2012年5月22日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#25,5月,2012     10年後はどう変わっているか?ーー大阪の課題まとめ

来月に浪速国を出て富山に移住するので、次回を最後に『言論大阪』を廃刊します。数は少なくとも心ある若者諸君が読んでいただいたことを感謝します。
 経営と政治から足を洗い、作家に専念するため新たに人生を仕切り直します。人それぞれですが、ものを書くには大阪は一年中気候が良すぎて性に合わないように感じてきました。かつてアメリカの雪国でももの書きを始めてから長い冬に読書と執筆をする、そして夏にはスポーツに熱を上げるという生活が身に付いたようです。長い冬は収穫期なのです。
 今回は、最近受けた質問に答え、また私に心残りの課題をまとめてみます。

◇ 大阪都はどうなるか
 私の見立てでは実現しない。なぜかと言うと、
 ① 大阪の発展には、大阪市を解体して特別区にするよりは、逆に大阪市が周辺都市と合併して日本で横浜市を凌ぐ人口第二の都市にする方が良い。360万人の横浜市の面積は大阪市の2倍もある。
 ② 橋下市長は大阪市に24区もあるのは多過ぎだから、大阪都では9区くらいの特別区に再編すると言う。これも多過ぎるのなら大阪市のままで減らせば済むこと。
 ③ 大阪市と府の二重行政と二重投資の原因は、府と市の議員エゴで選挙区からのばらばらの要求に引きずられた無節操の行政によるもので、現状のままで橋下改革によって大きく改善されている。
府と市が協力して行政の統治力を高めることで解決される。他の県において、例えば、兵庫県と神戸市、神奈川県と横浜市で都構想が持ち上がらないのはなぜか?
 ④ 大阪都構想のために法律改正が必要なら、県の合併こそ改正すべきだ。私は大阪府が奈良県と和歌山県が合併する「関西県」(奈良市に新県庁を置く)を提唱してきたが、明治の廃藩置県以来130年も県の改革が行われなかったことは異常だ。

 このように見てくると、大阪都に変える理由付けには必要とする裏付けが弱い。
 橋下市長は論理に基礎を置くから、論理に立てば政策を変えることに柔軟に見える。彼は大小のアドバルーンを先ず上げておき、市民の反響を見ながら、断固として実行することと、柔軟に対応することを使い分けている。
 彼にとって、大阪都構想を変えることは残念であるかもしれないが、最初に上げた大アドバルーンの大阪都構想をてこにして維新の会が国政に進出する足がかりをつくったし、彼が全国的に知られる成果を得た。彼は戦略的目標の半分は達成した。
 諸君は、思考力、気力、発信力、そして体力を備える稀有の人材を生かすために、うまく舵取りして育ててほしい。

 茨木市長選挙と公共事業
 先月、茨木市長選挙があり、維新の会が推薦した当選者を含めて3人も市会議員が出馬した。これまで市政を支配してきた市役所幹部出身の歴代市長の時代が終わった。市会議員が市長になることは一つの望ましい形だ。
 2000年に私が市長選挙に出馬した時、経済振興政策を中心にして、ほかに安威川ダムと国際文化公園都市の公共事業見直しを掲げた。府の事業とは言え、茨木市に深く関わる事業であり、経営の視点から考えると無理がある事業だったからだ。
 あれから12年後の今、状況は何も変わっていない。日に日に無駄な経費を使い、専門職を含めて人材を張り付けている。ああ、もったいない。改革者橋下前知事でさえ二つの公共事業に結論を出せなかった。
 残念なことに、今回の市長選挙ではどの候補者も争点にしなかった。市民も忘れた。メディアも忘れた。

 梅田公園一丁目
 梅田北ヤードの跡地開発が進んでいる。3棟の高層ビルが威容を見せる。
 当初の計画に比べると、私も望んだ公園化の方向になった。問題は、この跡地が公募によって「うめきた」に命名されたことで、こんな泥臭い居酒屋のような名前では浪速国の外では景観に合っているとは受け止められないだろう。
 諸君の時代には「梅田公園」に改名してほしい。地名も梅田公園一丁目、二丁目のようにすれば知名度が高まる。南から天王寺公園、大阪城公園、中之島公園、梅田公園となることで大阪の魅力を示すことになる。

