。

  天王寺・阿倍野の二重ブランド
 先ず、大きな問題は、天王寺地区が天王寺と阿倍野の二重ブランドになっていることだ。「天王寺・阿倍野」再開発 のように常用され、時に「阿倍野」が「あべの」と表記されている。
 私は府外から移住してきた新府民が多いと言われる大阪北部の住人であるが、天王寺と阿倍野の違いを正確に知らない住民は少なくない。「ああ、あの辺か」という認識程度だ。天王寺区と阿倍野区が、道路一つを挟んで区分けされる行政単位が知られない。関西圏の住人も違いをよく知らない。まして、よく出張する関東の住人には阿倍野の知名度が低く、どこにあるのかも知られない。
 会社ならマーケティングにとって大きなマイナスだからこのまま二重ブランドにしておくはずがない。最近の例では、国内外で知名度が高く、長い歴史がある松下電器が社名をブランドのパナソニックに統一して驚かせた。
 要するに、大阪市の経済開発において、市場は大阪市だけでなく、府外にも全国にも一つのブランドとして知られなければならない。特に観光客を増やすためには重要なことだ。今、官民一体となって、「天王寺地区」に呼称を統一すべきだ。
 常のことながら、伝統やしがらみを変えることには住民に、そして社員にも反対される。しかし、考えてほしい。「天王寺地区」に統一しても、阿倍野の地名や道路名が無くなるわけではない。
 先鞭をつけることで、近鉄にいくつか支援してもらえることを要請したい。
 一つは、近鉄南大阪線の「阿倍野橋駅」を「近鉄天王寺駅」に変更してほしい。隣接している南海系阪堺線の始発駅には「天王寺駅前」が使われている。
 二つ目は、現在近鉄百貨店の隣りに建設中である日本一の高層ビル「阿倍野橋ターミナルビル」の呼称を「天王寺ターミナルビル」に変えてほしい。
 三つ目は、高層ビルと連結されて生まれ変わる近鉄百貨店の呼称「近鉄百貨店阿倍野本店」を「天王寺本店」に変えてほしい。

  天王寺公園の立地が最良
 ここで本題の新美術館の立地に戻ろう。
 広大な天王寺公園は、第6代市長の池上四郎の発案によって建設された。公園内に銅像がある。市立美術館と魅力的になった動物園のほかに、名園と言われる慶沢園、全国の歴史探訪者に知られる茶臼山がある。茶臼山は大坂冬の陣では徳川家康の本陣に、夏の陣では真田幸村の本陣に使われた史跡だ。
 私が知る巨大なフィラデルフィア美術館(映画「ロッキー」に出た)に似た市立美術館のすぐ近くに動植物公園事務所の3階建てビルがある。茶臼山と河底池を正面に見る緑豊かな景勝の地だ。私はここに新美術館を建設することを提案したい。公園事務所は別の場所に建設する。
 現在、市が計画している中之島は居住地区として発展して地価も上がっているので、購入した土地の売却をすれば、天王寺公園に新美術館と新公園事務所を建設する資金に充てられるはずだ。
 会社員の読者なら、私の提案が集積のパワーを意識していることをご理解いただけるだろう。大阪市場だけではなく、浪速国の外の全国市場に目を向けている。
 新美術館の広報によって、天王寺地区の観光にも集積のパワーを生かせる。天王寺地区にはほかにも観光客が足を延ばせる名所史跡がある。例えば、目と鼻の先にある通天閣・新世界をはじめ、聖徳太子が593年に建立した四天王寺は日本最古の寺とされ、立派な伽藍がある。天王寺は四天王寺の略称と言われる。また、織田作之助の作品の舞台として知られる夕陽丘もある。
 また、路面電車ファンとして人後に落ちない私には阪堺線の沿線が楽しい。住吉大社がその一つ。
 
  天王寺再開発は大阪経済の希望――結び
 今日、異常とも感じるほどキタの開発に偏重している。ミナミの難波も見違えるように変わった。これに比べると、天王寺再開発は始まったばかりだ。大阪経済の振興に希望を持たせてくれる。
 梅田は東京で言えば丸の内、難波は池袋、そして天王寺は新宿に喩えられるだろう。そして、天王寺公園は上野公園を意識する。「集積のパワー」をキーワードにして、どちらの立地に全国から客を呼べるか?というビジネスの基本に立って、新美術館立地の再考と天王寺キャンペーンを官民の関係者に望みたい。                                                    (完) 

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2010年6月25日金曜日

#35 男よ、しっかりしろーー日本語が軟弱化している

 いよいよ参議院選挙です。7月11日の投票日までは私の政治論はしばし休止します。
 私は自己分析すると、保守政党の支持者だと思います。昔、「40歳まで自民党支持ならバカ、40歳を過ぎても社会党支持ならバカ」と言われていたことがあります。しかし、最近は民主党を支持し、今回の選挙でも民主党に投票するでしょう。
 かねてから日本の政治には保守系政党と政権担当可能なリベラル政党が必要と信じていました。なぜなら、どうにか民主党が政権を担うことができるようになり、混乱を収拾してさらに政権担当能力を示してほしいと思うからです。
 他方、自民党は当分政権を担える状態ではありません。自民党の中で改革を進めてゆくべきなのに、次々と脱党して新政党ができる有様。私はお家大事の時に、選挙目当てに出ていく政治家は支持できない。
 本来、二大政党のほかに、平和理念主義の社民党と共産党、それにもう一つの存在があるべき政党体制だと思います。諸君はどう考えますか?

カタカナ外来語が目に余る 私が日本語破壊協会と揶揄するNHKのカタカナ外来語の濫用がますますひどくなっ ているようだ。民放テレビにいたっては話にならない。出演者には濫用に加えて誤用が目立つ。そこで、諸君にカタカナ外来語を五つ挙げて理解を試してみよう。

① トリアージ――フランス料理の一種。
② トラウマ――相性が悪い干支の組み合わせ。
③ コンシェルジェ――高級ホテルの格付け。
④ トリビア――西洋式噴水。
⑤ コラージュ――野菜に含まれる栄養素。

 大体、こんな語句を無節操に使う奴らには、聞き手が分からなければコミュニケーション(おっと、これもカタカナ語)にならないということが分からないのか?
 上記語句の右側に書いた説明はおふざけで、正解は本稿の最後に記す。

もう勢いを止められない流行表現
 2003年1月に刊行された小著『若者革命』の一節「キミをだめにする日本語表現」の中で、おかしな日本語が広まっていることを警告した。ここでは「かな」(または「いいな」)、「ーーという風に」の三つを挙げている。それが今、この三語区をセットにして会話の中で、政治家、芸人、スポーツ関係者が常用している様。そして、テレビの影響か、大衆から若者までの使用が蔓延している。諸君は流行に一線を引き、悪弊に染まらないようにしてほしい。
 ここでも断っておくが、私は仲間内の私的会話にケチを付けるわけではない。会合や会議の席では公式の日本語を使って意見や決意を述べることが良いと意味している。
 実例に即して説明しよう。
 先ず、会社の面接で目標を訊かれたとする。そこで、諸君が「ーーの専門家になれたらいいな、という風に思います」と答えたら減点されるだろう。決意の表明になっていないからだ。
 次に、テレビニュースでコメントを求められた選手が、「次もがんばりたいなという風に思います」と言っていた。私が思うに、「という風に」は他人の文言を引用する場合、また例えば、おもちゃの組み立てを一つひとつの手順を説明する場合に使われる。自分の考えを述べる時に「という風に」は単に無用の飾り言葉かもしれないが、どこかそらぞらしい。
 諸君には公式の場では頼りない日本語ではなく、武士の言葉で話してもらいたい。

締りがない鳩山饅頭と日本語 
 本稿#21(昨年12月)で鳩山前首相がよく使った「思い」、「~というもの」、「参りたい」の非論理的、飾り言葉、誤用に加えて、何でも頭に「お」をつける敬語の馬鹿丁寧さにうんざりしていた。リーダーがこれじゃ政治が混乱し、社会が緩むことは当然。
 その彼が東京工大で行った講演で、「政治や行政に、もっと科学的合理性を持たせた発想を生かす」なんて言っている。科学的合理性の発想に欠けたのは彼自身ではなかったか?
 私は小著『大阪がかわる 地方がかわる』の中で書いて以来、10数年もあちこちで饅頭論を訴えてきた。本稿でも書いた。それは、饅頭のあんこと皮に喩えて、あんこは合理性や道理など論理的な思考で、対するに皮は情念やしがらみなど非論理的思考というものだ。
 大阪の風土の弱さとして、行政や経営の改革において論理的思考が基礎に置かれないことを挙げている。つまり、あんこが練られないで皮をかぶせている饅頭みたいなものだ。講演などで饅頭論を出すと、「アメリカと違って、大阪は理屈ではない」とよく言われた。

 私は腹の中で、「あんこが大事なのはビジネスに対してであり,個人の私生活について言っているのではない。ちゃんと理解せんか!」と思ったものだ。
 今、大阪では橋下知事がわずかに薄皮を付けたあんこを議員や市長たちに投げつけている。これに対し、皮もあんこも区別がない彼らの思考では知事に歯が立つわけがない。

 《注記》アメリカで使われる英語の中にフランス語の語句が多く入ってきているが、最近の日本では、なぜこんなに多くフランス語系の語句が使われるのだろうか?
 ① 怪我人の救急において優先順を付けること。② 心の傷。③ ホテルの総合世話係。   
 ④ どうでもいい雑学知識。⑤ 一枚の写真に他の写真を入れる合成写真。
 

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2010年6月5日土曜日

#34 選挙プロ亀井静香ーーここにも選挙の弊害あり

 本稿#32では、鳩山首相が参議院選挙まで居座ることを望みましたが、結局、辞任して菅新首相が就任する道筋をつけました。置き土産は合い討ちでニキタ小沢幹事長を辞任させたことです。
メディアはいろいろ報道していますが、私の見立ては参議院で問責決議が可決されるかもしれないという圧力が利いたのではないかと思います。なぜなら、民主党の改選議員が選挙受けを狙って3人以上が造反して賛成することは考えられるからです。
 当分、週刊誌やテレビ番組は商売繁盛します。私も当分政局について書くことにします。

