2011年10月12日水曜日

#58 日本の外交はお人よしーー対費用効果を考えよ

 世界の各地ではインタネットによる呼びかけで集会やデモが起きています。
 デモは私が呼ぶ中国の「ネット紅衛兵」から始まり、「アラブの春」と言われるアラブ諸国に広がって、今フランスやアメリカ各地でも行われる事態になりました。彼らのデモにはリーダーがいないこと、組織もないこと、失業率と格差改善が目的で平和集会ではないこと、若者が立ち上げたことが特徴です。アメリカでは労働組合が後追いしています。
 さて、我が国では若者の声が聞こえない。なぜなのか?若者よ、東京頼りではなく、地方から集会を起こしてみよう。

◇ 国連への拠出金を減額せよ 
 2011年度の各国の拠出金分担率は、アメリカ22%、日本12.5%(230億円)、イギリス、フランスなどヨーロッパ各国5~6%、中国3.2%、韓国2.3%、ロシア1.6%となっている。常任理事国の中でしばしば決議に対して拒否権を発動する中国とロシアの分担率が低過ぎ、日本の分担率が高過ぎることは異常と言ってよい。
 日本は世界の先進国で最悪の財政状態であり、特に、東日本震災の復興に巨額の資金が要る今こそ拠出金を減額する好機だ。2%でも3%でもいい、減額して国連に揺さぶりをかけるべきだ。
 因みに、私が滞米中の90年代に、アメリカは減額どころか、拠出金の支払いを拒否したことがある。議会が人事改革、予算削減、本部職員数カット、会計検査改革を求めて予算を通さなかったからだ。国連改革のために、ソーンバーグ上院議員(元ペンシルベニア州知事、スリーマイル島の原発事故対応で有名になった)を国連高官として送り込んだが、あまりのひどさに匙を投げた。その後、支払いを再開したが、この揺さぶりによって分担率を25%から22%に下げた。今も約千億円の滞納金があるという。
 アメリカでは長年バーチ協会という右翼団体が各地に「国連脱退」の看板を立てていた。彼らはユネスコを反米として非難し、中には「国連に金も出さないアフリカの国連高級職員の優雅なニューヨーク生活のためにアメリカの税金を使わせるな」という意見もあった。私が住んでいた町でもこんな過激な意見を言う少数派がいた。不況で失業が増えると、貧困層が急進的な愛国団体に取り込まれる。
 日本においても、拠出金の原資は我々の税金だ。3%、7億円くらいの減額ならアメリカ政府は反対できない。世界に日本の拠出金を知らしめる好機でもある。最近の震災復興や原発事故に対応する巨額予算に比べれば、拠出金の230億円は目立たないほどであるが、国家として世界に筋(論理)を通すことが日本外交に必要なことなのだ。
 
◇ なぜ日本の外交には戦略思考がないのか? 
 最近新たな投資先としてミャンマが日本企業に注目されている。
 若者世代は知らないかもしれないが、ミャンマがビルマと呼ばれる時代に、日本は長年にわたり最大級の経済支援をしてきた。それが軍事政権になると、中国と接近して援助資金を引き出している。日本の援助は忘れられた。ごく最近、ミャンマ政府は中国が進めていたダム建設を中止させた。近寄り過ぎることに警戒したのだろう。

 次は中国への支援。自民党政府は長年ODA援助として有償無償の資金を与えてきた。その中国がアフリカやアジアに国家戦略のために経済支援をしていたのだ。日本では国会議員のほかに民意として、「日本政府からの資金を使って中国政府が他国に経済支援するのはおかしい」と批判が出た。やっと小泉首相の時に中国への援助を中止した。中国政府は日本からの援助について中国国内では知られないようにしたという。我々の税金を使った支援の効果はなんだったのか?
 少しは中国の選択戦略を取り入れて、従来の日本外交を変えられないものか。

◇ 南スーダンへの自衛隊派遣に反対 
 現在、日本は南スーダンに1次に続いて2次の自衛隊調査隊を送っている。
 先日には、バン国連事務総長が来日して野田首相に、PKOとして本格的な治安部隊を派遣するように要請した。このまま行けば派遣するかもしれない。
 ここは我慢して派遣を中止する英断を求めたい。外交に対する一般大衆の関心は薄い。しかし、政府を動かすには若者世代によって民意の高まりが必要だ。
 南スーダンは今の隣国スーダンから独立したばかりであるが、中国は国境地帯の石油開発に数年かそれ以上の期間、技術者と大量の労働者を送って利権を固めている。南スーダン新政府との関係も深い。隠れ人民解放軍も支援しているかもしれない。中国政府は確固たる戦略を進めているのだ。
 さて、こんなところにのこのこと自衛隊部隊を送ることは誰のための利益になるのか?
 財政難の中、復興資金と国内経済の再建が緊急の課題であるのに、国家予算つまり税金を使う余裕はない。防衛予算も「選択と集中」に従い、東アジアの安全と権益を確保するために使われるべきだ。内向きになる、という批判には耐える時だ。
 顧みると、イラク戦争に航空輸送部隊を送る時、国会の質疑で質問者が「危険だから自衛隊派遣に反対」と言っていた。これが海外で報道されていたら、恥ずべきことだった。軍隊に対して安全が保障される紛争地などあり得ないからだ。
 これからは、派遣2原則として、自衛隊は人道のための派遣が主任務であることと、攻撃的な戦闘には派遣しないことを海外でも政府が強く広報してほしい。危険だから派遣しないと言うのは国家の面子に関わることだ。
 幸いなことに、 これまでの自衛隊派遣では戦死者が一人も出ていない。世界の軍隊派遣では奇跡か強運と言えるだろう。しかし、もし不幸にも戦死者が出たら政治家、大衆からメディアまで政府を批判して騒ぎ立てるに違いない。もともと殉職者が出る危険は自衛隊員に限ったことではない。現に東日本震災では何十人という警察官と消防員の殉職者が出た。
 参考までに、最近のデータによると、各国のPKO派遣数は下記の通り。
 中国 2041人、韓国 604人、日本 200人、ロシア 100人(航空輸送部隊のみ)。
 中国の派遣が突出しているのは、自国の権益を守るためだろう。世界に嫌われても気にしない中国外交にはなかなか太刀打ちできない。日本外交はどうするのか?
 最後に、野田首相には南スーダンへの自衛隊本部隊を派遣することを中止してほしい。万が一何かあれば政治が混乱することが避けられないからだ。
 経済政策をどうするのか?若者の雇用創出をどうするのか?
 若者諸君、ぼやぼやしていると財政赤字のツケを回されることになるぞ。(完)

