2012年12月26日水曜日

Long and Winding Road to China Democracy

   #83 中国海軍とオリンピック――どちらも金がかかる

  
 総選挙ではテレビと新聞がつくった流れによって自民党が大勝しました。
 民放テレビのワイド番組を二つ観ましたが、評論家、学者の出演者は民主党叩きの発言ばかり。例によって叩いておれば大衆の支持を得られて、また出演者に選ばれてギャラがもらえるからだろう。まあ、目くじらを立ててもしようがないか。しょせん娯楽番組なのだから。
 彼らは(識者と呼ばれる連中)、北朝鮮のミサイル発射の延期について、韓国発のニュースに振り回されてテレビで誰もが1,2週間の延期を予想するコメントをしていた。大した情報を持っていないのだ。まあ、特に北朝鮮の情報は得にくいからしようがないか。
  さて、10回続けた中国特集は今回で一旦締めにします。次の10年は諸君たちの時代になります。安倍首相が日本の立ち位置を確立するように願いましょう。

共産党大会とアメリカの保守派教会

  先日の中国共産党大会を伝えるテレビのニュースを舞台の演劇公演と重ねて観ていた。  人民大公堂で行われた共産党大会では、次の国家指導者が決められた。1万人も収容する会場には全国から選ばれた代表が観客として出席した。時に中国の国会に喩えられるが、それは国会と違って、指導者の選出も政策も開会以前に舞台裏で決められ、会場では質疑はなし、出席者が発言の機会も与えられない。出席者は舞台の京劇をみるだけの観客に過ぎない。
 大会を伝える映像の中に、少数民族の代表者たちが、華やかな民族衣装を着て出席している姿が目についた。共産党が少数民族も尊重しているという世界のメディア向けの示威だろうか。
  私は、ふと、住んでいたアメリカの保守派教会で知人の娘の結婚式に出席していた時のことを思い出した。それは数十人の白人出席者の中にわずか二人だけ黒人がいたことだった。当時は地方の小都市でも人種差別をなくす気運が高まっていた。教会が、言わば、世間への証のために身なりの良い黒人を出席させたのだろう。同じようにどの会社でも一人か二人の黒人を採用した時代だった。
 余談になるが、北京オリンピックの前年に北京に旅した時、雑技団(サーカス)の舞台を観た。舞台での演技だから、大がかりな設備を使わない個人か数人までの演技だった。それはもう最高に高度な演技なのであるが、演技者は観客を意識しないで、個々の演技を披露するだけであり、ニコリとも笑みを浮かべない。また、観客もじっと観ているだけで拍手もしない。まったく両者の一体感もない。中国式思考では相手のことを考えなくてもよいのか
 私の前列に約10人、何一つ反応を見せないロシア人がいた。彼らは中国に輸出した機械の試運転と技術指導に来ていた。あれから中露関係も大きく変わった。

中国海軍とオリンピック代表団

 
 中国海軍が、尖閣島が位置する東シナ海からフィリピンとベトナムにまで広がる南シナ海まで支配を広げるために活動している。まるで各国と紛争を起こすことが目的のように見える。資源の問題ではなく、活動そのものが示威行為なのだ。  喩えれば、中国海軍はオリンピック代表団と同じなのだ。共通点と相違点は何か?  
 先ず、どちらも国民大衆を喜ばせること。貧困層を置き去りにしたままで、過半の愛国的な多数から一時の支持を得られる。オリンピックは仕掛けなくとも4年毎に必ず開かれるが、示威のためには政府は海軍に対して紛争ネタを与えなければならない。日本も他のアジアの国も仕掛けネタの提供者にされているのかもしれない。
 次に、どちらも金がかかる。オリンピックに大代表団を送る経費は大きい。しかし、海軍を増強し、艦艇を尖閣海域の東シナ海からはるか南シナ海まで常時派遣する経費は、オリンピックの比ではない。さらに、そのうち財政が許さなくなるだろう。どちらも内政改革につながらない死に金だ。
 中国はGDPで世界第二の経済大国になった。つまり国家の歳入が大きく増えた。しかし、一人当たりGDPはまだ日本の1/10に過ぎない。国は富めども人は貧しい、という状態はいつまでも続かない。

自民党の対中政策はどうなる

  今日12月26日、安倍内閣が発足した。自衛隊の名称を国防軍に変えるというが、自衛隊隊員が望むか?自衛隊は国民の中で充分認知されている今、安倍首相の狙いは中国に心理的圧力をかけることなのだろう。 むしろ将校の呼称を国際標準に沿って変えたらどうだろうか。
 国民には、例えば、一佐(大佐),三佐(少佐)は分かりにくい。大使館に駐在する自衛隊将校の名刺には、それぞれCOLONEL、MAJORが使われているのだから。もっとも米国では陸・海・空軍では地位が同じでも呼称が違うらしいが、自衛隊は一本の呼称でよいだろう。
  また、自衛隊の正式な英文呼称はSELF DEFENCE FORCEであるが、私が知る限り、海外のメディアは単にDEFENCE FORCEと表記しており、すでに国防軍扱いなのだ。
  さて、国民は呼称変更に抵抗感を持つだろうか? 諸君は?                        
             (完)

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2012年12月12日水曜日

Long and Winding Road to China Democracy

  #82 上海たより『プラタナスの枯葉』  


 そんなに自民党が良いのか? そんなに民主党が悪いのか?  16日の投票日を前に、私はこう感じています。諸君はどうでしょうか。  メディアの選挙予測は、自民党が単独で過半数を取ると伝えています。
 民主党政権の鳩山、管首相時代の失政に加えて、中国と北朝鮮による日本の安全保障が脅かせていることで自民党に追い風になっているようです。
 他方、野田首相はねじれに苦労しながら、自公を説得して重要法案を成立させてきました。誰しも思うように、野田首相が初めから首相をやっていれば状況は変わっていたでしょうが、そこはそれ、民主党創業者二人の鳩管をさしおいて野田首相の出番はなかった。
 さて、どの政党に投票するか、私はまだ迷っています。  今回は、どの月刊誌にも出ない内容でI氏から届いた「上海たより」を届けます。諸君には信頼できる中国事情学です。
 中国語の美質を意味する「低調」が傲慢な印象を持たされる中国政府要人と結びつかないことが面白いですね。

    ――――――――――――――――――――――――

  中国では実った稲穂が頭を垂れる様な姿勢を表現するときに、「低調」という言葉を使うようです。「丁重」のミスタイプではありません。Di diaoと発音し、中華現代漢語詞典(2011年版)には「比喩消沈的言論。形容不張揚」とあり、中日辞典には「控えめな論調;地味である」とあります。
 とりわけ、国家の指導者への階段を上り詰めようとする超エリートを評する時に、この「低調」が美質として挙げられます。貧困地域に根を下ろして、コツコツと努力した経験があるかどうかが重要視される事とほぼ同等の重みを持つ姿勢のようです。  
 安徽省の寒村の貧しい母子家庭に育ち、高校を中退して食品会社に就職。独学しながら徐々に地方党内で昇格し、安徽省の幹部クラスになった時、故郷から訪ねてきた友人を駅まで自転車で迎えに行った、というエピソードが残る汪洋(広東省書記)。
 湖北省の極貧地域に生まれ、草鞋で4キロの通学をしながら優秀な成績で北京大学へ。、卒業後また自ら最貧地域での仕事を希望して西蔵で20年というキャリアを重ねた胡春華(内モンゴル自治区書記)。
 山東省の農村から大学受験に失敗、トウモロコシ栽培の研究を続けている中から、農業部長まで道を開いていった孫政才(吉林省書記)などの例については、富坂聡『チャイニーズパズル 地方から読み解く中国・習近平体制』(2012年11月。ウェッジ)に、次世代の指導者層を形成する者として嘱望されていると記されています。
  畏友と勝手に呼ばせて貰っているジェトロ香港の花木出氏も、『中国情報ハンドブック[2012年版] (2012年7月。蒼蒼社)の中で、ともに47歳の胡春華や孫政才の将来性について肯定的に書かれています。 その花木氏の実証的で興味深いデータ分析の一つに「中国各省と世界各国のGDP(2011年)」があり、それによると、広東省はオランダとトルコの間の8,000億ドル、内モンゴル自治区はフィリピンとほぼ同じの2,000億ドル、吉林省は1,500億ドルで天津・重慶の特別市並み、ベトナムより上です。  「低調」な姿勢と貧困地域での経験だけで、一つの省のトップになれる程、元老や太子が棲息する中南海の水は甘くはないでしょうし、中堅国家と同じくらいの経済規模の省を運営することは容易ではないでしょう。 
 しかし、5年後や10年後を見越した人材発掘を行い、彼らを鍛錬し、リレーゾーンに配して更に切磋琢磨させていることは間違いないでしょう。共青団系とか、上海派とか、太子党と言ったラベル貼りとは違った次元での、人材育成が進められている気がします。候補者たちに対しては玉石混淆の見立てもあるでしょうが、少なくとも日本の第二極か第三極とかと言ったドングリの背比べ候補とは異なる人たちでしょう。ドングリは切磋琢磨で粉となり、ではないでしょうか?
 師走に入った初日の上海の街は時雨のせいか、人出も少なく、日本語もあまり聞こえて来ませんでした。広州から出張で来られた方と豫園老街から城隍廟に入ると、各処で改修工事やお色直しが行われていました。ふと、正門に掲げられた新しい額に「保障海隅」と書いていることに気づきました。そして色々とその意味を考えざるを得ませんでした。
 元々、その土地の守り神である城隍廟は鎮守様(地鎮神)の役割を果たしていると思ってきました。一昨年の高層ビル火災の直後に、城隍廟で道士が鎮魂地鎮の儀式を続けているのを見た時にもその印象を強くしました。 そこの入り口に「海隅」とは何故?どうしても南の島への連想が浮かび、「失之東隅、収之桑楡」(東方の日が出る処、すなわち朝に失ったとしても、太陽が桑や楡に当たる時間、すなわち夕方には取り返す)という対句への連想に繋がりました。
 「失之・収之」の「之」を「島」と読み取るのは、たぶん勘繰りが過ぎるのだと思うのですが・・・  城隍廟から徒歩15分の関帝廟には、上海県城の城壁を模したものがあり、その説明板にJapanese pirate と書かれているのを見つけたのは、日本でも中国でもメディアが緊張感を煽っていた10月に、適度な緊張感を持ち過剰な先入観を持たずに来てくれた小中学同窓の一人でした。中国文には、日本の海賊→倭寇からも県城を守ったと書かれていたのでした。
   またERENA(環日本海経済研究所=http://www.erina.or.jp/)の定期刊行物「ERINA BUSINESS NEWS」(11月26日発行)に中露国境線でのやり取りについて寄稿された山本博志氏(ハバロフスク日本センター)の文章を拝読した印象が新しかったことも影響しています。山本さんはロシア貿易業務で活躍されてから、外務省所轄の在ロシア日本センター各処で働かれている先輩です。今年3月の「上海たより」でお伝えした、戦後に商社マンとして活動された杉原千畝氏の鎌倉の自宅を訪問して、謦咳にも接した方でもあります。 30歳代の後半に木材の仕事で吉林省や黒龍江省の奥地を訪ねた頃に、中露の交戦状態の緊張が解けていない珍宝島(ダマンスキー島)近くまで、二重の通行証を取って入り込んだことがあります。
 その後、国境交渉がまとまって国境通商や観光開発の話を断片的に聴いたことがありましたが、今回の文章で現況を教わりました。要点抜粋も考えましたが、事実誤認や誇張が入るとご迷惑をかけますので控えます。  
 一方、昨年の夏に訪ねた遼寧省の丹東では、9月15日に中朝共同開発の黄金坪経済区の管理ビルの鍬入れ式が行われたという報道が小さく為されました。南の島のことが紙面の多くを占める中で、僅か30平方センチの「低調」な記事でした。一年以上過ぎて実質的事始めがようやく為されたようです。 それやこれや中国の色んな国境について意識していたので「保障海隅」という言葉に過剰反応したのかも知れません。  
  領事館の周囲に張り巡らされた、フェンスの類いは徐々に撤去されて、道路の封鎖も解消。センターライン上のハードルも無くなったので、当方も含めて近道のために車の途切れ目に横行する横着者も復活しました。日本料理店やコンビニを覆っていたブルーシートや五星紅旗も無くなりました。ただ、領事館の周囲のプラタナスだけには緑色のネットが掛けられたままですが、これも時間の問題でその内に無くなるでしょう。
 季節の変化とともに、芽生えて散っていくプラタナスのように、表面的には何も無かったかのように師走の風が吹き抜けて行きます。ただ、双方の国で心の内なるフェンスやバリケードはどんな形で残っているのか・・・「お互いに何を言っても通じないから、せめて冷静に、そして無関心に」という冷淡な表現に陥らないことが、こんな時には大切だと思っています。
  そんな時に嬉しい連絡が温州から届きました。昔からの大切な顧客で、毎年日本で生地の発注買付と関係先訪問をしてくれる女性社長が、今年の訪日は取止めることを余儀なくされ、我々のビジネスチャンスを減らすことになっていました。日本離れを危惧していたところに、彼女の初孫の100日祝いに参加しないか?というお誘い。内輪の会への招待によって、日本離れではないよ、という暗黙知の伝達だと感じました。そこで日本出張の折に、浅草橋を歩き回り、男の子向けのお祝いの人形を探しました。この時期は、木目込みの童人形に限られていたので、凧揚げやトンボ取りより、魚釣りの童子が「年年有余」(魚と余が同音、春節などに豊かさを愛でるお祝い言葉)に通じるから良いだろうと決め、丁寧な梱包をして貰いました。「島」の名前のことは、すっかり忘れていました。   (了)

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2012年11月26日月曜日

Long and Winding Road to China Democracy

 #81 日中関係と日本の対応――どちらが困るか?


 中国特集について八卦見の予測が5年後、10年後にどれだけ当たるか、諸君の評価を待ちましょう。 さて、中国では先日の共産党大会で指導者が交代して新しい時代が始まりました。私が一つ気がついたことは、施政演説の中に掲げる主要政策に農業改革が謳われていないことです。
  確か、前回の全国人民代表大会(全人代)においては農地改革と農業者の地位向上が含まれていました。生産性が低い、農村共同体の衰退、農民の貧困の「三農問題」はどこへ行ったのでしょうか。 なにしろ8億人(最近では3億人という説がある)以上の農民をどうするか、というのは中国政府の最大課題と言ってもよく、体制が揺らぐのはここからだと思います。
 諸君はどう考えますか?  