◇ 亀井郵政改革・金融大臣
 亀井大臣は隠れた選挙プロだ。地元の広島では強力な後援会組織がある上に、なりふりかまわず床に頭をつけて土下座をする。「有権者なんてこれでいちころさ」なんて思っているかもしれない。彼は自分の選挙には憂いも心配もない。だから何でも言える。
 彼の唯一の関心は、小党の国民新党の子分たちを選挙に勝たせることだ。郵政改革を言えば、特定郵便局長の全国組織から集票できる。中小企業融資返済猶予法と財政出動を言えば、中小企業経営者の票を増やせる。
 小泉郵政改革について弊害があるとしても、またその改革は現下の緊急課題ではない。もっと効果と弊害がはっきりしてからでよいではないか。彼は物事を単純化して大衆に分かりやすく説明することが巧い。例えば、「小さな村で郵便局がなくなればお年寄りが生きていけない」と泣かせる。これに対し、法律や条例を改正して役所手続きと郵便業務を代行できるようにし、地元の人によるコンビニ、つまり万屋(よろずや)にすればよいのだ。
 中小企業の借金返済についても、当事者の利用でも世論の支持率でも低い。大体、中小企業政策は他の支援策と一括して政策を打ち出すのは経済産業省の管掌だ。金融庁とは金融制度と金融業界に目付けを利かす監督官庁ではないか。
 ここにも中長期の政治より、目前の選挙戦術が幅を利かす弊害がある社民党の代表で福島前大臣が何でも口出ししたように、亀井党代表・大臣にも所管破りを許してきた。

 私は亀井代表を面白いと思う。男として好きなタイプだ。
 野党議員がイエスかノーで閣僚一人ひとりに答えさせる質問(何だったか記憶にない)をした時、亀井大臣が「そんな下らん質問するな」と言って答えなかった。私も大臣なら同じことを言っただろう。

 菅首相に望む
 鳩山・小沢政権では大衆迎合がひど過ぎた。子供手当て、高校授業料無償化、高速道路無料化、夫婦別姓、外国人参政権、農家戸別所得補償などの政策は、どれも国民からの支持が低いにもかかわらず、マニフェストにこだわった。そもそも、マニフェストは政権経験もなし、行政経験もない素人集団が総選挙用に1年半も前に出したものだ。それ以後の激変を思えばもう過去のものだ。新政権ではこのマニフェストを一旦ガラポンして、国家が直面する重要課題を中心に書き換えて選挙に臨んでもらいたい。 
 例えば、社会保障目的の消費税の値上げ、財政再建のために国債発行の抑制など有権者大衆に嫌われる政策を実行すべきだ。どっちみち、民主党は来月の参議院選挙で議席を減らすことは避けられない。ここはじっと耐えて、自分の利益しか取らないのか、次世代のことも考えるのか、有権者の民度を問う機会であり、選挙のあるべき姿を見る機会だ。

◇ 再びニキタ小沢
 2003年に新進党が保守党と小沢自由党に分裂した後、衆参議員10数人の小沢自由党が民主党に合併された。総選挙の小選挙区で戦えない小党が民主党に庇を借りるためだった。
 その後、小沢が民主党代表に選ばれ、小企業の社長が大企業の社長になったようなもので、民主党は母屋を取られてしまった。喩えれば、琵琶湖の外来魚ブラックバスが在来魚に代わって湖の主になったのだ。前回の衆議院選挙で大量に新人を当選させ、今や150人に増殖して党内最大グループになった。ところが、今回の党代表選挙では小沢グループが支持したと言われる樽床候補に129人が投票したにとどまり、20人が菅候補に投じた。小沢グループ以外からも樽床候補の支持票があるなら30人くらいは小沢離れをしたかもしれない。
 小沢チルドレンは言うなれば、鮎の稚魚だ。選挙の各候補に出される党支援資金は小沢幹事長が一手に決め、当選しても湖の右も左も分からないのでは小沢グループに組み込まれることは仕方がない。
 中国への朝貢訪問団に疑問を感じた鮎もいたに違いないが、保身のためには他に選択がなかった。
 鮎たちは成長する、そして小沢離れはこれから進む。ニキタ・フルシチョフの権勢が失脚で衰えたように、ニキタ小沢の権勢にも影がさしてきた。

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2010年5月29日土曜日

#33 柔ちゃん、無理、無理ーー女が政治を危うくする

 最近は鳩山首相を揶揄する川柳やコントの傑作を新聞で見ます。私は閃きを得るのにセンスがなさそうです。しかし、ふと一つのコントを思いついたので披露します。新聞の投稿先を調べることが面倒だし、それに傑作の水準になるかどうか自信がありません。

      「基地移転、読み違い
        5月末、決着。
        5月、未決着
          ――あわて者―― 」


◇ タレント選挙の再来
 7月の参院選挙にわんさとスポーツ選手、歌手、芸人が主として民主党の候補に選ばれた。中でも谷亮子はまだ現役の柔道選手であることから、週刊誌やテレビで批判されている。「柔道もオリンピックで金メダルを目指し、その上国会議員もやる?ええ加減にせえ」という声は私の周囲でもある。私もそう思う。
 この際、彼女に犠牲になってもらって言いたい。他のタレント候補にも通じることだ。
 第一に、国政を目指すなら、市会議員か県会議員からキャリアを積んでから国政に出る「政治の王道」を歩め。さもなければ、結局、なりふり構わない小沢幹事長に議会での数合わせと民主党票の上積みに利用されるだけ。当選したところで、これまでもそうであったように、日本のスポーツ振興などと言うのが関の山だろう。議員になってから勉強する?そんな国会議員は要らない。むしろまともな候補者の機会を奪うことを考えてほしい。 
 第二に、彼女は北京オリンピックの代表を選ぶ選考会で敗れながら、「金メダルの可能性が高い」という連盟の不公正な判断で代表に選ばれた。そして、オリンピックでは準決勝で負けた。彼女がいつまでも金メダルに固執する間に、他の人材が道を阻まれることに気付くべきだ
 谷さん、もう充分日本柔道に貢献したではないか。

◇ 社民党代表の反政府活動
 福島代表が普天間基地の辺野古移転について、閣議決定に署名しないことを正式に表明した。閣僚の一員でありながら沖縄を訪問、県民に協力して政府に反対するというのだから、代表は連立離脱の腹を決めたのだろう。彼女の、言わば、独走に対して党内でも意見が分かれているという。
 福島大臣が辞任を拒否し、民主党に内閣を追われるという形になれば、社民党が持つ300万票を固められるという読みもあるだろうが、連立を離脱すれば民主党から選挙区候補が攻勢をかけられる。社民党には一歩退いて閣外協力という選択はなかったのだろうか。もともと両党の争点は、始めから分かっていたことであるが、沖縄基地問題だけなのだから。
 他方、民主党は基地移転の取り扱いで日米合意文書には辺野古の名前を明記し、三党合意の閣議決定には名前を出さない、しかも前例もない閣僚署名なしの首相発言にするという。論理に外れるどころか、閣議の威信も節操もない。
 結局、鳩山首相が福島大臣を罷免した。かろうじて日米合意と閣議決定の内容が異なるという二重帳簿を止めて閣議の威信と国際信義を守った。
 ところで、福島代表は消費者・少子化担当大臣として化粧ののりが悪い日もあるほど苦労を強いられた。女性議員の中で傑出した人材であることに変わりがない。もっとも代表を大臣に任命した鳩山首相の責任ではある。

◇ ニキタ小沢党第一書記
 ニキタと言っても若い世代にはぴんとこないだろう。ニキタとは1950年代の旧ソ連の最高権力者であったニキタ・フルシチョフのことだ。フルシチョフは共産党第一書記、その下に首相が置かれていた。後に彼は首相を兼務し、独裁者として君臨した。
 そう、小沢幹事長は事実上の党第一書記なのだ。社民党対策でも何でもすべからく鳩山首相は小沢第一書記の選挙戦略に縛られていると言えよう。小沢短期選挙戦略が中長期の政治より優先されているのでは、選挙の功罪の「罪」が大きい。民主主義の根幹であるべき選挙の重みが揺すられている。
 諸君はソ連には選挙がなかったが、日本には選挙があるから独裁者が出ることはない、と反論するかもしれない。しかし、第一次世界大戦後に成立したドイツのワイマール共和国(高校でこう習ったが、現在はヴアイマル共和国と呼ばれる)は理想的な憲法に基づく民主主義国であったが、政治の混乱からナチ党のヒットラーが台頭する結果を招いた。ヒットラーは軍人ではなく、憲法の下で選挙によって堂々と首相に選ばれた。
 小沢ガールズよ、小沢ガールズ候補よ、うまく今回の選挙で当選したところで多くが次の選挙では落とされる。大衆はいつまでもバカじゃない。結局、長い人生のキャリアが壊される。それでよいのか?

