2017年4月14日金曜日

#172 どこかおかしくないか?ーー諸君の感性と私の感性

 現実の問題に戻ります。諸君は各々の問題についてどう感じていますか?
 私の考えにとらわれず、自分の論理と感性に基づいて考えてみてください。諸君の感性と思考力を高めてくれると思います。

アメリカの大統領令と裁判所の仮処分

 トランプ大統領の移民政策に関する大統領令が、一つの州政府の司法長官が提訴した仮処分によって即座に無効にされた。私は大統領令が良いとは思わないが、疑問に感じたことは、連邦裁判所とは言え一つの州の地方裁判所が、短時間の検討によって仮処分が国政に関する政策を即時に廃する制度のあり方に疑問を感じた。
 いくら独裁者を防ぐ三権分立の原則であれ、一つの州の司法がここまで国政に介入してよいのか?

 大統領はたとえ期限付きであっても、イスラム七ヶ国からの入国制限をアメリカ国籍者と永住権保持者まで広げたのは行き過ぎだったと思う。

大津地方裁判所の仮処分

昨年、大津地方裁判所が仮処分を下し、再稼動したばかりの関電高浜原発を止めた。 原発がある福井県の隣りの滋賀県住人が原発再稼動を止める仮処分を提訴したのだ。
 仮処分の怖い点は、日本で最高の機関である原子力規制委員会が安全とした結論を、技術に素人であるはずの地方裁判所が即刻効力のある仮処分を下すことにある。しかし、関電が異議を申し立て、約一年後に同じ大津地裁が仮処分を取れ消した。もし取り消されなければ、今も原発は停止されたままだ。仮処分を求める住民訴訟が安易に広まることが怖い。
一体、こんなに裁判所が揺れてもいいのか?
 

韓国の大統領弾劾に関する判決

 韓国の弾劾特別法廷は弾劾を認めた。私は裁判官全員の8人の中で誰一人として反対者がいなかったことに驚いた。状況証拠ばかりに見えるのに、誰も異議を唱えなかったことはた。
 おそらく、韓国では世論に逆らえないのだろう。世論は大事であるが、必ずしも世論が正義とは限らない。
 慰安婦像問題についても、他人の家の前に勝手に不快な像を置くことは許されない。それも他国の外交機関前の公道に置くことは違法だ。韓国政府は一度は撤去を命じたが、自治体は世論の圧力で像を戻させた。

 慰安婦が国(日本軍)の強制によるものということは、事実の裏取りなしに記事にした朝日新聞の誤報からであるが、韓国の大衆は知らない。彼らは自分たちの主張と異なる報道は受け入れない。後日、朝日新聞は誤報を認めて謝罪した。 

  NHKが出した「幸せの国」の統計 

 私はNHKテレビの番組、日曜夕方6時過ぎからの番組「世界のいま」をよく観る。 
 国際部の記者たちが各国の事情を分かりやすく話し、しかも流行り言葉を使わない正統日本語を使うことに好感を持っている。
 ところが、四月二日の番組ではおよそ常識から外れた統計を出し、しかも出所を明示するメディアの原則を守らなかった。どこからの統計なのか分からなかった。
 それは「幸せの国」のランクを挙げたのであるが、なんと1位はコロンビア、2位は中国で日本は20位以下だった。唯一詳しく取り上げたコロンビアの貧民街に住む人たちは、幸せの理由として「家族と地域住民との絆」を挙げ、これがありさえすれば幸せなのだと言っていた。これをコロンビア国に拡大して幸せな国に挙げていることはまったく統計的価値がない。このおかしさを無視して取り上げているNHKはおかしい。
 私は即座に江戸時代の農村を重ね合わせた。年貢に苦しめられながらも、「家族と地域住民との絆」の点では幸せだったと思う。今でも中国辺境の少数民族はそれなりに幸せかもしれない。

 これらに共通することは、まともに教育を受けていない、国の外はおろか地域の外を見られないことだろう。 

  中学、高校の先生に英検強制
 

 文科省が中学と高校の先生に対し、英検を受けさせた結果を新聞記事で読んだ。はて、文科省が先生に対し、英検を強制する権限があるのか?私は、先生は教員試験をパスした一人前の地位であるのだから、英語を必要とする先生が自発的に英検を受けることが筋ではないか。

 私には会社勤めの時に嫌な思いをしたことがある。
 貿易部勤務であったある日、突然課長が部員に英語の試験をすると言った。「会社の制度にもないことを課長の一存でこんなことをやれるのか?」、「事前に上司や人事部に相談したのか?」、「10年選手も新人もひとからげにしてよいのか?」と頭が素早く回転した。私は彼の無神経と思慮の弱さに腹を立てたが、結局、騒ぎを起こしたくなかったので受けることにした。私を技術屋だから英語に弱いと思ったのだろう。仕方ないか。

 さて、諸君が上司なら、あるいは部下ならどうするか?         (完)  