農民戸籍と都市戸籍の差別

 今時、世界の国々の中で農民に生まれると農民籍に縛られ、都市戸籍が与えられないという法律上の差別がある国は珍しい。 鄧小平の改革開放政策から始まった経済発展は、一面では中国を世界第二の経済大国に押し上げた。
 私の見方では農民に対して二つの戦略が巧妙に組み合わされた。
 一つ目は、中国が世界の工場として発展するためには、低賃金の労働力が必要であり、政府はこのために農民工という二等市民をつくったこと。どの国も安い労働力を国外からの労働者に求めたことに対し、中国政府は国内に求めた点で中国らしさがあった。
 例えば、イギリスやフランスは旧植民地のアフリカやアラブの国から大量の労働者を受け入れた。西ドイツ時代からドイツはトルコやギリシャから労働者を入れた。アメリカは長年にわたって不法、合法のメキシコ人を農業労働者として使っている。 結果として、今日、どの国においても不景気になっても受け入れた外国人労働者が帰国せずに、一部が残留移民として留まる結果、社会問題化している。
 さて日本は?  日本では基幹産業として成長する自動車と関連メーカーにおいて農閑期の農民が季節工として大量に雇われて貢献した。日本の農民が春になれば帰る故郷があって、そこで自分たちの耕作地を保有し、農業の正業に戻ることができる。これに反し、中国では農業を離れた農民工が故郷には帰れず、劣悪な労働条件で都市に住み続けなければならないことに大きな違いがある。
  さらに、高成長の時代に日本政府は、人手不足に対応するため、入国規制の例外措置によって大量の日系ブラジル人を一般労働者として受け入れた。その後不景気になると、彼らを解雇して苦境に陥れた。ブラジルに帰国する組と日本に残留する組に分かれた。各地の自治体と市民は、新移民者として定住した彼らを懸命に支援している。

  二つ目は、広い国土とは言え、8億人の農民を生かすに足る農地がないことを熟知する聡明な中国政府は農民工政策によって大量の農民から「農地はがし」をやった。なぜなら、これをやらない限り、中央と地方の政府が所有する農地を農民に分け与える農地改革を進められないからだ。 さらに「農民はがし」がニュウタウンの建設にも及んでいる。
 各地で郷鎮企業と呼ばれる公営私営の中小企業を設立して農民を移住させる。農民は農地を離れ、与えられた新築のアパートを喜ぶが、彼らも次の世代も農業には戻れない。もっとも、地方のニュウタウンの生活は都市の農民工よりはましかもしれない。
 因みに、中国では開発、土壌や水の汚染、砂漠化などで耕作地が年々減少し、今では自給に必要な1.2億ヘクタールを下回ると言われる。農民一人当たりの農地は0.6ヘクタールで日本の2.7ヘクタールの1/4以下だ。日本では専業農家、あるいはプロ農家の農地拡大が進行中であるが、思いのほか日本農業は競争力がありそうだ。世界ではアメリカの大農地農業より日本型農業の方が参考になるだろう。日本の若者諸君にもこれからの農業には機会が満ちている。

中国政府の対日戦略と日本政府  

 中国政府は尖閣島をめぐる日本との対立について、対日方針を決めた。それは①持久戦、②外交戦、③経済戦の三つだという。 なに、驚くことはない。これを日本政府も同じ取るべき方針と認識しているだろう。そっくりお返しすればいい。政府はへたに和睦を求めず、当面受けて立つことに徹するべきだ。
  特に、経済戦では社会制度、技術開発力、産業基盤などの点で日本が優っている。日中対立によるダメジでは中国の方が大きい。さらに、日本政府より何倍もの内政課題を抱える中国は持久戦にどこまで耐えられるのか。
  当面、中国に進出している日本企業も、日中貿易に従事している日本企業も苦難が続く。気の毒だと思うが、ここは次世代のためにあるべき対等で正常な日中関係を確立する生みの苦しみと考えて耐えてほしい。戦争と違い、砲弾が飛んでこないのだから、我慢できるはずだ。 若者諸君にはさらに雇用機会が減るだろう。
 それでも終戦直後の経済よりはましだ。 私の世代は芋のつる、大根の葉っぱ、ふすま(小麦を粉にした時に出るくず)の団子を食糧にした。南方の戦場の兵士たちにはこれらさえ手に入らなかった。少しは気休めになるだろうか。

◇ 内閣府の「外交に関する世論調査」はおかしい  

 24日に政府が発表した世論調査によると、中国に「親しみを感じる」とする回答が昨年より減って18.0%で最低になったという。私は18.0%もあったことに驚いた。  世論と私の感性の間に生じたギャップを考えてみた。そして、質問が「中国」についてなされたのに対し、私は「中国政府」と受け取ったのだ。  そもそも「中国」について質問することがおかしい。一体「中国」とは何を意味するのか? 内閣府が調査をするなら、「中国政府」と「中国人」に分けて行うべきだ。  
 ここで古い川柳を借りて一句。  
    中国とはオレのことかと中国人言い。                           (完)

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2012年11月17日土曜日

Long and Winding Road to China Democracy

   #80 上海たより――中国人も色々


  野田首相が突然に「自民党が3法案を成立させる約束をするなら、あさっての16日に解散する」と、衆議員の電撃解散を決断しました。
  諸君は、本稿#78で自公の指定日より早く電撃解散の手があることを書いたことを憶えていますか? 「私が首相ならそうする」と思ったのです。そう、上司でも誰に対しても、「自分ならそうする」と立場を代えてみることは、諸君の思考力を豊かにしてくれます。これが大切です。

  さて、私が付き合っている老若男女のほとんどが中国政府に対して怒っています。中国大使館にデモをかけることもないし、中国製品の不買運動も起きないので、日本人の怒りが表面に出ないのです。日本人はおとなしいのか、大人(たいじん)なのか? ある人曰く、「日本の若者はタマを抜かれているのさ」と。彼らには、本当は、生活に精いっぱいで中国どころではないかもしれません。   
 今回は、上海の友達I氏からの寄稿「上海たより」です。私たちが抱いている大人(たいじん)の中国人が出てきて嬉しいですね。やはり中国政府とネット紅衛兵の言動は民意ではないのです。
 そこで諸君に一つ提案があります。諸君の交友範囲に中国人の留学生がいれば、本国で受けた愛国教育をまだまともに信じているのか、日本の生活で少しは疑問を持っているのか、尋ねてほしいのです。

   
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 中国山東省農村部で地元の二人(中越戦争の勇士が董事長、その戦友の弟が総経理)によって創業された食品会社で10年余り働いた年下の友人が居ます。お父さんも自前で北欧に乗り込み水産品貿易の道を開いた方、本人も農学を修めて入社した会社の食品部門で冷凍野菜や惣菜分野で先駆的な続けました。発展途上企業のトップから破格の待遇(当時の中国ではビックリするくらいの高額で、当時の日本では驚くほどの少額の給与)で招聘され、家族ともども移住しました。
 3年前に今度は、日本の新興上場企業のトップから招聘されて、その企業の中国進出の責任者になりました。そして、家族も本社の所在する福岡の百道辺りに転居して、浜遊びを愉しんでいる、という連絡を貰ったのは今年の夏でした。バスから海辺を見ながら、その年下の友人が綴った北京報告を思い出し、今月の「上海たより」にその抜粋版を転載させてもらうことに決め、昨日の電話で快諾を貰いました。
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 北京報告です
 (9月)15日~16日、15日午前まで北京で仕事をしてから青島へ。せっかくなので古巣の一楽集団にも顔を出しました。 空港からまず莱西、一楽首脳陣と昼食。 「北京は大変だろ?莱西は平和なもんだ」と。 土曜日ということもあり、久々ということもあり、昼間から白酒の封が切られました。 董事長が笑いながら洒落で「(日本人の)お前もいることだし、今日の議題は釣魚島だな」と。

  総経理 「釣魚島っていくらで国が買ったんだっけ?」
  私     「20億日本円ちょっとでしょ」
    総経理 「そんなもんかぁ...」
    私    「董事長が買ったらどうですか?」
    董事長 『俺は親日だ!!』と青島共産党委員会で発表する」
    総経理 「それいいなぁ、皆な訳が分からなくなる、漁 業 権と油田採掘権を入札にして、一番高 
                    いとこに売ればいい」
  私     「あと董事長へのワイロね」
   総経理 「私がお金の管理しよう。ウチの管理費と董事長の欲しい分を抜いてから両国で折半」
   董事長 「ガハハハ」

という和やかで不謹慎な状況 その足で青島へ入り、ホテルで日本人自営業トップと面談。 ポカポカとカフェには秋の日差し。 結婚式でドンドンバンバン。 915、916という縁起の良い日付ですから連日、大結婚式の大賑わい。
 そこへ、黄島ジャスコが暴徒に襲われているという情報が入り、トップは若い衆に 「ちょっと青島ジャスコを見て来い」と。しかし、私の知ってる限り青島は何もなし。 そして、いつもの相撲居酒屋「玉海力」へ。そこでも普通に食事をしながら、中国人店長に聞くと、 「まぁ嫌な空気だけど・・・嫌な空気だと中国人が気にする変な感じだなぁ、具体的には何もないけど・・・」
  翌日の昼、空港へ行くためにタクシー乗車 タクシーの運転手が「あれ?お前は一楽の祐樹だろ?」よく見ると、昔馴染みの運転手です。 「どこ行くの?」、「北京」、「なんだぁ?暴動参加かぁ?」とこちらも不謹慎で呑気なもんです。
 運転手さんは「油より何より、あそこ刑務所にしちゃえばいい!そこへ溢れ反って、悪さをしている富二代や官二代を全部送り込む。水と種だけ与えて、あとは魚を釣って暮らせばいい!何であいつらの将来の為に、こんなに揉めなきゃいけないのか分からん!!!」と独自の論法を繰り広げてくれました。
  北京に着くとさぁ大変。即公安局との談判。 公安局は「全店中国国旗の掲揚をしないと店の安全を保証できない」の一点張り。 日本本社から「あらゆる判断は現地総経理判断でOK」との確認をもらっていましたので、これを拒否。 「国旗掲揚をしても安全の保証はない、やられる時はやられる、そんな中途半端な気持ちで進出していない。揚げるなら日中両国旗だ」
  政府機関から出向している副総経理はすでに中国国旗を購入済み、おまけに「釣魚島是中国的」の紙まで用意済み、私の公安への発言でアワアワです。 公安に対し「何も意地を張っているわけではない、当然のことを言っているだけだ。店に損害が出ても騒がないし、公開も後悔もしないし、危ないと感じたら即閉店するという条件でOKしてくれ、あなた方には決して迷惑はかけないから」
 公安も顔見知りゆえ、「(お前が)そう言うなら信じよう、その代わり、護衛をつけるからな」と三店舗に各二名ずつ護衛をつけてくれる結末に。そのまま無事本日まで閉店なしで営業出来ました。  
 9月18日、セブンイレブンは全店閉店 ユニクロの「釣魚島是中国的」事件がすっぱ抜かれるまで、デカデカと中国国旗を掲揚してました。一部店舗には「釣魚島是中国的」を貼ってました 実は当社も日本本社から送り込まれた若手の店舗運営者は言われた通りに貼ろうとしたそうです。
  「総経理から『貼るな』の命令を聞いた時には『意味分からんばい』でした」と後日談。 私も26歳で初めて中国の地を踏んだ時は何も知らず、何も考えず状態でしたので、あまりエラそうな事は言えません。 本社は連休明けの18日にはかなり混乱気味。その渦中、担当取締役に言わせて頂きました。
 「今回の騒動で皆さんが慌てるのは良く分かります。初めてのことでしょうから。  しかし、当社はその暴動をさせたり、コントロールしたりする本山と合弁していることを忘れてはならない。  私にとっては今回のような状況は日常の延長であり、いつも皆さんが中国に来て、高級レストランで食べて、高級カラオケで歌っている方が非日常だと思っています。今回の状態は半永久的で、恒常的なリスクであることを忘れてはならない」
 北京、上海などの大都市に居る多くの若者(あえて年齢で区切らず、あくまでも若者状態の)日本人には、今回の事で少しは日中の関係と、中国の現況と、中国の歴史を学ぶべきだと気付いてくれることを期待します。 どこの国にも、どの時代でも若者状態、つまり自己肯定の中だけで生きていく習慣の人たちが存在しているのではないでしょうか?
  『知らないで生きることの危うさ』と『知らないでいることのもったいなさ』を知る人が増えて欲しいと感じる次第です こういう時の中国の友人との会話は非常に有意義なもので、やはり歴史の話になります。そして、中国指導者の国家観、人間像などを知らずに生きていくのは「もったいない」と感じます。それ以上に自分の国の歴史を知り、伝えることの大切さを感じます。  父親が口癖のように言っていた「自国の歴史を相手の国の言葉で伝えることが、海外に住んで働くことの大前提」という事の大切さをひしひしと感じます。
 数年前の上海領事館襲撃以降に進出して来られた各社の内で、「消費大国中国」のみに魅せられて来た企業が、今回の状況をどのように感じるのか? 時間の経過とともに麻痺して忘れてしまうのか? 中国人民も麻痺して忘れてしまったと錯覚されるのか? そんな中で不謹慎な人間がまた一人出てきました。福岡に住む家内からメールが届き、「尖閣を売っちゃった栗原さんって、お父さんの地主仲間だって~、びっくり~、笑える~」とのこと。 笑えないよ...(苦笑)             (了)                

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2012年11月10日土曜日

Long and Winding Road to China Democracy

#79 中国の大移民戦略――日本も警戒する時


  最近の週刊誌や月刊誌の中にはどぎつい中国叩きの特集が目につきます。ただし、私は新聞広告でタイトルを見るだけだから、詳しい内容を知りません。中には情報源が怪しい内容もあるでしょう。
  私の海外情報源と言えば、アメリカと台湾を別格にして、他は限られています。つまり、情報量が少ないのですが、それでも私の誤認があれば正してもらえます。参考までに挙げると、上海の友達、北京のアメリカテレビ局の特派員、フランスの日本人の友達、ポーランドの通信社特派員などです。韓国の知人は亡くなって情報源を失いました。
  その他は、国内の新聞とテレビの専門家による対談、インターネットの記事を参考にしています。これらはあくまで断片的な参考情報にしているだけです。
 今回も中国特集を続けます。

中国政府の大移民戦略  
 
 私は中国政府が戦略的な移民政策を推進していると読んでいる。それは国内の周辺自治国から国外にいたるまで自国民を移民させることだ。  政府は国の将来を考えて人口減らしをやってきた。世界のどの国もやったことがない「一人っ子政策」を実行した結果、どうにか横ばいを定着させた。それでも13億人の人口では国を統治できないことを政府は認識している。だからこそ国民が察知できない長期戦略で人口減らしをやっていると思う。
 いくつか例を挙げてみよう。  一つ目は、本土の東北部(旧満州)、周辺自治区の、新疆ウイグル、チベット、内モンゴルなどもともと漢民族は少数派であったが、今日では10~90%にも達し、漢民族が支配している。いずれでも独自の言語を持ちながら今では北京語が公用語になった。言語を変えることは植民地支配の基本だ。
 欧米諸国による植民地支配では、支配者民族の比率は高々10%であることと比べると中国の漢民族移住政策は異常に高い比率だ。かつてソ連によるバルト三国の支配においてもロシア人の移住は10%くらいだっただろう。  

 二つ目は、中国の外に移住が広がっていることだ。国境を接するロシアの町には大量の中国人がロシア人から農地を借りて農業労働者になっている、そして商売人も増えている。現実には中国で飯を食えない彼らは必死で働くからロシア人はかなわない。借地には不安があるだろう、と考えるのは日本人の心情で、彼らは本国の生活はもっと不安なのだ。  
 イタリアでは中小都市に4万人にも中国人移住者が増えて地場のファッション業界を脅かしている。中国人経営の雑貨店や食堂も増えるとチャイナタウンができてしまう。
 アフリカや中米の諸国にも中国政府の資金による公共施設、道路建設、鉱山開発の工事に従事する大量の中国人が移住している。中国政府は現地労働者を雇わない点で、他の国による援助事業とは大きな違いがある。どの町にも中国人の店が増え、チャイナタウンができる。こうして自国民の移住先を得ている。中国政府にとっては、資源獲得と人口減らしの一石二鳥だ。
 他方、60歳以上の高齢者がやがて2億人に達すると言われる中国で、働き手の世代を国外に流失させてよいのだろうか。

中国の膨張主義の行方
 中国政府の軍事膨張主義は世界で警戒されている。しかし、私が指摘している移民膨張主義は見落とされている。中国政府は国内統治のために「中華文化」と「中華民族」の言 葉を強調する。「中華民族」とは中国籍を持つ移民集団と居住地の国籍を持つ華僑など中国系人を合わせた言葉だろう。
 現在、本国では非漢民族を含めて13.4億人、国外の中国人が世界で7千万人の合計14億人で世界の人口70億人の20%を占める。5人に1人が中華民族だ。恐ろしいと言えば恐ろしいが、問題は国外の中華民族が増えることだ。ただし、国外の中華民族がすべて本国政府に忠誠であるとは限らない。むしろ本国の民主化に影響を与える存在になってほしいものだ。
 この民族膨張主義は周辺国に脅威だ。日本も例外ではない。 最も脅威に感じているのは台湾だろう。なにしろ言語が同じであり、移民を狙う中国人には台湾が豊かに見える。実際、台湾は豊かなのだ。 私の台湾の友人によれば、今でも10万人を超える大陸からの不法移民者が居るという。