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2010年5月17日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』5月創刊号、2010

    大阪は地元メディアの空白地域 
                  経営評論家・岡本 博志
 

 95年にアメリカから帰国、茨木に住み始めて間もなく、大阪が地元メディアの空白地域であることに気付きました。それまでアメリカで17年余り地方都市に住んで慣れ親しんできたような地元メディアが茨木にも大阪にもないのです。何しろ人口2万人の小都市には地元のテレビ局、ラジオ局、それに100年以上の歴史がある地元新聞のメディア三器があったことに比べて、人口27万人の茨木には三器が一つもないという違いに驚きました。

 町の事情を知るよすがと言えば、市役所の広報冊子と北摂地方のリビング情報紙しかありません。もし地元新聞があれば、地元の商店やビジネスの情報や広告に役立ち、膠着した市政も変わります。そこで同志とともに事業計画をつくり、電力・ガス会社の赤字を出さない公益事業として支援を求めましたが、残念ながら共感を得られませんでした。

 本題に入ります。

 人口800万人の大阪府、260万人の大阪市においても、全国では珍しいことですが、三器のうちラジオ局しかありません。
 なぜなのか?この疑問が一つの動機になって大阪研究を始め、97年に私の著書として4冊目になる『大阪がかわる 地方がかわる』を書きました。(注記)
 大阪には地元メディアがない?その実態を説明しましょう。

 ≪新聞≫
 

 日経を含めて全国紙5紙があるが、大阪版の紙面は限られていて大阪に関する情報は少ない。月刊誌のような評論に対する反論や意見を掲載するスペースはない。さらに、各紙間で厳しい販売競争があり、大阪にとって本当に必要な問題を正面から取り上げることは、購読者に受けないので自ずと限界がある。

 唯一の地元紙として大阪市を中心に販売されている『大阪日日新聞』があるが、発行部数か1万部足らずであり、影響力が小さい。違いは『神戸新聞』、『京都新聞』、『奈良新聞』と比較すればよく分かる。
 『大阪日日新聞』には組織があり、記者も居る。大阪には東京の月刊誌にも出せる人材も少なくない。ゼロからスタートするより、この新聞を発展させられない?経営の問題というより、大阪人の支持が問題だろう。当時、「しょせん大阪は民度が低いのだ」、「大阪は全国紙とスポーツ紙が支配しているから地元新聞が育つ余地はない」と支援を求めた会社から言われたが、本当にそうなのか?
 他の県民ができることを、なぜ大阪人はできないのか?

 ≪テレビ≫

 新聞と同じく、大阪のテレビ各局もNHKも、地元番組を持っている。それでも実態では東京局の支配下にある。
 地元番組の一つ、午後のバラエティ番組では、漫才や落語のタレントが民意を代表しているかのようにふるまっている。私はスポーツクラブのサウナ室に置かれたテレビでこれらの番組を観せられている。いつも、ええ加減にせんか、と思う。名実ともに地元テレビである京都テレビやサンテレビ(神戸)は全国番組も大阪民放の番組も放映していない。アメリカの地元テレビとそっくりで、自主独立のテレビ局だ。
 「若者塾#17」で書いたように、民放テレビ局の再編を待つしかないか。その時には、新大阪テレビ(現在の大阪テレビは日経系)を地元資本で設立する日が来るかもしれない。
 
  ≪ラジオ≫

 大阪のラジオにはまぎれもなく地元局が多い。大阪市や周辺都市にはいくつもFMのラジオ局がある。ここでは二つを紹介しよう。
 「大阪ラジオ」と「FMCOCOLO}は系列とは無関係の独立ラジオ局だ。
 「FMCOCOLO」76.5MHzは、主に関西在住の外国人に地元情報を提供するために、大阪経済界が出資して設立されたラジオ局。日本語も使われるが、英語のほかに中国語などの外国語が使われている。音楽番組と地元情報をふんだんに聴ける。ここで話される英語国人以外の外国人による英語がわかりやすい。若者諸君、テレビを観ているより、このラジオを聴いた方がためになるよ。

 ≪月刊誌≫

 大阪には言論月刊誌がない。『大阪人』という月刊誌があるが、文化・観光情報誌だ。東京の有力月刊誌が相次いで廃刊に追い込まれる時節、活字離れの時代に大阪に言論月刊誌を期待することは無理というもの。そこで、私がネット月刊誌『言論大阪』をここに立ち上げることにした。ささやかなチャレンジだ。> また。絶望的なことを始めよった、と友達から言われそうだ。全国の読者には、大阪の問題は全国どこにもある問題の縮図であることがわかるだろう。自分の地域を見つめなおしてほしい。

 (注記)『大阪がかわる 地方がかわるーー国際地方人の大阪逆移住記』、三一書房刊、1997。刊行後13年、その間に予測や提唱通りに実現したことも、まだ変わらないこともある。 当初、梅田の紀伊国屋書店のショウウインドウに展示される、月刊誌の書評に取り上げられる、朝日新聞のインタビュー記事が大きく出る、など幸運に恵まれた。しかし、間もなく出版社の労使争議がこじれ、7年も倉庫をロックアウトされて本の出荷を止められた。今も悔しい。現在、出版社に在庫があるが、インターネット通販では定価の半値くらいで売られていることがある。

    

 

 

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2010年5月8日土曜日

#32 鳩山首相は居座るしぶとさを持てるか

 「若者塾」の読者が増えないことに意欲をそがれています。読者は、北海道から沖縄まで、海外ではアメリカ、台湾、中国まで広がりがありますが、残念なことにほとんどが知友人であり、しかも50代以上の世代です。
 ただ、閲覧数を増やすだけなら、知友人読者を会員グループ化して新作が出るたびにメールで配信すればよいのですが、それでは不特定の若者読者が増えることを把握できないし、知友人に対して押しつけがましい。
 若者に私のメッセージが届かない、これは10年来の課題です。
 張ってある今月のカレンダーに「忍耐とは希望を持つ技術である」という標語が書かれています。苦労している諸君にもこの標語を贈ります。もちろん私自身もこれを地でいっています。

◇ いじわる仮想対談
 首相「リーマンショックが鎮まったら、今度はギリシャショックでまた景気が影響を受ける。景気、基地、金の3Kは荷が重いな。ボクは経済を集中して勉強していないから、自信がないよ」
 夫人「誰だってそうよ。首相が全分野で専門家になれないわよ。ねえ、もういつでも首相を辞めてもいいんじゃない。自家用ジャンボであちこち外国旅行をやらせてもらったし、いろんなパーティも楽しかったわ」
 首相「うん、固執する思いはありません。しかし、自民党が麻生首相で選挙に臨んだように、7月の参院選挙まで降りないつもりです。ボクが降りない限り、誰も降ろせない法制度になっていますから。今、菅さんに首相をやらせれば、彼が貧乏くじを引くことになります」
 夫人「選挙で勝てなければ、菅さんが首相になれるかどうか。党がばらばらになるのでしょう?」
 首相「そうかも。いや、第一党の地位まで失うことはないでしょう。何しろ彼は結党以来苦労を共にしてきた同志だから、首相になってほしい。ボクは流れに乗って首相になりましたが、本当は菅さんの方が首相の資質があると思います」
 夫人「あなたは自分の思いに振り回されたのよ。首相として大衆が嫌うことはやりたくなかった。そうでしょう?」
 首相「そうかも。基地問題にしても、国家間の合意だから、自民党の決めたことを引き継いでいればよかった。ただ、自民党はアメリカの要求を受け過ぎているという思いと、前政権の政策は何もかもだめだという思いに支配されたんですね」
 夫人「もう無理しないで、普通の生活に戻りたいわ」
 
◇ 自民党よ、新党よ
 どれもこれも民主党政権を倒すと言っている。首相が衆議院を解散しない限り倒せるわけがないではないか。それよりも消費税値上げを推進して、国家の財政破綻を避けるために国民に訴えよ。
 増税すれば景気が悪くなり、税収が減ってさらに財政を悪くするという考えは本末転倒だ。先ず財政再建があって、その下で景気を支える方策を出すことにこそ英知が求められる。今の政府は手術に同意しない患者に薬で延命させているようなもの。国債増発に英知は要らない。
 ギリシャを見よ。かつてのアルゼンチンを見よ。両国と比べ、日本は資本・貿易収支が黒字だから、毎月国庫への収入がある、つまり国の金庫が底をつかないという違いがある。国民貯蓄も高い。しかし、国の今の財政を家計に喩えれば、毎年収入と同額の借金によって消費し、すでに累積借金は年収の20倍になっている。しかも債権放棄、つまり借金の棒引きも許されない。ギリシャは公務員の給料引き下げに対して大規模なデモが行われ、さらに経済に打撃を与えている。国家の、特に危機においては、国家の政策が大衆に流されては危機を脱出できない。
 財政破綻した夕張の市民が困難に耐えてきた。今、政府が夕張の市民に求めたことを、国民に求めないなら、それは道理を外れることだ。
 
◇ 政局の予想、諸君と考えが違うか?
 6月に鳩山首相が辞任し、菅副総理が首相に昇格するとするという予測が高まっている。当然、7月の参院選挙に備える選挙対策だ。
 そうなら、政治の空白を避けるために、菅財務大臣と、鳩山首相とともに責任を取る平野官房長官の後任を補充するにとどまるだろう。
 私の予測は、希望でもあるが、9月の民主党大会まで鳩山首相を名誉首相のように棚上げして、菅副総理が主張する財政再建のために閣僚全員が一日でも早く行動を起こすことだ。先進国では最悪の財政危機にある日本では、財政再建は国家再建の原点ではないか。民主党が世論を超越できるか?
 どっちみち参院選挙で民主党が議席を減らすことは避けられない。しかし、第一党の地位を失うことはあるまい。そうすると、党大会で選ばれた代表が次の首相になる。それまでに幹事長の任命罷免権限を持つ鳩山党代表が小沢幹事長の首を切ったところで、小沢議員が代表選挙に立候補することを誰も止められない。いざ代表選では党内最大グループを率いる彼が勝つ公算は大きい。そして、衆議院で圧倒的多数を支配する民主党が彼を首相に選ばざるを得ない。参議院で他の首相候補が選ばれても、衆議院における選出が参議院に対して優先される制度では、誰も小沢首相になることを止められない。たとえ世論の大勢が反小沢になろうとも、支持率がいかに低かろうと、彼はもともと世論も支持率も信用せず、問題にしていない。彼は言うだろう。「法に照らして首相になることに何らやましいことはない」と。
 諸君、これは他人事ではない。次世代の日本がここにかかっているのだ。

 私が恐れることは、鳩山首相の進退の決断いかんによって、政権の混乱を招くことで、「ああ、やっぱり民主派政党というのはダメなのか」と、大衆を失望させることだ。いびつな環境で育ったがゆえに危機下の政治が分からない鳩山首相と、政策がご都合でころころ変わり選挙のことにしか頭が働かない小沢幹事長のツートップを退けることにより、新しい民主党に変わってもらわねばならない。
  

