2010年12月29日水曜日

ネット月刊誌「言論大阪」#9,1月、2011  2010年、大阪問題のおさらいーー問題の先に見える希望  

 よくもまあこれまで放っておいたものだ、と嘆息するような問題がいっぱい大阪にあります。しかし、逆に言うなら、一つずつ改革していけば大阪が良くなる希望を持てます。そう、問題が多いことは改革のネタが多いことなのです。今年書いたこと以外に、まだまだ改革課題があり、元経営者の目から見ると楽しみを感じるほどです。
 今年の終わりに当たり、これまで改革提案を書いてきたことをおさらいします。

大阪のメディアは弱い、創刊号
 何も変わらない。13年前に刊行された小著『大阪がかわる 地方がかわる』で指摘した時からも何も変わらない。

大阪市立 近代美術館、6月
 天王寺の市立美術館に統合することを提案。その後、天保山のサントリーミュウジアムが閉鎖され、大阪市に譲渡されることになった。用途は決まっていない。次善の策として、ここを近代美術館にしてはどうか。
 周囲の声、「大阪市は何をもたもたしているのや。こっちは余命がいくばくもないのや。絵画を長年保管してきたままでいつまで続けるのか。早く見せろ」

大阪市と周辺都市との合併、7月
 「大大阪市」構想は昔からあり、最近賛同者も出てきた。周辺都市の市長や市会議員は職を脅かされるので容易には賛成しないだろう。しかし、手前の小さなエゴを捨てて、次代のために大きく脱皮すべし。かつて東の横綱東京、西の横綱大阪であった。大関から横綱へカムバックしよう。
 橋下知事から仕掛けられた大阪市の区長と区会議員の公選は時期尚早。現状に刺激を与えるために、市会議員数を減らすこと、試みとして区長に一人か二人の民間人を任命することから改革を進めてほしい。 
 
関西の空港問題、8月。
 国交省が関空と伊丹両空港を一体化する経営組織をつくり、民営化も計画に入れた構想を具体化した。とにかく何かやらなければならない、という意識は理解できるが、関空に国内線を集約しないことには抜本的改革にならない。
 私は国営の八尾空港を伊丹空港に移転することを提唱している。旅客空港としての伊丹を廃止することで、関空がハブ空港になり、神戸空港も国内線補完の機能が生きてくる。

四つのオーケストラ、9月
 経営難にある大阪センチュリー交響楽団は、その後日本センチュリーに改名し、全国的に演奏会を行うことに決めた。しかし、大阪での定期演奏会でも赤字が出るのだから、経費がかさむ他の都市で演奏会を増やしても収益改善にならないと思う。また、地方の主催者から赤字補填を要求されるかもしれない。私の考えが間違っているのだろうか。
 私は神戸、奈良、和歌山のいずれかにオーケストラを移転することを提唱した。

大阪都構想、10月
 橋下知事さん、あなたの器量からすれば、大阪府は舞台として狭すぎる。何を改革するにも大阪市の壁にぶつかり、苛々することは当然だ。だからと言って政令都市の大阪市と堺市をばらばらにすることには論理の整合性がない。
 他方、関西広域連合ができたが、これは企業が得意分野を持ち寄る部門合併のようなもので、滋賀県から徳島県まで含む府県の上部機関としては限界がある。奈良県は参加していない。
 私は大阪府、奈良県、和歌山県の三つが合併して新しく関西県をつくることを提唱した。
 奈良市を新県庁所在地にすれば全県の中央に位置する。大阪-奈良、大阪-和歌山間の鉄道はJRも私鉄も完備しているので、奈良-和歌山間の鉄道を補強すればよい。もっとも、この時代には人が県庁まで出向かなければならない用件を減らすことが求められる。

天王寺と阿倍野の二重ブランド、11月
 大阪外向けの市場戦略のために、地域を「天王寺」で統一することを提唱した。当然、初期抵抗として反対されるだろうが、地域市民、市会議員、近鉄の総意がものを言う。近鉄は自社のビジネスにプラスになると判断すれば協力してもらえるはずだ。
 大阪市には市内観光バスがない。そこで、天王寺駅を起点として、動物園・美術館、新世界・通天閣、四天王寺、夕陽丘を巡回する小型バスを運行して観光客を呼ぶ。

梅田北ヤードとサッカー場、12月
 日本が戦略不足のためと言われワールドカップ招致に失敗した。私に言わせれば失敗ではなく、もともと目がなかったのだ。いずれアジアに順番が回ってくる16~20年先にあの強引な中国が出てきたらどうなるのか。
 今回、サッカー協会が8万人以上を収容できる主会場を北ヤードにしたのはまったく便宜的なものだった。負け戦と分かっている第一回目に名乗りを上げるために北ヤードが充て馬に使われた。大阪が災難をかぶらずに済んだ結果は良かった。
 ところが、平松市長はその後8万人以下に規模を下げたサッカー場を建設すると発言している。ワールドカップの主会場にこだわらない考えだ。どう考えてもおかしい。おかしい時には必ず裏があるから、私の推測では、ガンバ大阪が経営改善のために今の万博競技場から梅田移転を狙っているのかもしれない。
 さらに、最近、サッカー協会は東京に主会場を建設することを提案した。なんとも節操がない連中だ。
 そもそもサッカー場によって北ヤードの賑わいを狙い、あるいは経済効果に期待することは、「広いスペースを無理になんでも施設で埋める」というのは苦し紛れだと言ってよい。全国にいくつもある環境やアジアについて研究する施設をさらに建設するという案も同じ考え。これでは魅力ある北ヤードつくりにはならない。
 今月、広大な2期計画地について橋下知事は森つくりを提案し、財界の一角である関西経済同友会は緑地公園にする提案を発表した。この流れになることを望みたい。その上で、すでに計画されている施設は、東側(ヨドバシカメラ側)に一列に並べて、残る全域を公園にすれば西側(ツインタワーやウエスティンホテルがある)の新梅田シティと一体化させることができる。次代に本当に有用な施設が出てくるなら、東側の施設ビル列に追加していけばよい。
 最初から施設で埋めようとする考えは捨ててほしい。       (完)