ビザ発給規制と入国審査の強化  
 日本に住んでいる新中国人は50 万人にもなるという。失業率が高い日本でやがて中国人排斥が起きる前にこれからは中国人の入国者を厳しく規制する必要がある。中国人による犯罪も少なくない。アメリカでは不況になると外国人排斥が起きることが度々あった。
 どの国でも一般労働者の移民を認めていないし、経済的困窮は難民として扱わない。日本も規制している。
 それにしても、日本政府機関のビザ発給と入国審査は甘いように見える。おそらく審査が手薄と見られる地方空港が狙われる。港からの不法入国もある。偽の親戚照明や偽装結婚による入国者も相変わらずだ。  日本が彼らにとって夢の国ではないことを広報すべきだ。もっとも困窮の新移民者にとって夢の国など世界にはない。        (完)  

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2012年10月25日木曜日

Long and Winding Road to China Democracy

   #78 中国の民主化は進むか――習近平新政権の重い課題


 中国政府の指導者の中で、今の共産党一党独裁がこれから10年も長く続くとは考えていないでしょう。胡錦濤国家主席の10年は、党大会で掲げた農業改革に進展がなく、まして民主化の方向付けは現状維持にとどまりました。 相対する民主主義国、日本の政治、特に政党政治の現状について大使館からの情報を知るにつけ、中国政府はこんな複数政党制度を受け入れることに恐れを持つでしょう。 実際、野党が解散日と投票日を決めて首相に要求するなんて異常の沙汰です。たとえ話合い解散の前例があっても、首相が受け入れるなら日本の憲政史上で悪例となります。
  基本的に野党も赤字公債法案と衆議員の定数是正に賛成しているのですから、国会の審議に応じないのは国会議員の報酬を日に日に無駄にしているのです。職務放棄です。 他方、民主党内部には今解散すると選挙に不利になるという理由で早期解散に反対する議員がいます。私には解散を先延ばしすれば民主党に有利になるという考え方が分からない。いっそう首相が重要法案を成立させた上で、野党ご指定日より早く電撃解散をやればいいと思いますね。
  話がそれました。 さて、習政権はどこまでやれるのか?
 今回は、中国より早く民主化を実行した近隣諸国について書いてみます。

インド  
 私はかねてから人口13億人の中国では、先進国のような民主主義制度は無理であり、形がどんなであれ、強権の政府が統治するしかない、と信じてきた。だから、中国政府の政体を民主主義の変形である「会社民主主義」と呼んで現実的に支持してきた。
 ところが、友達の一人が異論を唱えた。「巨大人口は問題じゃない。12億人のインドではちゃんと民主主義が定着している」と。  
 このインドは長く中国と国境紛争をしており、1962年には突然中国軍が紛争地域に攻め入った。武力に優る中国軍がこの地域戦争に勝利し、インド軍には4000人の戦死者が出た。今も小競り合いの紛争が続いている。

 ◇ ロシア  
 長く共産党一党独裁を敷いていたソ連が消滅し、旧ソ連はロシアと周辺の8ヶ国が独立した。イスラム圏のほかに、当時ウクライナのような大国がロシアから分離されたことに驚いたものだ。   
 共産党独裁による体制に限界がきていたこともあるが、エリツェンという強力な民主化リーダーを得たことで大きな混乱が起きなかった。後継者の統治にけちをつければいくつもあるだろうが、国民による大統領の直接選挙が定着している。
 民主主義にはさまざまな形態があり、どれも完全なものはないのだ。ロシアの体制移行は中国の参考になるだろう。

ミャンマー  
 中国と国境を接するミャンマーでも、最近、軍事政権から民主主義体制に移行した。これからは民主化の過程でリーダーの人材を得られるかどうかが鍵だ。政権打倒のリーダーと建国のリーダーとは違う資質が求められるからだ。
 ミャンマーの民主化要求を流血なしに実現した群衆に比べ、市民意識と階層の広がりの点においてネット紅衛兵とは比べものにならない。

中国の民主化は進むか  
 民主化の2条件は、資本の原始的蓄積と教育水準の二つと言われる。
 中国は経済発展のお陰で充分の資本を持つにいたったが、民主化教育については手もつけていない。中国政府にとって、国民に民主化の教育をすることは諸刃の剣になるから、危ないことなのだ。
  今や周辺諸国が民主化を実現しているのに、中国と北朝鮮だけが取り残されている。 土地の所有も許されない農民と、労働組合を組織することも許されない労働者が人口で90%も占める現状を改革することは、中国政府には巨大な重荷だろう。
 他方、役人、100万人以上の軍隊、1億人の富裕層は現状のままでハッピーだから、既得権を手放さない。これらは保守派または守旧派のグループであり、改革を望まない。そして政府の改革に立ちはだかる。ああ、政府も大変だ。

尖閣島紛争はがまんの持久戦
 中国は漁業監視船と海洋監視船の二重布陣に加え、海軍艦艇が遠巻きに尖閣島近海を示威している。他方、日本は海上保安庁の一枚。これでは持久戦に耐えられない。東日本の巡視艇を沖縄に集めて交代勤務の余裕を持たなければならない。
  海上自衛隊は、中国が「来い、来い」をして一触即発を待っているようなものだから、喧嘩プロに誘いこまれておいそれと出ていけない。さしあたり、東日本と北海道の海難の備えは自衛隊が海上保安庁の巡視艇を肩代わりするしかないだろう。
  日本企業も辛いが、ここは我慢してしのぐ時だ。中国の工場がストや暴動を起こす時には、中国内か国外に迅速に移転すると良い。その動きを見せるだけでも効果がある。ネット紅衛兵が暴れれば、同胞が職を失い、共同出資している国営企業も減収になることが認識される。日本の旅行関連業界も中国から観光客が激減して苦しい。これにも半面があり、中国業界も苦しいのだ。 このように日本企業が業績を悪くする一方で中国企業も被害を受けるのだ。
 よく考えてみれば、日本企業には対応の選択肢があるのに対して、中国側の対応策は限られている。日本のメディアは日本側の被害ばかり強調しているから、惑わされてはいけない。
  先日、中国外務省の広報官が、「日本政府は経済不振の批判をかわすために尖閣島問題を起こした」と言っていた。これは中国政府のことだろう。「すべて日本が悪い」とする彼らはなんとそらぞらしいことを言っているのか。そう言えば、例の国営企業が起こした毒餃子事件でも中国政府は謝罪していない。
 これに対し、日本政府の海外向け広報は弱い。各国に対する説得も「尖閣島に関して領有権問題は存在しない」、「歴史的事実と国際法に照らしても日本固有の領土である」というのでは効果に欠ける。「中国は尖閣島に関心を持たず、1970年代から急に領有権を主張し始めた」の一点に絞るべきだ。                 (完)

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2012年10月19日金曜日

Long and Winding Road to China Democracy

  #77 中国の財政が危ない――公式報告を信用できるか?


 一体私の専門は何か? なんでも書いているせいか、以前からよく訊かれたことです。  本日現在、はっきりしておきましょう。 ブログには確かになんでも書いています。私もテレビのバラエティ番組に出演して専門分野でも専門外でも、なんでもしゃべる評論家の類です。 しかし、新聞や月刊誌など社会の公器と言われるメディアには、専門外のことを書いたことはないし、これからは「スポーツ」、「英語(教育)」を専門にします。長く専門にしてきた「経営」と「地方政治」からは引退しました。 公器への執筆では、実践と現場調査に基づいて論理的に組み立て、結論に導くことが問われます。
 他方、ブログでは、自由な発想で提唱あり、推測あり、エッセイありの内容にしており、言わば発想ゲームみたいなものです。私の推測は、将来事が起きるまでは検証されません。 そう、諸君たちに発想のネタを提供し、考えてもらうことを意図しています。多少は諸君たちが教養の幅を広げられることにお役に立てることを望んでいます。
  さて、今回も中国特集を続けます。

故・大来佐武郎(おおきた さぶろう)氏の進講  
 大来佐武郎は第一回の「経済白書」の執筆責任者であり、著名な国際エコノミストだった。大平内閣で民間人として外相に起用された。当時の新党・新自由クラブにかつがれ、比例区から総選挙区に出馬したが落選。彼の大きさを認識できなかった新党が名簿の下位に置いたからだった。    
 1970年代に日本企業からアジアに出張していた時、例えば、タイでは国際経済の巨人として名声の聞えが高かった。日本におけるより、知られているようだった。  この頃、彼は中国政府に招かれ、政府の経済幹部に対して国家の財政について進講した。彼は「まるで小学生に講義しているようだった」と言ったことが伝えられた。おそらく、幹部たちは知った振りをせず、初歩的な質問をしたという。謙虚に学ぶ心がけを持っていたのだろう。  
 先日、東京で開催された世界の財務相と中央銀行総裁が集まる年次総会には、中国の財務相も中央銀行総裁も欠席した。尖閣島問題によるとメディアは推測しているが、会社で言えば社名だから仕方がない。二人は3日間の総会で各国の発表と、財政首脳と交わる貴重な機会を失った。  中国政府は建国時代に持っていた謙虚に学ぶ心がけを無くしたのかもしれない。

中国の財政が危ない  
 中国政府は全力を挙げて山積する課題に取り組んでいるが、財政危機もその一つ。私が下記に挙げるだけでもいっぱいある。中国の財政危機を克服できなければ、日本経済どころか、世界の経済に大きく影響するので、なんとか改善をしてほしい。日本も財政危機にあるからあまり他人様のことは言えないが。

  ① 国債の過大化
 得られるデータはまちまちで正確さを欠くかもしれないが、現在は国債残高が10兆元、邦貨で120兆円を超えているらしい。GDP比で言えば日本の1/7で大したことないが、最近では毎年2,3倍も急増させていることが問題。
 結局、国と国有銀行が保有していて借金のたらい回しみたいなもの。

  ② 地方政府の公債   
 中国の地方政府には中央から共産党幹部がトップに任命される。会社の本社が子会社の社長を送っているようなものだ。彼らが一国の城主のように勝手放題をしていることが伝えられstyle="color: #783f04;">る。蓄財のチャンスなのだろう。
全国の地方政府が公債を発行しているから、おそらく中央政府は債務の全容を把握できていない。会社で言うなら本社に報告する年度決算書にも粉飾がありそうで信用できるのかどうか。

  ③ 国営企業、国有銀行の債務
中国の大企業はまだ多くが国営企業だ。4大国有銀行は数年前に経営破綻して政府がIMFの資金によって再建した。  国営企業も国有銀行も統計より多い累積債務を抱えているだろう。

  ④ 国防費の増大
年々増大する国防費を止められない。海軍が空母建設を含む太平洋艦隊を増強し、国威発揚のために、空軍が進める有人衛星の打ち上げにも巨額の予算を使っている。それも国際協力なしで中国単独でやっている。     人民解放軍の最高司令官である胡錦濤国家主席の軍の統制力が弱まっているのか。

  ⑤ 公共事業の重荷
道路や鉄道の延長に加えて、原発100基を建設するという。テレビ番組で見ると高 山から辺境まで観光地が整備されていることに驚く。問題はその維持コストが年々増えて財政の重荷になることにある。

長年の高成長体制は低成長に弱い
私は中国政府は財政の実態をどこまで正確に把握しているのか疑問に思う。何しろよく言われるように統計そのものが怪しいからだ。  このような財政問題を抱える中、今年度の経済成長は7.4%に落ちると伝えられる。つまり、国家の歳入がさらに減るということだ。  
 中央政府は全力で取り組んでいるだろうが、現実には「課題は分かっているが、多過ぎてどう手をつけていいのか分からない」というのが実情だろう。                (完)     

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2012年10月13日土曜日

Long and Winding Road to China Democracy

    ♯76 上海たより――ここらで一息入れる


 相変わらず長くて堅い中国特集を書いてきました。 時勢に乗る内容を書くといつもより反響があり、その中には「日本語で書いても意味がない。中国語か英語で掲載せなあかん」という意見がありました。私は日本の若者世代に書いているのですが、彼らに私のメッセージが伝わっているかどうか。どっちみち中国ではブログを規制していて開けないのです。
 それでも、意見に刺激されて、私が好きなビートルズの曲「The Long and Winding Road」から借りてタイトルを英語にしました。いつか在中国大使館の情報収集に引っかかるかもしれません。中国の外交官は日本に滞在して、それなりに多様な見識を持っているはずです。
  もう一つ、Facebookに登録しました。販路開拓ならぬ読者開拓につながる期待を持って。
 さて、今回は久しぶりにI氏からの「上海たより」を出します。人柄を反映する穏やかな文の現地情報でひと息つきましょう。
                ―――――――――――――――――――――――――――――

