2017年12月16日土曜日

#187 富山きときと空港を饅頭論で説く――富山篇④

 先日、ボランティアグループの会合後、雑談していた時、一人の生粋の富山人の女性会員が「富山きときと空港の名前が恥ずかしい」と発言しました。私が札幌から来た友達を富山空港に迎えると彼は開口一番、「きときと空港とは何じゃ」と言いました。私も日頃おかしいと感じていました、    今回はこれから発想して郷土意識について書きます。

 ◇ ほかにもある変な愛称。
 航空地図を見ると、地方空港の名称にひらがなを使っている例がいくつもある。観光推進のためか、知名度を高めるためか愛称のように使われている。 本当に目的に合っているか? 
 先ず、「富山きときと空港」。「きときと」は新鮮という意味で使われる富山の方言だそうだ。例えば「きときと寿司」のように。だとすると、空港の愛称には合わない。
  「のと里山空港」。なぜ「能登」ではなく「のと」なのか?どこの地名なのか全国向けには通じない。しかも能登は歴史的な地名なのだ。しかも里山は全国どこにでもある。 
 「阿蘇くまもと空港」はこれもわざわざ平仮名を使っている。熊本の名前には長い歴史があるというのに平仮名を使う目的は何なのか?
  「おいしい庄内空港」というのもある。これは日本語としておかしい。庄内米を知ってもらおうとしているのか? 

 ◇ なぜ平仮名地名か?              
  日本語の中にカタカナ外来語が濫用されていることは、よく指摘されている。ところが、地方の自治体では広報効果のためか、本来漢字である地名に平仮名表記が流行していることはあまり問題にされていない。
  例えば、鉄道の呼称にも平仮名が流行。今、金沢から新潟まで鉄道で旅行するとしよう。  北陸新幹線が開通後、JRから在来線が第三セクター3社に経営が移管され、石川県は「IRいしかわ鉄道」、富山県は「あいの風富山鉄道」(あいの風は万葉集の中で謳われ、日本海で夏に沖から吹く風)、「えちごトキめき鉄道」と呼ばれるようになった。まるで申し合わせたように、ひらがなの社名が使われている。地域を訪れる県外の人々に通りがよい「石川鉄道」、「富山鉄道」または「新富山鉄道」、「越後鉄道」ではだめなのだろうか。 
 もう一つ、都市の名前にも平仮名を使うことが流行っていることだ。主に漢字の読みが難しいことによるらしいが、誰でも読める漢字をわざわざ平仮名にしている埼玉県「さいたま市」の例もある。  もとはと言えば、1960年に始めた青森県「むつ市」から今では29都市に広がった。漢字の読みが難しい例としては、千葉県の「いすみ市」(夷隅)、愛知県の「あま市」(海部)、沖縄県の「うるま市」(宇流麻)などがある。 
  これまで空港、鉄道、都市のひらがな使用の例を挙げてきたが、一体、なぜなのだろうか? 
 公募が民意に基づくという反面、地方ではどこでも郷土意識が強く、知名度を高めたり、観光推進の一助と考えるのか、意図的に平仮名表記が使われるようだ。私の調査情報によれば、その多くは市民からの公募と県庁職員や退職者の評価委員会によって決められる。しかし、市民と地元役人はどうしても郷土意識に傾き、地域固有の漢字名称に平仮名表記を使うことは、県外との交流や観光推進を進める上で必ずしも有効とは言えない。 現在、多くの自治体が観光や姉妹都市交流で相手側の立場になって企画を考えている。ところが、対象が海外ではなく、国内向けとなると、県内の郷土意識にとらわれ過ぎている。つまり県内を超えて郷土が知られるためには、平仮名表記が本当に良いのかどうか再考してほしい。 もともと漢字地名は歴史的に長く使われ、どれにも由来がある。それを平仮名表記にしたのでは土地の顔が見えない。漢字地名の読みが難しければ、漢字にふり仮名を付せばよい。
 また、実用面から言っても、「市」または「町」を省いて平仮名地名の前後に助詞が置かれると読み辛い。  

 ◇ 郷土意識と饅頭論 
 全国の自治体は海外からの観光客誘致に熱心に取り組んでいる今、郷土を愛する意識も大切、また県外の人々の立場で広げて見る国際意識も大切だ。ここで国際意識とは越中国の外を見ることだ。  
  終わりに私が提唱する饅頭論を述べてみよう。饅頭はあんこと皮でできていることを転じてあんこは論理思考で、皮は情緒思考を意味する。皮が厚すぎると饅頭はうまくない。 どうも富山人は、どこでも、皮が厚過ぎるようで、片手落ちの郷土意識にこだわり過ぎる。 命名には何が目的かを考える論理思考が第一であり、越中国の外に目を向けなければならない。その上で皮の郷土意識で味付けする考え方が望まれる。 
 名前を変えると地図から公文書、観光案内まで大変なコストがかかる。諸君の時代まで待たなければならないかもしれない。 
 私は誰も使わない、知られていない「富山きときと空港」より「富山国際空港」がよいと思う。通称は今使われている「富山空港」のままでよいだろう。  
 さて、諸君はどうするか?日頃の思考で饅頭論を生かしてほしい。              (完)

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2017年12月3日日曜日

#186 平成元禄の贅沢町人社会――武士の抑制精神に戻れ

  企業の長年の不正行為がメディアによって連日報道されていますが、私がここで取り上げるのは日本社会全体についてです。それは日本の社会全体に贅沢志向が蔓延していることです。国民は気づいていないようです。 
  諸君はこれでよいと思いますか?

 ◇ 高級なカジノリゾートの建設 
 一部の学者も加担して自民党政府がカジノを推進しようとしている。多数派の労働者市民にこんなものは要らない。景気を刺激し、税収増になり、外国人観光客も増えるなんて目的はあまりに方便に過ぎる。本当に誰のためか?
  野党が反対して世論を盛り上げてほしい。
 関空の近くに超高級病院を建設してアラブの金持ちを呼び込むという計画が提案されたことがある。医者と看護師が不足しているというのに、儲かるというだけで、これは反国民の計画だ。感性がおかしい。
  さらに、北海道かどこか人里離れた広大な土地に、外国要人が密かに滞在できるリゾートを提唱する学者もいた。政府が関わる計画ではないにしても、民間企業や外資も採算に乗らない事業には投資しないだろう。私はこんな発想自体を受け入れられない。どこかおかしい。

 ◇ 韓国のカジノ
  韓国には五つのカジノがある。その中で最も有名なウオーカーヒルのカジノはもともと1968年に軍用機のサービスで、週末を日本で過ごす米兵を韓国に留めるためにつくられたという。確か今も外国人専用で、日本からの観光客も多い。度々韓国に出張した私は週末にここには行ったことがない。
  ほかのカジノもアメリカ系ホテルの中にあり、アメリカのカジノ会社が経営している。 日本で一つできれば続いて数が増えるだろう。多分カジノ経営はアメリカのカジノプロが経営するだろう。沖縄の立地も候補に挙がっているが、カジノで経済振興を図ることは邪道だ。
  日本にはこんなものは要らない。野党に反対してほしい。 

贅沢な観光列車の流行  
 今、全国各地で贅沢列車が流行している。極めつけはJRが運行する2泊3日、食事付き、停車駅で観光の豪華列車だ。一室あるスイートルームは125万円もするという。観光のクルーズ船の列車版だ。7,8両の客車に全定員が36人、誰のためか? 
 能登半島には、贅沢とは言えないかもしれないが、「ベル・モンターニュ・エ・メール」という新造の観光列車がJRによって運行さけている。おそらく日本でいちばん長い名前だろう。

 ◇ 日本で豪邸が流行
  いくつか出張で訪問した途上国の独裁者も金持ちも豪邸に住み、高級車も持っている。アメリカの金持ちの生活をそっくり追随している。
  滞米中に、夜に大学院に週3日通っていた時、アフリカの国からの留学生と知り合った。 ある日、「なぜアメリカなの?貴国にはアメリカから何も学ぶことは無いでしょう。ニュージーランド、台湾、北欧の国の方が体制の参考になると思うよ」と私が言った。
 彼は、「官費留学の役人で修士を取れば地位も年収も上がる。アメリカは自分の選択ではない」と応えた。
  実際、アメリカの政治はさておいてアメリカ社会の豊かさは参考にならないと思う。 日本人の堅実で普通の生活と地方政治の方が参考になると言いたかったが、自信がなかった。 その日本が今大きく変わっている。贅沢志向の蔓延だ。
 渡米前には芸能人やスポーツ選手が1億円の豪邸を建てたことが話題になっていたが、今や5億円。一代成金の事業家にも広がっている。私が知る若者もテレビの映像を観て憧れるという。  私は滞米中に金持ちから豪邸やヨットに招かれたことがある。要するに、金持ちは豪邸やヨットに人を招いて見せたいのだ。それで満足感を得る。
  いずれ豪邸を持っても固定資産税の支払いに困ることになるだろう。

 ◇ ヨーロッパの宮殿と聖堂 

  滞米中にヨーロッパに出張や旅行で出かけ、訪れた宮殿や聖堂がいくつかある。どれもが巨大な建物で屋内はぎんぎらぎんの極彩色の豪華なものだった。
 この時発想したことは、これらすべて庶民からすさまじい搾取をしたものだとうこと。
 日本に目を移すと、京都御所も皇居も敷地こそ広いものの建物は地味なものだ。 日本の寺院にしても寺院は奈良時代から今日まで内外とも木の色のままで、極彩色はほとんどない。これがいい。
  同じ寺院でも中国や台湾の寺院は極彩色で大きな違いがある。また、北京の広大な天安門広場と明・清時代の王宮だった豪華な紫禁城はすごい。建物は赤で統一され、内部は金銀の極彩色だ。

 ◇ 武士社会の原点
   平和が続くと社会が退廃してゆくものだ。贅沢がはびこる。今の日本がそうだ。 武士が支配した社会は抑制の社会で、欲望を自制することが正統な武士の生きざまだった。例外は少なくない。   私がアメリカの町の高校野球部で監督の右腕としてバッテリーコーチをしていた時、社会科の先生であった監督はdedication(献身)、discipline(規律), determination(決意)、duty(義務)を4Dと言って部員にいつも説いていた。私は意見を訊かれた時、武士道の精神だと応えた。後に私がdignity(尊厳)を加えて5Dになった。
  因みに、私が卒業した高校の校是は「質実剛健」だった。
  念のためひと言。私は士農工商の武士が支配する階層社会を意味しているのではない。 武士の精神を意味しているのであって、農家でも商工者でも誰もが武士になれる。
  諸君、5Dを仕事に密かに守り、良いリーダーの武士になってほしい。         (完)

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2017年11月24日金曜日

#185 攻めてくる英語教材の広告ーー惑わされてはいけない

  どんな職場でも仕事でもリーダーになる諸君のためにこの連載を書いています。
  英語でもリーダーになるためにはそれに応じた勉強の仕方があります。テレビや新聞の広告に惑わされず、しっかりと立ち位置を意識してほしい。 
  巧みな販売戦略によって、教材「スピードラーニング」は5年以上も衰えがないのは「話せる」という意味があいまいなことです。巧みに使っています。 
 目標とする英語・英会話には高い順で下記があります。

 ① 同時通訳。英語に加えて日本語にも高いレベルが必要。
 ② 英語学・英文学研究。英語を話せた方がよいが話せなくともよい。
 ③ 海外で英語を使って仕事をする。読み・書き・話すが必要。私はこれ。
 ④ 日常会話。海外での会合やパーティーで話せる。これは意外に難しい。
 ⑤ 海外旅行・接客。高度な英会話は要らない。通じればよい。 