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2010年12月13日月曜日

#42 誰にも他人事ではない医療・介護制度――若い世代にも突然降りかかる

 今月、97歳の母が亡くなりました。5年前のある日、近所に独り住まいしていた母は畳の上で転倒して腰を強打して歩けなくなり、病院に運ばれて治療とリハビリを受ける入院生活を始め、その後老人ホームに入りました。それからも肺炎と併発症で再び入院、以来亡くなるまで自宅に帰ることはありませんでした。
 施設探しと申請手続きに振り回され、見舞いに訪問を繰り返すなど大変でしたが、苦しかったことは「苦しい」と人に言えないことでした。なぜなら私の周囲に自宅介護で何倍もの苦労をしている親戚や友達が居るからです。諸君には、苦しい胸の内は友達に言って外に出してほしいと思います。
 諸君には将来の遠い日のことかもしれませんが、誰にも親の病気が生活に降りかかることなのです。今回は私の経験から知った国の制度について書くことにします。

◇ 医療・介護施設の種類
予備知識として利用できる施設を説明してみよう。

《特別養護老人ホーム(特養と呼ばれる)》 
介護保険付きの施設で、3ヶ月の滞在期間制限があり、ここで手厚い介護を受けた後に自宅に戻り、介護ヘルパーの助けを受けながら自立させることが目的。65歳以上で「要介護」の認定が入所資格。しかし、入居者の中には長期滞在の老人ホームに入るために待機している人が少なくない。介護保険のお陰で月額約4万円なので家族の負担にはならない。入所一時金不要。どこでも100~150人の待機者が居る。
《養護老人保健施設(老健と呼ばれる)》
 滞在期間の定めがなく、介護保険付きで月額4~5万円、一時金なし。ここも多数の待機者が入所待ち。
《有料老人ホーム》
 民間経営の老人ホームで月額15~16万円、介護保険適用なし。一時金1500万円(京都市の一例では2500万円)、滞在制限なし。
《療養型病院》
 療養病棟がある病院で、健康保険や老人保険は利くが介護保険なし。期間の定めなし。空き病室がないことが多いので待機期間がある。普通10万円以下であるが、中には衣類やタオルの持ちこみを許さず、リース料を高くして月額13~14万円もかかる病院がある。

 母がたどった経過
 参考までに、母の例に即して振り返ってみよう。世間にはどこにもある。
 ①90歳になっても実家で一人自活にこだわり、老人ホームへの入所を受けつけなかった。週3日介護食を受けても好き嫌いがあり、自分で料理する食事は必ずしも栄養バランスが充分でないため、だんだん体力を失っていくことが見えても自活を主張。(世間ではこれが多い)。
 ② ある日、畳の上で転倒、腰を打って病院に緊急入院。リハビリと、他に腎臓の治療も受けて三カ月期限の規制を超えて退院引き延ばしする間に順番待ちの老健にうまく入れた。
 ③ 老健も三カ月期限を超えて延長してもらった後、特養に入れる幸運。
 ④ これでずっと居れるはずが、3年半経った頃、深夜に肺炎の症状で高熱が出て病院に緊急入院。この時日曜深夜のため救急車が近隣の病院6軒から断られた。(年寄り仲間との会で、みんな急病になるなら日曜を避けよ、とジョークを言った)
 ⑤永住できるはずだった老健ホームから、入院が3ヶ月を超えると戻れないという規約によって退所させられた。
 ⑥病院で10日延長する間にソーシャルワーカーが移転先を探し、療養型病院に入った。病院は治療対象が無くなると出される。3ヶ月後ここで亡くなった。

 こんなに母を転々とさせたが、目も見えない、耳も聞こえない障害者だったからよく分からないせいか、苦にしていないことが救いだった。合掌。
 
政府介護保険と医療保険の制度
 母が介護保険と老人医療保険の手厚い支援を受けられたお陰で、家族の経済的負担は少なくて済んだ。どれだけ国の制度による経費を使ったことか。
 国に感謝する一方で、世界の先進大国の中で唯一の最長寿国になった日本では、老人医療保険の予算が毎年増え、介護保険も赤字で制度が追いついていけない上にまだ施設が不足している現実を考えた。自民党政権時代にそれなりの制度改革を行い、民主党政権も取り組んでいる。人口構成に高齢者がますます増える今、改革は容易ではない。

 アメリカの老人ホーム
 私の顔が金持ちに見えるらしく、母が施設を転々とすることを知った友達から、「有料老人ホームがいちばんええ。なんでもやってくれる」と言われた。どうしても入所先が決まらない時には、実家を担保にして銀行から金を借りて入所金を払うことも考えて一軒だけ見学した。良い施設だった。
かつて住んでいたアメリカの町にある老人ホームを想い出した。
 一つはキリスト教の関係団体が経営する有料老人ホームで、その施設の立派さに驚いた。近隣の州にも知られる有名な施設だ。広大な公園のような敷地に建屋がいくつも並び、病院もある。中には一戸建ての家もある。ここに入れるのは金持ちだけで、財産を拠出しなければならない。子供は相続できる資産が無くなるから、多くは反対するという。
 他は、郊外にある州立老人ホームで、子供は割安なここに入れたがる。自ら望んだ親は別として、無理に入れられた親はたいてい半年で亡くなると看護師の友達が言っていた。
 「老後も金次第」とはこのことだろう。悲しいかな。  (完)

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