◇ 大阪モノレール
 門真・伊丹空港間を運行する大阪モノレール(大阪高速鉄道株式会社)は、府が出資する第三セクター会社の中で最大の赤字を出している。今ではこのことに府民の関心は薄い。支線を阪大病院から国文都市まで延ばしてからさらに赤字が増えた。
 年々累積赤字を増やしてきたが、次代のお荷物になろうとしている。諸君は知っているか?
 先年、一つの改革があった。それは国文駅から千里中央駅まで朝夕に直行運転が実行されたことだ。私は執筆でも、政治家の忘年会で会った阪急の元役員にも提案していた。もっとも経営の当然の帰結だから、私の影響ではないかもしれない。
 赤字削減のために大きな改革案を提案したい。無人運転をすることだ。
オリンピックの前年、バンクーバーに娘の家族と滞在した時、誰も鉄道に興味を示さないので、一人でスカイトレインに乗りに行った。スカイトレインは高架と地下で郊外と都心を結ぶ新鉄道で、コンピューターによって無人運転されていることに驚いた。これに比べると規模において大阪モノレールの無人運転は容易なことだ。
 利用者の反対が予想されるが、先ず支線の無人運転から手掛ければよい。例は近くにもある。すでに住之江から南港まで走るニュートラルは長年無人運転されている。          (完)

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2012年5月14日月曜日

#69 「結論が先にありき」は悪いのか?ーー大飯原発に関する世論

大飯原発の再稼働に対してメディアが「結論が先にありき」と批判しています。世論もこれに追随しています。どのメディアも反論を伝えないので、私が論理のおかしさを指摘します。
諸君には新聞の一面的報道を疑ってほしい。なに、新聞は読まない?テレビニュースも観ないで、スマホ(なんたる略語か。せめてスマフォにしてほしいものだ)しか見ないなら、メディアのカモにされてしまいますよ。
 望むと望まざるとに関わらず、諸君はリーダーになるでしょう。その時には持っている感性メーターを鈍くすることなく、感性でおかしいと思ったら論理思考を利かせてください。
 「オレのとは違うなあ」を憶えていますか?


◇ 「結論が先にありき」のどこが悪いのか?
 大飯原発をめぐる世論には論理が欠けている。
 第一に、大飯原発は福島の原発事故とは関係がない。以前より厳しくなった安全基準に従って定期検査が済めば稼働が再開される。言いかえれば、福島以前と同じ手順を踏むことは当然。
 第二に、政府と東電の事故対応があまりにも拙かったことで、政府も自治体も過剰なまでに感情に動かされている。現実には絶対安全というのは詰めることができない。まして安心は感情が収まるまで得られない。為政者は冷静に論理思考をもって目標、あるいは結論を出すことを求められる立場だ。
 第三に、「結論が先にありき」という批判にさらされようとも、国難の時こそ政府は出した結論を達成するために手段を尽くして実行しなければならない。果断に実行すれば、世論は変わるものだ。


 原発の対応以外に、広く世間では「結論が先にありき」が見られる。特に批判は起きない。
 例えば、企業経営者は大胆な経営改革を実行する時には、大局的に考えた上で目標を先に掲げる。他方、売上目標を立てる時には下からの積み上げを基に年度売上を決める。この二つは事によって使い分けられるのであり、良いか悪いかの問題ではない。
 もう一つの例を挙げよう。
 学者の論文でも始めに結論を出すことが少なくない。社会学などの論文の中には、先ず結論をつくり、その上で社会の事象から結論に沿うデータを集めて検証する論文がある。この場合、結論は仮設であり、仮設を検証することで一つの論文になる。自然科学の分野でも、予め立てた結論に従って実験を組み立て、関係する論文を引用して検証する論文がある。
 実行を伴う原発再稼働といろいろな学説がある論文の仮説を同等には扱うのは論理的でないかもしれないが、要は「結論が先にありき」は必ずしもすべて悪いとは言えないのである。


