2013年2月12日火曜日

#86 「守る伝統、変える伝統、つくる伝統」 ーー伝統かしきたりか?

 表題の「守る伝統、変える伝統、つくる伝統」は執筆と講演で何度も使ってきました。中小企業の経営改革においても社員の意識改革を推進する時に使いました。 往々にして伝統がしきたりに過ぎず、あるいはしがらみと言ってよいでしょう。さまざまな伝統もさることながら、しがらみは諸君が意識改革する上で障害になっているかもしれません。
    社会でも会社や官庁などの組織でもそうです。  諸君の日常生活を省みてください。ぼんやりと流されるままにされていて、思考や行動に対して意味がないしがらみの枠をはめていることはありませんか?

建国記念日とは

 2月11日は建国記念日の祝日だった。東京では祝う側と反対する側の集会が開かれた。近所の護国神社でも記念祭があった。
 私が若い頃、1966年、政府が旧紀元節の日を祝日として法制化した。なにしろ、戦前の政府が国民統一を目的として、紀元前の神話に基づいて決めたことだから、私は「歴史的根拠がない」、「戦前のしきたりに戻る」という理由で反対した。
  建国記念日は紀元前660年に神武天皇が即位したという神話に基づいているので、歴史的根拠がない。
 さて、制定から47年経った今、私はどう変わったか?
 結論から言うと、こだわらなくなった。退職者として祝日が増えた有難さはなくなったが、国家としてどこかに建国記念日があってもよいし、これで戦前体制に戻ったとも思わない。歳のせいで感性が鈍ったのかもしれない。
 因みに、韓国では建国記念日の開元節は10月3日であり、紀元前2333年に古朝鮮王国が建国されたという神話に基づいている。上には上があるものだ。
 戦前の日本が軍国体制であったという指摘のほかに、地方を統治する政治体制として中央政府任命の知事と、心を統治するため全国に県ごとに設立された護国神社がある。今は、奈良・平安時代の官選国司にならった知事は民選になっている。護国神社は国家に殉じた英霊を祀っている。戦前の伝統は変わったのである。

国の祝日、日本とアメリカ

  現在、日本の祝日は年に15日ある。アメリカの国の祝日は10日が定められている。 州によってそのほかに祝日がある。
 なぜ日本は多いのか?  日本の会社で働いた経験があるなら分かることであるが、日本では有給休暇制度がありながら自由に取りにくい。なんだかだと会社が規制をしている。
 半世紀も前、工場勤務の時代にスキーに行くのに休暇を申請したら、庶務の人から「遊びは困る、風邪にしてくれ」と言われ、しばし粘った後、人が良い年寄りの顔を立てて風邪の虚偽申請にした。他の職場との管理競争があったらしい。
 それから12年後、退職する時に、他社では誰もがするように、30日以上も貯まっていた休暇を使って退職日に決めていた。私の退職で機嫌が悪かった部門の役員から呼ばれて「キミくらいの人物は休暇を使い切るべきではない」と半ば強制された。アメリカ企業の社長から円満退職を求められていたので、もめごとを嫌って強制に従うことにした。今思えばもらえるはずだった20万円以上の金が惜しい。ちょっと女々しいことか。  

 日本で聞いたアメリカ人弁護士の話。彼は国際的にも知られる大商社の東京本社で弁護士チームの一人として働いていた。ある日、持っている有給休暇から一週間のバケーションを申請したところ、日本人上司から「まとめて取るのは困る。前例になる」と言われた。
 会社の規則にも謳われていないし、小刻みに取ったのではバケーションにならない。筋が通らない。アメリカ人としては当然の権利として筋を通すところであるが、 その時は上司の要求に従った。  日本では「そんなバカな」ということが多い、と習いたての日本語で言った。10年前のことだ。
 お分かりになったか?  「野球とベースボールは違う」とよく言われる。これにならうと、「有給休暇とバケーションは違う」と言えるだろう。  日本では有給休暇を堂々と取れるのは冠婚葬祭と連休のつなぎくらいにに限られている。
 他方、バケーションは天賦のような休暇で誰はばかることがない。私はアメリカ企業で当初2週間のバケーションが与えられ、6年目からは3週間になった。土曜から土曜まで(日曜には帰宅したので)9日間のバケーションを年に3回取り、保養地に出かけた。
 私の推測。日本では堂々と気持ち良く休めるのは祝日なのだ。だから祝日が多い。  

日給では休暇も取れない

   諸君の中には日給で働いている人も少なくないだろう。諸君は「会社員には有給休暇があるだけでもまだまし」と言うに違いない。  これから日本でしきたりの雇用条件が改善されるのはいつのことか。
#783f04;">   こんなことが伝統になることはいただけない。                  (完)

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