  さて、諸君はどれを目標にしますか?これが重要であり、目標によって勉強の仕方が違うのです。

 ◇ スピードラーニングの巧みな販売戦略  
 新聞広告やテレビのコマーシャルで最も攻勢をかけているのは、「スピードラーニング」で全国紙と地方紙に毎月2回以上も広告を出している。私が集めた10回の広告から内容別にまとめてみよう。1回分の広告からは大した影響を受けないかもしれないが、これだけ繰り返されると人は信じるように仕向けられるものだ。 
  1)英語ブームの中で人の負い目につけ込む、さらに脅しをかける。 
   「英語の日が訪れたその日あなたはどう反応するのか」 
   「英語を諦めていた人専用」 
   「英語を身につけるビッグチャンスを逃がしてはいけない」 
    「間違った英語の勉強はもうやめて」 「諦めるのは、まだ早い!」 
  2)嘘か嘘に近いもの 
     「いちいち辞書を引いたり、テキストを見ることはいらない」  
  「ただ聞くだけ、耳から覚える英会話 聞き流すだけの教材 だから誰でも簡単」 
  「英語のために時間を用意することなど全く必要なし!」 
  「えっ、気がついたら自分の口から英語が出てきた」 
  「『スピードラーニング』なら時間もお金も無駄にしない!」
   「暗記じゃないなら私にだってできる」   「音楽を聞くように好きな時間にCDを聞き流す」         「暗記・文法も不要」  
  「中学・高等学校で採用」 「勉強していないのに英語が話せた!」  
  「驚きの効果を上げた」  
  「外国人アナウンサーの話す英語が分かったわ!」  
  「洋画が字幕なしで分かった」  
  「英語教師が驚いた」  
  「世界中どこでも通じるきれいな英語」  
  「無理しない、飽きたらやめる、文字に頼るのを一切やめたら英語が口をついて出た」
   「海外旅行先で買い物、観光が楽しめる英語が身につきます」 
 3)学校英語の教育と子供に有害 
   「机に向かって英語の勉強一切しない」 
  「単語は覚えない」
   「教科書英語ではない自然な英語」 
  「英語を勉強する時代は終わった」
   「今までの英語をぜんぶ忘れて赤ちゃんに戻って!」  
 4)罪づくりなこと  
 「東大医学部卒、医学博士も絶賛!!受講者の発音がキレイとほめられるは収録されているきれいな発音を聞こえたままインプットしているからです」   →東大卒、医学部、教授の肩書きに人は魅かれる。サプリのコマーシャルでも同じ手口が使われている。こういう教授は恥ずかしいと思わないのか。   
 ゴルフの石川選手「恥ずかしいほど英語が話せなかった僕も1年で英語のインタビューに答えられるようになりました」。 →彼の発音も文章も正確で多分個人レッスンを受けた。アメリカで生活しているから環境に恵まれている。  
5)私のアドバイス
 諸君も子供さんたちにもあせらずに学校の英語に集中すること。
  無駄と思っても無駄の積み重ねが何事にも成就のために必要なこと。 
 文法と言っても構えてすべて勉強する必要はなく、とりあえず仮定法、関係代名詞・関係副詞、不定詞を一つずつ理解すれば表現か広がること。大したことない。知っているか知らないかは大違い。英語は学問じゃないから、何歳からでもどこからでも学べる。 
 鳥飼玖美子氏の近刊『本物の英語力』(講談社)を読んでみるとよい。本物の英語を教えてもらえる。彼女は同時通訳者から立教大学の教授になった人で、英語を長年実務で使ってきたことが強み。  
 私も30年前、名優オーソン・ウエルズが朗読する教材など聞くだけで英語を話せるという本があふれた時代に、読み書き文法の大切さを説いた本『意欲派のビジネス』(産能大出版部)が刊行された。売り上げが心配されたが、編集者の英断に助けられた。会社や教育界で買われ、よく売れた。図書館に置かれている。 
  最近、人から問われてアドバイスしたことであるが、旅行会話程度ならこんな高い教材は金と時間がある年寄りに買わせればよいのです。聞くところによると、初回15000円、45巻の一つずつ毎月5500円で計25万円の出費になるとか。初回でやめたとしても、版元は充分利益を挙げています。なかなか巧み。 本屋でCDつきの本が千円も出せば買えます。 

これは「個人の感想です」                   (完)

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2017年11月11日土曜日

#184 新高岡に停まる新幹線「かがやき」が週末だけにーー富山篇③

   12月から新幹線特急「かがやき」が新高岡に停車する一日一本が週末だけに減便されることになりました。高岡の官民は反対しています。  
 考えるに、新高岡には毎日1時間毎に10本の各駅停車の「はくたか」があるのに、なぜ「かがやき」にこだわるのか分かりません。「はくたか」は高岡東京間で30分しか違わないのです。
  私は「かがやき」より、名古屋からの「しらさぎ」と大阪からの「サンダーバードを金沢から富山に延長運転する方が地域経済にも観光にも効果があると思います。高岡の官民が運動してきたノウハウを富山の官民に教えてほしい。
 富山県民の若者諸君、運動を起こしませんか。  
 今回、私がかつて会員であった大学の関西同窓会会誌に寄稿した小論を転載して参考に供します。  

    ―――――――――――――――――――――――――――――――

   「大阪から富山が遠くなった」  2016年6月 

 早いもので今年6月に富山移住4年になりました。病気知らずだった私はどういうわけか富山に来てから、前立腺癌、脊柱管狭窄症、右目の白内障・緑内障、心筋梗塞(この賑々しさ!)が健康診断で見つかり、手術を受けました。いずれも治癒し、残るは狭窄症によって弱った脚力を取り戻すためにリハビリを継続中。現在はまあまあ元気、この間墓参りに京都まで日帰りしただけで、もっぱら県内か県境をうろちょろしています。

 (中略)

 JR西日本が大阪からの特急サンダバードをすべて金沢止めにしたことについて書きます。
  もともと登山やビジネス目的を除けば、一般の関西人には富山は馴染みが薄いようです。茨木を離れる前に、2回の送別会に招かれた時、富山についてこんな会話がありました。

   「富山には出張を除いて観光には行ったことがないな」
  「北陸に観光に行ったことがあるが、金沢までで富山には行かなかった」
    「金沢から先の富山までの距離感が分からない」
    「魚を食べに氷見に行ったが、金沢から乗り換えたので富山には行かなかった」

 金沢と富山の距離は、京都神戸間より近いのですが、こういう認識があまりされていないようです。 昨年3月、東京と金沢を結ぶ北陸新幹線が開通し、その結果、富山と東京間はわずか2時間8分で結ばれるようになりました。富山には大きな経済効果がもたらせましたが、反面、かつて大阪、名古屋、富山の経済圏、すなわち50年前に言われていた「三角経済圏」が事実上壊されました。 というのは、大阪発で富山行きの特急「サンダーバード」と名古屋からの「しらさぎ」がすべて金沢止まりになったからです。長い目で見れば、富山経済にはじわじわとダメジが出てくると思います。
 さて、皆さんが富山に来られるとすると、サンダーバードで金沢に着くと、新幹線の金沢富山間のシャトル便である「つるぎ」に乗り換えしなくてはなりません。わずか20分の乗車です。
 昨年、富山に来てスピーチをしたJR西の社長はメリットとして、「大阪から富山まで5分早くなった」と言いました。彼には乗り換えの不便と運賃が高くなったことへの利用者が被る不利に対して配慮する感性がないようです。 少々の赤字路線を合わせて全体で黒字経営することが、公益性もある鉄道事業のあり方であると思うのですが、皆さんはどう考えられますか。
 私は、せめて朝夕1往復のサンダーバートとしらさぎの直行運転を願っていますが、経済が潤っている今、市民の反応は弱い。JR西によれば、JRの在来線が「IR石川鉄道」と「あいの風とやま鉄道」になって2社にレール使用料を払わなくてはならないからだそうです。
  終わりに、富山と金沢について、私は「生活の富山、「観光の金沢」と提唱しています。 皆さんが両市を訪ねてみられると分かることですが、金沢駅に降りると構内は観光客があふれ、巨大な赤門のあたりにはバスとタクシーで大混雑しています。いかにも大観光地の賑わいがあります。戦災に遭わなかったので、城下町そのままの道路です。
  他方、富山駅前は比較的静かなもので、駅舎も平凡です。しかし、他市への旅から帰るとすっきりしていて安らぎを覚えます。 戦後焼野原になったせいで、都市計画に基づいて車道も、歩道も広く、歩道は歩行者と自転車走行者に仕切られています。どの道も街路樹が美しい。雪が積もっても行政と個人が融雪装置を設けて水を流します。茨木では車を運転しなかった家内もここではよく運転します。
  富山市は今コンパクトシティと呼んで、公共施設やマンションを中心部に集める政策を推進しています。アメリカの都市と同じ構想です。かつてどの市でも進めた郊外のニュウタウンで広がったドーナッツ化の見直しと言えるでしょう。 中心部にはライトレールを含めて3本の市内電車が走っています。最新型のライトレールや新旧の車両が走る市電は全国の鉄道ファンに人気があります。
 皆さんが富山の観光と言うと、立山、アルペンルート、五箇山、宇奈月温泉の有名観光地を思うでしょう。しかし、いずれも富山市ではありません。ただ9月1~3日に毎年行われる八尾のおわら風の盆の時には、市内に観光バスがあふれ、数多いホテルが満室になります。八尾は富山市です。  富山経済では観光は第二で、第一は農工漁業が一体の経済が強いことです。世界の先進国は、そして日本も農業が強いので、富山はそのミニチュア版でしょうか。 富山には大企業のほかに中小企業の集積がありますが、必ずしも薬業だけではありません。技術開発力もあります。例を挙げると、農業用水を利用した小水力発電は世界最先端を行っています。これを開発した中小企業は30ヶ所に設置し、インドネシアの農村へ輸出しようとしています。IT産業も盛んで、高層ビルに本社を置くインテックは全国でトップレベルのIT企業です。その他にもIT企業の裾野があります。 
 5月15,16日にG7環境相会議が国際会議場で開催されました。市電の中で観光客から「富山は美しく街路の花を準備しましたね」と言われました。私は「特別ではなく、花が街路に飾られるのは例年のことですよ」と内心得意に応えました。
  富山市41万人、金沢市46万人の人口は10年の間に逆転すると私は予測しています。
  富山には漁港が16もあり、朝水揚げされた魚が豊富で美味いと言われます。スーパーでも魚屋でも朝獲りたての魚を買えます。 東京から来る芸能人は、口を合わせたように富山の魚は美味いと言い、市民もまともに受けているようです。私の体験では寿司屋や料亭では金沢でも東京でも魚は新鮮で美味しいのです。繰り返しますが、富山では新鮮な旬の魚を誰でも買えることが生活の利点なのです。
 これまで書いてきたように、富山は薬と魚だけではないことをお分かりになったと思います。 是非とも有志のグループで富山に来てください。  (完)               

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2017年11月4日土曜日

#183 北朝鮮の行方と難民問題ーーヨーロッパの極右政党

  今、ヨーロッパの各国で極右政党が国会の議席を得て台頭しています。彼らの共通点は大量の移民が流入して社会の混乱を招いていることへの反発です。 
 さて、日本では極右政党が出てこないのはなぜでしょうか?
 一つは移民や難民の大量流入がないからでしょう。これからはどうなるのでしょうか。 
 諸君の時代には北朝鮮からの難民の問題が起きます。どう考えますか? 

北朝鮮はどうなるか 
 私は年来ビジネスでも政治でも一つの問題について戦略を考えることが好きだった。今も変わらない。
  今朝、朝鮮半島の地図を見ていて戦略的に思考をめぐらせた。 
  先ず動かせない事実は、金委員長が交渉に乗ろうと乗るまいと核とミサイルを放棄することはないということだ。もし放棄すれば彼は地位を失い、体制が崩壊するからだ。 アメリカを敵国として煽り、国民をあざむいている。交渉か圧力かという議論はむなしい。 
 アメリカは表向きでは外交的解決を語る間に、北朝鮮のあらゆる情報を集めて攻撃の準備を進めてきた。今や準備は整ったと思う。 
 アメリカ軍は先ず国境近くに配備されている北朝鮮長距離砲部隊を、素早く戦闘機と爆撃機で絨毯爆撃する。その間に、海上から空母と駆逐艦からミサイルのトマホークで北朝鮮の核基地とミサイル基地を破壊する。さらに首都周辺の基地を攻撃する。
  これでソウルの被害を最小にできる。我々は北朝鮮による「ソウルを火の海にする」という脅しをまともに受けてきたと思う。 
 首都ピョンヤンの市民と軍人はアメリカの脅威について完全に洗脳されているかもしれないが、疑いを持っている北部の市民と軍人は大挙して中国に逃げるだろう。 北朝鮮の体制が崩壊した後は中国に統治させる。アメリカは関与しないだろう。もともと北朝鮮には関わりがなかったのだから。
  こんなことは外野席の私よりアメリカの軍事プロには分かっているだろう。 
 そして中国政府は望まないかもしれないが、彼らは38度線を守る必要があるから他に選択がない。中国式の一党独裁政治が持ち込まれる。選挙により指導者を選ぶ先進国流の民主主義が混乱を招くことに比べれば、独裁がまだましだ。国連の委任統治も成功しないだろう。北朝鮮の核が除かれるなら世界も支持するはずだ。

 ◇ アメリカの軍隊と軍需産業 
 世論ではアメリカの攻撃はあまり支持されていないようだが、いつものことながら、軍事産業からの圧力がある。湾岸戦争からイラク攻撃までそうだった。 
 町の友達数人は、アメリカの軍隊は一定期間に戦争をしないと組織がもたないのだと言っていた。映画の話だからどこまで信用できるか分からないが、ベトナム戦争を主導したジョンソン大統領が、「きみたちに戦争をやるから、私の選挙を支援しろ」というシーンがあった。軍事産業も戦争なしではもたないのだろう。  今、アメリカの軍隊も軍事産業も金委員長の次の一手できっかけを待っている。

 ◇ 北朝鮮からの難民 
 北朝鮮が崩壊すれば中国や韓国に難民が押し寄せる。在日朝鮮人の組織がある日本にも海路来るだろう。彼らは命がけなのだから日本海の荒波など恐れない。 人口2500万人の国から一割が来ても25万人。現在北朝鮮系の在日は約30万人と言われるから、これと比較しても新規の北朝鮮難民に日本政府が対応することは難しい。
  もっとも、ヨーロッパには100万人を超える難民がアフリカから流入していることに比べれば大したことないという意見があるかもしれないが、今は年に30人くらいの難民認定をしていないから、大変なことだ。 
 さて、世論はどう動くか? ◇ 日本の極右勢力 今は自民党の一強体制だから、右翼が活躍する状況ではない。しかし、今の自民党は田中元首相が言ったように総合商社化しており、政策が広がり過ぎている。世論に迎合して本来の国益を重視する保守党ではなくなろうとしている。
 無理に膨らませた風船はいずれ萎むものだ。 
 そこで、大量の難民が押し寄せた時、内外の世論によって人道主義の高まりに対して論理的に対応できるかどうか。その時の批判に耐えられるか。自民党が腰くだけになり、 旧来の左派の人道主義者が勢いづくと右翼が台頭する隙を与えることになろう。 
 我々年寄り世代が生きている間に難民の国難が起きるか、起きても眺めて過ごすだけで力にはなれない。
  さて、諸君は「情」に流されず、冷静に「理」につけるか?          (完)  

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2017年10月21日土曜日

#182 小池代表の迷走――ヘボ八卦見の見立て

 いよいよ明日は投票日。
 公示前後はテレビも週刊誌も安倍叩きに集中し、最近では小池叩きばかり。メディアはなんと軽いものか。 
 諸君は「一体どうなっているのか!」と困惑したでしょう。その上、野党が左派と保守が複数に分裂してますます分からない。 
 諸君はどう対応したらよいのか? 