  (前段略)
 大関の鶴竜関は場内放送で「モンゴル スフバートル市出身 井筒部屋」と紹介されています。ダムディンスレンやチョイバルサンと並んで、モンゴル革命の英雄時代を彩る人物であるスフバートル由来の市名を聞いて、若き日のモンゴル好きの血が騒ぎます。学生時代に本で知ったのですが、モンゴルでの社会主義政党は1920年に成立していて、中国共産党第一回大会が1921年8月に開かれるより早く立ち上がっていますね。
  さて、モンゴルと同様に英雄時代が中国でもとっくに終わり、次のトップもチームリーダーとして各グループの軍と党と民意の三角神輿に乗ることが必須条件になることでしょう。東京の首相は北京とのホットラインを持っていない、いつも電話で直接連繋するタイミングを逸している、と評する人がいます。しかし、バランスを取っていくしかない集団合議システムの中で、トップ同士だけでの電話会談は、中国側にとって非常に危険な行為であり、誰も受話器を取る(中国語では『火中取栗』といい、『拾う』とは言いません)人は居らず、回避するのが普通でしょう。 
  ユーゴの中国大使館を誤爆した時、クリントン大統領が江沢民主席に電話を断られたというのは有名な話です。(因みに江氏は卓越した英語力の持ち主と言われております。1989年の6月動乱当時に、上海の学生たちを前に英語で演説して煙に巻き、事態を乗り切ったあと、党人事ヘリコプターに乗ったとも言われています)  
  松下電器とPANASONICが同じ企業であることを知っている人が、山東省青島市黄島 の群衆の中にどのくらい居たでしょうか? 21日からの新聞報道には、「19日に終息した・・・」 という枕詞が使われ始めました。それと同時に経済への影響に関する記事が増えました。また、 無法略奪者と合法抗議者を峻別する言い方が増えています。各地からの報告の中にも、「暴行は、出稼ぎ者の仕業」とか「青島は黄島地区の余所者から顔に泥を塗られた」という青島旧市内の住民からの声もありました。同様に長沙からは、「失業者の鬱憤」「学生の無知」を強調し、自分たちも怖かったとの声。
 お馴染みになった「日本の一部右翼の仕業」という言い回しと同じで、対象を仕分けして都合の良い(この場合は弁明)をする伝統的な手法が始まりました。 ちょうど40年前の国交正常化交渉に先立ち、中国では周恩来首相が牽引して「日本軍国主義と日本人民は別だ。日本人民も被害者だ」という国内説得工作が行われたことは知られています。当時から、この手法には無理があるなあ、と感じていました。また、「戦争賠償金は受け取らない。日本経済の発展の足を引っ張りたくない」という交渉結果にも、双方に対して首を傾げていました。臥薪嘗胆(意味は異なりますが)してでも、賠償金を完済すれば良かったと考えます。
 その青島市黄島地区について、関川夏央さんの20年前の文章に再登場して貰います。20年前の青島、黄島がどんな雰囲気だったか思い浮かべることができます。今でも丸い話を四角に語り、座の雰囲気を重くする商社員の若き日の姿もスケッチされています。  「9月18日について、80年も前のことを我々は知るはずもなく・・・」と臆面もなく前置きをして、中国の現状をコメントする姿勢は慎みたいと思います。他の例を挙げれば、9月3日を記念したロードレースが北京の盧溝橋を中継点として行われ、新聞にも報道されています。
 1945年9月2日にミズーリ号で、重光葵らの日本代表が太平洋戦争終結の降伏文書に署名した日、それは即ち、第二次世界大戦の集結を意味しており、Victory over Japan day(=JV-day。Victory in Europe day=VE dayは5月8日)として海外では知られております。中華民国が1945年9月3日から5日まで祝勝休暇としたことが、中華人民共和国でも継承され「対ファシスト戦勝記念日」として定着しています。このように5月の上海だけでなく、9月の北京にも彼我の意識の違いの大きい日付があり、そしてそれが増幅されて続けていることを感じます。未来思考とか、歴史認識とか言う次元以前の現実のギャップです。
  9月10日以降、各地の中国人の友人知人から連絡を貰いました。婉曲な表現ですが、『保重 身体(お大事に)』という常套語にも、今回は意味を持たせていることを感じました。内外の各種報道の紙背や、口コミ(タクシードライバーの発言も含め)の含意を探りました。東京での会議で報告協議し、方針を明確にしたあと、「安全第一。業務第二」「駐在員・スタッフその家族の安全対策と情報収集」「臆することなく経済活動を継続する」の発信をして今日に至っています。
 17日から激変した中国の新聞報道は、9月18日当日も引き続き抑制的でした。『環球時報』一面は米国務長官の調停関連。三面に日本の次期大使関連。七面に「在華日系企業は中国への感情が良い企業。右翼ではない」「日本商品をボイコットするより、中国品が日本品を凌駕する技術が大切」などの記事。『参考消息』には日本関係記事が減り、漁船出港、日本人評論家の打開策論説の転載が目立つ程度。 時事配信によると、共産主義青年団の機関紙・中国青年報は「鬱憤(うっぷん)晴らしの愛国では釣魚島を守り抜けないし、国家利益も民族の尊厳も維持できない」と苦言を呈し、「愛国と『害国』は紙一重。理性が両者の境界線だ」と訴えた。公安省の機関紙・人民公安報も「日本製品の破壊は愛国ではなく『害国害民』の違法犯罪行為だ」との厳しい論評を掲げた、との事です。
 しかし相対的に「抑制的」であっても、国民の無法行為とその放任に対する政府の謝罪と弁償については一切触れていません。暴動発生についても間接話法で婉曲に表現するのみで写真付きの記事はなく、日本で繰り返し放映された長沙の平和堂破壊のようなリアルな画像は知らされていません。琵琶湖の南で事業を展開している平和堂が、湖南省でも定着を目指した企図が破壊された一日は、過去の数千日の努力の蓄積と信頼を裏切りました。
 19日、出勤途中に見た領事館付近は、フェンスのみ残り、ゲートは撤去されていました。 警備要員は少数で緊張感はなし。新聞報道は、日本海上保安庁の船と中国政府系の船が並走する 写真を一面に掲載されているものの。米国国務長官の東京・北京での動きに関する記事が目に付く程度で、3日前までとは様変わりにお気楽な記事が増えました。そして、北京から以下の情報がもたらされました。 
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 平成24年9月19日 在中国日本国大使館  本日(19日)朝、当地関係当局より、在中国日本国大使館前の交通規制は解除される旨連絡 があるとともに、北京市公安局は、「抗議活動は一段落した、大使館区域の交通秩序は正常に復 帰した。(中略) 大使館区域への抗議には行かないよう、また、良好な交通と社会の秩序の維持 のため関係当局に協力してほしい」旨のショートメールを北京市民に発出しており、当館前での 抗議デモは一段落したものと思われます。 また、北京以外の中国国内の都市でも、本日、抗議デモが行われるとの具体的な情報に接しておりません。    
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 「一段落」と言われても、問題解決ではないので、引き続き気を緩めずに、情報収集と安全対策に努めながら、臆することなく経済活動を遂行します、とコメントを添えて転送しました。 懇意にしている近所の花屋の大将は、青島・長沙・蘇州などの暴動事件については一切知らず、「そんな事ありえないだろう?本当か?」という反応でした。それでいて、日本から特使派遣・次期大使の下馬評などの事は詳しく知っていました。ただ、各種展示会が中止、夜の街も静かな為、鮮花の売上が激減したと嘆いてみせた後で、菊の鉢植えを押し付けながら「俺たちは友好」と笑っていました。
 毎朝の出勤途上のスタンドで2,3種類の新聞を買います。新聞売りのオッサンは一面に激しい言葉が並ぶ毎日でも、いつも通り丁寧に新聞を畳んで呉れ、1部1元(12.5円)の代金を「謝謝」と頭を下げながら受け取ります。オフィスビルの同じフロアに所在する韓国大手企業の総経理とは隣人として時々会食やプレゼントをする仲です。その総経理が「南の島の騒動はどうなったの?韓国だったらもっと激しい投石やデモが起こるけど・・・」と聞いてくるので、「上海は特別に整然としていたと思う。フェンスとゲートで流れを絞り込み、3段階の装備をした警官が規制した。デモ参加者もバラバラに歩いてくるか、貸切バスから押っ取り刀でやって来るのだったから迫力は無かったよ」と応えながら、「もう少し北の島のことは、聴かないの?」という言葉は控えました・・・
 こんな風にして日常は続いています。(社宅→花屋→新聞スタンド→国際貿易センター。徒歩15分。途中領事館の搦め手を通過します)                 (了)

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2012年10月6日土曜日

Long and Winding Road to China Democracy

  #75 ネット紅衛兵に問う10項目の質問


① 五星紅旗の国旗に書かれた小さい四つの星の意味を知っているか?
 労働者、農民、小資産階級、愛国的資本家の4つを意味するとされる。後の二つは私 にはよくわからないが、重要度の順になっているのか。最重要の労働者と農民は建国の目標だろう。諸君の多くが属していると思うが、これが政府に軽視されてきた。 諸君が持たされている不満は日本とは関係がない。

② マルクスの著書を読んだことがあるか?
 日本では多くの学生がマルクスの著書を読んでいる。私は工学部卒であるが、教養科 目としてマルクス経済を学んだ。マルクスをかつて学んだ経営者や官僚は少なくない。日本人は複眼なのだ。もっともソ連の崩壊後はマルクスが読まれなくなっている。

③ 諸君が学んだ中国の歴史教育は偏向していると思わないか?
 誰でも、私も高校時代にマルクス史観に影響された先生(当時は普通のこと)から世 界史と日本史を学んだ。自虐的歴史教育と呼ばれる。今も日本では愛国教育などやっていない。私から見れば、中国の歴史教育は北朝鮮と変わらない。

④ 日本が搾取していると思うか?
 諸君の周りにいる日本人は企業経営者であれ、レストラン主であれ、平均の日本人よ り給料が高いだろう。海外地に暮らすから手当てもあり、良い生活をしているように見える。しかし、中国人成功者に比べれば比較にならない。出資者である親会社が配当や利益の一部を受け取ることと、搾取とは意味が違う。これが搾取とされるのなら、中国に進出する外国企業はなくなるだろう。

⑤ ロスで韓国人の店が襲われたことを知っているか?
 何かきっかけがあると暴動と略奪が起きることはアメリカで時々ある。私が滞米中にロサンゼルスで黒人群衆が韓国人の店を襲うことがあった。例えば、果物店では朝早くから果物を一つずつ磨き、おいしそうに見せるから商売が繁盛する。これで韓国人がうまく儲けていると見られて狙い打ちされるのだ。商売が繁盛するのには、韓国人も諸君の周りの日本人も関係がない。嫉妬と不満が背景にあるだけだ。

⑥ 日本は軍国主義を進めていると信じているのか?
  諸君は中国政府による情報に支配されている。中国人の半分が日本は軍国主義化していると信じているという。日本の自衛隊は近代化されているかもしれないが、憲法と世論の縛りが強く、どの国にも攻撃することは許されない。領土の野心もない。諸君は日本にいる中国人に確かめてみるとよい。

⑦ ハワイやグアムの太った豚を知っているか?
 行きたくても行けないから無理もないが、ハワイでもグアムでも中国人観光客でい っぱい。日本にも中国人観光客が来て、家電製品や海外有名ブランド品を何十万円も買い漁ってきた。彼ら太った豚や子豚たちは、中国の旅行会社が安値を半強要するツアーの中国人とは階級が違う。最近観たホンコンのテレビ局がつくった番組では、海南島のリゾート地で遊ぶ中国人の成功者と官僚の子供たちを紹介していた。 諸君は日本人ではなく、彼ら太った豚と子豚を問題にすべきだ。彼らは諸君の取り分を搾取しているのだから。
 諸君は日本で最初に 海外旅行ブームをつくったのは、ノーキョウと呼ばれた農民の団体だったことを知らないだろう。

⑧ 天安門事件のデモ群衆との違いをわかるか?
 1989年に起きた天安門事件には、天安門広場だけで100万人の群衆が集まった。 この民主化運動を政府が弾圧した時、アメリカの町に住んでいた私は、親しいアメリ カ人数人の会食で中国政府による弾圧を支持して彼らを驚かせた。そして非難を浴びた。なぜかと言うと、まだ市民のレベルが成熟していないので時期尚早だと思ったからだ。政府が強行策を取らず、全国に混乱が広まり、犠牲者は350人ではすまなかっただろう。
 先日の反日デモでは最大の日でも85万人だと伝えられた。100万人としても人 口の0.1%以下。とても民意を表しているとは思えない。 諸君たちが政府機関から国旗、横断幕、プラカードが支給され、さらに送迎のバスも与えられた。天安門事件の群衆は政府に対して民主化を要求する目的を持っていたのに対し、諸君たちは何を目的にしたのか?

⑨ なぜ巨額の軍事費を使うのか、背景を知っているか?
 今、世界で中国を攻撃する意図を持っている国は皆無で、諸君はどう教育されている か知らないが、これは本当のことだ。それでも毎年軍事予算を増やしている。いくら大国であれ、3軍計160万人、人民警察部隊66万人、その他の警察官2100万人、中央と地方を合わせた公務員が1千万人以上。因みに、日本の自衛隊は25万人、警察は29万人。中国の国家予算は80兆円でほぼ日本と同じなのだから、これでは諸君たちには金が回らないはずだ。

⑩ 中国政府の体制を私が「会社民主主義」と呼ぶ理由がわかるか?
 切磋琢磨して実力をつけた社員が取締役になり、さらに取締役会で社長が選ばれる会 社組織に、中国の政治体制が似ている。国家主席には任期があり、独裁者と違って長期に権力の座にとどまれない。私は13億人の中国を統治するにはこの体制が良いと信じてきた。 ところが、天安門事件以来23年間、歴代政府は内政でいびつな経済成長のほかには 改革の実績を挙げていない。諸君たちはその負の影響を受けている。不遇、不満、腹立ちはここにある。反日デモに利用されたところで、何一つ解決することにならない。 

ニッポン紅衛兵はいくつ知っているか?
 対中外交は情報総力戦になってきた。それを支えるのは世論。若者諸君も知識武装を求められている。ニッポン紅衛兵は上述の質問の中でいくつ知っているか?       (完)

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2012年9月28日金曜日

#74 世界の離島戦争と国家の責任ーーなぜ「国有化」?

 韓国、中国両国との紛争が時を同じくして起きたので、日本の外交が頼りないからだ、と政府が批判されていますが、日本は武力を行使しないことが国策であるために外交戦にはハンディがあるのです。 自民党の安倍新総裁は、中国に対し「しっかりと領土を守る」と言っていますが、本当に貫徹できるかどうか。もともとは長年の自民党外交が中国の言いなりになってきたのですから。
  諸君の参考に供するために、「国有化」の言葉と世界で起きた離島紛争の実例を挙げて、武力を楯にしない外交のあり方を考えてもらいましょう。

なぜ尖閣島は沖縄「県有化」にしなかったのか  
 今回の尖閣島問題は石原東京都知事が島を都が買収することから始まった。もともと尖閣島をめぐる日中対立は今に始まったことではない。本稿#39(2010年10月)でも関係悪化について書いた。それ以前にも、当時の小泉首相が靖国神社参拝をした時にも日中関係が悪化したことがある。  
 尖閣とは何の縁もない東京都が買収する目的で12億円以上の寄付が集まったことは民意の表れだった。知事が言ったように、都が買い取った後で国に譲渡することは、一つのクッションの役割をしたはずだ。知事が例の如く中国を刺激したところで、国は預かり知らぬことだ。国が賃借していて買い上げに変えるだけなのに、賃借の事実は中国政府が報道しないので、「国有化」の言葉が刺激的に使われた。ニューヨークの中国人デモにおいて、「日本政府が尖閣を国有化したことは、マンハッタンを日本国有化したことと同じ」などと叫んでいたが、なんというバカな論理なのか? 
これをそのまま信じるアメリカ人もいるから始末が悪い。
 もう一つの選択があった。それは都が集めた寄付金を沖縄県に与え、尖閣を沖縄県が買収して県有地にすることだった。なぜこの選択が話題にもされなかったのか?沖縄県から提案されなかったのか?  
 他愛ない素人談であるが、「県外の市民大衆は沖縄の県政、つまり統治力を信用していないからさ」ということだ。  私も批判覚悟で言うと、知事と沖縄県人は「アメリカのために基地を提供している」、「日本本土のために基地を提供している」として沖縄の犠牲を言うが、「基地は沖縄防衛のためにもある」と。中国が沖縄の領有権さえ主張している今の東アジア情勢を見れば、沖縄に自衛隊が駐留するだけでは中国に対する抑止力にならない。(これを妄想という意見もある)

国際用語としての「国有化」  
 「国有化」の言葉が使われると国際関係における意味は、国内用語とは違う意味を持つ。 つまり、国際社会では、ある国が他国の資産を自国のものにすることだ。エジプトが英米資産であったスエズ運河を国有化したり、アラブ国が英米資本が支配していた石油生産施設を国有化したことを実例として挙げられる。
 「国有化」nationalizationは「奪う」、「自国のものにする」ということであり、ぎらつく言葉なのだ。  尖閣島の国有化は、当然、世界ではこの意味で受けとめられる。だから、尖閣島は国有化ではなく、「国が地権者からの借地を買い上げた」と言うべきだった。中国の巧みな広報と相まって、世界では日本が中国から取り上げたと思われている。
 こんなことは外務官僚は知らないはずがない。それを敢えて「国有化」の言葉を使ったのは、野田首相に何か目的があってのことだろうか。  私がメディアから得た情報では、野田首相の国連での演説の中で、国が借地を買い上げた、という説明をしなかった。

フォークランド戦争①、人が住む島の例  
 1982年、行き詰まった内政を打開する目的で、アルゼンチン軍部隊がフォークランド島に上陸して国有化を宣言した。四国の2/3の面積に英国系住民3000人が住んでいる。戦争が起きた時に初めてこの島を知り、アルゼンチン沖から500キロの距離にある孤島が、なぜ英国領なのかと首をかしげた。
 自国民保護という大義を掲げた英国は空母と駆逐艦に加えて豪華船クイーン・エリザベスに兵員と戦車を満載してフ島に向かわせた。アメリカ生活中の私はテレビ報道を観て驚いた。なんと大げさなことか、と。結局、両軍合わせ5万4千人の将兵が3ヶ月の戦闘で645人の戦死者が出たが、英国軍が圧勝した。アルゼンチン政府の危険な冒険によって犠牲になった兵士こそ哀れだった。    島がアルゼンチンに支配されれば、住民が追い出される事態を英国政府は許すことができず、世論の支持を得て毅然として武力にものを言わせた。
 かねてから、イベリア半島の先端にあるジブラルタルを英国が領有することに対し、スペイン政府が返還を求めたことがある。ジブラルタルは島ではないが、東京都の狛江市くらいの面積がわずか6.5㎢の都市、人口2万8千人のうち英国系住民が13%で公用語は英語であるが、住民のほとんどはスペイン語を話す。スペインに有利な環境だ。
 それでも英国政府がフォークランド戦争で断固として島と住民を守ったことで、スペインがうかつに武力を行使できない。世界に散らばる英国領有の島に対する抑止力が利く。

中ソ国境紛争②、人が住まない島の例  
 黒竜江(アムール川)の支流にあるいくつかの島をめぐって中国は長年領有権を主張し、ソ連時代から何度もドンパチをやってきた。1969年から国境協定が結ばれる2004年まで両国軍が対峙し、その間戦死者も出た。  両国が和解した国境協定では、これが世界の領土大国かとあきれるくらいみみっちく面積にこだわり、大きい珍宝島(タマンスキー島)にいたっては半分のところに国境線を引いた。人が住まないからこそ分割できたのだ。
 国家も国民も領土にこだわる。「国家の面子が立つ」と「一方の勝者をつくらない」の二つが領土紛争の解決策なのだ。  (このすさまじい国境紛争については、ずいぶん前に本稿で書いたが、どこだったか見つけられない)

次世代にはどうなるか?
 若者諸君、日本は周りをロシア、中国、北朝鮮、韓国に囲まれている。どの国とも問題を抱えている。私はまだ陸続きではないことをましだと思っている。日本がこれらの国に内政問題の道具に使われることは長く続くだろう。
 諸君の時代にも。 ものを自由に言うことも、行動することも日本では許される。政府が情報統制している国の人々ほど諸君は単細胞ではない。中国政府の論理を無視した声明について、諸君たちには、ネットを利用して意見を述べ、世論形成の一翼を担ってほしい。在日の中国人にいつか届くだろう。    (完)

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2012年9月16日日曜日

Long and Winding Road to China Democracy

 

   #73 中国の離島国有化戦略――ドンパチに抗する手はあるか?


