2015年10月25日日曜日

#147 自分の感性はどこまで?――テレビ出演者がつくる世論

  日本企業から北京に駐在していた友達は、いつか、「中国人はメディアを信用しないのに、日本人はメディアを鵜呑みにする」と言っていました。
 私も共感しますが、「日本人大衆はテレビに出る評論家やタレントに自身の感性を奪われてしまう」と付け加えます。  
    諸君はスマホ中心でテレビをあまり観ないから、感性喪失症から免れているかもしれませんが、如何でしょうか。
 いくつかの話題を挙げて、諸君の自己判断材にしてみましょう。

今、マイナンバーが騒がしい  

 先ず番号通知カードが個人宛に送られ、12桁の個人番号のカードを郵送またはオンラインで市役所に申請する。諸君たちにも通知が来る。来年1月には市町村窓口で個人番号カードを受け取る。ざっとこんなことを町内会に説明に来た市役所の係員から知った。
 ところが、説明後には出席者から個人情報の漏洩について質問が集中した。この背景には年金保険機構のミスから個人情報が外部に流出したトラブルが、メディアでしばしば報道されたからだろう。待てしばし。ここで重要なことは、流出した個人情報よりも年金機構の管理の甘さなのだ。これでは個人番号の管理について疑われても仕方がない。
 しかし、考えてみると、個人番号カードには氏名、住所、誕生日、性別しか記されていないのだから、電話帳程度の情報でしかない。私の情報が漏れたところで、詐欺師グループか通販業者が利用する恐れがあるくらいか。個人番号カードにはこれらの情報が埋め込まれたICチップが貼られているという。なぜ金をかけてこんなものが要るのか?
 因みに、私が渡米時1978年に発給してもらったアメリカの社会保険SOCIAL SECURITY番号カードはぺらぺらの紙一枚で、9桁の番号と氏名それに自分の署名しかない。ところが、この安っぽいカードの主目的は年金の管理であるが、そのほかに所得税の申告、就職、銀行口座の開設、運転免許証の申請など広範に身分を証明するために使われる。滞米18年の間に、偽造など犯罪に使われたことは聞いたことがない。
  プライバシー、プライバシーと世間が騒ぐ時代がいくらかましになったと思っていたら、今また個人番号で騒がれる。 さて、諸君はテレビに出演する評論家やタレントの輩によって、自身の感性や考えに影響されていないか?彼らは政府の施策にはすべて反対し、どぎついことを言って目立たなければ飯を食えない。こんな連中に毒されるなよ。

枯れ葉マーク

 少し古い話であるが、高齢の運転者を対象に年寄りマークを車に貼る法律ができた。 この時、マークのデザインが枯れ葉に似ていると批判が巻き起こり、警察庁が急遽今のデザインに変えた。2500万円の追加経費がかかったという。
 私は枯れ葉を連想しなかったので、ある時10人くらいの会合で「あのマークを見て枯れ葉を連想した?」と尋ねると、「連想しなかった」とみんなが言った。
 テレビ番組の中で出演者の誰かが言ったのを、視聴者が追随して騒ぎ出したのだ。
 私はその後高齢者枠に入ったが、枯れ葉マークを貼りたかった。因みに、罰則規定がないので、町では年寄りマークを貼っている車をめったに見かけない。

後期高齢者

 厚労省が医療保険の赤字増大が止まらないので、対策を講じるために、高齢者を「前期高齢者(65歳~75歳)」と「後期高齢者(75歳以上)」に区分けした。これは企業では「勘定科目別管理」と呼ばれるもので、例えば、赤字の発生源がどこにあるかを知って対応を決めるのに重要な技法だ。どこでもやっている。
  ところが、私も観ていた民放テレビの番組で、おそらく経営には無知な出演者が「後期高齢者」を「姥捨て山」政策と言っていた。これが年寄り大衆に広まって反対した。 ある日、大阪の年寄り中心の会合で、「自分の感性で姥捨て山を発想したか?」と尋ねてみた。誰もがテレビで観たが、自分はそう思わなかったと言った。一人の90歳を超える出席者は、「末期高齢者と呼ぶのがいい」と言って笑わせた。
 若者諸君にはどちらの呼び名でもかまわないだろう。本当にそうなのか?

マイナンバーのまとめ

 私の記憶では90年代に個人番号制が自民党で検討された。しかし、プライバシーとか、国の個人管理強化だとメディアが煽り、反対の世論が強かった。
 一旦、挫折した後、民主党政府が政策として取り上げ、推進の途中で自民党政府に変わってしまった。民主党が起案し、自民党が仕上げたのだ。
 当時の「国民背番号」制という呼称がまずかった。今は、市役所の説明によると、法律の正式名称は「個人番号」だけだそうだ。これ以外に「マイナンバー」と「共通番号」の名称が入り乱れてメディアで使われている。ここでも、カタカナ英語が主に使われている。例によって、政府は大衆がカタカナ英語を好むと思いこみをしているのか?
 諸君に問う。終わりに、個人番号制の目的は何か? テレビによってつくられる世論を鵜呑みにするなよ。自分の感性を大切にしてほしい。             (完)

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2015年10月7日水曜日

#146 沖縄県知事と韓国大統領――その共通点は?