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2010年4月29日木曜日

#31 スポーツ庁より若者の健康強化

 バンクーバーで開催された冬季オリンピックも過去のことになり、もうメディアで報道されることがなくなりました。私は本稿では予見と騒ぎが収まってからフォローを書くことを心がけていますが、ここで私の出番です。今月はこれで2回しか書けなかったせいか、自分でもあきれるほど長くなりました。
 皆さんからの反感を買うかもしれませんが、時流に逆らうのでもなく、私の臍が曲がっているわけではありません。
 政府にはオリンピックのための予算増額より、若者世代の健康志向と体力強化にもっと金を使ってほしいというのが私の主張です。

◇ スポーツ庁は要らない
 自民党政権時代から提唱されていたスポーツ庁の新設が取り上げられるようになってきた。中にはスポーツ省にすべきだという意見もある。これは文部科学省と厚生労働省からスポーツ関係部署を独立させて、主たる目的は日本の競技スポーツを推進しようというもの。これには超党派国会議員、競技スポーツ団体、プロスポーツ選手、オリンピックのメダリストを含む広範な支持がある。メディアも支持している。
 多分、先の冬季オリンピックで、金メダル数でもメダル数でも韓国に大きく差をつけられたことに起因しているのだろう。オリンピックでの不振は国の威信に関わるという意識が背景にある。
 私は国家がオリンピックのメダル獲得を国策にすることは反対だ。本来、競技スポーツの基本はPeople's Business(敢えて英語で)であるべきだ。今さら日本がスポーツを国威発揚の手段にするなんぞ時代遅れではないか。
 スポーツ庁では競技スポーツに重きが置かれ、文部科学省の学校体育と厚生労働省の健康目的のスポーツが軽視される恐れがある。これは諸君に、そして諸君の子供たちに好ましくないことだ。
 国力は次世代の健康を強化することにかかっている。

◇ どの国にも強い時と弱い時がある
 世界水準の選手たちと戦うためには特に秀でた競技能力が求められる。こういう世界水準の日本人選手が全種目にわたって、しかも常に出てくることはあり得ない。言いかえれば、オリンピックで毎度国民が満足する成績を残せるはずがない。強い時も弱い時もある。
 どの種目でも優れた選手は遅くとも高校生までに分かるものだ。私は日本には逸材を漏れなく発掘できる充分な体制ができていると思う。世に出た優秀選手が育つように支援するのは、個人支援者、地域、会社など民間の力であるべきで、どこやらの国のように国家が前面に出ることではない。報奨金に対しても他国より少ないという意見があるが、多いにしろ少ないにしろ、選手たちも「スポーツでは長い人生を食っていけない」ことを認識してほしい。

◇ オリンピックに対する巷の意見
 「支援の金が足りない、足りないと言うんだから、シーズン毎に設備をつくらなければならないスケルトンとかリュージュのようなそり競技は日本はやめた方がよい。62人中60位なんて種目に代表は要らん」
 「ほかにもあるよ。はじめから上位に入れる見込みがない種目。それでもテレビは入賞を期待させる話をするのは軽薄だよ」
 「韓国がメダル取りに集中強化するショートトラックも面白くないな。スピードスケートの魅力がない。オレはフライ級スケートと呼んでいる」
 「そう、昔、長野県知事が水澄ましみたいと言ってひんしゅくを買った。あれは大柄の選手には不利だから参加国が少ない」
 「韓国や中国は投資を選別しとる。後ではメディアは合計何個としか出さないから、国威発揚には効果的やな」(岡本)
 「カーリングも10ヶ国かそこらしか参加していないから、運が良けりゃメダルを取れる」
 「ありゃスポーツじゃなくて遊びだな」
 「冬のオリンピックには遊び種目が多いな。モーグルとかハーフパイプとか」
 「そんなこと言えば、オリンピックの種目はもともと遊びやろ。夏のオリンピックでボウリングやダートが採用されてもおかしくない」(岡本)
 「バイアスロンは戦争ごっこだな。兵士が戦場をスキーで駆けてライフルを撃つのだ」
 「だいたい、オレは複合種目が嫌いだ。一つの種目では二流選手だろう?」
 「オレは人が採点する種目は好かんね」
   ---諸君たちにはもっと意見があるだろうーーー

◇ 下げズボンの国母選手
 選手団の中でただ一人、国母が征服の上着をだらしなくはだけ、下げズボンで飛行機に乗り込もうとして非難を浴びた。テレビの番組でも非難されたが、はねあがりリベラルとおぼしき評論家が総非難を
「全体主義みたいだ」と言っていた。どこが全体主義なのか?
 私は若者世代は彼を擁護するだろうと思っていたが、スポーツクラブの若いスタッフに訊いてみると、
「みんな、あれはない」という意見だそうだ。
 論理的に言うと、JOCから支給された制服は、もとはと言えば、税金か企業の寄付が資金なのだ。日本代表選手として参加するのだから、きちんと着るべきだった。海外に派遣される自衛隊の救援部隊と変わらない。その中に下げズボンの隊員がいたら、当然、上官から注意される。 
 他方、情緒的に言うと、強化費の支援も受けず、自費でヨーロッパを転戦してきた彼には、オレは他の選手とは違うという自負の気持ちがあったかもしれない。しかし、国母選手よ、個性や実力はだらけた服装で表現するものではない。それにしても、管理責任がある役員は注意もできなかったのか?
非難されるのは役員の方だ。話は飛ぶが、地方自治体でも、管理者が管理の責任を果たしていない事例が目立つ。組織が乱れるのは当然。

◇ 腰が引けたIOCの対応
 いつものことながら、国際競技大会において国名表示で台湾は不当に扱われている。諸君は気がついていないだろう。
 人口が700万人で明らかに中国の一部であるホンコンが"Hong Kong"で、2300万人でまだ中国に帰属していない台湾が"Chinese Taipei"というのはひどい。せめて"Chinese Taiwan"とすべきだろう。
 IOCも加盟国も「さわらぬ神にたたりなし」で腰が引けている。いつまで放っておくのか?

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2010年4月5日月曜日

#30 若者は日本の安全保障をどう考えるか

 民主党が普天間基地移転の方針を決めたようです。これからアメリカと沖縄県民に対する交渉が始まるので、まだ結論の前の段階。
 アメリカにはごたごたすれば普天間基地居残りという選択で交渉力があります。対して、政府には沖縄県民の反対と閣内の社民党の反対を交渉のてこに使えるとは言え、立場は弱い。国家の安全保障から見て県内移転に決めることになっても、滑走路は一本にすることと、一部がグアムへ移転する海兵隊の住宅と厚生施設などの現物支給とする、つまりアメリカが日本の金で海外の建設会社に発注することをやめさせる。これで国内の需要を増やし、雇用機会をつくることができる
 自民党は二本の滑走路を建設し、一戸平均6千万円もの高級住宅を建てさせるなどアメリカの要求を受け入れすぎたと思います。
 今回は久しぶりに得意の(?)政治について書きます。

◇ 対立する平和派と現実派の考え
 日本の安全保障に関する考え方を論理に従って整理してみよう。そんなことは分かっている、と言われるかもしれないが、実は論理と感情が混乱していることが多い。
 先ず、平和派は「もう戦争なんて起こらない→だから「日本にある米軍基地は要らない」と言う。軍隊が戦争抑止力になっていることを信じない。
 第二に、「東アジアにおける紛争危機を認めない」→だから米軍は沖縄から撤退すべき。
 第三に、「中国の軍事的拡大は脅威ではない」→だから沖縄はそれほど重要ではない。
 これに対し、現実派はすべて反対の考えに立っている。私は現実派であるが、次世代の諸君はどう考えるだろうか?どちらの考えも検証できない、つまり推論に基づくのだから、意見が分かれることは当然だ。

◇ アチソンラインの復活
 諸君はアチソンラインという言葉を聞いたことがないだろう。なに、若者だけでなく、今では誰もほとんど知らないから、諸君の教養水準が低いことにはならない。
 アチソンラインというのは、終戦直後にアメリカのアチソン国務長官が提唱した新たな東アジアにおける安全保障のために、カムチャッカから日本海、東シナ海、台湾海峡、南シナ海に至る海域を防衛線とした政策だ。それが今、第一防衛線と呼ばれて復活している。
 昨年、住んでいたアメノカの町で、旧知の経営者数人と会食した時、アチソンラインのことを質問したところ全員が知っていた。訊いてみると、高校の現代史で教えられたという。この時、私が高校時代の世界史について思い出した。当時は世界史でも日本史でも、古代から始めて、近代か現代に来た頃には関心が萎えてしまった。それに現代史は大学入試の問題に出ることはなかったので、勉強に手抜きした。最近では、日本においても日本史と世界史を合わせた現代史が科目に加えられていると聞く。
 ほら、考えてみてほしい。沖縄から米軍が引き揚げたらどうなるか?日本、中国、台湾の3国が領有権を主張している尖閣諸島が中国に武力占拠されれば、台湾と沖縄の間の海域が中国領海のように中国海軍が自由に行き来することになるだろう。韓国が竹島を、ロシアが北方4島を実効支配している現実を日本が変えることは難しい。国際世論は頼りにならないし、実効支配には抗するすべがないからだ

  【読者情報交流】
 読者からの意見や、私が皆さんに知らせたい情報をまとめてこの項を新設しました。

◇ 沖縄の基地と漬物#29について
 沖縄にある米軍基地について、全国にある米軍基地・施設が沖縄に占める割合を、数で言うと43%で、面積で言うと74%であると、沖縄の友達から指摘があった。
 また、沖縄でも本土からの地元帰りや移住者の間では、キムチ、べったら漬け、野沢菜などの漬物がよく食べられているが、沖縄野菜の漬物はまだないとのこと。そして漬物を置いているレストランもある。私の考えを沖縄経済に照らして言うと、本土の漬物は輸入、沖縄野菜の漬物を本土からの観光客にみやげとして買わせることは輸出になる。
◇ 新聞・テレビ業界の経営危機、#17について
 『週刊東洋経済』2月15日号と『週刊現代』4月10日号(まだ読んでいない)が特集を組んでいる。 

