2017年5月19日金曜日

#174 北朝鮮と詰め将棋--諸君ならどうする?

 世間は北朝鮮問題など騒がしくて諸君も気を散らされているかもしれません。それでも身近な問題に対処することに集中してください。自分には関係ないと思うことです。
 いろいろ悩みを抱えていても、Seize the day. に徹してください。これはうつ病で自殺した名優ロビン・ウイリアムスが映画「Dead poets society」の中で使った言葉で、「今日を生きよ」という意味です。

◇ 私にも緊張感がない

 今、北朝鮮をめぐる緊張感は関係国の間で差がある。  日本は北朝鮮に敵国とされているのだから、自衛隊は長く続く常時迎撃体制の下、緊張感を強いられている。疲れも出てくるだろう。しかし、北朝鮮の兵士に比べればまだましだ。さらに金正恩と幹部は緊張の日々を送っているだろう。いつまで持ちこたえられるか。
  日本政府は北のミサイル発射に対し、止める術もなく、毎度「外交ルートを通じて厳しく抗議、断じて許せない」の声明しかできないことに苛立ちを持っているだろう。もっとも国連も非難する以外は何もできない。
  他方、我々もメディアに煽られても、地震に対するのと大して変わらない緊張しか持てない。私も例外ではない。

◇ ソウル市民の緊張

 韓国国民は戦場になるかもしれない恐怖感を持たされているが、ソウル市民の緊張感の比ではないだろう。何しろソウルにミサイルどころか、雨霰のように飛んでくる砲弾を防ぎようがない。
 そのために歴代の韓国政府は首都移転を進めようとしてきたが、わずかの政府機能を世宗市に移しただけにとどまっている。私が韓国に出張していた70年代には人口の2割、富の5割が集中していると言われていたから、政府だけが移転を実現したところで、一般市民の被害は甚大だ。要するに北朝鮮との国境が近過ぎるのだ。
  私が韓国に出張していた70年代には、「米なしの日」があり、突然サイレンが鳴るとソウル市民が屋内に避難する訓練があった。私もタクシーの運転手が逃げて、車内に一人置いていかれることを経験した。世代変わりした今は市民には当時ほどの緊張があるかどうか。
  東京も標的にされていると言うが、東京の首都移転も何十年来の課題にも関わらず、文化庁の移転が実行されただけで、大勢は変わっていない。ただ救いは北朝鮮から砲弾が飛んでこないことだ。  都民は大地震を恐れるほどには緊張感を持っていないだろう。

 
◇ 八卦見の戦略的思考  

   北朝鮮によるソウル攻撃を韓米両国が先手を打ってできないことは動かし難い現実だ。ならば北朝鮮にさらに圧力をかけることによって金正恩体制の内部崩壊を狙うだろう。  
   ここからは当てにならない八卦身の戦略を述べよう。名づけて詰め将棋作戦とする。
 先ず、黄海の韓国領海にアメリカの空母を進出させ、さらに北朝鮮の領海近く東側の日本海にもう一隻の空母を配置する。原潜も半島を囲むように海上航行させる。
 次に、韓国得意の風船メッセージを北朝鮮に送り続ける。メッセージには次のように書く。  「北朝鮮の市民、兵士よ。諸君の政府は、首都の政府と軍の幹部、首都市民だけを厚遇して、北部の市民と兵士は見捨てられている。いずれ金独裁政府は崩壊する。中国に逃げよう」
 現実に、日本でさえ、あんなに何千億円もの巨額の核・ミサイル開発に予算を使えない。まして北朝鮮GDPは日本の1/20だからいつまでも耐えられない。このまま圧力を強めて、北朝鮮にどんどんミサイルを打たせればよい。その結果、ミサイルの補充をするためにさらに巨額の予算を捻出しなければならない。中国も含めて経済制裁がますます利いてくるから、国家経済は破綻するだろう。
 韓国で朴元大統領が腹心の部下によって殺されたようなことは起きないだろうから(幹部は拳銃を持たされていないはず)、内部崩壊を待つことになるだろう。韓米の詰め将棋に北朝鮮はどう出るか?

◇ オレならどうする?

 「オレが課長なら、工場長なら、社長ならこうする」と常に考える。黙って発想力と戦略的思考力を磨くのだ。これは諸君の生涯にわたって役に立つ。  私は若い頃からこれを磨いてきた。戦略の基本は、「期間を人より2~3倍長く、人より戦略の輪を大きく」だった。
 会社の仕事でも、どんなプロジェクトでも、雇われ社長としても成功した。ただし、私が成功しなかった例では、どれも時代が早過ぎたことだ。5~10年早過ぎた。
 諸君、今からでも遅くないよ。嫌みを一つ言うと、電車の車内では誰もがスマホをやっているが、あれは思考力を殺しているようなものだ。退屈こそ発想の機会ではないか。                       (完)   

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2017年5月5日金曜日

#173 人生本と人生セミナーの流行-ーじっと苦しんでみる

 今、安易な英会話教材とならんで人生論の本の新聞広告があふれています。ほとんどの本は社会底辺の生活経験がない僧侶、作家、成功経営者が書いている。本当に諸君の悩みに答えてくれるのか?
 家族、就職、仕事、結婚などについて悩める諸君には、私のアドバイスがお役に立てるかどうか分かりませんが、敢えて書いてみます。