 怨念や感情に支配される朴大統領の資質について、日本ではよく知られています。また、内政課題、例えば経済改革に対する彼女の無策も指摘されています。
 ところが、問題はよその国だけでなく、同様なことが日本にもあります。それは沖縄県の翁長知事です。彼も怨念と感情に支配されて県政を危うくしているように見えます。
 沖縄の若者諸君、これでよいのですか? ここでは、諸君が頭に来ることを含め、次世代の沖縄のために愚見を書いてみます。
 
翁長知事は論理思考ができない
 
 メディアに報道された知事の言動を挙げてみよう。
 
  「沖縄の基地はアメリカに強制収容された」---戦勝国が敗戦国に対し、基地用の土地を収用するのは当たり前。知事は何を言いたいのか?ソ連は北方4島を強制収容したが、これは領土交換の条約を無視したことに違いがある。
  「沖縄の人々には魂の飢餓感がある」---何を意味するのか、だからどうだと言うのだ?
  「米軍基地の沖縄の負担軽減と新基地反対」---よくある「何でも反対」で現実的な思考力がない。政府も誰もがこうしたいと考えるが、沖縄の地政学的立地が当面許さない。
  「ハワイ州知事の祖祖父は沖縄の出身だから、この縁で支援してほしい」---ここまでになると日本人として恥ずかしい。ハワイ州知事が国政の問題について動けるわけがない。なるほど、翁長知事は県政の守備範囲が分からず、国政との違いを見られない一面が表れている。彼には国は単に敵対する相手でしかない。
 
 知事はハワイのほかワシントンで国会議員に会った。適当にあしらわれただろう。スイスの国連事務所にも行くという。「アメリカの基地が沖縄に多過ぎる」と告げ口外交をしている。
 
中国政府ならこうする
 
 沖縄には独立運動があるという。どっちみち国の財政支援なしではやっていけないのだから現実的とは言えない。 仮の話、琉球国として中国の傘下で自治国になるなら、中国政府はチベット方式を取るだろう。つまり、沖縄人の半分になるまで大量の漢人を送り込み、人民解放軍が駐留し、漢人の商売を支援する。その結果、沖縄人は二流市民の地位に置かれる。 さらに、沖縄の標準語は日本語から北京語(標準話)に変えられる。知事は廃止され、ホンコンのように中国共産党委員が行政のトップに任命される。
 昨今の南アジア、東アジアの中国政府の横暴を見れば、日本にとって沖縄の立地は国家の死活に関わる問題だからその備えはある。安保法制もその一つだ。中国政府はそう簡単に手を出すわけにいかない。
 
私が知事なら、諸君が知事なら  
 
 普天間基地が返還される代わり、その1/4の面積の辺野古基地が建設される。すなわち差し引き3/4は基地が減るのだ。普天間基地の広さは東京ドームの100倍(信じられない)だそうだ。本土人は沖縄人のように当事者意識を共有できないので、沖縄人の心情は分からない。しかし、逆に、心情に左右されないで醒めた目で沖縄を見ることができる。
 辺野古移転は沖縄人に良いことだと見る。本土では過半の人々が辺野古移転は望ましいと考えている。
 知事以下の反対派は、辺野古移転に代わる案を持たない。県外移設などというのは、現実にあり得ないのだから代案とは言えない。最近よく言われているように、知事の狙いは国から巨額の助成金を引き出すことにあるのだろうか。
 私が知事なら、普天間の跡地には、資格審査の前に一旦難民を受け入れる「難民村」(テントの難民キャンプよりずっとましなもの)、台湾資本を主とする「夜市」や「国際市場」、関税がかからない「経済特区」、テーマパークの「USJ」、そして「カジノ」(私は経済力がある東京や大阪の立地に強く反対)などを設ける。もう公共施設は要らない。
 翁長知事にもの申したい。辺野古移転が遅れても、外交上の信用問題はあるが、米軍も日本も困らない。そのまま普天間基地を継続すればよいのだ。知事の交渉力は弱い。
 諸君が知事ならどうする?

諸君が沖縄を変える、これしかない 

  私がアメリカに移る年、もう38年前のこと。沖縄の友達と会食した時、「県教組は偏向教育か反日教育に執心しており、肝心の生徒の学力は落ちる。だから県教組幹部は子供を鹿児島の高校に国内留学させている」という話が出た。現在、この子供世代が沖縄県を動かしているのだろうか。
 昨年10月、翁長知事が就任してからさらに沖縄は孤立していると思う。経済振興では観光以外に、本土経済ともっと密接に関係を深めなければならないというのに。
 今、有効求人倍率は全国平均で1.3, 沖縄では0.85だ。諸君がどうもがいても職が不足している。沖縄を出て他県の空気を吸うといい。仕事のほかに、沖縄の広報役を担ってほしい。

  いつか真冬に韓国の済州島に4,5日滞在したいと思ってきた。私は韓国政府を嫌っているが、理性によって韓国全体や韓国人を対象にしないように心がけている。
  冬に沖縄に行きたいが、今は嫌沖縄感を持たされているから、行くにしても八重垣などにして本島には行かない。                 (完)

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2015年10月3日土曜日

#145 中国たより――済州島4・3事件とは?