 前回、日韓関係について書きましたところ、追加の情報をいただきました。韓国政府と韓国人の自制心について二つのことを追記します。 一つ目は、1983年にカムチャッカでソ連の戦闘機によって大韓航空機が撃墜されたこと。260人の犠牲者が出ました。二つ目は、1987年に北朝鮮の工作員によってラングーン(現在、ヤンゴン)で韓国政府の閣僚がテロで暗殺された上に大韓航空機が爆破されたこと。115人の犠牲者が出ました。 いずれに対しても、韓国は報復の反撃ができず、じっと耐えました。この国は感情を抑制し、我慢の子を強いられる事件に度々遭ってきています。 日本はこんな事件に遭わずにこられていますが、いざ起きれば日本人はどう対応するのでしょうか。そして、諸君たちは? 今回は、中国の離島国有化戦略について考えてみます。

中国の離島支配の強行はすごい  
 竹島紛争と同時並行で、中国と尖閣諸島をめぐって関係が悪化している。日本国が島の土地権者との賃借契約を買い上げて国有化しただけなのに中国政府とネット紅衛兵が強硬姿勢を見せる。  尖閣諸島に限らず、中国政府の島盗り戦略はすごい。
 なにしろベトナム沖合いの西沙島は1974年に内戦中のベトナムとの海戦に勝って中国が領有した。以来実効支配。  
 フィリピンに近い南沙島は、中国ほか4か国が領有を主張している。
 もう一つ、台湾よりホンコンに近い東沙島は、台湾が飛行場を建設し、軍隊を駐留させて実効支配している。中国が目くじらを立てないのは、いずれ台湾島をまるごと支配できると考えているのだろう。  
 当然、見えてくることは、国際社会からいかに嫌われようとも、海南島に海軍大基地を建設し、ここを拠点にして東シナ海から南シナ海にいたる全公海を領海として支配しようとしている。こんなむちゃくちゃな野望がまかり通るのは、中国政府が人民解放軍を抑えられない証ではないか。
 今、日本政府が尖閣諸島を国有化したことに対し、中国政府も人民も反発を強めている。日本のメディアは、例によって、政府が対中国外交にぐらついていると安易に報道したが、 私はそう思わない。中国政府は型通りの対応をしているのであって、こんなことで日本政府が原則を守ることにぐらついているはずがない。今は小泉首相時代にならって突っ張り外交をやることだ。

ネット紅衛兵と元祖紅衛兵  
 私は本稿で何度か中国のデモ隊群衆を「ネット紅衛兵」と呼んできた。彼らはかつて文革時代に猛威をふるった紅衛兵といくつか共通点があるからだ。
 
 先ず、彼らは一面的な教育の産物であり、自分たちに不利な情報に無知であること。デモの目的がなんであれ、政府は彼らを泳がすしかない。尖閣諸島が長年国と地権者の間で賃借契約がされていたことも知らない。  
 二つ目は、改革が閉塞状態に置かれ、デモが共感を呼び一時のうさ晴らしになっている。 毛沢東語録の赤い冊子が今はネットの呼び掛けに変わった。  
 三つ目は、オリジナル紅衛兵は政治も何も分からない少年たちだったが、今も大半は学生、失業者、低所得者層で教養水準が低いと見られている。
 四つ目は、紅衛兵が過去の歴史・文化遺産を破壊し、教養人を攻撃したが、今は日本を標的にして攻撃している。どちらも政府批判は直接の目的にしていない。  中国政府が表向きだけは群衆の取締りをしているが、日本企業、日本商店、日本人への攻撃に対する取り締まりはいかにも甘い。中でも略奪を許していることは国家の恥であるはずだ。日本のメディアも指摘しているように、彼らにガス抜きをやらせて、攻撃の矛先が政府に向かないようにしていることは確かだろう。

 かつて鄧小平は、「ネズミを取るなら猫の色は黒でも白でもよい」と名言を吐いた。つまり、共産主義から逸脱しても国家に税金を払う者は良い者なのだと意味したのだろう。  私が中国政府要人の立場なら、本来農民と労働者のための共産党が今は両者をないがしろにしている根本的な矛盾をネット紅衛兵が知ることを恐れる。私ごときが知ることだから、当然、中国政府は認識している。中国政府はこのまま行けるのだろうか?

ハングル紅衛兵とニッポン紅衛兵
 前回書いた韓国のデモ隊群衆をハングル紅衛兵と呼んでみよう。ネットの呼びかけで集まっていることは中国ネット紅衛兵と似ているが、テレビの映像で見ていると、彼らには世代に広がりがあることと、ネット紅衛兵より教養水準が高そうだ。そのためか暴動も略奪もなく自制が利いているようだ。  
 他方、サッカーの国際試合にどこでも行く若者愛国者、ニッポン紅衛兵は国際紛争について国家をどう考えているだろうか?  仮に、現実の問題であるが、中国軍が尖閣諸島に上陸したら日本はどう対応すべきか、を問うてみたい。なにしろ相手は国際世論を気にかけないし、ドンパチに躊躇しないのだよ。  「自衛隊が反攻すべきだ」という意見に対し、「人も住んでいない島で戦闘して犠牲者を出すべきではない」という意見が出るだろう。へたすると、国論が二分されるかもしれない。もし犠牲者が出たら、政府はメディアで批判を浴びるだろう。メディアが視聴者数と購読者数におもねるのは、政治家が有権者目当てに国家観に触れてこなかったこととよく似ている。
 諸君は国家をどう思うか、国家観が問われている。       (完)  

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2012年9月11日火曜日

#72 竹島をめぐる日韓の紛争ーー市民にできることは?

 韓国の李明博大統領が竹島問題や天皇について反日の発言をしたことから、にわかに日韓関係が悪化しました。戦後1952年に韓国が武力によって設定した李承晩ラインの紛争以来、ここまで両国間に緊張が高まることは初めてのことです。従って、当時を知らない若者諸君には紛争の背景が分からないことは仕方ありません。  日本では外交に何かあると市民もメディアも政府を非難するだけで、自分たちは何もしないように感じています。本当は毅然として市民にできることがあるのです。無関心のオバハンやバアサンに知り合いがいたらアドバイスしてください。 大事なことは、メディア、特にテレビのバラエティ番組に踊らされないように注意することです。

◇ 市民も毅然とした意志を持てるか  
 諸君ならどこまでやるか。政府がやることも含まれているが、あくまで個人の意志でできることを問いたい。*印がある項目は私が賛成して実行できること。さて、諸君は?
 (耳情報と思いつき。発想の参考)    
 ① 日韓間の文化、スポーツ交流を止める。    
 ② 韓国選手に対し新たにビザを出さない。*    
 ③ 韓国観光に行かない。*    
 ④ 乗り継ぎも含めて韓国の航空機に乗らない。*    
 ⑤ 韓流ドラマと韓国映画を観ない。*    
 ⑥ 韓国ドラマの放映を中止する。    
 ⑦ 韓国製品を買わない。*    
 ⑧ 韓国焼肉のレストランに行かない。    
 ⑨ 韓国大使館にデモを仕掛ける。
 ⑩ 対馬への観光ビザを発行しない。     
 ⑪ 韓国人観光客の入国を制限する。     
 ⑫ 韓国テレビ局のニュース番組を放映しない。    
 ⑬ 海上自衛隊の艦船を竹島近海へ派遣強化する。     
 ⑭ 竹島の韓国軍を自衛隊が威嚇攻撃する。     
 ⑮ 韓国への新規輸出と投資を中止する。*     
 ⑯ 韓国籍のフェリーと貨物船を日本の港に入れない。    
 ⑰ 政府間の日韓協議を当分中止する。    
 ⑱ 日本政府が韓国国債の購入を延期する。  

◇ 李大統領は反日の本性を出したか  
 大統領は1941年大阪生まれ、終戦の翌年5歳の時に家族とともに韓国に引き揚げた。  戦前のことだから家族は辛い生活を強いられ、彼もその記憶を持っている。当事者体験はなかなか理性では克服できないものだ。  彼は昨年12月に訪日した時に、首相との首脳会談でさまざまな課題について話し合うべきなのに慰安婦問題に終始した。両国政府間では慰安婦問題については落着ずみであり、日本政府は立場として対応できない。親善どころか、日本国民から反発を招いただけだった。
 今回、李大統領が突然竹島に上陸し、その上で天皇に謝罪を求めた。メディアは12月の大統領選挙で与党候補が有利になるように図る政治的意図だと伝えるが、私は根はもっと深いと思う。与党の朴候補は「日本が竹島を韓国領土であることを認めれば問題が解決する」とバカなことを言っている。こんな論理と現実を無視した発言がまかり通るのだから、対立する野党候補も反日的にならざるを得ない。
 李大統領は就任間もない時には、「両国が過去より将来を見る前向きの関係を築く」と発言して名大統領の名声を目指していたのだ。国際社会での地位も意識していた。それが今になって感情志向になったのは、彼の地が出てきたからだろう。

◇ 韓国人の国民 感情 
 世論調査によると、韓国人の60%以上が反日または嫌日だという。当然、これには背景がある。日本企業時代に10回以上韓国中に出張し、90年代には韓国のオリンピック金メダリストのレスリング選手を取材するために訪れた時に、親しい韓国人数人からよく話を聞かされた。私の考えも合わせてまとめてみよう。  
 第一は、同じ黄色人種の日本が、統一国家であった李王朝を倒して植民地にしたという歴史。全土が統一されていなかった台湾を植民地化したこととの違い、弾圧の程度の違いがあり、今も日本に対する怨念が根強い。  
 第二に、日本の経済が再建されたのは朝鮮戦争の特需によるものだと言う。日本は朝鮮戦争で得をした。若い世代は戦前から日本が大国であり、技術力を持っていたという認識を持っていない。多分韓国の歴史教育のせいだろう。
 第三に、韓国の国土は日本の26%、人口は40%であるが、韓国政府の大国意識は強い。正式国名が大韓民国であることもその表れか。韓国人の日本に対するライバル意識もすさまじい。政治でも経済でも中国とも日本ともうまくやり、我が道を行く台湾との違いが大きい。  
 第四に、スポーツや一部の工業製品で日本に勝つことがあっても、実利重視の経済社会では科学分野の基盤が弱い。例えば、天文学分野における学者や予算では比較にもならない。特にノーベル賞の受賞歴で日本に太刀打ちできないことから、国を挙げて医学賞を取ろうとしたが、有望学者が論文を捏造する結果を招き、有為の人材をつぶしてしまった。韓国の政府と国民の鬱積した感情は根深い。  
 最後は、2008年のウォン下落による通貨危機にIMFの管理下に入り、財政引き締め政策が取られた結果、長らく不況が続いた。給料は下がり、失業が増えた。日本の比ではない。韓国の国民の鬱積した感情は今も残る。  何もかも日本より安い。だから日本に活躍の場を求めるゴルファーやプロ野球選手が増え続ける。

◇ 背面と前面の敵  
 韓国政府は北朝鮮に軍艦を沈められて兵士30人もの犠牲者が出ても、突然民間人が住む島を攻撃されて死者が出ても、反撃をせずにじっとこらえた。挑発に乗れば首都のソウルが攻撃される恐れがあるからだ。韓国人には鬱積した悔しさの感情を持たれたままだ。  
 他方、竹島で日本に対し挑発行為を繰り返したところで、日本が攻撃しないことは読まれている。日本が国家の尊厳を守るためには、竹島近海で領海侵犯をする韓国漁船の取り締まりを強化するしかない。他方、過激論者が言うような自衛隊による竹島攻撃をやるならば、背面に北朝鮮の敵をかかえる韓国を困らせるだけでなんら実りがない。 韓国にしても竹島に数十人と言われる兵士を駐留させる経費もかかる。日本を刺激したところで、日本人の毅然たる態度が、時間が経てばじわっと韓国の経済と社会に利くようになり、算盤勘定に合わないことがそのうち分かるだろう。
 日本では政治家が強硬な反韓を唱えても選挙の票を多く取れない。日本の有権者はこの点で成熟している。  

 結び――good peopleとgood people  
 1980年代の始め、アメリカが長い不況に入ると、日本製自動車をめぐる貿易問題を中心に反日気運が高まった。小さな保守社会の町に住んでいた私は時々不快な思いをさせられた。地元ラジオのコマーシャルで、車ディーラーがあることないことをがんがん話す反日キャンペーンをやっていた。  こういう雰囲気の中でも、友達が「国と国の関係を別にして、我々はgood peopleとgood peopleが付き合えばいいのだ」と言っていた。同じ考えを他のアメリカ人からも聞いた。
 私はそれ以来、相手が韓国であれ中国であれこの考えに徹している。  竹島問題があろうとなかろうと、韓国政府が反日を内政の道具に使う限り、日韓の政府間関係も韓国国民の反日感情も改善されることはない。韓国の次世代には日本に対する意識に影響されずに、わが道を行く国つくりをしてほしい。そのためには2世代くらいはかかるだろう。  我々にできることは、good peopleとgood peopleの付き合いのほかに、「来る者は拒まず」と在日韓国人に不快な思いをさせないことだ。諸君も大人(たいじん) の振る舞いを見せよう。                               (完)

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2012年8月16日木曜日

#71 富山は新聞の激戦地ーー何を物語るか

    若者諸君、残暑お見舞い申し上げます。
   先月に大阪から富山に移住して夏休みの生活を過ごし、たっぷり休養しました。こんな長い休養は大学を卒業してから初めてのことです。今月から「若者塾」を再開します。
  今回のテーマは新しい土地に住んだ時の私と新聞についてです。アメリカの町、富山、大阪の三つを比較してみましょう。

アメリカの町の新聞  
  もう34年も前のこと、家族とともにアメリカの小さな町に移住した。ペンシルベニア州の北西端にある人口2万人のミッドビル市という町で、周辺の町村を合わせても3万人の地域。ここにMeadville Tribuneという創立110年になる地元紙がある。住民のうち半分が購読していた。  人々は、「誤字が時々目につく」とか「スポーツ紙面が多過ぎる」とか文句を言いながら、それでも地元紙を愛読して支えていた。地元紙は市政の動き、地域活動、学校スポーツ、お悔みや結婚など地域の情報を細かに伝えるので、住民、特に新住民が町を知る助けになっている。
  また、広告面が重要な役割を果たしている。地域の商店が特売などを伝える媒体として安い経費で使うことができる。そのせいか、折り込みのチラシはめったに使われない。  
 他方、全国紙はどうなっているかと言うと、アメリカではどこにでもある地元紙のほか、大都市の地方紙が有力であるため、全国紙にはNew York Timesの日曜版とWall Street Journalしかない。どちらも発行部数が120万部くらいで、1000万部の日本の大新聞とは比較にならない。これに加えて、80年代後半に新しく発行されて急成長したUSA Todayが全国紙になった。同紙は初めてカラー刷りで政治、経済の記事のほかスポーツ面に力を入れて成功した。論説や読者意見は読みやすい。私は出張の時に空港の売店で買っていた。
 私は友達にならってNew York Timesの日曜版を本屋に予約して買っていた。当時は2ドル50セントであったが、テーマ別に数冊からなる同紙は読み切れないほどの大部であり、日曜に行事でもあると読み残しがたまってしまう。本屋によると、町全体で200部が読まれているそうで、全人口の1%に過ぎない。