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2010年3月13日土曜日

#29 テレビの偏向報道に注意してほしい

 前稿では沖縄について書きながら普天間基地移転には触れませんでした。素人のヘボ八卦見ががやがや騒いでいる話題に割り込みたくないというためらいもありますが、地域経済の振興は専門だから経済の問題に絞ったのです。基地移転について、私は当初からキャンプシュワブの沖合を埋め立てて2本1800メートルの滑走路を建設することに反対でした。一本は1500メートル、他は短い滑走路と駐機場でよいではないか。
 ヘボ八卦見の見立ては、その後国民新党案として出てきた内容と同じでした。もともと合意されていた沖合埋め立てを、鳩山首相が白紙に戻して眠っていた子を起こしたようなものでしたが、沖合埋め立てを最小にし、陸上滑走路1本にする案についてアメリカから譲歩を引き出す成果を期待しています。


前稿の沖縄に関すること
 友達から意見があった。残念ながら、彼らは私が読んでもらいたい若者ではなく、オール同世代の年寄り。
 
 「漬物の話ね、あれは面白かった。ツアー客はほとんどが年寄りだろう?レストランが『漬物あります』なんて張り紙したらいい。ほら、こっちでよくあるように、レジで持ち帰り用に漬物パックを出せばいい」
 「そうそう、『沖縄野菜の漬物』は受けるかもしれないよ。空港の売店でも売れるな」
 「うん、沖縄にはどの離島にも空港があるよ」
 「オレは沖縄みやげの中には九州でつくられているという話を聞いたよ。設備投資の問題なんだろうが、沖縄のどこか一社に集中して沖縄ですべてつくれば、雇用を増やせるのに」
 「ツアー料金も値上げすればいい。その分の金が沖縄に落ちるだろう。オレもツアーバスで沖縄を回ったが、客の8割はオバサンとバアサンだった。男は夫婦組だけ」
 「オレの時も同じだったよ。みんな年金減額もなく、デフレの物価安をエンジョイしているわな。ちょっとは若者に金を回すべきだ」(岡本)

基地移転でメディアが偏向報道
 名護市長選では基地受け入れに反対する市長になった。しかし、半分弱の市民は基地容認の候補を支持したことをメディアは伝えないで見落としている。テレビも反対派だけからコメントを取っている。映像は影響力があるだけに週刊誌より危ない。事実の映像を組み合わせて虚構をつくれるからだ。
 アメリカの例を一つ想い出した。ある政策について、特に外交政策について反対者の群れがホワイトハウスの前で叫んでいた。こういう時にテレビは群れをクローズアップで撮る。視聴者はいかにも大群だというイメージを受け取らされる。ところが、遠景で撮るなら、多くて20人くらいのことがある。
 もう一つ。25年も前になるか、私の国際地方化論の本が刊行されて間もなく、民放テレビの国際番組のために取材チームが私を町に訪ねてきた。町の若者に「日本の首府はどこか?」と何人かに質問した。東京と答えた若者が数人はいたが、横浜、神戸、北京という答えがあった。これを東京以下一人ずつ出すという編集をした。これでは正解率が1/4になってしまって実態に合わない。なぜか?テレビ番組としては、田舎町のアメリカ人が無知である内容に仕立てる方が面白いからだ。
 もとに戻ると、基地報道においても、容認派のコメントを出すことは番組として面白くないからだろう。
 諸君、テレビの偏向報道には警戒した方がいいよ。

岡本流テレビのタレント5分類
 NHKから民放までテレビのワイドショウとかバラエティショウと呼ばれる番組に出ているタレントを五つに分類してみよう。

ギャルタレ――若い女のタレントで、特に専門分野なし。視聴率稼ぎか、雰囲気をやわらげる効果を狙っているのか。
ゲイタレ――ゲイのことではなく、芸人タレント。落語、漫才、俳優など芸の本職よりテレビで生計を立てている連中。
ガイタレ――氏素性がまちまちの外国人タレント。中には日本人より正統の日本語を話すタレントがいて感心することがある。
シキタレ――評論家、ジャーナリスト、学者など識者と言われるタレント。専門分野以外に何でも口出しして節操がない。中にはきちっと矜持を持っているタレントもいる。(おっと、私もこのブログでは何でも書くから、他人のことを言うのに気が引ける)
ノータレ――特に芸がないノータレントで、タレントの本命。衛星テレビ、専門別テレビ局化、インタネットなどのライバルに押されて、今のキーテレビ局ははいずれ減少するから(#17に詳述)、若者がノータレを目指さすことは危ない。

 さてさて、テレビでこんなにもギャルタレ、ゲイタレ、ガイタレを出演させて厚遇する国があるのだろうか。特にギャルタレがひどい。アメリカで好況時代の70年代、社会全体が緩んでいた時、「居ない方が売れる店員」と言われた店員が多かった。テレビにも「居ない方が良いギャルタレ」が出演する番組が多い。彼女たちの多くが発言することは、「すごーい」、「おいしーい」、「キャー」だけ。
みんなこんなこと感じないの?

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2010年3月2日火曜日

#28 沖縄の若者へ、意識改革「沖縄は貧乏県ではない」

 1月末に2泊3日のツアーパックを利用して沖縄の中部と南部を旅してきました。 2回目ですが、初めての訪問みたいなものです。というのは、アメリカ企業に転職するため渡米する直前の78年に、当時那覇近郊で水産業をやっていた高校の同級生が、台湾の事情や地理を知る私に台湾視察の案内を請われて1泊したことがあるだけですから。夕方に那覇空港に着き、彼の自宅で泊まって翌朝には台北に飛びました。
 ちょっと見の今回、詳しく知らない私が沖縄について述べることには、誤認も見当はずれもあるでしょうが、敢えて沖縄の若者たちに供します。知識もない、その代わり既成概念にとらわれない「素人の発想は聴いてみる」というのは、新技術を開発するにも貴重なことなのです。
 「そんなアホなこと」、「県外者に何が分かるか」と諸君を刺激してみましょう。
 また、長い文になります。発想が逃げてしまうかもしれないので、一挙に書くことにします。我慢して読んでほしい。我田引水になるが、我慢は人生の宝です。


メディアの沖縄報道を鵜呑みにするな
 全国統計では、例えば、県民所得や平均給料て沖縄県が最下位になっている。常用労働者の平均月給は全国平均35万円に対し、沖縄県25万円だ。一人当たり年間所得でも210万円で最下位だ。だから貧乏県だと言う。
確かに、本土人はそう思っているし、沖縄県知事も県選出の国会議員もそう発言してきた。諸君もそう信じさせられているだろう。本当に貧乏県なのか?
 一つ考えてみよう。福井県や富山県は雪国のハンデがありながら、一人当たり県民所得では10位と18位であり、そして全国の生活の豊かさランキングではトップ3に入る。
 この両県から沖縄の経済振興のヒントを得られる。東京との格差が何倍であろうと、沖縄県民には関係がない。福井と富山の一人当たり年間平均所得が290~300万円であるのに対し、沖縄は210万円で大した違いがない。努力目標として到達可能な範囲だ。
 アメリカでも州別所得には大きな差があるが、所得格差なんてほとんど気にしない。生活の豊かこそが大事なのだ。
 諸君、台湾に行ってみよう。地方でも豊かな生活をしていることが分かる。それでも大学新卒者の初任給は10万円そこそこだ。

基地は沖縄経済の足を引っ張っているか?
 全国にある米軍基地の40%が沖縄にあり、沖縄本島の10%を米軍基地が占めているという。本当に基地が経済発展の障害なのか? いつでも何事でもものの見方をちょっと変えてみるといい。
 沖縄本島には500メートル以上の高い山がない。中北部の10ヶ所に点在しているだけで、南部でも丘陵は自然林のままで保護されている。確かに、米軍基地が占める10%は小さくないが、考えてみると、本州には県土の30%を超える山岳地が占める県はいくつもある。米軍基地も山岳地も経済開発をできない点で変わりがない。私から見れば、沖縄には農地に開発できる土地がいくらでも残されている。
 世界の潮流から言えば、自然は保護されるべきだ、ということになるが、食糧危機がいつでも起きる可能性がある今、沖縄の農業振興のために「秩序ある自然保護」という観点から自然林の丘陵地を農地として開発することに沖縄人が束縛されることはないだろう。
 ちょっと見では、さとうきびや穀物農業では台湾に比べて遅れている。農業はこれから事業として面白い。農業は農業にとどまらず、加工工場や販売会社が増える波及効果があり、新たに雇用をつくることができる。

◇ 沖縄の農業と経済に新芽
 野菜チップス。規格外れで市場に出せない、つまり捨てられる野菜を乾燥し、細切れにしたものを食べる。台湾で普及している食材で、これを沖縄の農産品販売会社が事業化した。琉球新聞が連載「壁破る農水産業」(2月2日)で報道。
 長命草。与那国島で栽培されていた長命草の畑に海水をまくと、草の肉厚が増し、生育が早いことが分かった。栄養価が高い素材として本土の青汁メーカーに販売、さらに全国化を推進する。秋から冬にかけて5回収穫できて生産効率が良い。これは最近テレビで観た。
 県内にエタノール拠点。ブラジル国営エネルギー会社ペトロプラスが、中城湾の特別自由貿易地区にエタノール貯蔵施設やアジアへの原油輸出拠点を建設する。沖縄タイムス(2月1日)が報道。
諸君は地元新聞を読んでいるか?地元新聞は諸君が支え、諸君に刺激を与えるものだ。