◇ 害ある政治家の選挙対策
 大飯原発が立地する福井県の知事も、周辺の知事も慎重姿勢で再稼働に待ったをかけている。
 政府の住民に対する説明が不充分と言うが、現実にはいくら説明したところで理解が得られることは難しいだろう。そして、知事は民意を尊重すると言う。枝野経産相も同じことを言っている。彼は常識人の域を出ないようで、トップダウンの決断をできるかどうか。
 私の憶測であるが、知事も経産相も本当は再稼働の必要を認識しているだろう。国の歳入は大半が個人と法人からの国税であるから、もたもたしていれば国の予算が減り、さらに難局を深めることになる。自治体の首長は、首相と経産相の決断に下駄を預けたいのかもしれない。
 政治家はみんな次の選挙を意識しているから、一定期間再稼働に反対しておけば、選挙で票を失うことを避けられる。
 事は原発に限らない。政府の社会保障・税の一体改革法案に自民党が待ったをかけているのも、一定期間抵抗抵抗しておけば、政府に押し切られたという形をつくる選挙対策だ。それにしても、国会審議をだらだらと引き延ばしていることは目にあまる。
 いずれにしても、原発再稼働は夏の電力消費のピークには間に合いそうもない。
 再稼働に反対、電気料金の値上げにも反対、停電はされたくないと相並び立たないことを唱える市民に対しては、地域ごとに停電させる計画停電を経験してもらうことになりそうだ。企業が海外立地を進める(雇用が失われ、自治体の法人事業税が減る)、企業が被る減益など節電と停電がもたらす結果をやっと分かってもらえる。
 電気料金の値上げがもたらすプラスを挙げれば、値上げによって代替発電が競争力を高めることだ。つまり、今より採算に合うことになる。しかし、それでなくとも国際的に電気料金が高い日本では、産業がこうむる不利がさらに大きくなることは避けられない。今はプラスより払う代償が大きい。


 選挙では、どうしても国の長期的政策より、生活に直結する政策が重視される。しかし、民主主義の根幹である選挙を軽視するわけにはいかない。諸君はどう考えるか?


 アメリカ企業の深夜操業
 一つアメリカの町の例を挙げてみたい。
 私が長年住んでいた町には、農村に囲まれた中に中小企業の集積がある。その中にユニークなブロンズなど非鉄金属の鋳造メーカーがあった。今も生き残り、世界的に知られる。ここでは格安の電気料金によって深夜から早朝までだけ電気溶解炉を稼働し、昼間は営業や経理などの部門で少数の社員が働くだけ。昼間の部門はSkeleton Crew(直訳すると、がい骨隊)と呼ばれる。     私が知る経営者を工場に訪ねて話を聴いたことがある。深夜勤務者はほとんどが兼業農家で、昼間は農業をやっている。兼業農家といえ、平均500エーカー(200ヘクタール)の農地を家族で耕作している。常のことながらアメリカ人の体力には驚かされる。
 日本でもこういう企業があるかもしれない。            (完)
  











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2012年5月7日月曜日

#68 中国語を勉強しようーー英語の易しさがわかる

今回は諸君に実利がある話です。英語や中国語に限ったことではなく、これから日本と関わりが深くなる国、例えば、ベトナムやミャンマーの言葉が仕事に役立つでしょう。
 私が若い時代には英語もITも仕事に関係がなく、従って、周囲から勉強を迫られる圧力を感じたことはありませんでした。時代が様変わりして、今の若い諸君たちは大変です。ぼやぼやしていると、時代に取り残されるように感じているかもしれません。
 確かに、英語やITを専門職としない人たちでも、仕事に必要とされるパソコンの使用から逃げるわけにいきません。英語もメールで必要とされます。特に、英語あるいは英会話の勉強が煽られています。しかし、ここはじっくりと腰を据えましょう。


