2018年2月24日土曜日

#191 東京の人口集中は止まらない――富山においでよ

  今年も東京の人口が増えました。この傾向は止まらないようだ。
  なぜ東京の人口が増え続けるのか?考えてみましょう。

 ◇ 東京を離れられない構造の問題 
  一部の省庁が地方に移されたが、世論に応える言い訳みたいなもので、行政府の全省庁が東京にあることは変わらない。何十年も前に、行政府を東京から移転することが国会で決議され、三つの候補地が決められた。今は忘れられた。オリンピックではさらに人口が増える。
  韓国でも行政府をソウルから地方に移転することが法律で決められたが、ほんの一部が実行されただけ。ソウルは北朝鮮から砲撃の射程距離にあることが移転の理由であったのに対し、東京は人口の一極集中で大地震の被害が大き過ぎると懸念されることが理由だ。
  大企業本社の東京集中も問題だ。通信技術のめざましい今日でもメーカーの本社を東京に置いていることに、私はかねてから疑問を感じていた。
  東京集中の裏には、東京に住んでいればうま味があることがある。 例えば、退職した官僚幹部は会合やパーティに出てうろちょろしていれば、政府の委員会に選ばれたり、公的機関や企業の職にありつける機会がある。退職した知事と省庁幹部も学位なし、研究業績(論文)なしで首都圏の私立大学で教授になれる。アメリカでも省庁高官が大学教授になるが、彼らは学位保持者だ。    彼らはチャンスがあると信じているから東京を離れられない。 会社員も「東京にはチャンスがある」と言う。
 本当にそうなのか?東京でなければならないのか?

 ◇ 掛け声ばかりで進まない改革 
  東京に大学が多すぎることは前に書いた。東京集中が改善されない中で文科省は手を打った。東京に新規に大学を設立することと、学部の増設を禁止することを法律化したことだ。大学には自主規制する能力がないのだからやむを得ない。
  それにしても私立大学の経営者は甘い。企業なら先を見越して合併や廃業を考えるところであるが、私立大学ではまだ聞いたことがない。最近、定員に満たない大学を公立化する例が出てきたが、これは経営改革とは言えない。市場環境は変わらないままだからいずれ自治体の重荷になるだろう。ただ公立化したら受験生が増えたというが、学生の側も「お上ならつぶれないだろう」と考えることは甘い。私立の公立化は一時しのぎに過ぎない。
  諸君よ、はっきりしよう。 高い学費を払って大学に行くのは、多くが学問のためではなく、就職が目的だろう。そうなら、就職に有利な専門学部を選び、地方の大学や専門学校を選ぶべきだ。 
 
 ◇ 富山においでよ
 富山に限らず、どの地方でも人材を求めている。ここでは私が生活し、よく知る富 山県を例にとって地方の企業について書いてみよう。
  富山県は先進国型で農業、漁業、工業一体の経済だ。それにどこでも推進している観光産業もある。 
 そもそも東京で仕事をする目的は何か?会社で昇進し、栄達を求めることならそれでよいが、技術者なら仕事で腕を磨くことだろう。つまり、会社に貢献して、自らも技術者として実力を高めることにある。同時に家族のために生活の質を求めることだ。
  富山県で求められている人材を述べてみよう。

  ① 富山は医薬品メーカーだけではない。大企業のほかに材料、機械、建設、化学の分野で技術開発力がある中小企業の基盤がある。IT産業もある。行政も大学も支援している。
  ② 海外に進出しようとする中小企業がいくつもあるが、ヒト、モノ(保守点検が容 易なように設計変更が要る)、カネ(先行投資)の三つがそろわない。ここに外部から人材が求められている。 
中でもヒトを得ることが緊急の課題だ。地元ではなかなか得にくい。
  一つは、貿易の人材だ。私はいくつか中小企業の相談に乗ってきたが、求める人材を絞りきれていない。英語にこだわり過ぎている。 市立の外語学校て臨時講師をしていた時、「英語プラスワン」を学生に提唱してきた。英語のほかに、総務や経理などでコンピュターに習熟するもう一つの専門を持つことだ。 中小企業では最初から英語専門の人材を採用することは重荷なのだ。 
  二つ目は、製造部門や機械と結びつけられるIT技術者。  
 要するに、製品と関連したコンピューター技術者が求められているので、大きなソフトを専門にしてきた技術者は向かない。 

 中小企業では外部からの人材採用には前向きではないが、諸君が経営者の意識を変え られるだろう。 
 
郷土人の郷土愛とは関係がない
  私は以前会社員時代に富山に住んだことがあり、終生の住みかとして富山を選んだのは郷土愛からではなく、生活の質を考えたからだ。県外からの移住者だ。私の周囲にも県外出身者が少なくない。生活の質については次回で書きたい。             (完) 