  ◇ 左派、リベラルとは何か? 
  私が若い頃は保革対立と言って保守派と革新派の政党が争い、分かりやすかった。 革新派の社  会党と共産党はマルクス主義のイデオロギーにとらわれて限界があった。 それが今では共産党を除いてイデオロギーにこだわらない、そして社会主義を目的とする政党がなくなった。多分、このために革新に代わってリベラルが使われるようになったのだろう。イデオロギーにとらわれない左派と呼ばれることが多い。
  自民党の中にもリベラル派と呼ばれるグループがいるから分かりにくい。そこでおおざっぱに整理してみると、リベラルは改憲反対、中小企業と弱者支援、社会保障改革、国益より個人重視などの政策を掲げる。これに対し、保守は改憲、大企業と富裕層優先(保守の政治基盤)、国益重視の政策を取る。 
 まあ言ってみれば、リベラルは漠然とした印象を国民に与える煙幕みたいなものだ。

 ◇ 幻惑が得意技の小池代表
  希望の党の名前自体が党のイメージとして漠然としていて、しかも掲げる政策もば らばら。しかも演説では政策の説明より、安倍政権に対する批判に時間を割いている。
 彼女はカタカナ外来語が好きでフェイズアウト、アプライ、ワイズスペンディング、ベーシックインカム、パラダイムなどで有権者を幻惑している。特に「模範」と訳されるパラダイムは私も知らなかった。調べてみると、科学史家が著書で使った言葉であり、その後意味が誤解されるので著者自身が撤回したという。つまり死語なのだ。 
 カタカナ外来語が持つ危険は、使う方も充分分かっていないし、まして受け取る側も分からないか、分かっても解釈はええ加減なことだ。こういう幻惑語は政治家が使うべきではない。
  彼女の幻惑技法に引っかかって民進党から希望の党に駆け込んだ議員たちは、少なからずが後悔していると思う。
  もう一つ、彼女は日本が国際競争力を失っていることの例として、東大が世界ランキングで落ちたことを挙げている。あれは論文の数で評価されており、たかが東大がランクを下げたことで、日本の国際競争力が落ちたというのも幻惑だ。  
 これも有権者を惑わす彼女の幻惑技法だろう。大体私は日本をどれだけ理解しているか分からない欧米の機関がつくる国際ランキングそのものを信用していない。

 ◇ 選挙の行方
 もう小池代表の資質が見えてきた今、希望の党は失速した。有権者は都知事が国政政党の代表であることをおかしいと思い、誰が首相になるのか分からない政党には信を置かないことは当然だ。
  彼女が繰り返す「しがらみのない政治」もよく分からない。良し悪しあるが、政治はしがらみの世界ではないのか。多分、安倍首相の森友・加計問題のしがらみを指しているのかもしれない。解散は「森友・加計かくし」とも言うが、この問題は検察と会計検査院が調査中であるし、国会が再開されてから追求することができる。選挙の争点としては弱い。小池代表は大胆な個人的決断をできても、大局を見られない。 仮に、安倍首相がこの問題に関わりがあるとしても、国政の大局的な見方をすれば小さな汚点にとどまることだ。
  諸君、清廉潔白であるが政策の選択力と実行力が伴わない政治家と、裏があっても政党のリーダーとして実行力がある政治家のどちらを選ぶか? 結局、「自民党はもうええ」の有権者を「仕方なく自民党」(私もこの一人)が上回って、安倍首相の戦略的解散が功を奏し、自民党が単独過半数を獲得するだろう。  

 ◇ 労働党について
 前回もその前も労働党を育てることを提唱した。労働党名のイメージが良くないという意見をもらったが、多分、朝鮮労働党のせいだろう。朝鮮労働党は共産主義ても何でもなく、単に金委員長と党の独裁の道具に過ぎない。中国共産党も同じ。
  私か意味しているのはイギリスの労働党なのだ。戦後アトリー、ウイルソン、キャラハン、ブレア、ブラウンの5人の首相を輩出し、3,4回に1回は保守党に代わって政権を取ってきた。 
 オーストラリア、ニュージーランドにも政権を担える労働党がある。 
 諸君よ、次の総選挙、次の次の総選挙までに労働党の道筋をつけよう。総選挙の度に既存の野党が野合、分裂を繰り返すようではいつになっても自民党に代わる政権党が生まれない。
 さしあたり、インターネットで「労働党ネット」を立ち上げて若者の連帯を呼びかけようではないか。次代の政治は諸君の双肩にかかっている。                                       (完)   

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2017年10月10日火曜日

#181 次回総選挙までに労働党――次代のための政治

  総選挙が公示になりました。野党勢力の大混乱には驚きました。諸君もそうでしょう。  民進党の分裂で投票先に困っているでしょうか。私もその一人です。アメリカ人が使う言葉は、Life goes on と言います。 あきらめたらお終いです。

 ◇ 保守の二大政党? 

 新しく立ち上がった小池政党の「希望の党」の参加者は保守の二大政党を目指すと言っている。アホか。だから共産党などから自民党の補完政党だと言われる。 小池代表は、「希望」、「政治をリセットする」、「しがらみ政治からの脱却」、「ワイズスペンディング(?)など大衆受けする美名を使うが、空虚なこと。 「希望の党」はしょせん当選に不安を感じる議員の駆け込み寺であり、新物食いの有権者がある程度投票するだろうが、過去の新党がそうであったように最初だけ。政権を担うことはできない。
  政策が反対である希望の党に大挙して駆け込んだ民進党議員は信用できない。

 ◇ 民進党は頼りにならなかった 

  転党派の私は前々回の総選挙では当時の民主党に投票した。民主党は政権を取ったものの結果は最悪だった。以来民主党(現在は民進党)に対する不信感は今も残っている。 
  次世代のために民進党の有志が再建するために私の提案として下記を挙げる。

 ① 党名を「労働党」に改めること。
  これで労働者と中小企業のための政策をはっきりさせ、低所得者層の支持も得て立位置をはっきりさせる。かつての社会党右派、民社党の支持者、若者世代を結集すれば政権獲得につながる。次期総選挙まで時間がかかっても我慢する。 
 ② 財政再建を第一に掲げること。
  今の自民党と首相は財政再建に対する規律が緩んでいる。直接景気に影響しないことで、予算支出を抑制する政策を取ること。 例えば、国連支出の減額、国連大学などを廃止する。現在、政府が提案している出国税を観光の振興目的に限らず、一般会計にも使う。当分の間PKOのために自衛隊を派遣しない。これだけやれば日本の最悪の財政を世界に知らせることができる。
 「日本第一」の政策は政権交代の時しかできない。

  ③ 国連大改革を打ち出すこと。 
 アメリカは年来国連の改革を唱えてきたし、数年の間拠出金を止めたこともあり、 最近ではブラジルが拠出金を止めた。結局、アメリカも伏魔殿の改革をできなかった。しかし、トランプ大統領が唱え、実行するかもしれない。決議だけで役に立たない安保理事会は必要な時だけ招集し、常駐の各国大使を置かない。人道支援の機関は必要であるが、事務局を最小にして現地の機関を支援する。国連改革は自民党政権では提案すらできないだろう。
 ④ ええかっこし外交に歯止めをかけること。
 首相は国際的名声を挙げること(新外相も)に腐心しているようだが、アフリカや 中東の国への資金援助、アジアの国への巡視艇の無償提供など、ばらまき外交が止まらない。  国内でも北極海観測のために、3400億円の建造費をかけて砕氷船をつくるという。野党全体で反対すべきだ。そうすれば、財政再建にめどがつくまで先送りし、南極調査船の転用に知恵が出るだろう。 新政府は官僚の言いなりにならないこと。 ④ 2兆円経済対策に反対すること。 批判がやかましいが、アベノミクスによる経済効果は今一歩のところまで来ている。企業の業績も良く、地価も上がり始めた。株価も為替も安定し、賃金も上がっている。経済指標も改善しているのに、さらに首相は財政黒字化を先送りして、2兆円の経済対策を打つという。今は我慢して成り行きを見守ることがよい。 首相殿、功をあせるなかれ。
 ⑤ 所得格差は別問題として取り組むこと。
  現在、どの国でも所得格差の問題に直面している。アメリカの所得格差もひどい。 
 世界を見れば日本の格差はまだましな方だ。大国の中では最悪の国は中国だろう。鄧小平の「富める者を増やせば残りはついて くる」政策による後遺症が今もある。一人当たりの平均所得は日本の1/10と言われる。失業率も高い。これから取る中国政府の政策は参考になるだろう。  
 今、日本では人手不足の状態だから、いずれ非正規社員、女性、若者の処遇は改善されることになろう。労働党に期待される課題だ。
⑥ 安保関連法、改憲、原発に反対するのではなく、条件闘争をすること。
 安保関連法の廃止を求めずに北朝鮮危機が終わるまでの間、限定法に変える。世界が激変する今、大国は軍事力なしでは国を守れない現実がある。現にある自衛隊を憲法に明記すべきだ。原発についても即ゼロではなく、「早く再稼動、早く廃止」が現実的だ。 
⑦ 高齢者福祉を改めること。  
 首相は新たな政策として「全世代型福祉」を打ち出した。財源は消費税増額の一部を充てるという。これも財政再建から遠のく。  
 今、「所得格差」ばかりが、焦点になっているが、「資産格差」も問題にすべきだ。 
 労働党が高齢者福祉を取り上げ、高所得者に対し年金を廃止し、医療保険料の負担を重くする政策を出す。さらに踏み込んで所得だけでなく、資産が多い高齢者も対象にすべきだ。資産は国税庁に払う固定資産税で把握できる。 
 金持ちも資産持ちも反対するだろうが、国家予算が健全化されるまでは我慢してほしい。自民党にはできない。「全世代型福祉」は当面「若い世代型福祉」にすべきだ。
  
  諸君、労働党がどこまで上記の政策を掲げるかが政権獲得の鍵であると思わないか?労働党を育てるのは諸君次第だ。              (完)

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2017年9月20日水曜日

#180不二越会長の暴言、続き――富山篇②

 7月25日の北日本新聞が小さな記事で本間会長が副知事の面談要請を受けないことを伝えた。市会議員の政務活動費の不正使用については何回も紙面で追求したが、本件に関しては初めてのフォローだった。市民にとっては関心事だったからだ。しかし、暴言は民間企業の問題とは言え、本当は県民全体に関わる重大事だ。 
 加えて、不当な採用方針は違法であり、富山人が侮辱されたのだから、本来ならもっと追求すべきだ。 
 富山の若者が影響を受けるのだからもっと関心を持ってほしい。 
 諸君はどう思いますか? 

 ◇ 会長がOB会全員に送った文書  私はOB会員ではないが、偶々会長の文書のコピーを入手した。5頁に及ぶこの文書では、「不用意で不適切な表現」に対して詫びているが、違法な採用方針と富山人を侮辱したことについては撤回もしていない。本来なら社員OBのみならず、富山人全体に対して謝罪し、発言を撤回すべきだ。

 ◇ 閉鎖的と保守的 

 会長は富山人と社員を閉鎖的と呼んだが、保守的と呼ぶべきだ。よく似ていても違 う。私は在職中にも技術者が閉鎖的とは思わなかった。ただ、新技術に対しては慎重で直ぐには動かない傾向があった。そして多くは否定的な態度を見せる。 
 全体から見れば、どの企業でも、既存事業の技術改革や持てる技術の継承に貢献する技術者が、新技術に関わる技術者や研究者より多い。両者は車の両輪であり、前者は保守的な人材が多く、これが問題ではない。  
 10年も前、当時の社長から役員と幹部を対象に講演に招かれたことがある。この時に機械業界では給料が高くはないから、一つの提案として現場技術者と開発研究者の給料を別体系にして優秀な人材を採りやすくすることを述べた。
  私の考えでは、わざわざ東京に本社を移転しても望む人材を採れるかどうかは不確かだろう。  要するに、保守的な技術者を生かすのはリーダー次第なのだ。

 ◇ 内定者が逃げた

 会長は前述の文書の中で、「ロボットのエンジニアを10名ほど面接し、内定を出しました。しかし、富山勤務だと告げた途端、6名が辞退してきました。こんな現実を目の当たりにして、早く東京に本社を移し、(以下略)」と書いている。これは論理の飛躍か認識間違いだ。なぜなら、彼らは知名度が高い第一志望の他のメーカーに行ったのであって、不二越では富山勤務だから逃げたのではないと思うからだ。  言うまでもなく、不二越に面接に来る学生なら事前に富山の会社であることくらいは調べている。もっともホームページには「本社東京」、「富山事業所」と書いてあるが。  時代に逆行してでも、そんなに東京が良いのか? 