◇ 中国語を勉強してみよう


 私はここ10年くらい中国語(北京語)をNHKのラジオ番組で勉強している。毎日ではない。中国と台湾に行く機会があったので、話することが勉強の動機だった。
 ところが、さっぱり進歩しない。なぜなのか?
 諸君はすぐに歳のせいだと言うだろう。確かに、歳のせいで記憶力が落ちていることは感じる。しかし、ほかにも原因があり、英語と比べてみると分かる。
 それは、学校時代に英語では定期試験や入試を経験していることだ。つまり、ラジオによる自習では試験勉強ほど集中力を出せないからだ。これは大きい。少なくとも諸君は学校で英語を習った。このことを改めて認識してほしい。
 そこで、NHKのラジオ番組を使って中国語の勉強を始めることを勧める。そして3ヶ月は我慢して続ける。中国語には4声と呼ばれる4種の発音があり、これを正確に区別しないと通じない。漢字はある程度意味が分かっても単語になると発音ができない(これが私の悩み)。実際に通じても相手の言うことは分からない。会話にならない。
 3ヶ月経ったら止めてもよいし、続けてもよい。
 次に、英会話の勉強を始める。NHKラジオの英語番組は毎日何度もあるから、早朝か夜に聴いて声を出してみる。そうすれば中国語に比べて英語を格段に易しいと思うだろう。諸君にはすでに英語の素養があるのだ。これを生かさないことはもったいない。
 最近、「スピードラーニング」という教材がテレビのコマーシャルで頻繁に宣伝している。ほら、石川遼が英語をしゃべっているコマーシャル。「聴くだけで英語を話せる」と言っているが、あれは誇大広告か騙しだ。彼は個人レッスンを受けているはずであり、教材を聴くだけではこんなレベルにはなれない。
 また、年寄りの夫婦が登場して、ホテルのフロントで会話できたことを喜ぶシーンがあったが、これくらいなら私のNHK製中国語でも会話できる。

◇ 小学校の英語教育には功罪
 先月、最後の訪問のつもりで台湾に行ってきた。これまで世話になった知友人を会食に招待して礼を尽くした。合間を生かしてプロ野球を観戦した。プロ野球は専門の一つにしている。
 偶々台湾大学のキャンパス前でバス停で行き先について人に尋ねたところ、数人の学生が集まってきた。ところが、待ち時間の間にいろいろな話題について会話をしたが、彼らがうまく英語を話
せないことに驚いた。日本の学生と変わらない。
 台湾では小学校から英語教育を強化しており、こういう環境で育ったにも関わらず、英才が集まる大学の学生にしても英会話は苦手のようだ。もっとも、彼らはアメリカ留学でも決まれば、英語力の基礎があるから、会話にも急速に上達するだろう。
 私が言いたいことは、英語を小学校から教育しても、動機付けがなければ身につかないということだ。
 英語の小学校教育を導入した文部科学省の役人たちは、英語をしゃべれなかった悔しさを持っているのだろう。早い話、彼らは自身が英会話を勉強しなかったことを、教育のせいにしているフシがある。「日本人のすべてが英語を話せるようにする」なんて馬鹿げている。なぜ万人が英語を話す必要があるのか?英語を話す必要に迫られた人たちが、取り組みすればよいので、年齢の早い、遅いとは関係がないことだ。
 因みに、私は海外出張するようになってから英会話に取り組んだのは30歳の時だった。
他方、功の方は、いくらか発音が良くなるくらいか。そうであるにしても、英語国教師は彼らの発音をさせようとしているだろう。日本人が敬意を払われる英語は「正確、明確、品格」の3カクであり日本語訛りがあってもかまわない。

 メディアの為替報道
 最近1ドルが82円台になると、新聞もテレビも一斉に「円安」と報道した。なにが円安だ?
2005年に1ドル110円前後だったレートが、2009年に87円になった時には「円高」と言った。信頼する新聞はせめて「円安方向」と表現してほしいものだ。
 
 テレビ番組は?専門家顔した出演者は大した根拠もなしに言っているのだから、あんなものは信用しない方がよい。私が知る為替のプロは、為替の予測について「神のみぞ知る」と言っていた。
 
 アメリカ経済が良くなると円安(ドル高)方向になると言われるが、こんなことは誰でも知っている。




 

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