沖縄は公共事業経済なのか?
 沖縄は公共事業漬けの経済だと言われる。本当にそうなのか?
 私のような観光客が訪れると、沖縄海洋博と国体によって国の社会資本への投資による施設の充実を印象付けられる。民間による観光投資も素晴らしい。今でも高速道路やスポーツ施設の建設が目立つ。「沖縄は公共事業依存の経済」とよく言われるが、この見方を信じてしまう。
 ところが、統計を調べてみると、他県に比べて建設業就労者数では、地元経済が弱いと言われる鳥取県の9.8%、佐賀県の9.4%に対し、沖縄県は11.0%だ。確かに高いが突出しているわけではない。仮に、沖縄経済が公共事業依存であるとしても、いつまでも公共事業に頼れるわけではない。
 私が17年半住んだアメリカの人口2万人の町は、農村に囲まれている中に中小企業の集積と、小さいながら古い名門の大学(地元学生は10%しかいない)があり、農工教一体の経済だった。全国統計では所得が低くても豊かな生活をおくることができ、去り難い町だった。この町は観光業もなし、公共事業もない経済だ。沖縄でもこんな町をつくっていけるはずだ。

沖縄人はスローか?
 「沖縄人はスローで、仕事にはどこかぼおうっとしている」という声を耳にしてきた。滞米時に顧客会社のオーストラリア出身技術者が、「オーストラリア人はスロー」と言っていたことを思い出す。私は、例えば、「沖縄人」や「オーストラリア人」のように一括して括弧にくくることは好かない。
 沖縄の若者諸君よ、スローが本当かどうかはどうでもよいのだ。ほら、忙しそうに働いていても、仕事が効率的に見えても、表面とは裏腹に無駄が多いことがあるものだ。競争心を失わない範囲でマイペースの仕事をするのも心の豊かさである面を見落とさないでほしい。

第一級の観光資源
 沖縄は全国的に見て大観光県だ。近場のアジアにライバル観光地があるせいか、ツアーパックが余りに安値だから、ホテルなど苦しんでいるだろう。本土旅行会社にせめて10%くらいの値上げをしてもらいたい。
 次にはバスでめまぐるしく名所史跡を回る旅をやめて、リゾートで一週間くらい滞在したいと思う。
 締めくくりとして、今回の旅で気づいたことを二つ挙げてみたい。
 一つ目は、名護湾で海中の魚を見られるグラスボートに乗った時、ボートが移動中にはエンジンの音でガイドの説明が聞こえなかった。なぜハンドマイクを使わないのか?
 二つ目は、漬物を食べたくなって観光客も入るレストランで昼食を取った時、定食に加えて漬物を注文した。すると、店員は「漬物はありません。沖縄では年中野菜があるので、漬物を食べる習慣がないのです」と言われた。客には沖縄人のほかに本土からの観光客もいるのだから、観光客のニーズに応えることは観光業の基本の一つだろう。
 たとえスローと言われても、スローと感性が鈍いこととは違う。諸君には感性を磨いてほしい。

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2010年2月26日金曜日

#27 海外援助より自国民に予算を使え

「海外援助より自国民に予算を使え」というのは、私がアメリカ生活中の80年代大不況時にプアホワイトと呼ばれる白人や貧しい黒人のグループが訴えました。おそらく今の不況時でも言われているでしょう。彼らは外国人に対しても、仕事を奪うと言って排斥の動きをします。新聞に意見を書き、デモをすることもあります。
 これに比べると、内心はとにかくとして、日本では外国人労働者を排斥する表立った世論はありません。日本人はおとなしい気質だと言えますか。排斥ではないが、政府が日系ブラジル人をビザ発給時の資格に基づいて、つまり饅頭のあんこ(論理)に基づいて彼らの帰国を進めたことがあるくらいです。日本に居ても求職機会はどうしようもないのだから、ほかに選択がありません。政府は帰国の飛行機運賃を支給して義務ではなく、饅頭の皮(非論理)によって人道支援を行いました。
 さて、日本政府の海外援助はどうなのでしょうか?どうもバラマキ支援になっている面があると感じています。


◇ 前稿「ハイチ株式会社」について

 災害復興のその先について、友達が賛否両論の意見を述べた。

「国連による統治なんてできるわけがない」
「いや、コソボだったか、国連の暫定統治の実例があるよ」
「思い切って軍隊を解体しないと、またクーデターが起きて内戦になるかも」
「だいたい、あんな国に軍隊が必要なのか?どこの国も攻めてこないだろう」
「そうだよ、警察をまともにするだけでいい。中米の優等生コスタリカには軍隊が
ないのじゃないか」
「できるできないの話じゃない。何も変えなければ何も変わらない。ああいう途上国が自立するためには農業、漁業、観光が基本だろう?南太平洋の小国には伝統的な生活を守りながら自立している国がある。隣国のドミニカもその悪影響を観光に受けているだろう。ドミニカと一体の経済開発を進めるべきだ。特に、国内が混乱して治安が悪いのでは観光客が来ない」(岡本)
「ハイチについて喩え話をするとだな、ある県が昔の琉球語で周囲の県が日本語というのでは、経済振興もできないわな。工業規格も条例も違えばなおさらだ。こんな対象はアフリカにいくらでもある」

◇「戦争がなくなると地球が滅びる」

 古い話になるが、月刊誌の対談でアフリカについて、 渡部昇一上智大学教授(当時)と日本のロケット開発先駆者の糸川英夫東大教授(故人)が「戦争が無くなれば地球が滅びる」と言って世間から非難を浴びたことがあった。
 あれから30年経った今日でも、アフリカの多くの国が政府は内戦状態で統治能力がなく、民族融和、経済開発、教育振興、医療制度、人口抑制など、どの課題にも進歩が少ない状態は変わらない。前述の発言は良識として受け入れがたいが、両氏の発言は現実であるかもしれない。
 これら生活保護国と言うべき国でありながら、政府関係者は先進国の金持ち並みの生活をしている。日本政府の政治家も上級官僚もこんな生活はしていない。
 もう25年も昔のこと、勤めていたアメリカ企業の仕事でアメリカ政府IDA(国際援助庁)が援助する国際入札を担当した。アフリカでは大国であるE国が設備の入札を実施したのであるが、その援助を受ける側の出先官庁であるニューヨーク事務所を訪ねた。同時テロでなくなった世界貿易センターの高層階にある事務所を見て驚いた。窓から高層ビル街を見渡せるホテルのスイートルーム並みの事務所には、立派な応接セット、責任者の豪勢な机と皮張りの椅子、それに大型テレビがあった。ここに責任者と部下にアメリカ人の秘書が働いていた。
 「立派なオフィスですね」と私が言うと、「アメリカの政府援助や企業からの投資を呼び込むのに必要なのです」と責任者が答えた。日本人の感覚なら、こんなことをしている国には援助したくないと思った。入札では最終選考に2社の中に選ばれたが、なんと最後には2社に入らなかったヨーロッパのメーカーが自国政府による低金利を決め手にして受注をさらった。今でも腹立ちを覚えるので、ここに書いている。地元選出の下院議員を通じて報告し、抗議をしたが、型通りの返信しかなかった。アメリカ政府がお人よしである一例だ。アメリカ企業も日本企業もこういうアフリカの国との商談には苦労しているだろう。
 昨年のこと、日本政府が東京で主催したアフリカ会議があった。会場に金色のロールスロイスを乗り付けたアフリカの国の代表者がいた。超高級ホテルの所有車だろうが、それにしても日本や他の先進国の政府から援助を受ける国の態度はでかいな。

 だらだらと長く書いてしまった。結論として言いたいことは、日本政府はアフリカ諸国に対するばらまき援助を変えてほしいことだ。アフリカ援助については、比較的政府が安定している、内戦がない、資源がない、中国も関心を持たない国に対して自立のためのモデル援助国をつくろう。日本の官民協力で援助ノウハウを注力して世界に見せよう。そして、他の諸国はかつてのヨーロッパ宗主国に援助を任せればよい。
 対GDP比で債務残高がだんとつで世界最悪である日本は、従来のばらまき援助を変えなければならない。政府も変わらなければならない。この時期、海外援助予算を効率的に絞り、若者に職業訓練と組み合わせて生活資金を払う制度を拡大してほしい。

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2010年2月4日木曜日

#26 発想ゲーム、ハイチ株式会社

ハイチ大地震後の国際支援が進んでいます。これから数年の間に倒壊したハコモノは新たに再建されるでしょう。しかし、ハコモノが再建されても、この国の自立は別問題です。政府の統治能力も民心の自立意識も容易には変わらない。大胆に変えなければ元に戻るだけです。
 これまで日本とはあまり関わりがなかったハイチを一つの例として、世界の発展途上国を自立させるための改革について、私の発想を紹介します。


ハイチの国情の実態
 ハイチはカリブ海の島、イスパニョーラ島にあり西三分の一を占める小国、面積は岩手県と新潟県を合わせた広さ。残る東側はドミニカ共和国。周辺の国と国勢を下記の表で比較してみよう。これから分かるように、ハイチはだんとつの最貧国だ。



 表の中でプエルトリコは独立国家ではなく、アメリカの領土で、議決権はないが、アメリカ議会に国会議員を送っている。英語とスペイン語が公用語として使われる。
 さあて、なぜハイチは貧しいのか?諸君に考えてもらいたい。 
 内戦が続いたせいもあるが、それよりもハイチだけが他の国と異なることがある。 それは他の国ではスペイン語が使われるのに、ハイチだけがフランス語国であることだ。さらに言えば、カリブ海諸国と中米諸国がすべてスペイン語圏である中で、ハイチは唯一のフランス語使用国なのだ。これでは貿易や産業振興においては大きな障害になる。言葉の違いがあれば観光客も呼び込めない。隣国のドミニカに比べて農地が荒廃して農業も遅れていると言われる。かつての植民地に対する面倒見が良くないというフランスの植民地であったことも不幸だった。

ハイチと国連途上国再生機構の発想
 長年経営者の内紛と統治能力がない中小企業は経営破綻を招く。自明のことだ。ハイチは経営破綻企業みたいなものだろう。地震災害から国際支援によって復旧したところで、その先には自立する見通しは立たない。破綻した企業の経営再建においては、外部から新しく経営者と経営チームを入れて従来とは違う抜本的改革策によって再建する。
 そこで、ハイチを一定期間に国連に統治を委ねてその経営チームによって再建する制度を導入することで再建する。日本の企業再生支援機構の国連版として、今後途上国支援のモデルケースに使う価値がある。どうにもならない国がいくらでもあるのだから、支援の仕方を変えなければ、単に対症療法として資金援助するたけでは無駄を繰り返すだけだ。
 国民が永続する貧困から抜けてまともな生活を希望するか、または貧乏でも独立自尊を選ぶか、国民投票を実施することで問うことから始めてみる。
新体制によって進めるハイチの抜本的改革として何をするか?