 北京在住のI氏が北朝鮮国境地域のほかに韓国の済州島事件について書いています。
 少し前置きが長くなりますが、私も済州島について書くことにしましょう。
 4・3事件というのは、朝鮮半島が南北に分かれた1948年、済州島民が独立を求めて蜂起した時、韓国の軍隊と警察が島民の5人に1人、6万人を虐殺した事件です。
 私が韓国に出張中、親しくなった技術者から、今も本土人の間には済州島民を蔑視していると聞いたことがあります。なぜか、また事実なのかどうか分かりません。
  朝鮮戦争が起きたのは2年後のことです。

 大阪に住んでいた時、済州島を舞台に老夫婦の農民と牛の生活を淡々と描く映画をミニシアターで観たことがあります。ひと昔前のフランス映画のようでした。済州島にはいつか行ってみたいと思っていました。 

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       「中国たより」

  この春、平凡社ライブラリーの一冊として増補出版された『なぜ書き続けてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島4・3事件の記憶と文学』(金石範・金時鐘著 文京洙編)を読んで、改めて1948年4月3日の済州島での武装蜂起、それに対する徹底した弾圧粛清や予備検束について系統だって知ることができました。とりわけ、済州島脱出と日本への密入国を経て、きわどく生き延びた金時鐘氏の長い沈黙の重さが印象的でした。
  済州島での事件についての詳細は省きますが、巻末資料に掲載されている盧武鉉大統領の済州4・3事件58周年記念慰霊祭でのスピーチ(2006年4月3日 済州4・3平和公園)を一部引用して、当時の韓国政府の姿勢をお伝えします。
  「国民の皆様。誇らしい歴史であれ、恥ずかしい歴史であれ、歴史はあるがままに残し、整理しなければなりません。とりわけ、国家権力によって恣に行われた過ちは必ず整理して、乗り越えていかなければなりません。国家権力はいかなる場合においても、合法的に行使されなければならず、法から逸脱した責任は特別に重く問われなければなりません。同時に、赦しと和解を口にする前に、やりきれない苦痛を被った方々の傷を治癒し、名誉回復をなさねばなりません。これは国家がしなければならない最小限の道理です。そうしてからこそ、国家権力に対する国民の信頼も確保でき、相生と統合を言うことができると思います。」 (同上書307頁)
 自らの言葉で、自らも内容を信じて、簡潔に述べられた談話だと思います。

 対北朝鮮国境に貿易地区=大橋開通目指す?
 【北京時事】新華社電によると、中国遼寧省政府は7月13日、対北朝鮮国境都市の丹東市に両国の国境地域住民が商品を取引できる貿易地区を設置する方針を明らかにした。既に承認されており、10月から運営するという。  鴨緑江を臨む丹東市の国門湾に設置され、約4万平方キロの土地に交易や物流、検査などのための施設を建設する。丹東は中朝貿易の最大の経由地。国境から20キロ以内に居住する住民だけに貿易地区での交易が許され、北朝鮮の国境住民と商品の取引が可能となる。1日8000元(約16万円)以内なら関税などが免除される。
 貿易地区が設置されるのは中国が新たに鴨緑江に建設した「新鴨緑江大橋」の中国側起点。大橋はほぼ完成しており、昨年に開通する予定だったが、北朝鮮側の事情で開通していない。中国側には貿易地区の運営開始とともに、大橋の開通を目指し、中朝の国境貿易を活発化させる狙いがあるとみられる。
 数年前から定期的に遼寧省丹東市を訪問して、丹東の提携工場との打ち合わせとともに、北朝鮮の動きを色々と教わってきました。特別区の設置や労働者派遣の話が観測気球のように上げられては、その都度「北朝鮮側の事情で」頓挫してきました。その間に丹東の工場の競争力が下がり、一部をカンボジアの工場へ移管することにもなりました。上記記事の動きが具体化するかどうか、中国から30年遅れた対外経済開放政策に北朝鮮がハンドルを切るか?そして丹東が「東北部の深圳」として変貌できるか?
 過去の経緯からみると、楽観的にはなれません。しかし、板門店で神経戦をするよりは、丹東と新義州の間を流れる鴨緑江を脱北ルートの川ではなく、溝通(コミュニケーション)のカテーテル(パイプというには、8000元/日という免税対象の規模からして憚られます)にしてもらいたいと考えています。             (了)

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