 ◇ 社名とブランドの知名度 

 不二越の社名は1928年(昭和3年)、創業者が仏典の不二から取った。正に対する反、その合への昇華を期するものと言われる。 
 私は変えた方が良いと思っていた反面、ユニークでどこか重みがある社名がやはり良いとも思っていた。多分、社員の多くも同じ思いだっただろう。 
 結局、私が貿易部勤務中に、英語社名だけFujikoshi Corporationを社名とブランドを合わせたNachi-Fujikoshi Corporation に変えた。これは正解だと思った。 
 もともと消費者製品を持たない地味な機械メーカーの知名度には限界があることは不二越に限ったことではない。 
 ある知人は「一流大学の二流人材より二流大学の一流の人材」が良いと言っていた。 私も共感する。東京の人材にこだわることはない。

 ◇ 月刊誌「Wedge」の広告 不二越は長年「Wedge」に文章が少ない写真主体の広告を掲載している。各製 品を一つずつ取り上げ、本当に美しい写真で社格を高める高級な広告だ。 
 役員も社員も是非見てほしい。これまでの広告すべてを冊子にして代理店にも配布してほしい。自信を持てることもさることながら、不二越が歩むべき方向を示唆してくれるだろう。 
 不二越の社員には「知名度などくそくらえ!」という気概を持ってほしい。   (完)                                               

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2017年8月27日日曜日

179 不二越会長の暴言――富山篇①

 大阪から富山に移住して6年目、新しい土地で郷土意識を持つようになってきました。  不二越問題をきっかけにして生活地の問題を富山篇として書き始めることにしました。諸君がどの町に住んでいようと地方の町を考える上で参考にしてほしいと思います。 
 今回、事の起こりは不二越の本間会長が7月5日の記者会見で地方蔑視の暴言を吐いたことです。 

 ◇ 決算発表の記者会見で暴言 

 二つの発言は、富山人は閉鎖的であるから富山出身者は採用しないと言ったこと。他は本社を東京に一元化すること。  採用について地元紙の記事によれば、「(前段略) 富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です。 今年も75名くらい採ったが、富山で生まれて地方の大学に行った人でも極力採らないです。学卒ですよ。地方で生まれて、地方の大学もしくは富山大学に来た人は採ります。しかし、富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。なぜか。閉鎖された考え方が非常に強いです。偏見かも分からないけど強いです。  閉鎖的な考え方が強いです。いや優秀な人は多いですよ。富山の人には。だけど私の何十年、40年くらいの会社に入ってからの印象は、そういう印象が強いです。ですから全国から集めます」 
 当日のNHKテレビの全国ニュースで会長の生の声を聴いたから、新聞報道は間違いがない。     県民も不二越OBも怒っている。下記には不適切な表現があるが、発言者の意見を尊重してそのまま書く。 

 「彼は富山人をよく知らないまま蔑視している」 
 「東京という一地方しか知らない彼は他の地方を見下している」 
 「教養がない。人間力が弱い」  「多彩な人材がいる不二越で彼のような二流私大の経営学部卒でなぜメーカーの社長、会長になれたのか? 権力闘争に強かったのだろう」
 「富山大の学生は不二越を第二志望か第三志望の就職先にするやろ」 
 「ホームページで謝ったくらいでは済まない。退任すべきだ」 
 「こんなバカが会社の顔であることは恥ずかしい。即刻辞めろ」

 ◇ 本社の東京移転 

 この決断も彼の思考は論理的ではない。 
 「東京に本社を移せば良いソフト技術者を採れる」と言うが、IT技術の卒業者には売り手市場でベンチャーから大企業のIT企業、それに高名な東京本社のメーカーまで就職の選択は広い。とてつもなく広い。こんな就職戦線の中で「東京に本社を移しても人材を採れない」かもしれないのだ。  目標が優秀なソフトの人材を採ることなら、富山のIT企業から転職者を求めることが現実的だ。全国的に知られていないかもしれないが、富山には全国でも屈指のIT企業であるインテック社を頂点として広いIT企業の集積がある。引き抜きではなく、円満な交渉で人材をもらい受けることも可能だろう。アメリカでも日本でもIT企業で働く技術者の中には、いつかメーカーの仕事をしてみたいという人材がいるからだ。
  会長が言う「富山人は閉鎖的」が問題ではなく、中途入社の人材を定着させる企業風土に欠けることだろう。だから、今、緊急に手を打つことは、本社移転より社員の意識改革と組織改革の二つではないか。
  私は北海道で学生生活をしていた時、「北海道、北海道人は閉鎖的」という声を何度も聞いたし、大阪では「京都は閉鎖的」とよく言われていた。皮肉なことに、閉鎖的な京都ではベンチャー企業から立ち上がって大企業に成長した企業が大阪よりはるかに多い。
  地元を閉鎖的と言う批難は、抱える問題を他のせいにするもので、当てにならない。

 ◇ 本社移転について私の提案 

 私は米国企業に転職するため37歳(1977)の時に退職した不二越OBである。 
 滞米中に一時帰国した時、当時の不二越社長から新橋の料亭で会食に招かれた。上下関係がない間柄のこと、日米の経営から世間事情までお互いに好きなことを話した。 
 その中で、北陸新幹線の計画が政府決定した頃、富山駅北口一帯の開発が動き出していたことに話しが及んだ。そこで思いついて不二越の「世界本社」の高層ビルを北口に建設することを提案した。この頃は北口はほとんどが空き地だった。不二越、商社、地元不動産会社の共同出資でナチビルを建設する事業会社への投資はリスクがないというのが私の考えだった。高層ビルの5階までは他社が入居、それ以上の階には不二越新本社が入る。新本社には富山工場内にある本社と東京本社をすべて集約して、海外子会社群もこの世界本社から統括するという構想だった。
   世界各国に出張してきた社長はドイツの大企業は地方都市に本社があると応えた。
  私はアメリカの例を挙げ、ボーイングの世界本社はシアトルの郊外都市人口9万人のエバレット(後にシカゴへ移転)、キャタピラーはイリノイ州の人口11万人のピオリア、テーパーベアリンクの世界最大メーカーであるティムケンはオハイオ州の人口9万人のカントンに本社があり、他にも多くの例があることを話した。  
  この時には飲み話で終わったが、私はその後も役員に話してきた。当時では時代が早過ぎたかもしれないが、通信技術が発達した今でも遅くはないと思っている。  今、北口の開発が進み、ビルの間に通る並木道、そこを走るライトレール、近隣の環水公園を含む一帯は美しい。富山いや全国でも最も垢抜けしている地域の一つだ。

 ◇ 会長退任に追い込むのは難しい 

 会長の発言は労働基準局からも違法の不公正採用を指摘された。彼の本心から出たので、不用意な失言ではない。 
  法律違反はとにかく、会社のイメージを大きく傷つけたことは重罪であり辞任に値する。 しかし、代表取締役会長は人事権を持つから、仮に気骨がある取締役が会長を批判するなら首を切られる。取締役会で半数が退任を求めたところで、半数を超えるまでに情報が漏れてしまう。みんな会社のことより自分の地位が大事なので彼らを責めてもしようがない。
 次に、株主総会で動議を出しても半数の賛成者を得る見込みはないし、多分動議を無視されるだろう。総会の議長は会長が取り仕切るのだ。この株主総会は2月に済んだので来年の総会まで時間がある。多分会長の計算に入っているだろう。 
  このように、代表取締役の地位は強い。 
  現実に、会長を退任に追い込むためには、いくつもある社員OB会と元役員が退任を求める要求書を本社に提出するしかない。メディアにも取り上げさせる。
  会長はこれから取締役会でも社員にも冷たい空気にさらされるだろうが、これも無視して会長にとどまるだろうか?                     (完)

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2017年7月17日月曜日

#178 大学まで授業料無償化ーー大衆迎合の悪例

  大学までの教育無償化の政策を掲げたのは、アメリカの大統領候補として一時人気があったサンダース議員です。多分、自民党政府が人気取りのため飛びついたものでしょう。  
 この人気取りが国政を危うくしています。さっぱり減らない一兆円もの累積債務を抱える財政危機の中でこんな財源はないはずです。
  今回は、日本の有給休暇について関連する事柄を書きます。諸君にはもう「関係ない」とは言っておられないのです。

 ◇ 大学までの授業料無償化に反対 

 諸君は惑わされるな。進路をよく考えよう。 
 先ず、無償化とは関係なく、大学は過剰供給であることには変わりがない。これが根本問題なのだ。どっちみち大学は少なからず淘汰されるのに、国費を使って学生を増やし、国費で救済することは財政を圧迫し、経済の原則に反する。 
 そもそも諸君はなんのために大学に行くのか?専門知識や技術を学べる専門学校を選ばないのか? 諸君、一度ネットで「国立専門学校」を検索することを勧める。国立だけでなく、多数の公立学校がある。授業料は安く、無償もある。地方がお勧めだ。
  諸君は思い込みしているかもしれないが、専門学校でも一般教養の科目も教えている。 専門学校でも高度なのは、中学から入り、5年間の課程である国公立の高等専門学校(略称、高専)だ。多少大学卒に対して不利に扱われるかもしれないが、技術者や研究者の世界は実力次第だ。      大事なことは、専門学校を選ぶ若者には目的意識があることだ。 
 結論を言うと、私は政府の大学まで無償化する政策には強く反対する。無償化するなら専門学校までにすべきだ。民進党は大学無償化の政策に反対できるか?

 ◇ 東京に大学や学部の新設を認めない

  東京には138の大学がある。全国の大学数780の約18%に当たる。2番目に多いのは大阪市の56であるから、大学の東京集中は異常と言える。因みに、私が知るニューヨーク市には24の大学collegeがある。ここでcollegeと書いたのは上部組織のuniversityと区別するためだ。日本ではuniversityは総合大学と思われているが、そうではない。universityというのは、会社組織で喩えれば持ち株会社に相当し、collegeを傘下に置く経営母体だ。因みに、公立の短大を含めてアメリカには約3千の大学がある。
  さて、なぜ大学が東京に集中するのか?なぜ学生は東京の大学を志向するのか? 当然、需要があるからであり、経営が成り立ちやすいからである。これは今のことで、将来も続くことはない。政府は先んじて改革に乗り出した。
  そこで、学生の側から見聞きした意見を挙げてみよう。

  ① アルバイトの口が多い。
  ② 就活に有利。
  ③ 就職先を見つけやすい。 
  ④ 東京で働ける。(東京本社で採用されても地方勤務になるかもしれない)
  ⑤ 遊び場所が多い。
  ⑥ 旅行にどこでも行ける。(実際、交通機関は便利)
  ⑦ 友達をつくれる。(友達はどこでもつくれるのに) 
  ⑧ 大学卒と呼ばれたい。 

 残念ながら、東京では勉強に打ち込める、という意見を聞いたことがない。 
 他にも親がどこの大学に入ってもいい、大学卒の肩書きを取ってほしいという希望が根強くあること。子供が結婚式で大学卒と紹介されたいと思っている。
  敢えて大学を選ばない人たちに不公平なことだ。 私は政府が無償化をするなら、専門学校までにとどめることにしてほしいと思う。諸君、よく考えて進路を決めてほしい。

 ◇ 働き改革と有給休暇改革 

  アメリカには公的祝日が8~10日しかない(州によって違う)。日本では13日もある。なぜか? それは日本ではたっぷりある有給休暇を会社が使わせないようにしているからだ。そのために社員が気持ち良く休暇を取れず、その代わりお上が定めた祝日を天下御免で休める。
  私がアメリカ企業で働き始めた時、2週間のバケーションが与えられた。6年目から3週間になった。最初は日本企業では経験したことがない長期休暇に戸惑った。私は夏と冬に分けて1週間ずつ取っていた。
  もう50年も昔のこと、立山で春スキーを楽しむために2日間の休暇届けを出したところ、労務係から「風邪にしてくれ」と言われた。最初は抵抗したが、日頃世話になっている年配者の立場を考えて従った。当時、この会社では慰労休暇と呼んでいた。 
 その後、アメリカの大学院で面接を受け、経費について調査するために5月の連休と前後に3日間の休暇を申請した時、管理者から役員まで猛烈な反対をくらった。私は強行した。
  ほんの数年前のこと、大商社の法務部に勤めるアメリカ人弁護士が1週間の休暇を取ろうとした時、「3日以上の休暇は許可されない」と言われた。会社規則にもないことで、闇の慣行に過ぎない。アメリカ人は「そんな馬鹿な」と言ったそうだ。
  つくり話くさいが、このアメリカ人は3年間の日本生活で憶えた日本語は「そんな馬鹿な」だけだったそうだ。 政府が進める働き方改革の一つとして、有給休暇問題を取り上げてほしいものだ。人手不足の中で難しいと経営者は反対するだろうが、現行の有給休暇を減らしても社員が気持ち良く休めるバケーション制度に変えるべきだ。   (完)

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2017年7月7日金曜日

#177 都議選のメディア報道に疑問ーー諸君の時代に備えよ

 都民ファーストの会が都議選に圧倒的勝利したことを伝えるメディアの過熱報道が、やっとおさまりました。 
 テレビも新聞も軽薄の一語に尽きます。今回、こういう考え方もあるということを諸君に伝えます。  諸君、リーダーたる者、政治から逃げてはいけません。  

 ◇ 負けたのは自民党ではなく、都連

  歴代知事と癒着して都政を長年牛耳ってきた自民党都連は、変化を求めた都民に楔を打たれた。構造としては、1996年以来政権を担ってきた自民党が、変化を求めた国民によって2009年に民主党に大勝させて民主党政権をもたらしたことの都政版なのだ。 当時、私も不安を感じながら選挙では民主党に投票した。
 さて、都議選の前には新聞もテレビも都民ファと自民党(自民党都連を使わない)の第一党争いと煽った。私は奇異に感じた。先の知事選では自民党が押す候補が敗れた上に、テレビは自民党都連の悪人面に見える幹部たちの顔を頻繁に出した。その上、都政とは関係がない自民党の国会議員の不祥事、失言、加計学園問題(森友問題は忘れられていた)、さらに国会の強引な運営を叩いた。 これでは自民党都連は勝てるはずがない。
  この第一党争いの報道で割を食ったのは民進党だった。消し飛んでしまった。 