◇ アメリカの80年代とストライキ  

   80年代始めアメリカは大不況だった。私が78年に渡米してからカーター政権の前半に好況を謳歌したが後半になると、一転して不況になった。
 好況時には社会全体が緩み、恐慌を知らなかったと言われたほど繁栄していた町も例外ではなかった。柄にもなく、初めて結婚記念日に花束を買おうとして5時を2,3分過ぎて花屋に行ったが、店員がドアを閉めるところで「明日にしてくれ」と言われた。友達が「いない方が売れる店員」とうまいことを言っていたことを思い出した。
 訪れた代理店では受付嬢が机の上に置いた小型のテレビを観ていた。社長が買ってくれたのだという。他の代理店でも受付嬢がファッション雑誌を読んでいるのはざらだった。経営者も緩んでいた。不況になると、受付嬢がいなくなり、来客が受付に置かれた電話で担当部署に電話する仕組みに変える会社が増えてきた。
 あちこち労働組合のストが乱発した。私が勤めていた会社でも工場労働者がストを行い、 組合はただ「もっと賃金を寄こせ」の一点張りの要求で交渉のテーブルにつかない。長期化の様相になってきたある日、会社は新聞に求人広告を出した。組合員全員を解雇し、新規に組合社員を雇おうとしたのだ。これでストは終わった。
  同じ頃、全米の空港管制官組合がストに入ろうとした。就任して間もないリーガン大統領は国家公務員のストは違法だから断固として対応すると再三警告したにもかかわらず、組合はストに入った。大統領は素早く退職管制官、退役と現役の軍人をかき集めて準備し、組合全員の解雇を実行した。世間は驚いたが、しばらく混乱した後、飛行機の運航は正常化し、事故も起きなかった。 大統領はこれで社会の緩みを引き締め、指導力を確立したと言われた。リーガノミクスによって間もなく経済が好況に向かった。
 因みに、アメリカの国家公務員の中で、航空管制官と郵便局員は最高の賃金を取っている。

◇ 不況時代の人生論の本と人生セミナー  

 アメリカの不況時代には、多くの人生論の本が出版され、人生セミナー(encouraging seminar)が流行った。人は何かを求めてこれに金を払った。
 私の周囲の友達は、いろいろなことを言っていた。
 「本を読んでも、セミナーに出ても一時快感を与えてくれるが、結局何も変わらないのさ」とセミナーの出席者。  
 「セミナーは麻薬みたいなもの。一時の快感が得られるだけ」と、ソ連のフルシチョフが言った「宗教は麻薬みたいなもの」を引いて言った。    私は、多くの中で、勇気付けされて一転奮起、悩みを打開した人がいるかもしれないが、 結局、何も役立たないと思っている。私が言うことも諸君には大した役には立たないだろう。

  ◇ 人生はトータル

 
 父は大企業から分離、与えられた社長職を受けたが、部下の裏切りから経理、財務の情報が銀行に流れて、結局、他社に買収された。間もなく、父が保有する株式を強制的に買い取るために乗っ取り派の策により、裁判所が株式を受け取るために家宅捜査令状を持って自宅に押しかけた。結局、抗する術がなく、父は売却に応じた。
 小学生だった私は何のことか分からなかったが、ただ恐ろしく感じた。今もその日のことを憶えている。
 間もなく、父の親友で中小商社の社長から役員になることを勧誘されて出資した。この商社は半年で倒産した。父の金を当てにした親友にだまされたのだ。父にとっても家族にとっても苦難の時代だった。親友だからだまされたのだ。
  その後、父は友達の紹介で経理課長として中企業の旅行会社に就職し、後に発展して大企業になり部長で定年退職した。経理プロとして平凡なサラリーマンを送り、事業家になることはなかった。もともと自分の分際をわきまえていたのだろう。 父の転勤に加えて私もサラリーマンとして各地に引越しした。独立して事業家を目指すことはなかった。私は転職でリスクを経験してきたが、運良く生き延びてきた。
  私の人生では、幸運と不運、不遇と厚遇、失敗と成功、落胆と喜び、苦難と成就が繰り返された。多くの人もそうだろう。Never give upと自らに信じさせ、生死がかかる戦場と冬を越す食糧のために原野の開拓する苦難に比べればまだましだと思ってきた。
  諸君に2冊の本を薦めたい。本庄睦夫の『石狩川』と吉村昭の『高熱隋道』で、どちらも生きる勇気を与えてくれる。

◇ テレビの画像に惑わされるな

 前回で外の世界を見られない江戸時代の農家について書いた。それなりに幸せだったのだ。心をかき乱されなかったのである。 ところが、今は否応なしに成功者の邸宅が目につく。テレビでは芸能人やスポーツ選手の豪邸を見せる番組を放映する。多くは一代成金の自慢表現なのであるが、これで人は心を掻き乱される。 私はアメリカで豪邸や自家用ヨットに招かれたことがあるが、彼らの成功の満足感を他人に見せたいから人を招きたい心理があるようだ。彼らの中に共通していることは、成功すると若い嫁さんに乗り換える、急に宗教になびくことだ。もっともそうではない成功者もいる。 私は彼らを嫉んだことはない。
 私は武士のわきまえで贅沢を戒めることが生涯自分の生き方だと思っているからだ。野心は持たない。高校の校是は「質実剛健」だった。
  諸君は若いから野心を持っているかもしれない。あれこれとアドバイスをする気はない。 しかし、野心は、希望、欲望、夢とは紙一重の違いであり、生き甲斐の源泉でもあるのだ。諸君が挑戦する中でそのうち違いがいつか分かってくるはずだ。  (完)

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