2018年12月30日日曜日

#204 日米のプロ野球を回顧――FENラジオから50年

 本稿では最近は深刻なテーマについて書いてきましたが、今年最後はがらっと変えて野球の話を書いてみます。  もともと対米中の1985年から物書きを始めた時は週末スポーツライターで、日本の月刊誌にいくつも掲載されました。本稿にもアメリカの高校野球について書いた小説があり、『オー、マイボーイ』で検索してもらうと出てきます。 
 今回は多くの話題が多かった日米のプロ野球について回顧してみましょう。 
 もともと小学校時代から野球狂であった私が、プロ野球に魅かれるきっかけになったのはアメリカのプロ野球が1949年(私は小学2年)に初めて来日したマイナーリーグAAAのサンフランシスコ・シールズでした。 
 日本のプロ野球が全東軍、全西軍、巨人と7戦して全敗。川上、大友、金田、スタルヒンの時代でした。当時から見れば日本のプロ野球は強くなったものです。 
 私は東京勤務時代に社宅のあちこちに風呂場などに3台の安いラジオを配置して、米軍基地のラジオ局であるFENをいつでも聴けるようにしていました。球場の歓声が入り、早口の大リーグ中継放送をよく理解できませんでしたが、後にニュースが分かるようになりました。

 ◇ 大リーグの麻薬使用が広がる
 私が大リーグの試合を初めて球場で観たのは1974年だった。 日本企業からアメリカに出張した時、週末にフィラディアまで観戦に出かけた。当時はフィリーズの黄金時代て、投手にはスティブ・カールトン、4番打者にはマイク・シュミットがいた。この二人は後に野球殿堂入りした。
  最初の印象は球場の雰囲気に日本の球場に比べて独特の華やかさかあることだった。 当時、外野手の間で麻薬が広がっていたと言われていた。アメリカ人で友達の野球通によると、鋼板かコンクリートで作られた外野フェンスにぶつかる激痛と恐怖に耐えるために麻薬を使用したのだという。 大リーグ機構はこれから麻薬の使用を禁じる対策としてソフトな外野フェンスに変えた。
 私が観戦した時にはまだ堅いフェンスで外野フライをフェンス際に外野手が追うのにスリルがあった。以後外野手の怪我が減った。

 ◇ ウイリー・メイズの引退
  アメリカ滞在中に、1973年に引退したメイズの引退セレモニーをテレビで観た。暗闇の球場のマウンドにスポットライトが当たると、メイズが立っていた。セレモニーは素晴らしい演出だった。
  彼は生涯660本の本塁打を打ち歴代3位、守備も巧く「史上最高の中堅手」と称された。サンフランシスコ・ジャイアンツ(前ニューヨーク・ジャイアンツ)では彼の背番号24は永久欠番になっている。1979年に野球の殿堂入り。
  後に長嶋選手の引退セレモニーではメイズのセレモニーと同じ演出が使われた。私には二番煎じであったが、感動的だった。

 ◇ 今年のクライマックス・シリーズ(CS)
 CSに異変が起きた。セリーグで4位に低迷していた巨人が終盤で3位になり、滑り込みでCSに出場したことだ。67勝71敗で負け越しの球団がCSに出たことは初めて。
  2007年にCSが発足した時、巨人の渡辺恒雄オーナーがCS制度に反対し、「巨人がパリーグの3位球団と試合できるか!」と言った。
  私はパリーグで優勝したライオンズのオーナーに「負け越しの巨人と試合できるか!」と言ってほしかった。巨人が第一ステージで負けたからいいものの、日本シリーズに出ていたらもっと話題になっただろう。
  負け越し球団が日本シリーズで勝って日本チャンピオンになれる可能性がある制度は早晩改革する必要がある。さしあたり負け越し球団はCSの出場資格を失うことにすればいい。
  もともと大リーグの26球団に対し、日本では12球団しかないのだから二段のCSは要らないのだ。リーグ1位と2位の球団でCSをやればいい。 しかし、CSが各2球団になると、試合数が少なくなって野球機構NPBの収入が減るから容易に改革が進まないだろう。
  因みに、NPBの経営資金は主にオールスターとCSの興行収入に頼っているからだ。
  NPBはどう対応するのか? 

気の毒だった高橋監督 
  来期から原監督に代わって巨人の補強が目立つ。補強らしい補強をしてもらえなかった高橋監督は気の毒だった。
  今シーズンの半ば、友達から巨人について訊かれた。 私は答えた。「今の戦力では3位になるのさえ難しいだろう。なぜなら下位打者のほとんどが他球団に行くならレギュラーになれないからさ」    私でさえこんな見通しをできるのに、フロントは手を打たなかった。高橋監督は若手で無名の岡本(年俸1200万円、来期は8000万円)を4番打者に育てた功績があったが、フロントは打線の弱さを認識できなかった。
   巨人の監督の人選もおかしい。巨人が監督の条件として、現役時代に有名選手だったこと、話し上手であることらしいが、これでは強いチームになれない。他の球団や大リーグの監督と比べてみれば分かる。 無理に思えるほど広島など他球団から有力選手を入れたが、はたして来シーズンはどこまでやれるか?少なくとも苦手の広島を弱体化したが。         (完)

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