 ◇ 都政と国政がごっちゃ

  都議選の後で野党が出したコメントはひどかった。民進党の幹事長は内閣総辞職を要求し、共産党の委員長にいたっては解散・総選挙を唱えた。 ちょっと待ってほしい。東京都が最大とは言え、全国47都道府県の一つである地方議員選挙で地方自民党が敗北したことで総辞職とか総選挙と言うのは、東京人政治家の奢りではないか。都政と国政をごっちゃにしている。冗談じゃない。  諸君は自分が住む県の自民党と国政の自民党の関係を考えて見るだろう。 
 今回も相変わらず勝ち馬に乗るのが巧い公明党だった。都議選と国政選挙は別として、 与党の一翼を担いながら、都民ファと組んでまんまと全員当選を果たした。私はこういう勝ち馬主義を好きではないが、公明党の考え方は正論であると思う。

 ◇ いよいよ橋元徹の出番 

 私は橋元徹が「大阪維新の会」を立ち上げた時、大阪に住んでいた。最初は弁護士のテレビタレントが出てきたかと思った。しかし、時が経つにつれ、彼はなかなかの人物だと評価するようになった。彼は持ち前のキャラクターと弁舌によって支持者を増やしていった。それから、知事から府会議員、さらに府下の市会議員にいたるまで、大阪維新の会を名乗れば当選するという旋風を起こした。変わりばえしない大阪政治に飽き飽きしていた状況下、新しいもの好きの府民は呼応した。
  彼は今、大阪維新のリーダーからも会員からも身を退き、大目標のために捲土重来を期しているのだろう。 大目標とは、東京で新政党の「日本維新党」を立ち上げて国政に進出することだ。彼なら、大阪維新の会、勢いが出ない日本維新の会、民進党の中道と右派のグループ、都民ファ支持者、その他小政党を統合できる。一般大衆の支持も得られる。
 こうして次の総選挙では自民党に次ぐ野党第一党になれると私は信じる。おそらく彼はこんなことを構想し、次の総選挙では大阪から出馬して衆議員になるだろう。 そう、都民ファは大阪維新の会の東京版なのだ。

 ◇ 首相の任命責任と内閣改造

  政治は論理だけては通用しないことは私もわかっている。しかし論理を外れると結局行き詰る。 内閣改造では稲田防衛相と金田法相は退任させられる。
  先ず、総理府の外局であった防衛庁のトップは防衛庁長官であったが、2007年に防衛省に昇格して長官は防衛大臣になった。国際情勢の変化に合わせて、今では主要閣僚になり、例えば、アメリカでは閣議で大統領の両側に国務長官(外務大臣)と国防長官が座る。 
 東アジアにおいて、日本の安全保障を脅かせる緊張状態がある今、なぜ稲田防衛相なのか? 彼女が持つ弁護士の資格は要件ではないし、国際的に2プラス2の会議に出席するから、資質のほかに外見も要件の一部だ。長い髪、ムカデのような付け睫毛、ハイヒールに少女然とした容姿。これでは自衛隊の幹部も隊員の士気も上がらないだろう。
  大臣任命には非論理的な事情があるのだろうが、この重要な時期、早く有能な男の防衛大臣経験者に交代させるべきだ。 
 次に金田法相。あのもたもたする国会答弁には耐えられない。理解も怪しい。 彼は財務省の官僚出身で財務プロ。なぜ首相は法務に素人の彼を任命したのか? あまりにも論理から外れている。法務相には弁護士資格を持つ人材の起用を慣行にすべきだろう。           (完)

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2017年6月27日火曜日

反日学者の偏向-ーアメリカの底流

  国連の人権委員会が日本政府のメディア規制について勧告しました。国連の矛先がなぜ日本なのか?北朝鮮は別格としても、なぜ中国、ロシア、トルコを対象にしないのか?フランス政府は反政府のテレビ局を事業停止にしたが、日本では起きていない。
 この背景を私なりに考えてみたい。

 ◇ 日本嫌いの底流 

 アメリカ生活中の1979年にエズラ・ヴォーゲルが書いた”Japan as Number One”という本が刊行され、評判になった。日本を前向きに評価する数少ない本なのであるが、”Japan is Number One”と受け取られて反感を買ったという一面があった。 アメリカでは日本について悪いことを報道する底流がある。 これはメディアから大学教授まで広がりがあり、一般市民の中にも少なくない。国連報告をした大学教授もその一人。日本に来て調査をしたというが、調査と取材の相手も 偏っているだろう。
 彼は慰安婦問題についても書いているが、原典資料を読んでいないので、事実誤認をしている。 それにしても、東京に駐在するアメリカ人新聞記者は本当に日本を理解しているのか?中には、例えば、慰安婦問題について事実を伝える記事を書く記者がいても、アメリカ本社で採用ないのかもしれない。日本がエエモンでは読者受けしないと扱われるのだろう。

 ◇ 対韓国外交 

 韓国の新大統領がまた慰安婦問題を蒸し返している。日本政府に謝罪も要求している。しつこい。「慰安婦の歴史問題と経済文化交流を切り離して、韓日関係を妨げにしない」 と言っているが勝手な言い分だ。
  1970年にサイゴンに出張中のこと、サウナでオーストラリア記者から聞いた話しでは、サイゴン郊外に韓国軍が韓国人女性を集めて韓国兵専用の慰安所をつくっていたとのこと。韓国軍は現地で最強と言われ、ベトコンが潜る村で村人を虐殺しているとのことだった。私に対し、市民が嫌っている韓国人に間違われないよう注意された。
  在米韓国人団体が強力にロビー活動し、韓国政府の反日戦略も巧みだそうだから、日本政府が行っている反論は劣勢に立っている。アメリカのメディアや政治家は韓国贔屓だろう。 日本政府は「つかず、追わず、離れず」をモットーにして、対韓国外交に無理することはない。 

◇ 内閣の支持率が落ちた 

 雑魚議員の相次ぐ不祥事とテロ等準備罪法(改正組織犯罪処罰法)の強行採決によって内閣・首相の支持率が、読売新聞の世論調査で41%に落ちた。朝日新聞の読者では14%だったという。なんという違いか?私は40~50%の支持率でよいと思う。これ以上なら政策が大衆迎合に傾くからだ。
 テロ等準備罪法は世論の反対が多い中で、支持率低下を覚悟した上で成立させたことは中央政府が取るべき決断だった。 テレビの取材に答えた市民は、「一般市民にも捜査が及ぶ」、「監視社会になる」、「恐い」、「戦前の治安維持法と同じ」などと言って反対する。どこが治安維持法と同じなのだ。 法律は対象を277の犯罪に絞り、繰り返し一般市民には適用されないと説明しても理解されない。戦前のように言論は統制されていないし、メディアの監視もある。もし違法捜査があれば告発できる。野党にも追求される。司法も政府にべったりではない。
  市民の実力が本当に問われることは違法の報道に注目し、摘発の支援をできるかどうかであり、法律そのものに単純に反対して済むものではない。 世界情勢に通じ、その中に日本が置かれた立場を大衆が理解することは難しいだろう。 彼らの多くは、はねっかえり左派の主張に振り回されている。
  教養レベルが高い私の友達はこの法律について理解していると思うが、「結局、完全には分からないから反対」という。私は完全に分かっていないが、ひとまず賛成した。政治はなかなか難しいものだ。
 さて、若い諸君はどう考えるか?中には得意の台詞、「関係ない」と言うか。
 
◇ 今の民進党は絶望的、政権政党になれない

 私は必ずしも親自民党派ではない。常に転党を考え、ポスト安倍首相には民進党に政権を取ってほしいと思っている。 内閣の支持率が落ちたとは言え、自民党支持が41%であるのに対し、民進党支持は7%で増えも減りもしない。民進党は今のままでは政権を取れない。
  なぜか?
 先ず、連立政権を組めるはずがない共産党に相乗りしてなんでも反対政党になっていること。 他は、社会福祉政策、国連の縮小改革、海外援助の見直し、財政改革など自民党と違う、自民党ではやれない独自の政策を掲げること。安全保障と改憲には無理に反対する必要はなく。働く人の党を目指し、イギリスの労働党を範にしてほしい。                                 (完)

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2017年6月12日月曜日

#175 天皇退位、加計学園、豊洲市場ーーどこかおかしいな

 最近、メディアがよく取り上げている話題についておかしいと思うことがあります。  諸君と考えが違うかどうか尋ねてみたい。

◇ 天皇の退位  

 結局、多くの時間を費やして一代限りの天皇生前退位を認める法案が成立した。天皇の退位表明に対して80%の国民が賛成するという世論調査の結果はとにかく、始めから天皇のご意思には反対できない状況だった。どの政党も表向き反対しなかった。
 私は20%の中の一人だった。私の意見は、天皇は外国要人と新任大使の接見、それに文化勲章の授与など皇居内行事たけにして、国内海外の旅行は皇太子を代理天皇Acting Emperorとして代行すればよいということだった。摂政など置かなくてもよい。これなら国会審議が要らなかった。         最近、富山県で天皇臨席の下、植樹祭が行われたが、地元は高岡の曳山、美術館、大企業の見学に三日間も連れまわした。地元としてはあちこち見てほしいことは人情だろう。これは高齢者でなくとも疲れる。代理天皇に代わるべきだ。
 もし天皇が表明で皇居内行事に絞りたいと表明されていれば、世論調査では80%がやむを得ないとして賛成しただろう。  時に、世論調査というものは当てにならないものだ。
 女性宮家を創設する案にも無理があり、私は共感できない。まだ男子の皇位継承がある今、急いで法制化する必要はないと思う。皇室行事に皇族の人材が足りなくなるなら、行事を減らすべきだろう。皇族行事が減っても天皇や皇族の地位が脅かされることはないと思う。それより宮内庁の意識に無理があるのではないか。

◇ 加計学園の獣医学部と前文部科学省次官

 加計学園問題に関して、前川文科省前次官の態度は見苦しい。テレビ、週刊誌、月刊誌で憂さ晴らしのように「民主主義」、「表現の自由」、「役人の矜持」などと言いたい放題。笑止千万。
 そもそも部下がつくった官邸による圧力の文書を現役の時に見たと言っているが、自身は官邸に「これはよろしくない」と忠告する役人としての矜持を持たなかった。官邸ではなく、文科省の文書なのだから、行政をゆがめたと言うなら彼自身の責任だろう。
 例えば、芸者は秘守義務を守る。旦那との縁が切れても表ざたにしないのは彼女たちのプロとしての仁義だろう。もっとも手切れ金が少ないと腹を立て、関係を表ざたにして首相を辞任させた愛人の芸者がいたな。  
 文科大臣はこれから加計獣医学部の新設について審査すると国会で発言しているが、すでに建屋の建築が進んでいる。どこかおかしいな。

◇ 交響曲「ヒロシマ」の作曲家

  「ヒロシマ」のゴーストライターが名乗りを挙げて、耳が聴こえない作曲家の地位が疑われた。このゴーストライターも仁義を破った。細部の作曲は全部自分がやったと言う。これで二人の人材が消された。 ゴーストライターは作曲家との契約を解消し、堂々と本名で作曲家として再出発すれば良かったのだ。 10年以上前に、「ヒロシマ」が世界的に評価を受けて間もなくCDを買った。今も執筆の時に聴いている曲の一つだ。ゴタゴタに関係なく、心に響く曲であることに変わりはない。
 出版界のことを多少知る私は、有名著者とゴーストライターとの間は紙一重の作品が少なからずあると聞く。作品の下書きを誰がやっても表の著者が仕上げたのであれば許されるのだろう。要するに、作品次第なのだ。

◇ 築地か豊洲か

 今だに都知事は市場を築地か豊洲にするか決められない。おかしいな。当事者の都民ではない私から見れば、結論は決まっている。なぜかと言うと、
  一つは、築地にするなら、銀座に近い一等地の築地を売らなければ、豊洲市場の建設費が出てこない。築地土地の再開発もできない。
 二つは、築地にするならすでに完成した豊洲市場の施設を何に利用するのか? 世間は「安全・安心」をごっちゃにしており、また政治家も行政も流行り言葉のように使って大衆受けを狙う風潮を広めている。
  そもそも安心は情緒的でつかみどころがないのに対し、安全は科学技術を駆使して努力できるという違いがある。 豊洲市場移転に至る怪しい面は別の課題に置いて、今は科学的技術的にできる限り安全の手を尽くすべき時だ。たとえ都民の安心意識が満たされなくとも、安全一点に徹すべきではないか。 都知事は都議選を意識して選挙戦略で逃げているように見える。時と場合によるが、都民ファーストにこだわることは大衆迎合だ。行政責任者は時に世論を超越して決断しなければならない。
  かつて美濃部都知事は「橋の建設に一人でも反対者がいれば建設しない」と言ったが、 これは民主主義とは言えない。多分喩え話をしたのだろう。             (完) 

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2017年5月19日金曜日

#174 北朝鮮と詰め将棋--諸君ならどうする?