1)スペイン語を公用語に変える。言語改革には、日本語を北京語に変えた台湾、多言語から英語を公用語に変えたシンガポール、ロシア語から自国語に変えたかつてのソ連傘下の諸国の例がある。
2)ドミニカと合併して島と同じ名の「イスパニョーラ国」とし、その下にドミニカ州とハイチ州を置く。二者対立を防ぐためにもう1州を加えて3州にすることがよいか。

中小企業と国の「三ない」
 長年中小企業の経営改革と再建に関わってきた私が、破綻する企業の経営者に共通点があることを知った。それを私は「三ない」と呼ぶ。すなわち、(周囲の変化が)見えない、(改革策を)考えない、(従来のやり方を)変えない、の三つだ。
他方、途上国リーダーについても同じことが言えるだろう。
 さて、諸君たちも「三ない」にとどまっていないか?私の発想ゲームについて暇な時に考えてほしい。

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2010年1月28日木曜日

#25 韓国偏重のNHKの国際感覚はおかしいよ

今月、台湾映画『海角七号』、日米・ボリビア合作映画『パチャママの贈りもの』の2本の映画を観ました。どちらも各地で賞を取ったなかなかの名画です。ミニシアターと呼ばれる映画館で、東京と大阪などで上映しています。
昨年は、『剣岳』、『九降風』(台湾)、『グラントリノ』(アメリカ)、『三峡』(中国)、『ベルサイユの子』(フランス)、それに家内の付き合いで『おくりびと』の5本を観ました。年間5本は私の生涯で最多新記録です。私は大阪で仕事を終えた時に、気が向くと映画を観ます。来月には韓国映画『牛の鈴音』を観るつもりです。
インターネットで映画名や「ミニシアター」で検索すると情報が得られます。

今回は、政治の生臭い話を休止して、一転、にわか映画解説者になります。


にわか映画解説者になる
今月観た2本の映画と昨年観た映画の一部を紹介してみよう。

『海角七号』作曲家・歌手として実力がありながら、15年間台北で頑張った主人公がギターを叩き割って故郷に引き揚げるところから映画が始まる。台湾最南端の町、恒春の町と人々が生き生きと描かれている。ずぼらな郵便配達員の主人公が未配達の郵便を、周囲の人たちが代わって配達する職業意識に感銘する。日本人女性との恋愛もある。ロックやスローバラードの音楽も素晴らしい。
「なぜオレの実力が認められないのだ!」という叫びは諸君の共感を呼ぶだろう。

『パチャママの贈りもの』有名なボリビアのウユニ塩湖の村落に住む先住民父子が塩のブロックを切り出して近隣の村に運ぶ物語。父子は約20頭のリャマの背に塩を乗せて年に一度、3カ月のキャラバンに出かける。家族代々がやってきたことで、塩と穀物を物々交換する。村落間の相互扶助、父から子への伝承、人々の伝統的な生き方を淡々と描く。
最近、ウユニ湖で世界の埋蔵量の半分に相当するリチウムの鉱脈が発見されて開発が始まっている。経済開発が彼らの生き方に影響を及ぼすのだろうか。

アメリカの映画と音楽
私が長年住んでいたアメリカの地方都市ではハリウッド映画ばかりで、まったく外国映画を観られなかった。私はハリウッドのアクション映画は嫌い。
ラジオではクラシックを除けば、ロック、カントリーウェスタン、ポップスはすべてアメリカ音楽だった。
他方、日本では外国映画も観られる。アジアの音楽も聴ける。しかし、最近ではカンツォーネ、シャンソン、タンゴを聴ける機会が減ったようだ。
アジアやヨーロッパの映画を上映するミニシアターは貴重な存在だ。ミニシアター、頑張れ!


NHKテレビの国際ニュースの選択
NHK衛星テレビが昼に放映しているワールドニュースを時々観ている。その国の選択がおかしい。常時各国のテレビニュースを取り上げている国は、ヨーロッパではイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、ロシア、アジアでは中国、ホンコン、韓国、タイ、ベトナム、それにアメリカである。

日本との関係の深さを基準にすると、いくつか疑問がある。なぜスペインとホンコンか?
スペインの時間をブラジルに充て、ホンコンを台湾に、タイ、ベトナムに代えてインドに置き換えるべきだろう。台湾から沖縄につながる海域は日本の安全保障にとって重要であり、日本人はホンコン情報より台湾情報をもっと知るべきだ。また、インドとブラジルは経済的関係も重要であるが、それ以上に国際政治の上で関係を深めるべき国だ。
因みに、ドイツ、インド、ブラジル、日本の4ヶ国は国連常任理事会に加わる共同提案国だった。私は自民党政権によるこの4ヶ国提案を高く評価している。日本1カ国が常任理事国に新規加入しても国連の改革にならないからだ。大戦直後の常任理事国体制が今もそのままであることは異常なことだ。諸君たちの時代には変わるだろう。
世間ではアメリカが日本の加入に賛成しなかったから実現しなかったと言う物知りがいるが、アメリカはドイツに反対したとメディアが伝えた。本当のことは私には分からない。

海外映画とドラマの国別偏重
NHKテレビに限らず民放テレビにも韓国ドラマが氾濫している。もともとはNHKが韓流ブームに火をつけた。その後も止まらない。私は連続ドラマの一部と映画を観たことがあるが、作品の質は高い。
ある日、偶々台湾のドラマを民放テレビで観た。安っぽいコメディだった。私は台湾によく出かけ、言葉は分からなくても台湾のテレビを観る。ドラマにはもっと良いものがいくつもある。日本のテレビには台湾のドラマや映画が放映することがないのに、一つ取り上げられたドラマが安っぽいものでは、諸君たちは韓国に比べて台湾はレベルが低いと思わされるだろう。
韓国に偏重しているテレビの現状を台湾や中国の映画も放映してバランスを取ってもらいたいものだ。

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2010年1月18日月曜日

#24 民主党が生まれ変わる

 昨日の朝刊と夕刊の第一面に、でかでかと小沢幹事長の元秘書出身の国会議員など3人が逮捕されるという記事が出ました。
 テレビのバラエティ番組と週刊誌では、待ってましたとばかり稼げる話題にされます。世間も大騒ぎをしています。
 しかし、諸君は世間の騒ぎに乗らず、これからの政治についてクール(沈着に賢く)に情勢を見守りましょう。我慢する時には我慢して小沢問題で鳩山政権をつぶす動きには反対しましょう。

 今日、国会が召集されます。私だけではなく、おそらく諸君も、連日報道される献金問題が、国会冒頭から取り上げられそうなことにうんざりします。今回は、筆が遅い私にしては、素早く書き上げました。


小沢幹事長辞任と離党

 今日18日に国会が始まるに当たり、自民党はじめ野党は小沢幹事長に国会の冒頭で献金疑惑について説明を求めようとしている。民主党は応じないだろうから審議が混乱するだろう。世間の大衆は献金疑惑の追及を求めるかもしれないが、政治はこれに迎合してはならない。
 先ず、自民党は疑惑追及の確約をある程度民主党から取った上で、二次補正予算案と来年4月からの新年度予算案を審議して、多少の修正と引き換えにこの二つの法案を成立させるべきだ。特に、すぐ金が出る補正予算案は景気と雇用に関わり、中小企業や弱者を救済するために一日も早く成立させることこそ、前政権与党としての大人の対応だ。
 現下の難局を考えるなら、小沢幹事長が辞任し、民主党を離党することが、議員辞職に追い込まれないための対応だろう。彼が「法律に違反していない」といくら強弁しようとも、ゼネコンと金まみれである事実は隠しようがないのだから。

首相の論理を再度問う

 今の民主党は1998年に、鳩山・菅直人が設立した旧民主党を中心に4会派が合流してできた。左派と見られることを避け、民主中道を唱えた。
 2006年4月の代表選挙では菅直人を破り、小沢一郎が新代表に就任した。2003年に総選挙の小選挙区で不利を免れない小沢自由党が民主党に吸収合併された時、私は古い「若者塾」で、民主党が自由党に庇(ひさし)を貸した、と書いたが、それどころか小沢代表に母屋までも取られたのだ。
 2009年、小沢代表は当時からあった西松建設に絡む献金疑惑が表面化して代表を辞任した。それでも代表代行にとどまり、今日まで権勢を維持してきた。「職責に全力を果たす」という彼の表明は疑惑問題のすり替えに過ぎない。
 民主党も責任がある、という世間の声に対して首相は小沢幹事長の継続を支持したが、西松問題のさわりが表面化した時に小沢代表が辞任し、一方、ゼネコンとの関わりに大きく疑惑が広まった今には幹事長を辞任させないという論理をどう説明するのか。
 小沢幹事長が検察と闘うことを首相が支持したのは、党代表であると同時に、いやそれ以上に日本国首相であることをわきまえていない。本当に首相の論理思考は頼りない。「首相は饅頭のあんこである論理を練る」ことを再度お願いしたい。