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2017年4月4日火曜日

#171 私の英語勉強法を振り返る(3)ーー安易な広告に惑わされるな

 英語について書き始めたら止められなくなりました。3連発は初めてのことです。 これまで書いてきたように、私の英語勉強法は徹底した独学で、塾にも町の会話教室にも行ったことがありません。出費はNHKラジオ英会話テキストと「Time」などの英文週刊誌の購読だけです。5年前にどちらも止めましたが、今もラジオ英会話は時々聴いています。
 諸君、金を使わなくても英語に巧くなれます。迷いを無くして新たな気持ちで目標を目指してください。

◇ 目標を何に置くか

 目指す英語(英会話)には五つを挙げられる。当然、目標によって勉強の仕方が違う。ここが大切なこと。

  同時通訳 特別なことで、英語のほかに日本語の専門用語の習得も求められる。しかも瞬時に応える反射神経、あるいは運動神経の素質が求められる。平均のアメリカ人並に英語が分かる私も同時通訳はできない。目標にしたこともない。できることは、交渉や会議で一区切りごとに通訳することだ。

  研究者など専門職 論文を書くことや発表に英語が求められる。しかし、他の人から草稿の改良をしてもらえるが、スピーチには発音の正確さを求められる。また、英語学や英米文学の研究者研究者には高度な読解力が要るが、特に英会話に堪能である必要はない。

  仕事の実務 海外駐在者や出張者、外国企業で働く人はビジネスの専門知識に加えて、一般の教養が求められる。例えば、私のように長期に海外生活する場合には、同僚であれ部下であれ、私生活においても人間性を見ている。私が目標としてきた。

 日常会話  簡単なようで意外に難しい。会話に流れがなく、話題がさまざまに飛ぶからだ。早い話、会合やパーティで初めて会った日本人と日本語で会話するのも易しくない。日頃から経験することが大切。

 接客・旅行英語 目標としていちばん易しい。用を足せばよい。野球で言えば、ゴロが来たら基本を忘れてもへっぴり腰でも捕って投げなければならない。場を踏んだらできること。

◇ 試しに英検一級 

 東京に転勤して間もなく、30歳の時に友達に誘われて英検一級を受験した。まだ英会話を始めていない時だった。友達も会社の独身寮時代から英語を勉強していた。
 あっさり二人とも読み書きだけの一次試験にパスした。二次試験のスピーチではその場で与えられた二つのテーマから、一つを選んで3分間即興で話すのだが、小学生の作文になってしまった。これで一級は不合格。
 当時、一次を受かると二次試験をさらに2回受けられる。次の試験でヒアリングは、何度も出てきたglacier(氷河)という単語が分からず失敗。スピーチはうまくやったのに残念だった。
 3回目は試験日がアジア出張と重なり、事前に協会に何度も次回に受けさせてほしいと交渉したが断られた。これで一級の資格を持っていることにはならないので、会社に届けなかった。しかし、会社の管理職資格試験では、科学論文を和訳する英語の科目で満点を取った。
 遠い目標だけでは意欲を持ち続けることが難しいから、目前の目標が必要だ。そのために英検の合格を目指してみるといい。試験は最高の集中力を出す機会だ。準一級でも一級でも試すことを薦めたい。

◇ あふれる英会話教材

 全国紙にも地方紙にも「英語の勉強は要らない」、「聴くだけで話せるようになる」、「文法は要らない」、「中学英語でペラペラ話す」という類の広告があふれている。教材の中には20万円以上もするものもある。  諸君はどう考えるか?
 記憶にとどめてほしい。どれも上記の「接客・旅行英語」についてだ。諸君がほかに目標を置いているなら無視することだ。
 ある日、同世代の友達から最も頻繁に広告を出している教材について相談を受けた。小学生低学年の孫にプレゼントしたいのだという。私は反対した。理由として、英会話でも何でも安易な道はないこと、学校の正統英語の授業を軽く見る弊害を挙げた。
 多くの親が早駆けと焦りの心理に惑わされている。私は30歳を過ぎてから英会話を始めたが、少しも遅くなかったと話した。  
 そう言えば、今の小学校の先生は、中学から必要な基礎知識を持たせる本来の授業に加えてパソコン、道徳、さらに英語も教えなければならない。これは大変なことだ。  
 日本では韓国が小学校から英語教育を義務づけていることはよく知られる。もう一つ例を挙げると、カナダでも英語圏ではフランス語を、フランス語圏では英語を小学3年生から学ばなければならない。しかし、フランス語が常用のケベック州では州外やアメリカとのビジネスに必要な英語の早期教育に比べて、英語圏でのフランス語教育はうまく行っていない。オンタリオ州に住む経営者で私の友達は、フランス語を話せない。平均の日本人の英語と変わらないレベルだ。なぜなのか?  それは彼がフランス語を必要としないからで、必要が鍵だからだ。
 諸君、日頃はこつこつと片手間に英語の勉強を継続し、いざ必要になると集中的に取り組むという私の勉強法を参考にしてほしい。           (完)                

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