富山の新聞  
 富山県は新聞の激戦地だ。日経を含め全国紙5紙に加えてブロック3紙の一つである中日新聞が入っている。これに北日本新聞、北国新聞、富山新聞の地方紙がある。  前者の2紙は富山県と石川県の読者を対象にする広域紙であり、富山新聞も県域紙で本来の地元紙ではない。
 さあて、どの新聞を購読するか? 思案のあげく、アメリカ生活の原点に帰って9紙の中でもっとも地元紙に近い富山新聞に決めた。読み始めると、全紙面にわたってカラー写真がわんさと使われ、見出しの活字や囲いも青などカラーで飾られている。USA Todayが華々しく登場した時の紙面よりすごい。今はいくらか慣れてきたが、目が散るようで読みにくい。我慢するというほどではないが、そのうち馴染むだろうと思っている。
 かつてアメリカの新聞にカラー刷りが増えてきた時、カラー紙面の新聞がリササイクルされる障害にならないのだろうかと疑問を持った。黒だけなら脱色が簡単であるが、多色の紙面に対しては何種類もの中和の化学反応を使わなければならないからだ。今は技術が進歩したのだろうか。  技術の進歩と言えば、全国紙の社説や主要記事をネットで読めることもその一つだ。

大阪の新聞  
 大阪府には、多分全国で唯一か、広域の地方紙が一つもない。一つだけあるが、発行部数が1万部以下で地元紙としての役割は限られている。全国紙の完全支配市場だ。その上、スポーツ、芸能、競馬競輪のスポーツ新聞が何紙もあり、広く読まれている。隣接する府県には立派な県域紙があるのに、大阪にはない。なぜなのか?
 私がアメリカから茨木市(人口27万人)に帰って新住民になった時には、地元事情を知るすべがなくて困った。全国紙には府下版の紙面があるが、茨木市のことは分からない。月1回届けられる行政の広報冊子だけが頼りだった。  
 よく言われたことであるが、「地元紙など大阪人は読まない」と。

全国の地方新聞  
  新聞の激戦地は北陸のほかに、東北や中国地方に多いようだ。  私が知る範囲では、市域対象の地元紙が山口県の宇部市(人口17万人)にある。夕刊紙「宇部時報」だ。活字離れと言われる困難な時代に生き残ってほしいと願う。
 私流に表現すれば、「地元紙は民度を計るものさし」ではないか。  地元新聞は広く市民の活動を報道するだけではなく、それを支援している。あちこちで行われる花火大会も新聞が主催者だった。                               (完)

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2012年6月26日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#26、6月,2012   大阪に別れ、大阪の若者よさらば

  7月1日から富山市で新生活を始めます。アメリカから帰国して茨木に17年間住みました。その間に両親が亡くなって、自由の身柄になったのを区切りに新天地を求めることにしたのです。死んで骨になってから京都にある家族の墓に帰って来ます。
高校(茨木高校卆)の仲間とスポーツクラブの親しいグループに持ってもらった送別会の席で、「富山の家は田んぼに囲まれているのか?」と訊かれました。都心の外れにあるマンションの周囲には田んぼがまったくありません。どうも大阪では富山にあまり馴染みがないようです。
 さて、2010年5月から2年余り、『言論大阪』を書いてきました。今回が最後ですから少しは諸君の生活に役立つことを書いてみましょう。


会話を磨こう  
   先日、よく通った梅田のカフェに行った。ここはいつも若者客でいっぱいで、コーヒーが安く、隣りの席との間隔が狭いので隣りの話声がよく聞える。私には若者の声を聞ける貴重な場所だった。盗み聞きなどと言うなかれ。  隣席に若い男二人が据わった。二人が席を立つまで観測していた。驚いたことに、その間ひと言ふた言を除いて各々が黙々と自分のスマフオを見ていた。せっかく友達と会ったのに会話をしない。もったいないことだ。
   大学で英語だけを使う経営学概論を教えていた時、息抜きに二人か三人を名指しして、何でも選んで自由会話をやらせた。英語で平均より高いレベルを持つ彼らが会話をできない。次に日本語でやらせてみたが。うまくできない。「これでは外国人と会っても英語で会話できないよ」と彼らにアドバイスした。そう、日本語で会話できなければ、英語でできるわけがない。「英語で考えろ?」なんて現実に合わない。  
   諸君、先ずは日本語の会話を磨こう。今のままでは、日本でも海外でも、会合やパーティに出ても初対面の人と会話できずに壁の花になるだろう。 試みに、一ヶ月でいい、スマフオを使うことを止めてみよう。会話の上達にとどまらず、新しく考える時間を見つけるだろう。


困難克服にオパレーション・チャートを
  このチャートは、第二次大戦中に英国陸軍が開発したオパレーション・リサーチ(OR)は、この技法の一部とされる。今日では巨大なコンピューターソフトが開発され、民間の経営管理システムとして応用されている。会社勤めをしながら夜に通っていたアメリカの大学院(中退)の科目で習った。 ORはさておいて、チャートは簡単なことだ。 もし困難やトラブルに遭ったなら、4段階で整理をしてみる。頭の中では多くの問題があるように思えることが、整理してみるとそれほどでないことが分かり、すっきりする。   


第一段。白紙に鉛筆で(私の場合)トラブルの大項目をすべて書き、周辺にその関連することを小項目として書く。整理はせずに、ただ項目を思いつくままに書き上げる。
第二段.全項目を眺めて、相互に関連することを矢印と括弧で結びつける。
第三段.別の白紙に大項目を中心にして整理してみる。
第四段.実行の優先順にExcelでチャートをつくる。チャートは縦に項目、横に実行する週ごとの時系列を入れる。  

 会社では,このチャートが新製品開発や、プラントの設計から建設までの管理に広く使われている。私の引越し準備にもチャートを使って管理してきた。記憶で頭を使う必要がないので悠々と事を進められる。


大阪を出てみよう
 好きな仕事に就いていない、非正規社員で給料が少ない、あるいは失業している諸君に対し、求職を全国に広げて大阪を出てみることを勧めたい。武者修行に出るつもりで、大阪にいつか帰ってもよいので、新しい町に永住する覚悟は要らない。
 中国人はすごい。国内で就職できない技術者も労働者も酷暑のアフリカで働いている。テレビの番組によれば、工学部卒の若者でさえ掘立小屋で自炊の共同生活をしている。中国政府は受注した建設工事でもインフラ整備でも自国民を大量に送り込むことが基本。日本が海外工事の労働者として現地人を使うのとは対照的だ。この違いには中国政府の遠大な移民戦略があると私は見ている。  
 韓国もかつてはそうだった。35年も昔、私が出張の帰りに金浦空港に入ると、ロビーに韓国人の群れでごったがえしの様だった。その中に多くの女性が泣いていた。訊いてみると、炎暑のアラブの国で建設労働者として出かける夫や子供の見送りに来ているのだった。まるで戦場に送る兵士を見送っているようだった。当時、韓国政府が外貨稼ぎのために行っていた国策だった。  
 日本もそうだった。戦後でさえ貧しい時代に国策として南米に移民を送っていた。どの国でも我々は先人の犠牲の上に今日の繁栄がある。世界有数の先進国になった今の日本では、日本人の労働者を海外で受け入れをしてくれない。  アフリカやアラブに出ることを思えば、国内移住は容易なことだ。  今の環境から出てみることは、きっと貴重な経験をもたらすはずだ。価値観も広まり、外の世間がよく分かる。


大阪都が気になる  
 大阪府と大阪市の改革がめざましい。歴代知事も大阪市長もできなかったことを、これだけよくやるなあ、と思うくらい成果を挙げている。読売の6月20日朝刊が大阪改革をまとめて書いている。諸君はどれだけ知っているか? 無理して大阪都にする必要は少ない。もっと大きく大阪府、奈良県、和歌山県を統合して関西県をつくってほしい。
 もともと大阪都構想は橋下前知事・大阪市長の発案ではない。  今から15年前、小著『大阪がかわる 地方がかわる』(三一書房刊)の中で、「大阪府と大阪市の東京都化」という節で書いている。今でもあんなに公選の区長と区議会議員をつくって税金を使ってよいのか、という疑問を持っている。  一部を引用してみよう。    


 大阪には別の大合併話が市民や経済人の間で語られている。それは、大阪市と大阪府を一体化する、 言わば東京都化する構想である。何度か聞いた話をまとめてみると、「大阪府はドーナッツのように真ん中に 大阪市に穴を開けられて府政の障壁になっている」、「府政を敷く上で大阪市をコントロールできない」、それに 日本のどこでも耳にする話で、「大阪府と大阪市の関係がうまくゆかない」といったところだ。いずれにしても、ネガティブな側面だけを挙げて、「東京都のように一体になったらうまくゆくのに」という方向に収斂されてゆく。 23 区を東京市――昔には存在した――を独立させ、法的にもあいまいな首都としての現在の地位をはっきりさせ ることである。(以下略)

 大阪の将来を担う諸君はどう考えるか?  諸君に困難な時代を生き抜いてほしいと祈る。            
        (完)

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2012年6月17日日曜日

#70 政治はわからんなあーーなぜ小沢一郎は強気なのか?

今月末に引越しを終わったら、政治と経営のテーマから撤退して新たに人生の仕切り直しをします。本来、「若者塾」では若い世代の人たちに今の困難な時代を生き抜いてもらうために、生き方の参考になることを中心に書く方針でした。一ヶ月ほど休養をしてからは、この原点に立ち返りたいと思います。私の文に対し、「長い」、「堅い」のご意見にも耳を傾けます。
 小著『若者革命』(副題、子が読んで親を再教育する本)も同じ意図でありましたが、最低このくらいは知識武装してほしいと願い、政治や経済などさまざまなことを書きました。いつか読んでほしい。小著は図書館にあるし、ネット通販で定価の4分の1(300円)くらいで売られています。
 今回が、政治テーマの最後になるでしょう。


◇ 今の政治は分からんなあ
 野田首相・小沢の2回の会談結果は予想通りだった。新聞は三つの結果を解説していたが、周囲では誰もが決裂を予想していた。一国の首相が一介のグループ代表にここまで頭を低くして会談を乞うことは異常だった。あり得ないと見ていたが、もし小沢が方針を変えようものなら、我々は両者の間で何か密約がなされたと思う。どう見ても会談から生まれるものはなかった。
 首相は自民党との合意を達成し、国会の採決に道筋をつけた。慎重で我慢強い人だ。
 さて、衆議員定数480のうち民主党が289、自民党が118という勢力下で、小沢グループのうち50人が造反したところで、自民党の賛成を得られれば過半数の241を超える。さらに参院では自民党の賛成なしでは法案が通らない。どう考えても、小沢グループより自民党の賛成が不可欠なのだ。
 つまり小沢グループはどうでもよいのだ。それでいて小沢はなぜ強気なのか?


◇ 小沢の立場は弱い
 通常、党の正当な手続きを踏み、閣議決定をした法案にどこまでも反対するのなら、離党して新党を立ち上げる。なぜ小沢は離党しないのか?
 いくつか推測してみよう。

① 今、離党するにはグループの何人が同調するか読めない。離党はグループ議員にとっては次の総選挙で党公認をもらえないことを意味する。大半の議員は小沢についていかないだろう。
② 小沢は国会の採決を待つしかない。これで法案に反対するか、賛成するかでグループ議員を選別し、その上で離党するのか?
③ 小沢新党に協調するのは新党大地しかなく、他の政党はいずれも小沢を受け入れない。
④ 小沢と行動を共にする新党議員は小選挙区で当選できない。比例区でも票が集まらない。名をよく知られた側近議員でさえ落選の恐れがある。
⑤ 小沢は今も「国民の生活が第一」の理念(政策ではない)と、「増税より行政改革が先」と政策を言っている。民意の支持は弱い。行政改革による財源はすぐに得られず、彼の力を持ってしても効果が出るまで何年もかかる。重要なことは、後先の問題ではない。2年後に増税が実施されるまでに、政府がどれだけ改革を実行できるかを、私は厳しく評価する。

 かつて「小沢なら何かやってくれる」という期待感が周囲にあったが、今では消えた。メディアが一斉に「党分裂」と騒ぐが、小沢切りは「党統一」なのだ。


◇ 民主党の人事大改革
 首相が内閣改造を行った。これだけでは不十分で、日本の外交に弊害がある鳩山党外交最高顧問と田中真紀子衆院外交委員長も更迭すべきだ。禍のタネは早く除いておく。
 鳩山は、あちこちと外遊し、各国政府要人に会って「飛んで火に入る夏の鳩」を演じている。首相時代にピント外れの外交で実績がある人なのだ。経費削減の時に、目的も分からない外遊に高額な国費を使うことなど、会社なら元社長の顧問にこんな出張は許さない。首に縄をかけてでも国外に出さないようにしてほしい。
 田中は、一回も外交委員会を開いたことがないという。私が知る情報にはガセネタがあるかもしれないが、彼女は勉強より感性で生きてきた人で、外交全体について論理思考をできない。外相時代に国会の質疑で野党議員の質問に答えられず、自席に戻って資料を探す振りをして官僚から助けられた失態を思い出す。質問は事前に知らされているにも関わらずだ。
 もう一人、輿石幹事長も更迭すべきだ。彼がこだわる「党内融和」は不毛の努力だ。親小沢の彼にできることと言えば、首相と小沢の間で右往左往するだけ。次代の党を担う有能な人材に幹事長の経験を積ませる機会をつくらないことはもったいない。

◇ 自民党も分からん
 自民党は、一体改革法案に賛成する条件の一つに小沢切りを要求してきた。法案を採決して小沢が造反することで初めて小沢を切れるので、事前に切れるわけがない。分かっていて要求しているのかもしれない。政治は分からんなあ。
 自民党も各党も総選挙を要求しているが、選挙準備ができているように見えないし、第一、今解散することに民意の支持が少ない。
 顧みれば、民主党のマニフェストに掲げた政策の半分に反対しながら私が民主党に投票したのは、「自民党にうんざり」した心理に支配されたからだ。野球に喩えるなら、監督が締まらないピッチングを続けるエースを見限って二番手投手に交代させたようなものだ。
 「民主党にうんざり」にはまだ時間がある。                      (完)


















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2012年5月22日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#25,5月,2012     10年後はどう変わっているか?ーー大阪の課題まとめ

来月に浪速国を出て富山に移住するので、次回を最後に『言論大阪』を廃刊します。数は少なくとも心ある若者諸君が読んでいただいたことを感謝します。
 経営と政治から足を洗い、作家に専念するため新たに人生を仕切り直します。人それぞれですが、ものを書くには大阪は一年中気候が良すぎて性に合わないように感じてきました。かつてアメリカの雪国でももの書きを始めてから長い冬に読書と執筆をする、そして夏にはスポーツに熱を上げるという生活が身に付いたようです。長い冬は収穫期なのです。
 今回は、最近受けた質問に答え、また私に心残りの課題をまとめてみます。

◇ 大阪都はどうなるか
 私の見立てでは実現しない。なぜかと言うと、
 ① 大阪の発展には、大阪市を解体して特別区にするよりは、逆に大阪市が周辺都市と合併して日本で横浜市を凌ぐ人口第二の都市にする方が良い。360万人の横浜市の面積は大阪市の2倍もある。
 ② 橋下市長は大阪市に24区もあるのは多過ぎだから、大阪都では9区くらいの特別区に再編すると言う。これも多過ぎるのなら大阪市のままで減らせば済むこと。
 ③ 大阪市と府の二重行政と二重投資の原因は、府と市の議員エゴで選挙区からのばらばらの要求に引きずられた無節操の行政によるもので、現状のままで橋下改革によって大きく改善されている。
府と市が協力して行政の統治力を高めることで解決される。他の県において、例えば、兵庫県と神戸市、神奈川県と横浜市で都構想が持ち上がらないのはなぜか?
 ④ 大阪都構想のために法律改正が必要なら、県の合併こそ改正すべきだ。私は大阪府が奈良県と和歌山県が合併する「関西県」(奈良市に新県庁を置く)を提唱してきたが、明治の廃藩置県以来130年も県の改革が行われなかったことは異常だ。

