2010年6月5日土曜日

#34 選挙プロ亀井静香ーーここにも選挙の弊害あり

 本稿#32では、鳩山首相が参議院選挙まで居座ることを望みましたが、結局、辞任して菅新首相が就任する道筋をつけました。置き土産は合い討ちでニキタ小沢幹事長を辞任させたことです。
メディアはいろいろ報道していますが、私の見立ては参議院で問責決議が可決されるかもしれないという圧力が利いたのではないかと思います。なぜなら、民主党の改選議員が選挙受けを狙って3人以上が造反して賛成することは考えられるからです。
 当分、週刊誌やテレビ番組は商売繁盛します。私も当分政局について書くことにします。

◇ 亀井郵政改革・金融大臣
 亀井大臣は隠れた選挙プロだ。地元の広島では強力な後援会組織がある上に、なりふりかまわず床に頭をつけて土下座をする。「有権者なんてこれでいちころさ」なんて思っているかもしれない。彼は自分の選挙には憂いも心配もない。だから何でも言える。
 彼の唯一の関心は、小党の国民新党の子分たちを選挙に勝たせることだ。郵政改革を言えば、特定郵便局長の全国組織から集票できる。中小企業融資返済猶予法と財政出動を言えば、中小企業経営者の票を増やせる。
 小泉郵政改革について弊害があるとしても、またその改革は現下の緊急課題ではない。もっと効果と弊害がはっきりしてからでよいではないか。彼は物事を単純化して大衆に分かりやすく説明することが巧い。例えば、「小さな村で郵便局がなくなればお年寄りが生きていけない」と泣かせる。これに対し、法律や条例を改正して役所手続きと郵便業務を代行できるようにし、地元の人によるコンビニ、つまり万屋(よろずや)にすればよいのだ。
 中小企業の借金返済についても、当事者の利用でも世論の支持率でも低い。大体、中小企業政策は他の支援策と一括して政策を打ち出すのは経済産業省の管掌だ。金融庁とは金融制度と金融業界に目付けを利かす監督官庁ではないか。
 ここにも中長期の政治より、目前の選挙戦術が幅を利かす弊害がある社民党の代表で福島前大臣が何でも口出ししたように、亀井党代表・大臣にも所管破りを許してきた。

 私は亀井代表を面白いと思う。男として好きなタイプだ。
 野党議員がイエスかノーで閣僚一人ひとりに答えさせる質問(何だったか記憶にない)をした時、亀井大臣が「そんな下らん質問するな」と言って答えなかった。私も大臣なら同じことを言っただろう。

 菅首相に望む
 鳩山・小沢政権では大衆迎合がひど過ぎた。子供手当て、高校授業料無償化、高速道路無料化、夫婦別姓、外国人参政権、農家戸別所得補償などの政策は、どれも国民からの支持が低いにもかかわらず、マニフェストにこだわった。そもそも、マニフェストは政権経験もなし、行政経験もない素人集団が総選挙用に1年半も前に出したものだ。それ以後の激変を思えばもう過去のものだ。新政権ではこのマニフェストを一旦ガラポンして、国家が直面する重要課題を中心に書き換えて選挙に臨んでもらいたい。 
 例えば、社会保障目的の消費税の値上げ、財政再建のために国債発行の抑制など有権者大衆に嫌われる政策を実行すべきだ。どっちみち、民主党は来月の参議院選挙で議席を減らすことは避けられない。ここはじっと耐えて、自分の利益しか取らないのか、次世代のことも考えるのか、有権者の民度を問う機会であり、選挙のあるべき姿を見る機会だ。

◇ 再びニキタ小沢
 2003年に新進党が保守党と小沢自由党に分裂した後、衆参議員10数人の小沢自由党が民主党に合併された。総選挙の小選挙区で戦えない小党が民主党に庇を借りるためだった。
 その後、小沢が民主党代表に選ばれ、小企業の社長が大企業の社長になったようなもので、民主党は母屋を取られてしまった。喩えれば、琵琶湖の外来魚ブラックバスが在来魚に代わって湖の主になったのだ。前回の衆議院選挙で大量に新人を当選させ、今や150人に増殖して党内最大グループになった。ところが、今回の党代表選挙では小沢グループが支持したと言われる樽床候補に129人が投票したにとどまり、20人が菅候補に投じた。小沢グループ以外からも樽床候補の支持票があるなら30人くらいは小沢離れをしたかもしれない。
 小沢チルドレンは言うなれば、鮎の稚魚だ。選挙の各候補に出される党支援資金は小沢幹事長が一手に決め、当選しても湖の右も左も分からないのでは小沢グループに組み込まれることは仕方がない。
 中国への朝貢訪問団に疑問を感じた鮎もいたに違いないが、保身のためには他に選択がなかった。
 鮎たちは成長する、そして小沢離れはこれから進む。ニキタ・フルシチョフの権勢が失脚で衰えたように、ニキタ小沢の権勢にも影がさしてきた。


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