 世間は北朝鮮問題など騒がしくて諸君も気を散らされているかもしれません。それでも身近な問題に対処することに集中してください。自分には関係ないと思うことです。
 いろいろ悩みを抱えていても、Seize the day. に徹してください。これはうつ病で自殺した名優ロビン・ウイリアムスが映画「Dead poets society」の中で使った言葉で、「今日を生きよ」という意味です。

◇ 私にも緊張感がない

 今、北朝鮮をめぐる緊張感は関係国の間で差がある。  日本は北朝鮮に敵国とされているのだから、自衛隊は長く続く常時迎撃体制の下、緊張感を強いられている。疲れも出てくるだろう。しかし、北朝鮮の兵士に比べればまだましだ。さらに金正恩と幹部は緊張の日々を送っているだろう。いつまで持ちこたえられるか。
  日本政府は北のミサイル発射に対し、止める術もなく、毎度「外交ルートを通じて厳しく抗議、断じて許せない」の声明しかできないことに苛立ちを持っているだろう。もっとも国連も非難する以外は何もできない。
  他方、我々もメディアに煽られても、地震に対するのと大して変わらない緊張しか持てない。私も例外ではない。

◇ ソウル市民の緊張

 韓国国民は戦場になるかもしれない恐怖感を持たされているが、ソウル市民の緊張感の比ではないだろう。何しろソウルにミサイルどころか、雨霰のように飛んでくる砲弾を防ぎようがない。
 そのために歴代の韓国政府は首都移転を進めようとしてきたが、わずかの政府機能を世宗市に移しただけにとどまっている。私が韓国に出張していた70年代には人口の2割、富の5割が集中していると言われていたから、政府だけが移転を実現したところで、一般市民の被害は甚大だ。要するに北朝鮮との国境が近過ぎるのだ。
  私が韓国に出張していた70年代には、「米なしの日」があり、突然サイレンが鳴るとソウル市民が屋内に避難する訓練があった。私もタクシーの運転手が逃げて、車内に一人置いていかれることを経験した。世代変わりした今は市民には当時ほどの緊張があるかどうか。
  東京も標的にされていると言うが、東京の首都移転も何十年来の課題にも関わらず、文化庁の移転が実行されただけで、大勢は変わっていない。ただ救いは北朝鮮から砲弾が飛んでこないことだ。  都民は大地震を恐れるほどには緊張感を持っていないだろう。

 
◇ 八卦見の戦略的思考  

   北朝鮮によるソウル攻撃を韓米両国が先手を打ってできないことは動かし難い現実だ。ならば北朝鮮にさらに圧力をかけることによって金正恩体制の内部崩壊を狙うだろう。  
   ここからは当てにならない八卦身の戦略を述べよう。名づけて詰め将棋作戦とする。
 先ず、黄海の韓国領海にアメリカの空母を進出させ、さらに北朝鮮の領海近く東側の日本海にもう一隻の空母を配置する。原潜も半島を囲むように海上航行させる。
 次に、韓国得意の風船メッセージを北朝鮮に送り続ける。メッセージには次のように書く。  「北朝鮮の市民、兵士よ。諸君の政府は、首都の政府と軍の幹部、首都市民だけを厚遇して、北部の市民と兵士は見捨てられている。いずれ金独裁政府は崩壊する。中国に逃げよう」
 現実に、日本でさえ、あんなに何千億円もの巨額の核・ミサイル開発に予算を使えない。まして北朝鮮GDPは日本の1/20だからいつまでも耐えられない。このまま圧力を強めて、北朝鮮にどんどんミサイルを打たせればよい。その結果、ミサイルの補充をするためにさらに巨額の予算を捻出しなければならない。中国も含めて経済制裁がますます利いてくるから、国家経済は破綻するだろう。
 韓国で朴元大統領が腹心の部下によって殺されたようなことは起きないだろうから(幹部は拳銃を持たされていないはず)、内部崩壊を待つことになるだろう。韓米の詰め将棋に北朝鮮はどう出るか?

◇ オレならどうする?

 「オレが課長なら、工場長なら、社長ならこうする」と常に考える。黙って発想力と戦略的思考力を磨くのだ。これは諸君の生涯にわたって役に立つ。  私は若い頃からこれを磨いてきた。戦略の基本は、「期間を人より2~3倍長く、人より戦略の輪を大きく」だった。
 会社の仕事でも、どんなプロジェクトでも、雇われ社長としても成功した。ただし、私が成功しなかった例では、どれも時代が早過ぎたことだ。5~10年早過ぎた。
 諸君、今からでも遅くないよ。嫌みを一つ言うと、電車の車内では誰もがスマホをやっているが、あれは思考力を殺しているようなものだ。退屈こそ発想の機会ではないか。                       (完)   

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2017年5月5日金曜日

#173 人生本と人生セミナーの流行-ーじっと苦しんでみる

 今、安易な英会話教材とならんで人生論の本の新聞広告があふれています。ほとんどの本は社会底辺の生活経験がない僧侶、作家、成功経営者が書いている。本当に諸君の悩みに答えてくれるのか?
 家族、就職、仕事、結婚などについて悩める諸君には、私のアドバイスがお役に立てるかどうか分かりませんが、敢えて書いてみます。

◇ アメリカの80年代とストライキ  

   80年代始めアメリカは大不況だった。私が78年に渡米してからカーター政権の前半に好況を謳歌したが後半になると、一転して不況になった。
 好況時には社会全体が緩み、恐慌を知らなかったと言われたほど繁栄していた町も例外ではなかった。柄にもなく、初めて結婚記念日に花束を買おうとして5時を2,3分過ぎて花屋に行ったが、店員がドアを閉めるところで「明日にしてくれ」と言われた。友達が「いない方が売れる店員」とうまいことを言っていたことを思い出した。
 訪れた代理店では受付嬢が机の上に置いた小型のテレビを観ていた。社長が買ってくれたのだという。他の代理店でも受付嬢がファッション雑誌を読んでいるのはざらだった。経営者も緩んでいた。不況になると、受付嬢がいなくなり、来客が受付に置かれた電話で担当部署に電話する仕組みに変える会社が増えてきた。
 あちこち労働組合のストが乱発した。私が勤めていた会社でも工場労働者がストを行い、 組合はただ「もっと賃金を寄こせ」の一点張りの要求で交渉のテーブルにつかない。長期化の様相になってきたある日、会社は新聞に求人広告を出した。組合員全員を解雇し、新規に組合社員を雇おうとしたのだ。これでストは終わった。
  同じ頃、全米の空港管制官組合がストに入ろうとした。就任して間もないリーガン大統領は国家公務員のストは違法だから断固として対応すると再三警告したにもかかわらず、組合はストに入った。大統領は素早く退職管制官、退役と現役の軍人をかき集めて準備し、組合全員の解雇を実行した。世間は驚いたが、しばらく混乱した後、飛行機の運航は正常化し、事故も起きなかった。 大統領はこれで社会の緩みを引き締め、指導力を確立したと言われた。リーガノミクスによって間もなく経済が好況に向かった。
 因みに、アメリカの国家公務員の中で、航空管制官と郵便局員は最高の賃金を取っている。

◇ 不況時代の人生論の本と人生セミナー  

 アメリカの不況時代には、多くの人生論の本が出版され、人生セミナー(encouraging seminar)が流行った。人は何かを求めてこれに金を払った。
 私の周囲の友達は、いろいろなことを言っていた。
 「本を読んでも、セミナーに出ても一時快感を与えてくれるが、結局何も変わらないのさ」とセミナーの出席者。  
 「セミナーは麻薬みたいなもの。一時の快感が得られるだけ」と、ソ連のフルシチョフが言った「宗教は麻薬みたいなもの」を引いて言った。    私は、多くの中で、勇気付けされて一転奮起、悩みを打開した人がいるかもしれないが、 結局、何も役立たないと思っている。私が言うことも諸君には大した役には立たないだろう。

  ◇ 人生はトータル

 
 父は大企業から分離、与えられた社長職を受けたが、部下の裏切りから経理、財務の情報が銀行に流れて、結局、他社に買収された。間もなく、父が保有する株式を強制的に買い取るために乗っ取り派の策により、裁判所が株式を受け取るために家宅捜査令状を持って自宅に押しかけた。結局、抗する術がなく、父は売却に応じた。
 小学生だった私は何のことか分からなかったが、ただ恐ろしく感じた。今もその日のことを憶えている。
 間もなく、父の親友で中小商社の社長から役員になることを勧誘されて出資した。この商社は半年で倒産した。父の金を当てにした親友にだまされたのだ。父にとっても家族にとっても苦難の時代だった。親友だからだまされたのだ。
  その後、父は友達の紹介で経理課長として中企業の旅行会社に就職し、後に発展して大企業になり部長で定年退職した。経理プロとして平凡なサラリーマンを送り、事業家になることはなかった。もともと自分の分際をわきまえていたのだろう。 父の転勤に加えて私もサラリーマンとして各地に引越しした。独立して事業家を目指すことはなかった。私は転職でリスクを経験してきたが、運良く生き延びてきた。
  私の人生では、幸運と不運、不遇と厚遇、失敗と成功、落胆と喜び、苦難と成就が繰り返された。多くの人もそうだろう。Never give upと自らに信じさせ、生死がかかる戦場と冬を越す食糧のために原野の開拓する苦難に比べればまだましだと思ってきた。
  諸君に2冊の本を薦めたい。本庄睦夫の『石狩川』と吉村昭の『高熱隋道』で、どちらも生きる勇気を与えてくれる。

◇ テレビの画像に惑わされるな

 前回で外の世界を見られない江戸時代の農家について書いた。それなりに幸せだったのだ。心をかき乱されなかったのである。 ところが、今は否応なしに成功者の邸宅が目につく。テレビでは芸能人やスポーツ選手の豪邸を見せる番組を放映する。多くは一代成金の自慢表現なのであるが、これで人は心を掻き乱される。 私はアメリカで豪邸や自家用ヨットに招かれたことがあるが、彼らの成功の満足感を他人に見せたいから人を招きたい心理があるようだ。彼らの中に共通していることは、成功すると若い嫁さんに乗り換える、急に宗教になびくことだ。もっともそうではない成功者もいる。 私は彼らを嫉んだことはない。
 私は武士のわきまえで贅沢を戒めることが生涯自分の生き方だと思っているからだ。野心は持たない。高校の校是は「質実剛健」だった。
  諸君は若いから野心を持っているかもしれない。あれこれとアドバイスをする気はない。 しかし、野心は、希望、欲望、夢とは紙一重の違いであり、生き甲斐の源泉でもあるのだ。諸君が挑戦する中でそのうち違いがいつか分かってくるはずだ。  (完)

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2017年4月14日金曜日

#172 どこかおかしくないか?ーー諸君の感性と私の感性

 現実の問題に戻ります。諸君は各々の問題についてどう感じていますか?
 私の考えにとらわれず、自分の論理と感性に基づいて考えてみてください。諸君の感性と思考力を高めてくれると思います。

アメリカの大統領令と裁判所の仮処分

 トランプ大統領の移民政策に関する大統領令が、一つの州政府の司法長官が提訴した仮処分によって即座に無効にされた。私は大統領令が良いとは思わないが、疑問に感じたことは、連邦裁判所とは言え一つの州の地方裁判所が、短時間の検討によって仮処分が国政に関する政策を即時に廃する制度のあり方に疑問を感じた。
 いくら独裁者を防ぐ三権分立の原則であれ、一つの州の司法がここまで国政に介入してよいのか?

 大統領はたとえ期限付きであっても、イスラム七ヶ国からの入国制限をアメリカ国籍者と永住権保持者まで広げたのは行き過ぎだったと思う。

大津地方裁判所の仮処分

昨年、大津地方裁判所が仮処分を下し、再稼動したばかりの関電高浜原発を止めた。 原発がある福井県の隣りの滋賀県住人が原発再稼動を止める仮処分を提訴したのだ。
 仮処分の怖い点は、日本で最高の機関である原子力規制委員会が安全とした結論を、技術に素人であるはずの地方裁判所が即刻効力のある仮処分を下すことにある。しかし、関電が異議を申し立て、約一年後に同じ大津地裁が仮処分を取れ消した。もし取り消されなければ、今も原発は停止されたままだ。仮処分を求める住民訴訟が安易に広まることが怖い。
一体、こんなに裁判所が揺れてもいいのか?
 