民主党が再生する好機

 小沢一郎は田中角栄、金丸信をはじめとする古い自民党の系譜である金権政治家の最後の生き残りだろう。彼の体質は変わらない。
 彼が離党すれば、鳩山首相も小沢チルドレンも小沢親分の顔色を窺うことがなくなり、その呪縛から解放される。内閣もベストと信じる政策をきっちり実行できる。
 こう見ると、小沢は後ろから首相や内閣に睨みを利かせ、人事や政策を動かす軍の将軍そのものだ。彼自身、人民解放軍最高司令官と中国で言った。
 民主党は民主中道などと意味をなさない党理念より、中道左派でもよいのであるが、「名は民主党、実は労働党」がふさわしい。これでこそ保守政党との間で政権交代の意義がある。
 私は国のあり方や個人のモラルについては保守的であるが、社会政策においては柔軟なリベラル派である。そして、国民が選んだ政権を支持する。今は民主党政権を支持する。
 日本では保守政党と言えば「神国日本」となり、左派政党と言えば「社会主義」が出てきて、国民を惑わしている。もうレッテル貼りから抜け出してほしいと思う。

 さて、小沢幹事長辞任で今夏の参議院選挙はどうなるか?
 影響があるなしに関わらず民主党は第一党を維持しても過半数を取れない、というのが素人八卦見の見立てだ。例えば、小沢幹事長による連合に対する説得が評価されているが、もともと連合は民主党支持の選択しかない。連合の支持は今度の選挙でも変わらない。自民党も戦力不足。
 加えて、どの政党であれ、前回の参議院選挙と衆議院選挙に続いて3連勝することは難しい。
 小沢幹事長が辞任すれば党がばらばらになる、なんて情けないことを言うなかれ。一時の混乱はあるにしても、民主党はそんな程度ではあるまい。

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2010年1月13日水曜日

#23 決算書と自己管理力

 ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、中国、韓国、日本など世界的に寒波が広がっています。ひょっとすると、地球寒冷化現象なのでしょうか。
 大阪は寒いと言っても零下にはならず、空気が澄み切って快晴が続いています。札幌、富山、アメリカ東部の降雪寒冷地に住んできた私から見れば、まだまだ大阪の冬は暖かい。アメリカで零下(サブゼロ)と言えば、華氏のことで摂氏マイナス17度になります。ひと冬に何回かシベリア急行と呼ばれる寒波が来ると、摂氏マイナス20度以下になります。町の街路樹の枝が氷結して陽を受けて美しく輝きます。
大阪は雪も天災もなく、あるのは人災ばかりです。

さて、一年の初めに一つの試みをやってみてください。


自己管理と解放の使い分け
 人生の中で自己管理は決定的に重要だ。そして、厳しい自己管理と解放の組み合わせが重要。
 私流では、目標を立て、その実現のために自己管理する中で解放の時間を持っている。解放を別の言葉で言い換えると、無為、怠惰、ぼんやり、リラックスなどとなるだろう。解放の時間には何でもいい、軽いことで考えを自由にめぐらしてみる。そのうち半分眠りに落ちると。こういう時にふっと発想が出てくるもの。頭の疲れも癒せる。
 一つ気になることは、携帯電話のこと。電車待ちのホームでチャカチャカ、電車に乗るなりチャカチャカと携帯をやっている若い男女、特に女が目につく。他人事ながら、あれは自由な解放の時間を逃がして思考力を落としている。もったいない。
 この間は、ミニバイクで走りながら携帯を見ている若者がいた。そんなに忙しいのか、頭を無にすることを無駄に思うのか?

決算書と家計簿
 経営において決算書と呼ばれるのは、損益計算書と貸借対照表、それに大企業では営業キャッシュフローの三つを意味する。ここでは損益計算書について絞ってみよう。
 損益計算書というのは、月度に管理し、年度決算で集約するもの。単純に収入と支出の項目を記載するだけで家計簿と同じ。これと併せて「予実管理」が使われる。毎月予算と実績を比較して、計画通りに推移しているかどうかを管理する。経費が予算を超えていれば素早く手を打つ。
 そこで、勧めたいことは一カ月でよいから自分で家計簿をつけること。一円たりとも見落とさずに完全を目指す。コンピューターでは一円も一万円も「違算」として出てくるから完全を期すことが諸君の腕を磨いてくれる。
 「家計簿なんぞ嫁さんの仕事で男がやることじゃない」という雑言に惑わされることはない。そして、一カ月を集約したエクセルの表を眺めて分析をしてみる。新鮮な発見があるはずだ。
 これは、個人事業を起こす、あるいは諸君が会社員として経理を任せられる時に基本となることで分析力が養われる。さて、諸君は一カ月の根気を持てるか?
 私も、古い話であるが、一ヶ月期間で2,3回やってみたことがある。手帳に出費を一つ洩らさずに記入してみる。この小遣い帳からそれまで見えなかったことが見えてきた。これ本当に根気が要るよ。

 優しい性格の友は言う。「克己心や根気も生まれながらの資質だよ。尻を叩くのは過酷ではないか」と。部下の中には必ずチャランポランでミスばかりする者がいる、怒鳴ったところで改まらないものだ。彼は自分への戒めにしたのだろう。この論理でいくと、人の資質はすべて生まれた時に決まっていることになる。
 また、別の友は言う。「オレのワイフは何をやらせてもええ加減。どうにもならんよ」と。
 新聞に出ていた「節約は精神の贅沢」というタイトルが目に入った。これを裏返して言うと、「浪費は精神の堕落」ということになるだろうか。諸君の声がきこえそうだ。「オレも一度でいいから浪費をやってみたいよ」と。私もそう思っている。

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2010年1月5日火曜日

#22 連立与党とは難しいもの

 皆さん、新年おめでとうございます。
 今年も各地からもらった年賀状の中にいろいろと絵や写真で趣向を凝らしたものを見るにつけ、文章だけの味気ない私の年賀状が見劣りします。来年こそは気の利いた年賀状をつくるぞ、と思いながら何十年が経ったことか。
 さて、今年は「若者塾」ではなるべく政治については書かず、生き方の上で知識武装してもらえることを重点にしたいと思います。
 今回は、前稿の余波からもう一回政治について書きます。また批判を受けるかもしれないが、文が長いのです。今年の課題は、「短く、面白く」にします。

 これから開かれる国会においては、野党は重要政策について与党に問題を明らかにさせ、改良を求めることに集中し、資金疑惑は捜査当局にしばらく任せて国会審議を停滞させることは控えてほしい。まして、野党が倒閣を意図することは国民のためにならない。野党、特に自民党は我慢すべき時には我慢し、じっくりと大きく再建を目指すことが将来につながると信じます。


民主党の資金疑惑

 鳩山首相と小沢幹事長の管理団体による政治資金の疑惑が関心を集めている。私はメディアが伝えるほかには情報を持たないので、皆さんに疑問を投げかけるだけにとどめたい。

 法律で定める政治団体は、毎年都道府県の選挙管理委員会に収支報告書を提出しなければならないが、なぜ選挙管理委員会は疑惑をチェックできなかったのか?

 選挙管理委員会を主管する総務省は、なぜ監査体制を長年放置してきたのか?

 収支報告書は毎年国の官報と都道府県の公報に公表されるのに、なぜメディアはもっと早くスクープできなかったのか?メディアは事件の後追いだけをやっている。

 検察庁も国税庁もなぜもっと早く捜査に入らなかったのか? 特に、鳩山首相のケースでは8年間も見過ごされてきた。

 小沢幹事長も鳩山首相もあれほどの金持ちでありながら、なぜ公認会計士を雇って監査を受けてこなかったのか?監査を避けてきたと思われても仕方がない。
 ◇ 騒動屋の政治家

 私が意味する騒動屋とは、世間やメディアの関心を引くために騒ぎを大きくせずにはおられないタイプの政治家のことだ。小沢一郎を筆頭に、田中眞紀子、亀井静香、石原慎太郎などが代表格だろう。彼らは地道な日常努力に関心が薄く、一発でかいことを打ち上げる。騒動を生きがいにしているから危ない。

小沢幹事長の権勢

 先の衆議院選挙で当選した新人議員を含めると、小沢グループは衆参合わせて120人の他派を圧倒する最大派閥になった。
 内閣が事業仕分け人を小沢幹事長の了解なしに小沢派新人議員を選んだことにクレームをつけ、新人議員を入れ替えさせた。行政やビジネスの経験がある議員から市会議員にも当選できないような議員もいる中で、新人議員を一つの括弧でくくることは妥当ではない。
 私は小沢親分が配下の組員を無断で使ったことに異議を唱えたのだと思った。
 600人もの小沢訪中団が配下議員をはじめ、一人一人を故錦濤首席とツーショット(これ日本製英語)の写真を撮らせた。朝貢外交のようで国民の一人として恥ずかしい。
 さらに、「私は日本の人民解放軍最高司令官」と言ったそうで、これはひど過ぎるな。 

連立与党

 沖縄基地問題で社民党の福嶋代表が沖縄県内移転に強く反対している。鳩山首相が唱える「社民党も米国も受け入れる解決」というのは、本当にあるのか?
 福嶋代表は消費者庁少子化対策担当大臣なのであるが、基地問題に口を出すのは党代表の立場であるからだ。連立から社民党外しの声が出てきているが、閣議においてただ一人署名しないのであれば、連立外しより閣外協力に変えるべきだろう。多分辞任するだろうか。

対米突っ張り外交

 私が昨年六月、アメリカに1週間余り滞在した間にはメディアには日本に関する報道は何もなかった。これまでも日本、英国、カナダに関する報道がなかったのは常のことだ。関係が良いことの証であり、また、日本について関心が薄いことでもある。
 ところが、アメリカのメディアによる日本の外交に関する報道が日本のメディアに紹介されることが多くなった。日米安保条約をはじめとして、日米関係が議会や一般市民に関心をもたらしたことは突っ張り外交の成果と言えるだろう。
 ここで小泉元首相の対中突っ張り外交と比較してみよう。
 私はアジアの各国(ちょっとオーバーかな)に情報源を持っているが、彼らによれば、小泉対中外交は中国から国境で圧力をかけられるベトナムからインドまでの政府は支持していた。しかし、鳩山外交が反米親中と見られて、沖縄米軍基地の県外移転に対してはこれらの政府が反対している。
 鳩山首相は、対米突っ張り外交にいつ鉾をおさめるか?

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