 このように見てくると、大阪都に変える理由付けには必要とする裏付けが弱い。
 橋下市長は論理に基礎を置くから、論理に立てば政策を変えることに柔軟に見える。彼は大小のアドバルーンを先ず上げておき、市民の反響を見ながら、断固として実行することと、柔軟に対応することを使い分けている。
 彼にとって、大阪都構想を変えることは残念であるかもしれないが、最初に上げた大アドバルーンの大阪都構想をてこにして維新の会が国政に進出する足がかりをつくったし、彼が全国的に知られる成果を得た。彼は戦略的目標の半分は達成した。
 諸君は、思考力、気力、発信力、そして体力を備える稀有の人材を生かすために、うまく舵取りして育ててほしい。

 茨木市長選挙と公共事業
 先月、茨木市長選挙があり、維新の会が推薦した当選者を含めて3人も市会議員が出馬した。これまで市政を支配してきた市役所幹部出身の歴代市長の時代が終わった。市会議員が市長になることは一つの望ましい形だ。
 2000年に私が市長選挙に出馬した時、経済振興政策を中心にして、ほかに安威川ダムと国際文化公園都市の公共事業見直しを掲げた。府の事業とは言え、茨木市に深く関わる事業であり、経営の視点から考えると無理がある事業だったからだ。
 あれから12年後の今、状況は何も変わっていない。日に日に無駄な経費を使い、専門職を含めて人材を張り付けている。ああ、もったいない。改革者橋下前知事でさえ二つの公共事業に結論を出せなかった。
 残念なことに、今回の市長選挙ではどの候補者も争点にしなかった。市民も忘れた。メディアも忘れた。

 梅田公園一丁目
 梅田北ヤードの跡地開発が進んでいる。3棟の高層ビルが威容を見せる。
 当初の計画に比べると、私も望んだ公園化の方向になった。問題は、この跡地が公募によって「うめきた」に命名されたことで、こんな泥臭い居酒屋のような名前では浪速国の外では景観に合っているとは受け止められないだろう。
 諸君の時代には「梅田公園」に改名してほしい。地名も梅田公園一丁目、二丁目のようにすれば知名度が高まる。南から天王寺公園、大阪城公園、中之島公園、梅田公園となることで大阪の魅力を示すことになる。

◇ 大阪モノレール
 門真・伊丹空港間を運行する大阪モノレール(大阪高速鉄道株式会社)は、府が出資する第三セクター会社の中で最大の赤字を出している。今ではこのことに府民の関心は薄い。支線を阪大病院から国文都市まで延ばしてからさらに赤字が増えた。
 年々累積赤字を増やしてきたが、次代のお荷物になろうとしている。諸君は知っているか?
 先年、一つの改革があった。それは国文駅から千里中央駅まで朝夕に直行運転が実行されたことだ。私は執筆でも、政治家の忘年会で会った阪急の元役員にも提案していた。もっとも経営の当然の帰結だから、私の影響ではないかもしれない。
 赤字削減のために大きな改革案を提案したい。無人運転をすることだ。
オリンピックの前年、バンクーバーに娘の家族と滞在した時、誰も鉄道に興味を示さないので、一人でスカイトレインに乗りに行った。スカイトレインは高架と地下で郊外と都心を結ぶ新鉄道で、コンピューターによって無人運転されていることに驚いた。これに比べると規模において大阪モノレールの無人運転は容易なことだ。
 利用者の反対が予想されるが、先ず支線の無人運転から手掛ければよい。例は近くにもある。すでに住之江から南港まで走るニュートラルは長年無人運転されている。          (完)

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2012年5月14日月曜日

#69 「結論が先にありき」は悪いのか?ーー大飯原発に関する世論

大飯原発の再稼働に対してメディアが「結論が先にありき」と批判しています。世論もこれに追随しています。どのメディアも反論を伝えないので、私が論理のおかしさを指摘します。
諸君には新聞の一面的報道を疑ってほしい。なに、新聞は読まない?テレビニュースも観ないで、スマホ(なんたる略語か。せめてスマフォにしてほしいものだ)しか見ないなら、メディアのカモにされてしまいますよ。
 望むと望まざるとに関わらず、諸君はリーダーになるでしょう。その時には持っている感性メーターを鈍くすることなく、感性でおかしいと思ったら論理思考を利かせてください。
 「オレのとは違うなあ」を憶えていますか?


◇ 「結論が先にありき」のどこが悪いのか?
 大飯原発をめぐる世論には論理が欠けている。
 第一に、大飯原発は福島の原発事故とは関係がない。以前より厳しくなった安全基準に従って定期検査が済めば稼働が再開される。言いかえれば、福島以前と同じ手順を踏むことは当然。
 第二に、政府と東電の事故対応があまりにも拙かったことで、政府も自治体も過剰なまでに感情に動かされている。現実には絶対安全というのは詰めることができない。まして安心は感情が収まるまで得られない。為政者は冷静に論理思考をもって目標、あるいは結論を出すことを求められる立場だ。
 第三に、「結論が先にありき」という批判にさらされようとも、国難の時こそ政府は出した結論を達成するために手段を尽くして実行しなければならない。果断に実行すれば、世論は変わるものだ。


 原発の対応以外に、広く世間では「結論が先にありき」が見られる。特に批判は起きない。
 例えば、企業経営者は大胆な経営改革を実行する時には、大局的に考えた上で目標を先に掲げる。他方、売上目標を立てる時には下からの積み上げを基に年度売上を決める。この二つは事によって使い分けられるのであり、良いか悪いかの問題ではない。
 もう一つの例を挙げよう。
 学者の論文でも始めに結論を出すことが少なくない。社会学などの論文の中には、先ず結論をつくり、その上で社会の事象から結論に沿うデータを集めて検証する論文がある。この場合、結論は仮設であり、仮設を検証することで一つの論文になる。自然科学の分野でも、予め立てた結論に従って実験を組み立て、関係する論文を引用して検証する論文がある。
 実行を伴う原発再稼働といろいろな学説がある論文の仮説を同等には扱うのは論理的でないかもしれないが、要は「結論が先にありき」は必ずしもすべて悪いとは言えないのである。


◇ 害ある政治家の選挙対策
 大飯原発が立地する福井県の知事も、周辺の知事も慎重姿勢で再稼働に待ったをかけている。
 政府の住民に対する説明が不充分と言うが、現実にはいくら説明したところで理解が得られることは難しいだろう。そして、知事は民意を尊重すると言う。枝野経産相も同じことを言っている。彼は常識人の域を出ないようで、トップダウンの決断をできるかどうか。
 私の憶測であるが、知事も経産相も本当は再稼働の必要を認識しているだろう。国の歳入は大半が個人と法人からの国税であるから、もたもたしていれば国の予算が減り、さらに難局を深めることになる。自治体の首長は、首相と経産相の決断に下駄を預けたいのかもしれない。
 政治家はみんな次の選挙を意識しているから、一定期間再稼働に反対しておけば、選挙で票を失うことを避けられる。
 事は原発に限らない。政府の社会保障・税の一体改革法案に自民党が待ったをかけているのも、一定期間抵抗抵抗しておけば、政府に押し切られたという形をつくる選挙対策だ。それにしても、国会審議をだらだらと引き延ばしていることは目にあまる。
 いずれにしても、原発再稼働は夏の電力消費のピークには間に合いそうもない。
 再稼働に反対、電気料金の値上げにも反対、停電はされたくないと相並び立たないことを唱える市民に対しては、地域ごとに停電させる計画停電を経験してもらうことになりそうだ。企業が海外立地を進める(雇用が失われ、自治体の法人事業税が減る)、企業が被る減益など節電と停電がもたらす結果をやっと分かってもらえる。
 電気料金の値上げがもたらすプラスを挙げれば、値上げによって代替発電が競争力を高めることだ。つまり、今より採算に合うことになる。しかし、それでなくとも国際的に電気料金が高い日本では、産業がこうむる不利がさらに大きくなることは避けられない。今はプラスより払う代償が大きい。


 選挙では、どうしても国の長期的政策より、生活に直結する政策が重視される。しかし、民主主義の根幹である選挙を軽視するわけにはいかない。諸君はどう考えるか?


 アメリカ企業の深夜操業
 一つアメリカの町の例を挙げてみたい。
 私が長年住んでいた町には、農村に囲まれた中に中小企業の集積がある。その中にユニークなブロンズなど非鉄金属の鋳造メーカーがあった。今も生き残り、世界的に知られる。ここでは格安の電気料金によって深夜から早朝までだけ電気溶解炉を稼働し、昼間は営業や経理などの部門で少数の社員が働くだけ。昼間の部門はSkeleton Crew(直訳すると、がい骨隊)と呼ばれる。     私が知る経営者を工場に訪ねて話を聴いたことがある。深夜勤務者はほとんどが兼業農家で、昼間は農業をやっている。兼業農家といえ、平均500エーカー(200ヘクタール)の農地を家族で耕作している。常のことながらアメリカ人の体力には驚かされる。
 日本でもこういう企業があるかもしれない。            (完)
  











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2012年5月7日月曜日

#68 中国語を勉強しようーー英語の易しさがわかる

今回は諸君に実利がある話です。英語や中国語に限ったことではなく、これから日本と関わりが深くなる国、例えば、ベトナムやミャンマーの言葉が仕事に役立つでしょう。
 私が若い時代には英語もITも仕事に関係がなく、従って、周囲から勉強を迫られる圧力を感じたことはありませんでした。時代が様変わりして、今の若い諸君たちは大変です。ぼやぼやしていると、時代に取り残されるように感じているかもしれません。
 確かに、英語やITを専門職としない人たちでも、仕事に必要とされるパソコンの使用から逃げるわけにいきません。英語もメールで必要とされます。特に、英語あるいは英会話の勉強が煽られています。しかし、ここはじっくりと腰を据えましょう。


◇ 中国語を勉強してみよう


 私はここ10年くらい中国語(北京語)をNHKのラジオ番組で勉強している。毎日ではない。中国と台湾に行く機会があったので、話することが勉強の動機だった。
 ところが、さっぱり進歩しない。なぜなのか?
 諸君はすぐに歳のせいだと言うだろう。確かに、歳のせいで記憶力が落ちていることは感じる。しかし、ほかにも原因があり、英語と比べてみると分かる。
 それは、学校時代に英語では定期試験や入試を経験していることだ。つまり、ラジオによる自習では試験勉強ほど集中力を出せないからだ。これは大きい。少なくとも諸君は学校で英語を習った。このことを改めて認識してほしい。
 そこで、NHKのラジオ番組を使って中国語の勉強を始めることを勧める。そして3ヶ月は我慢して続ける。中国語には4声と呼ばれる4種の発音があり、これを正確に区別しないと通じない。漢字はある程度意味が分かっても単語になると発音ができない(これが私の悩み)。実際に通じても相手の言うことは分からない。会話にならない。
 3ヶ月経ったら止めてもよいし、続けてもよい。
 次に、英会話の勉強を始める。NHKラジオの英語番組は毎日何度もあるから、早朝か夜に聴いて声を出してみる。そうすれば中国語に比べて英語を格段に易しいと思うだろう。諸君にはすでに英語の素養があるのだ。これを生かさないことはもったいない。
 最近、「スピードラーニング」という教材がテレビのコマーシャルで頻繁に宣伝している。ほら、石川遼が英語をしゃべっているコマーシャル。「聴くだけで英語を話せる」と言っているが、あれは誇大広告か騙しだ。彼は個人レッスンを受けているはずであり、教材を聴くだけではこんなレベルにはなれない。
 また、年寄りの夫婦が登場して、ホテルのフロントで会話できたことを喜ぶシーンがあったが、これくらいなら私のNHK製中国語でも会話できる。

◇ 小学校の英語教育には功罪
 先月、最後の訪問のつもりで台湾に行ってきた。これまで世話になった知友人を会食に招待して礼を尽くした。合間を生かしてプロ野球を観戦した。プロ野球は専門の一つにしている。
 偶々台湾大学のキャンパス前でバス停で行き先について人に尋ねたところ、数人の学生が集まってきた。ところが、待ち時間の間にいろいろな話題について会話をしたが、彼らがうまく英語を話
せないことに驚いた。日本の学生と変わらない。
 台湾では小学校から英語教育を強化しており、こういう環境で育ったにも関わらず、英才が集まる大学の学生にしても英会話は苦手のようだ。もっとも、彼らはアメリカ留学でも決まれば、英語力の基礎があるから、会話にも急速に上達するだろう。
 私が言いたいことは、英語を小学校から教育しても、動機付けがなければ身につかないということだ。
 英語の小学校教育を導入した文部科学省の役人たちは、英語をしゃべれなかった悔しさを持っているのだろう。早い話、彼らは自身が英会話を勉強しなかったことを、教育のせいにしているフシがある。「日本人のすべてが英語を話せるようにする」なんて馬鹿げている。なぜ万人が英語を話す必要があるのか?英語を話す必要に迫られた人たちが、取り組みすればよいので、年齢の早い、遅いとは関係がないことだ。
 因みに、私は海外出張するようになってから英会話に取り組んだのは30歳の時だった。
他方、功の方は、いくらか発音が良くなるくらいか。そうであるにしても、英語国教師は彼らの発音をさせようとしているだろう。日本人が敬意を払われる英語は「正確、明確、品格」の3カクであり日本語訛りがあってもかまわない。

 メディアの為替報道
 最近1ドルが82円台になると、新聞もテレビも一斉に「円安」と報道した。なにが円安だ?
2005年に1ドル110円前後だったレートが、2009年に87円になった時には「円高」と言った。信頼する新聞はせめて「円安方向」と表現してほしいものだ。
 
 テレビ番組は?専門家顔した出演者は大した根拠もなしに言っているのだから、あんなものは信用しない方がよい。私が知る為替のプロは、為替の予測について「神のみぞ知る」と言っていた。
 
 アメリカ経済が良くなると円安(ドル高)方向になると言われるが、こんなことは誰でも知っている。




 

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2012年4月24日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#24,4月,2012   大阪都より関西県ーー浪速国が国際化される

  橋下市長が知事の時に大阪都構想のアドバルーンを打ち上げてから、全国的関心を起こし、この構想を巧みに核にして国政改革に突き進んでいます。  府下の選挙では維新の会の地方議員から市長まで行くところ敵なしの勢いです。総選挙では現職議員の脅威になっています。しかし、全国で300人の候補者を立てるというのは、彼一流のアドバルーンでしょう。仮に大阪を制しても大阪の外では当選者が少数にとどまると見ています。  
  大阪の若者は、先ず次代の大阪をどうするかを考えてほしい。


◇ 大阪の国際化は関西県から
 私は17年3ヶ月住んでいたアメリカから大阪に帰って16年8ヶ月になる。この間に国際化についてアメリカと大阪に共通点があることに気付いた。
 1987年に刊行された小著『米国ビジネスマンの思考法』(講談社刊)の中で国際化が遅れていると騒がしく言われていたことに対し、日本の方が国際化されていると書いた。また、アメリカの価値観と国際化の二面性について、Great country people(偉大な国の人々)、Great country people(偉大な田舎者)と表現した。田舎者とは自分の価値観と言語に固執し、国の外とすり合わせをできない人たちを意味した。
 他方、大阪について考えると、同じような二面性がありそうだ。つまり、大阪の中ではもとより、外でも浪速国の価値観にこだわり、大阪弁で通そうとする。やはり偉大な田舎者なのだ。
しかと確認したいが、私的な事柄や会話ではとやかく言わない。ことビジネスと政治に関しては浪速の外ですり合わせをできる風土をつくってほしいと思う。これが大阪の国際化一歩になり、大阪の発展につながるだろう。
 今、維新の会が狭い大阪の中で大阪府・市を大阪都に衣替えしても、大阪の国際化にならない。だからこそ私は大阪府が奈良県と和歌山県と統合して関西県をつくることを提唱してきた。奈良県と和歌山県に対し、価値観のすり合わせをすることで浪速国にも新しい風土が育まれるだろう。


◇ 関西の4空港問題
 4空港問題というのは3空港問題の間違いではない。このことは本稿『言論大阪』#4(8月、2010)に詳しく書いているが、関空、伊丹、神戸に八尾空港を加えた4つの空港のことだ。関西の空港問題を解決するためにはこの4つを総合的に見なければならない。
 最近、神戸空港の廃止を求める署名運動が起きている。2万人だったか、なんと愚かな市民であることよ。彼らの矛先は伊丹の廃止に向けられなければならないのに、せっかくつくった神戸空港を廃止したところで、問題解決にはならないのだ。また、近く発足する関空と伊丹の統合会社も抜本的解決策ではない。
 私は国も地元経済界も本当はみんな分かっていると思う。それができないのは、地元の国会議員たちが選挙を恐れる政治のしがらみや住民のエゴが論理思考を妨げ、「道理がすたれば無理が通る」の典型になっているからだ。
 旅客空港としての伊丹を廃止し、伊丹は八尾空港を移転することで生かせる。東京が震災を受けた時の臨時政庁にする、他地域の災害時に救援物資や人を運ぶ航空基地に活用するのだ。(自衛隊伊丹駐屯地には滑走路がない) その結果、国の資産である八尾空港の一等地を民間企業に売却すれば、伊丹への移転や新施設を建設するための資金を充分賄えるではないか。


 なぜローマ字と英語か?