韓国の大統領弾劾に関する判決

 韓国の弾劾特別法廷は弾劾を認めた。私は裁判官全員の8人の中で誰一人として反対者がいなかったことに驚いた。状況証拠ばかりに見えるのに、誰も異議を唱えなかったことはた。
 おそらく、韓国では世論に逆らえないのだろう。世論は大事であるが、必ずしも世論が正義とは限らない。
 慰安婦像問題についても、他人の家の前に勝手に不快な像を置くことは許されない。それも他国の外交機関前の公道に置くことは違法だ。韓国政府は一度は撤去を命じたが、自治体は世論の圧力で像を戻させた。

 慰安婦が国(日本軍)の強制によるものということは、事実の裏取りなしに記事にした朝日新聞の誤報からであるが、韓国の大衆は知らない。彼らは自分たちの主張と異なる報道は受け入れない。後日、朝日新聞は誤報を認めて謝罪した。 

  NHKが出した「幸せの国」の統計 

 私はNHKテレビの番組、日曜夕方6時過ぎからの番組「世界のいま」をよく観る。 
 国際部の記者たちが各国の事情を分かりやすく話し、しかも流行り言葉を使わない正統日本語を使うことに好感を持っている。
 ところが、四月二日の番組ではおよそ常識から外れた統計を出し、しかも出所を明示するメディアの原則を守らなかった。どこからの統計なのか分からなかった。
 それは「幸せの国」のランクを挙げたのであるが、なんと1位はコロンビア、2位は中国で日本は20位以下だった。唯一詳しく取り上げたコロンビアの貧民街に住む人たちは、幸せの理由として「家族と地域住民との絆」を挙げ、これがありさえすれば幸せなのだと言っていた。これをコロンビア国に拡大して幸せな国に挙げていることはまったく統計的価値がない。このおかしさを無視して取り上げているNHKはおかしい。
 私は即座に江戸時代の農村を重ね合わせた。年貢に苦しめられながらも、「家族と地域住民との絆」の点では幸せだったと思う。今でも中国辺境の少数民族はそれなりに幸せかもしれない。

 これらに共通することは、まともに教育を受けていない、国の外はおろか地域の外を見られないことだろう。 

  中学、高校の先生に英検強制
 

 文科省が中学と高校の先生に対し、英検を受けさせた結果を新聞記事で読んだ。はて、文科省が先生に対し、英検を強制する権限があるのか?私は、先生は教員試験をパスした一人前の地位であるのだから、英語を必要とする先生が自発的に英検を受けることが筋ではないか。

 私には会社勤めの時に嫌な思いをしたことがある。
 貿易部勤務であったある日、突然課長が部員に英語の試験をすると言った。「会社の制度にもないことを課長の一存でこんなことをやれるのか?」、「事前に上司や人事部に相談したのか?」、「10年選手も新人もひとからげにしてよいのか?」と頭が素早く回転した。私は彼の無神経と思慮の弱さに腹を立てたが、結局、騒ぎを起こしたくなかったので受けることにした。私を技術屋だから英語に弱いと思ったのだろう。仕方ないか。

 さて、諸君が上司なら、あるいは部下ならどうするか?         (完)  

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2017年4月4日火曜日

#171 私の英語勉強法を振り返る(3)ーー安易な広告に惑わされるな

 英語について書き始めたら止められなくなりました。3連発は初めてのことです。 これまで書いてきたように、私の英語勉強法は徹底した独学で、塾にも町の会話教室にも行ったことがありません。出費はNHKラジオ英会話テキストと「Time」などの英文週刊誌の購読だけです。5年前にどちらも止めましたが、今もラジオ英会話は時々聴いています。
 諸君、金を使わなくても英語に巧くなれます。迷いを無くして新たな気持ちで目標を目指してください。

◇ 目標を何に置くか

 目指す英語(英会話)には五つを挙げられる。当然、目標によって勉強の仕方が違う。ここが大切なこと。

  同時通訳 特別なことで、英語のほかに日本語の専門用語の習得も求められる。しかも瞬時に応える反射神経、あるいは運動神経の素質が求められる。平均のアメリカ人並に英語が分かる私も同時通訳はできない。目標にしたこともない。できることは、交渉や会議で一区切りごとに通訳することだ。

  研究者など専門職 論文を書くことや発表に英語が求められる。しかし、他の人から草稿の改良をしてもらえるが、スピーチには発音の正確さを求められる。また、英語学や英米文学の研究者研究者には高度な読解力が要るが、特に英会話に堪能である必要はない。

  仕事の実務 海外駐在者や出張者、外国企業で働く人はビジネスの専門知識に加えて、一般の教養が求められる。例えば、私のように長期に海外生活する場合には、同僚であれ部下であれ、私生活においても人間性を見ている。私が目標としてきた。

 日常会話  簡単なようで意外に難しい。会話に流れがなく、話題がさまざまに飛ぶからだ。早い話、会合やパーティで初めて会った日本人と日本語で会話するのも易しくない。日頃から経験することが大切。

 接客・旅行英語 目標としていちばん易しい。用を足せばよい。野球で言えば、ゴロが来たら基本を忘れてもへっぴり腰でも捕って投げなければならない。場を踏んだらできること。

◇ 試しに英検一級 

 東京に転勤して間もなく、30歳の時に友達に誘われて英検一級を受験した。まだ英会話を始めていない時だった。友達も会社の独身寮時代から英語を勉強していた。
 あっさり二人とも読み書きだけの一次試験にパスした。二次試験のスピーチではその場で与えられた二つのテーマから、一つを選んで3分間即興で話すのだが、小学生の作文になってしまった。これで一級は不合格。
 当時、一次を受かると二次試験をさらに2回受けられる。次の試験でヒアリングは、何度も出てきたglacier(氷河)という単語が分からず失敗。スピーチはうまくやったのに残念だった。
 3回目は試験日がアジア出張と重なり、事前に協会に何度も次回に受けさせてほしいと交渉したが断られた。これで一級の資格を持っていることにはならないので、会社に届けなかった。しかし、会社の管理職資格試験では、科学論文を和訳する英語の科目で満点を取った。
 遠い目標だけでは意欲を持ち続けることが難しいから、目前の目標が必要だ。そのために英検の合格を目指してみるといい。試験は最高の集中力を出す機会だ。準一級でも一級でも試すことを薦めたい。

◇ あふれる英会話教材

 全国紙にも地方紙にも「英語の勉強は要らない」、「聴くだけで話せるようになる」、「文法は要らない」、「中学英語でペラペラ話す」という類の広告があふれている。教材の中には20万円以上もするものもある。  諸君はどう考えるか?
 記憶にとどめてほしい。どれも上記の「接客・旅行英語」についてだ。諸君がほかに目標を置いているなら無視することだ。
 ある日、同世代の友達から最も頻繁に広告を出している教材について相談を受けた。小学生低学年の孫にプレゼントしたいのだという。私は反対した。理由として、英会話でも何でも安易な道はないこと、学校の正統英語の授業を軽く見る弊害を挙げた。
 多くの親が早駆けと焦りの心理に惑わされている。私は30歳を過ぎてから英会話を始めたが、少しも遅くなかったと話した。  
 そう言えば、今の小学校の先生は、中学から必要な基礎知識を持たせる本来の授業に加えてパソコン、道徳、さらに英語も教えなければならない。これは大変なことだ。  
 日本では韓国が小学校から英語教育を義務づけていることはよく知られる。もう一つ例を挙げると、カナダでも英語圏ではフランス語を、フランス語圏では英語を小学3年生から学ばなければならない。しかし、フランス語が常用のケベック州では州外やアメリカとのビジネスに必要な英語の早期教育に比べて、英語圏でのフランス語教育はうまく行っていない。オンタリオ州に住む経営者で私の友達は、フランス語を話せない。平均の日本人の英語と変わらないレベルだ。なぜなのか?  それは彼がフランス語を必要としないからで、必要が鍵だからだ。
 諸君、日頃はこつこつと片手間に英語の勉強を継続し、いざ必要になると集中的に取り組むという私の勉強法を参考にしてほしい。           (完)                

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2017年3月28日火曜日

#170 私の英語勉強法を振り返る(2)――今からでも遅くない

 まだ書きたいことがあるので、気力を出してもう一回書きました。
 英語の勉強は、数学のように基礎の上に次の理論を学ぶ必要がなく、どこからでも、いつからでも始めることができます。例えば、仮定法がうろ憶えで、よく分からなければ学校時代の文法教科書を取りだして確認すればよいのです。それが今ではネットで「英語仮定法」を検索すると易しい解説を見ることができます。本当に便利です。
 文法をまとめて勉強する必要はありません。必要に応じて確かめればよいのです。

   中国語に挑戦

もう10年も前のこと、台湾に何度行っても台湾の標準語である中国語(北京語)を片言しか話せないので、一念発起してNHKラジオの中国語講座を聴き始めた。
 悲しいかな、3ヶ月で挫折した。蓄積がある英語のようにはいかなかった。分かったことは、授業も試験も無しでは集中力も出ず、文法の助け無しではすべて暗記に頼らなければならないことだった。文の応用も利かない。
 ある学者によると、日本語や中国語などアジアの言語には英語やドイツ語のような文法がないという。非論理の日本語を学ぶ欧米人は苦労しているだろう。

 
  フランス人の英会話

  90年に出張でフランスを訪ねた時、家内を同伴した。日曜日の早朝、スペイン国境に近い地中海の町セッテに住む高校の同級生に電話すると、運良くつながった。そこでTGVとローカル列車を乗り継いで駅に降りると友達が出迎えていた。半日、積もる話をした。
 別れ際に彼がファーストクラスのディナーを勧めた。アメリカでユーロレイルパスは割安だったので、ファーストクラスを買っていた。夕方の列車は混んでいた。
 女性の係員が来てフルコースのディナーを注文した。一人約70米ドルは高かったが、食事はその価値があった。やがて席に大きなプレートに食事が運ばれてくると、家内がクレームをつけ、「注文したのはこのように冷たいのではなく、熱い料理です」と言った。通路をはさんだ席から私が言った、「それはオードブルだよ」と。アメリカのレストランでは、こんな立派なオードブルを知らなかった家内はメイン料理だと思ったのだ。係員に英語がつうじなかったのは幸いだった。

 別の日、メイン通りから一つ離れた筋に古風なレストランに入った。メニューを広げて料理を決めて待っていてもウエイトレスがなかなか来ない。すると隣のテーブルのボストンから来たというアメリカ人夫妻が話しかけてきた。「フランスの一流レストランでは、メニューを閉じないとウエイトレスが来ないのですよ」と。
 ここでも英語が通じなかった。

 
  読み書きが見直される

最近では海外ビジネス、特に地方の中小企業の間でも自ら直接輸出する動きが広まって
いる。国際便が飛ぶ地方空港も増えた。私の著書『米国ビジネスマンの思考法』(講談社)が刊行された30年前には考えられなかったことだ。
 この時、私は「国際地方化」という新語を作って予見していた。当時はよく理解されず、ある学者から内向きの地方化と外向きの国際化を一つにくくることはおかしいと批判された。しかし、地方のメーカーが直接輸出している多くの例があり、90年代にはアメリカでgloballocalを一語にしたglocalizationという新語が出てきた。

 さて、中小企業が英文ホームページによって海外から製品の引き合いを受けた場合、ほとんど英語が使われる。先ず英文を読み、英語で説明してメールで返事を書かなければならない。しかも、文法に正確さが必要。ええ加減な文章では見込み客に会社の信用が得られない。
 そう、今や英語を話せるだけの英語より読み書きが求められるインターネットの時代になっている。私が接触した経営者も学生もこの変化に気付いていないようだ。

  異色の英語教室、楽しむ英語

  私が住む富山市に異色の英語教室がある。民間の経営で、週に一回20人の中高年の女性が受講者の中心で、別のクラスと合わせると50人くらいか。家内が通っている。
 異色であることは、クラスで英語の本を各自が読むだけで講義がないことだ。帰りには能力に合わせた4,5冊の本を借りて持ち帰る。受講者はただ英語が好きで楽しんでいる。
 先生は質問には答えるが、指導はしない。受講者の読書量を管理し、100万語に達すると表彰がある。受講者は3000円の月謝でここに所蔵される本をいくらでも読める。
 ここの受講者たちは英会話に興味がない。目標も持たない。ただ英語を読むことが好きなのだ。私が英語力の向上を目指してきたのとは大きく違う。このように本当に英語を楽しむグループには新鮮な驚きを持った。
 もし彼らがいつか会話に興味を持つなら読解力は大きな助けになるだろう。
 この教室を知って私も手元にある読みさしの英語本を、勉強ではなく、楽しみで読むようになった。

 ≪参考≫

 『意欲派のビジネス英語』(産能大学出版部、1986)

 今のように当時は英会話上達には、「英語を勉強しなくてもいい」、「文法は要らない」、「聴くだけでうまくなれる」という本が氾濫する時代、文法を強調する内容について、編集長は売れるかどうかと心配したが、企業や教育界の支援でよく売れた。
 絶版になっているが、各地の図書館にある。前段の発音について「日本人の発音でいい」と書いた。英米人の発音を教えられ、英語らしく発音すると、無理に唇や巻き舌を使うと癖がついてなかなか取れない。

 ≪大学研究誌に出した論文』

 大学非常勤講師として「英語で学ぶ経営学概論」の科目を担当していた時に、教育研究所の論文誌に出したもので、世界の英語の実態と日本の英語教育改革について書いている。
 英会話にうまくなっても自分の意見を述べられない問題を、諸君に伝えたい。
「岡本博志の若者塾」でネット検索し、左にリストされている小項目から「日本語英語」をクリックすると三つ目か四つ目に出てくる。
(完)

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2017年3月24日金曜日

#169 私の英語勉強を振り返る――継続と集中は力なり

 私のキャリアが知られると、どこでも個人から英会話を教えてほしいと頼まれました。しかし、私はこれまで引き受けたことがありません。私が目指してきたと同じように、仕事の実務に使うレベルの高い目標を持つ人たちに教えたかったからです。
 実際、大学や外語学校では教えてきました。  私は個人に対し、先ずNHKのラジオ英会話を一年間続けることを勧めてきました。4月から一年間継続すれば日常会話以上に巧くなれるし、熱意の物差しになります。
 断られた人たちには傲慢に見えたかもしれません。それでも継続の気力があるかどうかは英会話上達の決め手です。
 今回、高きを目指す人たちのために2回にわたって書いていきます。自慢話になりそうでこれまでためらってきましたが、要望に応えます。

◇ 英語専門外の人たちに

  私は高校時代には理科系進学のクラスで、数学も理科の科目も苦手ではなかったが、秀才のように得意科目ではなく、好きな科目は国語と英語だった。
 大学の工学部に入ると、英語とは縁が切れた。しかし、多読読書をするかたわら、限られた小遣いの中から無理してアメリカの週刊誌を購読していた。
 大学時代、野球部の選手でリーグ戦のほかに社会人野球部(通称、ノンプロ)からの招待試合が年に数回あり、キャンパスの外にほとんど出ることがない生活をしていた私には、鉄道で旅することが楽しみだった。遠征先までの車内では読書したり、囲碁の本を読んだりしている部員の中で私は英文週刊誌を読んでいた。これ以来40年、英文週刊誌を購読し続けた。
 この頃、まだ日本のメーカーが海外に工場を持つことはなかったが、私の論理思考ではいつか海外進出すると予測していた。私の英語の遠い目標はどこでもいい、海外生活をすることだった。