 「雪だるまの芯」を求めよう、つくろう。#189に詳細。 

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2018年2月15日木曜日

#190 アメリカでセクハラの高まり――男の立場は弱い

  いつも本稿は友達から「堅い」、「長い」とよく言われます。 私は若者のために真剣に書いているから仕方ないと思っていますが、今回は深刻な話題を軽く書いてみることに努めます。

 ◇ 渡米した頃は自由だった 
 1978年から小さな町にあるアメリカ企業に勤め始めた。田舎町にあるとは言え、 大企業グループであるせいか、社員は垢抜けしていた。この頃はセクハラで騒がれることがなかった。女社員の中には胸を大きく広げた服を着ていて、他と共有する秘書が 私の個室で座って打ち合わせする時には、間近で胸の半分が見えて悩ましかった。
  男の社員が「オッオー」と言うことがよくあった。今はこれはセクハラになる。  
 ある日、会議の前の雑談でジョーク好きの社員が、「夕べはオレと楽しんだかい?」と言ったが、その女性は顔を赤らめて笑った。これもセクハラ。  あの頃は気楽で楽しかった。 

  ◇ 中国共産党の人民服を着せろ 
 私が社長をしていた会社でも胸をはだけた服装の女性社員が何人もいた。ある時、会議でセクハラ対策が議題の一つになった。服装規制をする意見が出た。しかし、服装の自由を理由に反対意見が多かった。 議論が長時間になると多少苛立っていた私は、「もうこのくらいにしよう。中国の人民服を着せたらいい」と言った。みんな笑った
  後で社長室に来た右腕のアメリカ人マネジャーが私に、「社長のジョークは危ない」と忠告された。

 ◇ 大阪時代の偽セクハラ事件
 セクハラ訴訟がメディアで取り上げられるようになった時、友達との雑談で話題になった。この時の会話。

 「私は電車で若い女性の隣には座らないようにしている」 
 「それじゃ後から隣りに若い女性が座ったらどうするんや?」 
 「その時は手を前に組んでじっとしている」 
 「オレは席を立って逃げる」

  懸念していたことが大阪の地下鉄車内で起きた。会社員が女の身体にさわったと騒ぎ、近くにいた男に取り押えられた。誰もが信じただろう。しかし、男女が仲間であることが警察の取調べで分かった。会社員も無実であることを訴え続けた。
  取調べの結果、男女は虚偽の演技であることを自白した。会社員はメディアの報道により、会社の中でも疑われて大きな被害を受けた。警察はよくやった。
  世間ではセクハラに関しては男が疑われ、女の主張が有利だ。男は弱い。

 ◇ アメリカ最高裁判事にセクハラ訴訟 
 1990年初めクラレンス・トーマス判事の最高栽判事の任命をめぐって大きなセクハラ事件が起きた。部下であった女弁護士からセクハラの訴えを起こされたのだ。
  奇妙なことは、セクハラがあったと言いながら、長年ボスのトーマス弁護士に仕え、退職をしなかった。議会委員会に出席し長年受けたセクハラを証言した。私は、「弁護士ならどこでも仕事を取れる。なぜ彼から逃げないのか?」と思った。 
 メディアが一方的に女の味方をして騒ぎ立てた。トーマスに不利な状況で議会は僅差で任命に同意した。時に共和党政権下、保守派のトーマスを支持した。両者とも黒人だった。 今もトーマスは最高栽判事を務めている。
  因みにアメリカの最高栽は、日本の最高栽とは違い、主に憲法に反するかどうかを審査する。

 ◇ アメリカと大阪のハグ 
 帰国後アメリカの町を訪ねると、親しかった人たちが会合を持ってくれる。その中の中高年の女性がハグ(抱きつくこと)で歓迎してくれる。少ないが男もそうする。
  場所が変わって、大阪駅前で勤め帰りの会社員を誰でも掴まえてハグするおばさんが現れた。しかし、多くは逃げる。おばさんは「見知らぬ同志が親密になれる」と言って運動しているのだという。長くは続かなかっただろう。男がやればセクハラで訴えられることになりかねない。
  住んでいた町で、ホテルでパーテイがあり、終わってからいつも世話してもらった中年女性に私が感謝の意味をこめてハグした。少し酔っていた。証人はわんさといてみんな笑っていた。これもセクハラになるかもしれない。

 ◇ 最近のアメリカでのセクハラ暴露 
 最近、アメリカでセクハラの訴えが相次ぎ、映画の大物プロデュウサーや政府関係者が訴えられた。例によって、アメリカでよく見られるヒステリー現象のように、女性運動家たちが、年頭教書演説の議会にそろって黒服で出席して抗議を示した。
  事件は30年も昔のことだ。どうやって検証するのだろうか?

 ◇ 女性にひと言
 私は男の立場で書いてきた。 アメリカでも日本でも女性がセクハラの被害者であることを認識している。加害者の男を支援しているわけではない。分かっていただけるか。      (完)


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