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2011年10月4日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#18,10月,2011  関西の電力危機はこれからーー関西はどうなるのか?

 前回#17「大阪人の節電3.8%」で関西電力の停電対策について書いたのは9月14日でした。偶然にもその翌日、韓国では予告なしの大停電が起きました。今回はこれから書くことにします。

◇ 韓国の大停電 
 電力使用オーバーで突然韓国全土にわたり大停電が起き、復旧に5時間がかかった。平日の午後3時半のことだったから、企業から家庭、交通信号、ATMにいたるまで被害が広汎に及んだ。
 韓国では発電と送電が分離されているが、どちらも公社、つまり国の機関だから、政府は損害賠償をすると発表した。読売新聞など日本の新聞が報道した。
 電力公社は大口需要家に自主節電を呼び掛けていたというが、関電の例ほどには官民一体の徹底がなかったようだ。私が思うに、韓国は日本の政治や先端技術ほどには民生の情報収集を行わず、特に関電の動向には関心が低かっただろう。
 韓国の事例から、停電の復旧には5時間かかるという目安が分かった。

◇ 読売新聞大阪を叱る
 関西の節電率について、読売新聞は三つの違うデータを報道した。
 先ず9月11日の記事では「関電管内 節電率わずか3.8%
 続いて9月13日の記事では「節電浸透 家庭用電力16%減
 さらに9月23日には「目標乱立 混乱招く」という見出しの文中では、節電率が約5%にとどまった、と書いた。
 これから言えば、混乱を招いたのは読売新聞の方だ。 
 その日の大阪版の紙面を決める編集会議が行われると聞く。同じ記者が書いたのか、それとも別の記者が書いたのかは分からないが、いずれにしても三つの記事には整合性がないことに会議では誰も気づかなかったのか?近々の記事を記憶していないのか?大阪版の紙面は限られているのだから、せめて大阪版の編集をしっかりやってもらいたい。
 まだ新聞が伝えないことがある。例えば、万が一停電が起きたら緊急節電をどうするのか?そのまま電力供給を復帰したら遮断回路が再び飛ぶからだ。テレビ番組は後追いばかりで、出演者にも信を置けないので、私は新聞を頼りにしている。後追い報道だけではなく、先を読むことも新聞の使命だろう。
 私は滞米時代を含めて読売新聞の読者である。時々保守偏重の記事があるが、中道保守のバランスを評価し、朝日新聞など他紙はインターネットの要約版か、図書館で読む。
 かつて滞米時代にシンポジウムの基調講演講師として招かれたことがあり、全国版には「論点」に3回採用されたことがあるので、恩義の気持ちもある。読売月刊誌にも長い論文を2回掲載してもらった。かつて東京本社の親しかった知己はみんな定年退職されてしまった。

◇ 関西の電力危機はこれから
 関電は11基の原発を持っている。現在このうち7基は定期検査中か運転待ちで動いていない。さらに来年1月には残る4基も定期検査に入るので、全基が止まると言われる。
 総発電力の半分以上を原発に頼る関電にとって死活問題だ。それどころか企業から家庭にいたるまですべて影響を受ける。
 原発問題については「若者塾」#57と55で書いた。批判も受けたが、冷静になって現実を直視してほしい。
 東電の原発事故から余りにも大きな犠牲が生じた。しかし、これにより各電力会社の安全に対する緊張が生まれた、各社の社内改革も進む、産官学の利権集団と化した原子力ムラも解体される、など原発の安全性が高められることになった。
 関電による節電要請は技法においてまずかった。その一方で彼らなりに危機感を持って対処し、今回は最悪の事態を回避した。
 問題はこれからだ。まだ現実に電力危機がある限り、関西に新たに雇用を作り出す企業の進出は望めない。私が本稿#4で提唱しているように、八尾空港が伊丹空港に移転した後の跡地を企業に売却することも困難になっている。
 原発について諸君はどう考えるか?関西の市民はどう考えるか?

《情報交流》
 関西経済同友会が、御堂筋に自転車道と水路を設ける提案をした。次世代の大阪をつくるのに素晴らしい提案だ。若者諸君も支援してほしいと思う。
 もう一つ欲をかくと、御堂筋のどこかからなにわ筋に抜ける自転車道をつくり、梅田公園まで走れるようにしてほしい。梅田公園は「うめきた」に代わる名称で、本稿#13で詳しく書いた。
 
 




 
 

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