◇ 何を捨てるか

 野球部を引退すると、時間ができた。クラスの勉強のほかに卒論を書くことで忙しかったが、この頃囲碁と楽器に興味を持った。個人レッスンのような形で教えられるうちに、両方とも上達するためには大変な時間と練習を要することが分かった。素質もなさそうで、しばらくの間考えた末に止めることを決心した。英語とは両立しないことを悟った。
 私の父は囲碁が趣味だった。日本棋院の2段で、会社の部長を定年退職、その後も関連会社で70歳まで働いた後、完全引退した。対局を楽しみにしていたが、至近に住みながら私は相手をできなかった。代わりに義弟が相手をしてくれていた。
 私は今も心残りだ。後悔もある。  しかし、アメリカ企業に転職し、後に日系中小企業の社長になったのも、英語と技術経験のお陰だった
 何かを得るためには、何かを捨てなければならない。

◇ ボクサーのロードワークとキャンプ

 東京で社宅に住む間、3千円くらいの安い携帯ラジオをデスク、食堂、フロに置き、スイッチを入れればFEN(米軍基地放送)が出るようにしていた。ニュースは聴けるようになったが、なかなか分からなかったのは大リーグの実況放送だった。我慢した。
 幸い、海外部門に配属され、月に一度アジアとアメリカに出張する機会を得た。出張が決まると、この時だけは事前に予想される話題を想定して、英文を書き、声を出して集中勉強した。出張時だけが英語を話す機会なので、うまくは話せなかったが、まあまあ用は足りた。
 喩えれば、私の英語取り組みはボクサーのトレーニングみたいなもので、毎朝のロードワークと平常の練習を続け、試合が決まるとキャンプして強化練習をする。この方式だ。

◇ 英語と柔道の授業

 高校時代、一学期に週二度体育正課で柔道があり、必修だった。もちろんこれで有段者になれない。有段者を目指すなら柔道部に入るか、町の道場に通わなければならない。
 また、英語の授業だけでは英会話にうまくなれない。今は話す英語が重視されるようになったが、それで英会話が実用レベルまで巧くなれることはない。巧くなるには英会話部に入るか、塾に通わなければならないだろう。  
 にも関わらず、柔道の先生は非難されることがないのに、英語の先生は「英語をしゃべれない。生徒もしゃべれない」と非難される。おかしなことだ。  私は文法と読み・書きは英会話の基本であるという趣旨の著書が50年以上前に刊行され、これがきっかけで英語教育専門誌に寄稿した。柔道との比較もここで書いた。
 帰国語、NHKテレビなどで英語教育改革に関する対談番組を観たが、文科省の改革を支持する論者は国際化の時代を論拠にしていた。英語を話せないのは読み書き中心の学校教育のせいと言うのだ。
 私はおかしいと思った。「英会話を必要と感じない生徒が多いことは変わらない」、「なぜ言語大国の日本で万人が英語を話す必要があるのか」と疑問を持った。今も考えに変わらない。
 その中の一人、ジャーナリストは「一年間の対米中にパーティでは出席者とろくに会話できなかった。今の子供にこんな惨めな目に遭わせたくない」と言った。要するに、英語・会話ができなかったのは本人が「継続と集中」の努力をしなかったことで、教育制度のせいではない。恰好悪い。
 諸君、高きを目指すなら、授業で真剣に学び、その上に個人努力をすることが英会話の上達になることを分かってもらえただろうか。                                  (完)  

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2017年3月8日水曜日

#168 困難な日本の外交――韓国とロシアへの対応

 以前に本稿で私は「日本はなんとむさくるしい隣国に囲まれているのか。国際化で島国の不利を批判されてきたのに対し、島国でよかったものよ」と書きました。どの国とも日本は陸地の国境を接していないことは、恵まれています。
 若者諸君、今、日本は死活的に冷徹な外交が重要なのです。

◇ 反撃できない韓国人のやるせなさ  

 前回で韓国について厳しく書いた。私は本国韓国人、在米韓国人、通信社に勤める韓国人ジャーナリストなど人脈があり、彼らが本稿を読めば私に失望するだろう。
 私が挙げた13項目は一部を除いて私の意見ではないが、人はそういう風に受け取らないだろう。すべて私の意見だと思うに違いない。世間とはそんなものだ。
 さて、日本にはない韓国が抱える問題を述べてみよう。韓国のやるせなさについてだ。  

    1983年、アメリカからソウルに向かっていた無防備の大韓航空機がソ連の戦闘機に撃墜された。死者269人。
    1983年、ビルマ、ラングーン(今はミャンマー、ヤンゴン)で戦没殉難者廟に参列していた韓国副首相ら政府関係者らが爆破事件で21名の死者。全斗煥大統領は式に遅れて難を免れた。北朝鮮によるテロと言われた。
  1987年、北朝鮮工作員(女性)バクダードからソウルに向かっていた大韓航空機が爆破された。死者115人。
   2010年、国境近くの延坪島が北朝鮮から砲撃された。兵士2人、民間人2人の死者。
   2010年、黄海沖で韓国海軍の哨戒艦が北朝鮮艦艇から魚雷攻撃を受けて沈没。

   韓国はひたすら報復をがまんしてきた。詳しい背景は分からないが、一つ言えることは、ソウルが国境線に近く、北朝鮮が長距離砲の連射をすればソウルが「火の海になる」(韓国人の言)ことだ。  韓国の受難には同情を禁じ得ない。

◇ 戦時賠償と韓国の裁判

 諸君は憶えているかどうか、昨年ソウル駐在の産経新聞記者が逮捕されて何ヶ月も拘留された。容疑は韓国紙がパク大統領を批判した記事を引用したことだ。書いた韓国人記者は逮捕されず、日本人だけが裁判で罪に問われた。  日本でこんな裁判が起きたら、メディアの多くは非難するだろう。  
 三菱重工、不二越などが戦時下に徴用された韓国人グループが未払いという給料の支払いを求めて訴訟を起こしている。すでに朴大統領の時代に、日韓政府間で巨額の経済支援の形を取って賠償問題は解決している。
 ところが、韓国の裁判所は「国家間の賠償は民間の賠償に含まれない」という論理で韓国人の訴訟を支持した。今も日本企業が控訴して係争中であるが、日本企業は、たとえ韓国とのビジネスが被害を受けようが、退いてはいけない。さもなくば、続々と他の日本企業が標的にされるからだ。
 韓国の裁判所は、対馬から盗まれた仏像についても、もともと中世に日本の海賊によって盗まれたものだとして韓国盗人を支持した。韓国の裁判は信用できない。
 友達は言う。「好きなようにやらせておけ。今、在韓の日本大使を帰国させたままだが、 日本は対して困らないさ」と。

◇ 北朝鮮の暴挙を止められない

 マレーシアでの金正男暗殺に続き、日本に届くようなミサイル4発を発射した。日本海で操業していた日本の漁船に当たったとしても反撃もできない、賠償も払われないだろうから、韓国のやるせなさの思いをさせられる。  北朝鮮は今回初めて在日米軍基地を攻撃する目的を表明した。メディアは厚木基地が狙われると報道していたが、私は沖縄の基地を標的にしていると思う。中国政府は裏では反対できないだろう。  それにしても、北朝鮮は暴挙も辞さず、アメリカを二国間協議に引きこんで交渉する際、何を得られるのか?分からない。

◇ ロシアは変わらない

  昨年12月に山口で行われた日露首脳会談の前にはメディアが、少数意見を除いて、いかにもプーチン大統領が北方領土の一部返還で合意するかのような報道を続けた。安部首相もそういう期待を国民に持たせた。
 私も影響されたが、プ大統領が歯舞諸島の返還だけで交渉を交わすのではないかと警戒心を持っていた。なぜなら、国後と択捉の2島はロシア海軍の艦艇が通るオホーツク海に面しており、防衛上の要衝になるからだ。色丹はオホーツク海に面していないが、今は人が住み始めた。だから2島返還のかつての合意は消えた。結果は領土問題には何一つ進展はなかった。
 ロシアの目的は、歯舞を餌にして北方4島の開発に日本の金を使わせることだ。財政が苦しいロシアには、4島の開発と維持は重荷になっている。だから日本に肩代わりさせようとしている。二国間の外交交渉において、安部首相は突っ込み過ぎている。ビジネスに例えれば、買い手が買い気を見せ過ぎているようなもで、売り手のロシアに有利になることは当然だ。安部首相は父以来の悲願という情緒にとらわれて論理思考を見失っているのではないか。ここは首相も国民も一旦身を引いてロシアの売り気を待つべきだ。
 書きにくいことではあるが、冷静に考えれば、仮に2島返還が実現したとして、誰が、何人の元住民が島に住むのか?漁業権益が増えることしか考えられない。  
 ロシア政府の協定破りは伝統だ。いくらでも例がある。ロシア国民もほとんど知らされてない。ソ連が北方4島を日本が降伏してから占領したことを国民は知らされていないだろう。
 ロシア政府は変わらない。
 また、安部首相が訪露するという。彼のロシア外交はお百度参りのセールスで、今は流行らない。ええ加減にしてほしい。     (完)      

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2017年1月30日月曜日

#167 韓国の若者諸君へーー激情と怨念から脱皮できるか

 慰安婦問題がきっかけで日韓関係が悪いですね。特に、パク大統領が失脚した今、北朝鮮の脅威にさらされているのに、中央政府が統治能力を無くしています。彼らは日本から武力攻撃を受けない、国交断絶をされることはないと読んでいるから日本に対して何でもやれるのです。世界でこんな二国間関係はないでしょう。韓国は日本を甘く見ているのです。 日本の若者はどう対処するのか?他方韓国の諸君たちは国を変えられるのか?  
 
◇ 日本人は怒っている
 
 従来から韓国政府が起こす反日政策や行動は、多くが事実に反することに基づいているので、日本人を怒らす要因になってきた。今回の慰安婦問題も昨年の日韓外相会談でケリがついたはずなのに、韓国政府は合意を実行できないまま大衆世論に流されている。
 私の考えでは、昔から、特に今は韓国政府がまともな対日外交を進めようとしても、歪められた世論が足かせになっているようだ。何しろ、少しでも親日と見られるなら、国会議員になれないのだから。
 パク大統領の弾劾についても、司法の調査が済まないうちに、50万人を超えるデモによって有罪とされかねない情緒(感情)で市民は動かされるのだ。この国では中央政府も、公道を占拠している少女像を排除できない地方政府も、政府として機能しない。つまり、無政府状態なのだ。
 とても日本は相手にできない。日本人にも鬱積する憤懣が充満している。それでも怒りを週刊誌が吐き出しているだけで、日本人は我慢している。このことを韓国大使館は理解していても本国政府は何もできない。韓国大使館の諸君、危ないよ。

◇ 諸君はどう思うか、どこまでやるか?

 私の周囲でも韓国政府や韓国市民に対して怒りの声が強い。一人は「日本では反韓国の盛り上がりがない」と言う。また別の人は「日本人はおとなしいのかな」と言う。大久保の韓国人街にはデモをかけたと聞いたが、あれはお門違いだ。行くなら韓国大使館だろう。  
 さて、冗談半分の巷の声を挙げてみるが、諸君はどこまで賛成するか?

① 韓国旅行に行くな。
② 韓流ドラマの放映を中止しろ。
③ 慰安婦基金10億円を返させろ。
④ 韓国人ゴルファーを日本のツアーに出すな。
⑤ 韓国人に入国ビザを発給ストップせよ。
⑥ 日韓政府間の交渉も協議も一切中断せよ。
⑦ 韓国製品の不買運動を起こせ。
⑧ 韓国への輸出、韓国からの輸入を一時停止せよ。
⑨ 韓国企業との提携をやめよ。
⑩ キムチも焼き肉も食べるな。
⑪ 野球、サッカーなど韓国のプロ選手と契約するな。
⑫ 韓国と国交断絶せよ。
⑬ 竹島の韓国軍施設を爆撃して無人化せよ。
⑭ 平昌冬季オリンピックに日本は参加するな。

  私は①と②以外はどれも支持しない。また、⑧をやれば韓国の自動車メーカーの生産が止まる。なぜ支持しないかと言うと、北朝鮮の脅威、政治の混乱、いびつな財閥支配の経済構造、異常な教育制度、中国との輸出競争などどれもが韓国がかかえる大きな問題であり、日本が韓国いじめをすることは韓国つぶしになるかもしれないからだ。 今から40年前以来10回以上訪韓してきた私は「韓国政府」、「韓国」、「韓国人」をひとくくりにしない、そして個々の韓国人ときっちり区別してきたが、最近では韓国政府に対しても大衆に対しても嫌悪感が限界に来ている。
  しかし、やはり感情を抑制しなければならないと自戒している。

◇ 大統領を取り替えても韓国は変わらない

 韓国政府で問題なのは、パク大統領ではない。ここが大事だ。韓国の政界はほとんどすべて反日派で占められている。これから推すと国会議員は反日を唱えないと当選できない。 そして、反日議員を選んでいるのは反日市民なのだ。
 昨年、東京で開催された日韓国会議員交流会において、日本の議員の発言に対して韓国議員団が腹を立てて全員退場したそうだ。そのまま帰国したのかと思ったら、一時間後に帰ってきたという。日本人はこういう時に腹立ちを抑える。武士の心得だ。
 韓国人議員もこれが中国の場なら、こんな無礼をしないだろう。すべからく日本人に甘えている。なめているのか。
 さて、韓国の若者諸君よ、感情と怨念に歪められて論理を見失うような今の世代に国を任せていては韓国に未来はないだろう。
 諸君、日本を忘れて「わが道」を求めよ。自分が変われるか? 思ってもみよ。韓国の政治、経済、社会の大きな問題は自ら招いたもので、日本は関係ないのだから。                 (完)  

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