 茨木市内の幹線道路で、側面にローマ字や英語だけの社名を表記しているトラックをよく見かける。中にはOOKAISHAと書いている。これでは広告媒体にならない。もったいない。
 私が社長なら、「漢字やカナでない看板を誰に読んでもらえるのだ。何を考えているのか?」と一喝するだろう。
 また、市内を歩いていると、ローマ字だけの表札を見かける。配達する郵便局員は日本人なのだよ。国際化のセンスと思っているのだろうか。
私が勘ぐれば、どちらも英語コンプレックスの表われではないか。    (完)



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2012年4月4日水曜日

#67 原発の即廃止は無責任ーー反対運動は注目される

消費税法案がやっと国会に提出されました。増税の前にやるべきことがある、という反対派の意見は片手落ちであり、増税も行政改革も併行してやらなければならないのです。
 消費税が8%に上げられるのは2年後ですから、それまでに公務員や国会議員の削減、年金制度の抜本改革、不要不急の公共事業の中止、海外援助の見直しなど行政改革の実行力を評価できる期間があります。総選挙は一年以内、諸君はこの時に民主党を評価すればよいのです。
 今回は賛成運動に比べて、反対運動は注目されやすいことがテーマです。


 民主党新人議員へ伝えよう
 国民新党の亀井代表が連立離脱を表明したが、8人のうち6人は彼に付いていかない。彼らは代表が石原新党に参加するために機会を狙っていたことを見抜いている。残留組が国民新党を継ぐことは当然。
 これは小沢グループにとって他山の石であり、消費税法案に対して30人が国会で造反したところで、大勢に影響はない。なぜなら、たとえ賛成者が過半数に達しなくても、どっちみち参議院で通すためには自民党の賛成を得なければならないから、衆議院でも自民党の支持を求めることになるからだ。自民党も賛成する方が選挙でマイナスにならないことを知っている。
 新人議員諸君、今こそ小沢の呪縛から解かれて、政治家として再出発する好機だ。
 小沢が「このままでは選挙で大敗する」と言うのは、敗因を政府・執行部の責任にするための口実つくりを始めたのだろう。野田首相が最善の努力をした結果が評価されても、選挙では過半数を切るに違いない。
 小沢グループの大半が法案に賛成すると、小沢グループから追放されるだろう。それでも造反組みは選挙では当選者が増えることになるだろう。
 外野席から見ている私が政治を理解できるはずがない、と新人議員諸君は思うだろう。しかし、半面、諸君は室内練習場の投手みたいなもので、球場の試合展開も観客のざわめきも分からない立場に置かれているのではないか。


◇ 原発即廃止は無責任
 本稿#55「原発ヒステリーに染まるな」と書いた後、ヒステリーが強まっている。何しろ反対運動は注目されやすい。
 原発再開に反対する論者は願望と現実を見分けできない。原発再開に賛成する私も原発廃止を願望している。問題はどう廃止するかだ。つまり、廃止するには日本全体と世界を見て現実的な計画を立てなければならない。ここに政治の責任がある。
 ノーベル賞文学者や九州の元大学教授のグループが署名を集めて原発即廃止の運動を起こしているが、国の置かれた現実を無視していることは無責任だ。文学者は「平和運動と原発廃止の信念を生涯貫いた」として尊敬されるだろう。私も敬意を払うが、これと国の現実は別の話。


◇ 東電と他の電力会社を分けて考える
 東電の事故は、連鎖事故を除けば、非常用の電源とポンプが浸水で使えなくなり、原子炉に冷却水を送れなかったことが元々の原因だった。アメリカの原発が洪水被害で止まったが、非常用電源が働いて運転を再開した。韓国の原発でも電源を一時失ったが、これも間もなく復旧した。
 それにしても、福島原発で働く技術者も保守作業者も、日頃原発の周囲を見回りながら誰も「津波が防波堤を超えたら非常用電源とポンプが水に浸かって働かなくなる。高台に移すべきだ」とか「6機もあるのだから共通で使える電源車とポンプを用意すべきだ」とか思わなかったのだろうか?どんな感性を持っていたのか?
 もし東電事故がなかったら、他の電力会社の原発は定められた定期検査に従って計画通りに再開していた。東電事故以来、管理水準も人心も上がり、ストレステストも加えられて安全が高まった。保安院も安寧の眠りから目覚めた。
 今、東電と他の電力会社の原発は分けて考えるべきだ。感情でいっしょくたにしてはいけない。


◇ 原発再開で雇用を守る
 これは若者世代にとって重要なことだ。電力の供給不安、電力料金の値上げ、円高、韓国などとの国際競争の中で日本企業が海外に逃げる。それに伴って関連企業も売り上げ減によって新規雇用を止め、さらにリストラに追い込まれる。倒産も増える。こんな環境下に置かれる若者には気の毒なことだ。
 「電力供給は足りているから原発は要らない」という意見が広まっているが、これは半面しか見ていない。電力会社は原油や天然ガスの売り手から足元を見られて言い値で買わされている。そのため電力会社は年間3千億円もの赤字を出している。これが続くかと思うとぞっとする。
 電力会社をつぶしてどうするんだ?

 知事の統治力が弱いspan>
 産業経験もない、技術経験もない知事の原発理解には限界がある。このことは問題ではない。
 知事に求められるのは、日本全体と世界を見る高い見識だろう。政府と民意の板挟みにある難しい立場であるにしても、民意を汲むだけでは統治と言えない。
 早い話、民意に従うだけなら政治家は要らない。

◇ 日米安保条約反対
 今の世代は知らないかもしれないが、1960年代始めの安保条約反対のデモはすごかった。国会を何万人ものデモが取り囲む学生運動がピークの時だった。
 私は大学野球部員で、「こんな時に野球をやっていていいのか?」と活動家に迫られたが、共感を持ちながらも野球部の練習を止めなかった。東京の大学で剣道部にいた友達は退部したという。
 今日の世界情勢を見ると、あの時反対していた私は正しかったのだろうか、と思う。 (完)














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2012年3月22日木曜日

ネット月刊誌『言論大阪』 #23,3月,2012  野球シーズン開幕ーーオリックスの勝負

  大阪府の国歌起立条例が昨年6月に成立し、大阪市の同条例も審議中です。
府立学校でも市立学校でもリベラル「はねっかえり」の教員がまだ起立を拒否しています。当然、条例に従って処罰されます。ところが、起立しても国歌を歌わない教員を見つけるために校長ほかが口元を調査したというのだから驚きます。
  諸君はここにある危険な背景を感じますか?

  それはリベラル「はねっかえり」が目立つと、保守「はねっかえり」反動の元になるということです。言いかえれば、極端が極端をもたらすということです。受け取る側の生徒の立場を考えない彼ら「はねっかえり」は最後の生き残りであってほしいと思います。
  さて、堅い話はさておいて、久しぶりに野球について書きます。


◇ オリックス・バファローズの正念場  
  オリックスは今シーズンさらに大阪化を進めた。主催72試合のうち「ほっともっと神戸」球場ではたった12試合、しかも私が好きな昼間の試合は4試合しかない。オリックスは大阪に賭けたのだ。
  オリックスは今年狙い通りに投打の補強をしたことから、プレーオフ進出は確実だろう。
  オリックスにとって、3位以上の成績を挙げることは目標であるが、もっと重要なことは従来の約140万人の観客をどれだけ増やせるかどうかだ。言いかえれば、年間30億円と言われる赤字をどれだけ減らせるかだ。
  近鉄との合併で観客が増えるはずがこれまで効果が出ない。特に、球団の大阪移転に反対して4万人の署名を集めた神戸のファンはどこへ行ったのやら。開園と閉園の時だけ騒ぐ「にわか遊園地ファン」というのは当てにならないものだ。
  今、12球団の中で球団名に地名(地域名)が入っていない球団には、中日、読売、オリックスの三つしかない。(阪神は地域名か親会社名か?)
  オリックスは「関西オリックスBuffaloes」に改名して京都でも試合を組んだら観客が増えるだろう。


◇ オリックス親会社の事業は?  
  オリックスの社名は球団所有によってあまねく知られるようになった。ところが、オリックス本社の事業は何か、と問われると意外に知られない。その事業には、①法人向けの車リース(旧社名オリエントリース以来の本業)、②生命保険、③銀行、④レンタカー、⑤不動産開発、⑥カードローン、⑦航空機リースなどがある。
  さて、諸君はこのうちいくつを知っているか?二つくらいか。
ここが社名の知名度が高くても事業がよく知られないことが泣き所だ。球団への巨額の補填が広報投資に見合うかどうか、いつか株主に問われるだろう。


◇ 女子プロ野球に球団増  
  今シーズンから女子プロ野球リーグに大阪の球団が参入して3球団になる。これで京阪神に一つずつの配置になった。
  野球過密市場の大阪で新球団が観客を呼べるのか、経営の行方が心配だ。


◇ 少年野球が軟式化
  最近、私が住む町で少年野球の練習を観ていて気がついた。このリーグでは軟球を使っている。中学野球部もかつてはトップボールだったが、軟球に変えたという。軟球では捕手のプロテクターに金がかからないし、軟球は水に濡れても拭けば使える。経費が少なくて済む。
  私は中学まで軟球、高校で初めて硬球に接した。順応には何も問題がなかった。
  途上国に野球を広めようとしているが、ボール一個と広場で足りるサッカーにはかなわない。硬球のリトルリーグより、軟球で原っぱの草野球を広めてほしい。


◇ センバツ高校野球
  甲子園でセンバツが始まった。最近、右投げ左打ちの選手がめちゃくちゃ多いな。彼らには三塁側へのファウルが実に多い。一塁に一歩近い利点のために本当に左打ちが良いのか。
  確かに、大リーグにも日本のプロ野球にも右投げ左打ちの名選手が少なからず居る。イチローだったか、松井だったか、幼少の頃から箸も左に変えたとか。
  私は身体の特性があり、左打ちは不自然だと思う。高校野球の選手たちよ、右打ちの方が能力が高いかもしれないよ。       (完)

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2012年3月12日月曜日

#66 「上海たより」--中国の飼い犬事情

これまで「上海たより」を寄稿いただいているI氏は、明治以前に創立された名門の専門商社、蝶理(株)の中国総代表である井上邦久氏です。本社の取締役でもあります。
 日中国交回復の1年前、1971年に関西学生友好団に加わり、中国全土を旅したことが彼の中国キャリアの原点になりました。この時、学生一行が人民大公会堂で当時の周恩来首相の主催による夕食会に招かれました。1989年には蝶理から青島と北京に駐在に駐在員として派遣されました。中国駐在の先駆者の一人です。
現在は二度目の中国駐在になります。彼の「上海たより」は北京語に堪能な利点を生かして、広く中国人との人脈を築き、また全土を旅行できることから、豊富な中国情報を含んでいます。
 茨木市民として私とは長年の付き合いがあります。
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 上海たより(2012年2月)ーー中国の飼い犬事情『一月は往ぬる』 
 辰の年が始まりました。中国での駐在生活に馴染むと、日本の正月と春節の
間は、妙に落ち着きません。宴会に出ていても、これは新年会なのか?忘年会なのか?という曖昧な気分になります。しかし、日毎に月が細くなり、出社するスタッフが徐々に減ってくると、歳の瀬の感覚がはっきりしてきます。春節から陰暦2月2日までは刃物は忌みモノとして避けられる風習が残っており、守旧派はこの間は散髪も控えるため、刈上げのオジサン達が可愛く目立ちます。「小年(春節前の小正月)」には仕事納め、「徐夕(大晦日)」には爆竹に見送られて、駐在員は帰国し、お金持ちの中国人スタッフは海外旅行へということになります。
 
 そんな歳末、集合住宅の掲示板に、管理事務所名で飼い犬マナーの悪さを戒める通知書が貼ってありました。庭の草花が犬のオシッコで全滅した、ウンチの始末をしていない飼い主がいる等の事例を挙げたあと、「上海市養犬管理条例」に基づいた「文明」行動を取るようにとの内容でした。「文明」という言葉は、こういう時によく使われ、『辞海』という辞書によれば、文化の意、反義語は粗野・野蛮、日本からの外来語、と書かれています。
 
 そこに書かれた「上海市養犬管理条例」をどこかで見たことがあったと、スクラップを探したら、2010年12月27日の時事通信に「犬の一人っ子政策」と題する記事があり(添付を参照下さい)、2011年5月7日付けの「上海商報」には、同年5月15日から施行され強化される飼犬管理条例の具体的内容が次のように書かれていました。
 「登録の際に、狂犬病ワクチン接種(輸入品;60元、国産品;40元)、マイクロチップ装着(60元)を義務付ける。従来の年額1,000~2,000元の登録費は廃止する。未登録犬が登録犬の4倍に当たる推定60万匹以上に急増した為、高額の登録費を廃止して、実費のみ徴収することで登録接種を促す」

 BSプレミアムの「旅のチカラ」という番組で、浅田美代子がナビゲーターとして伝えるドイツの犬事情によれば、義務とされる登録料は年間約1万円。
 犬を飼うには、ブリーダーから訓練された犬を買う方法と、各地にある公的保護飼育訓練所(ドイツ語で何とかハウスという名称があったのを失念。1頭当たりの個室の面積もゆったりしており、来歴に基づく飼育訓練が丁寧に為されているようでしたので、収容所という表現は控えます)で相性の良い犬を選んで規程の支払いをする方法の二つのみで、ペットショップは存在していないとのこと。路上生活者にもインタビューして、登録料や飼育費用などは収入の半分くらい掛かるが、パートナーとして支え合っているというコメントを引き出していました。パートナーとして飼主と一緒に電車にも乗るし(子供料金と同じ)、レストランにも同行して大人しくしている様子が映されていました。
 因みに浅田美代子は、向田邦子脚本の『時間ですよ』でデビューした時の「隣の美代ちゃん」のジーンズ姿のイメージが未だに残っていますが、犬の保健所による処分(天王寺公園前で犬の里親運動をしていた人に聞くと、執行猶予3日間とのこと)への反対運動を長年やっている闘士という側面があることも知りました。

 中国とドイツとの、そして日本との「犬の文明」の比較をすることは、とてもできませんので安易な評価は控えます。ただ、中国での文化大革命の時代、愛玩物はブルジョア趣味であるとして、徹底的に否定されていたことは見聞きしています。猫・犬は当然排除、金魚鉢まで引っくり返していた報道も憶えています。1978年からの改革開放政策が進行し、経済的余裕に裏付けされ、都市生活での潤いを花卉や芸術品に求める傾向が出てきたのと同じように、近年上海の街に犬を連れた奥さんが増えた印象があります。
 朝早くから女中さんが子犬を散歩させたり、夕方にはちょっとした広場に人と犬が結集している風景を目にします。またマンションのエレベーターで大きな犬と遭遇することもあります。結構高級犬と思われる品種を目にしたり、結構高級ブランドと思われる服を着せてもらっている犬もいます。上海マラソンの5km足らずの健康マラソンコースで,盛装したプードルに追い抜かれたのは2010年に完歩した時のことでした。
 ちょっと成金趣味の側面もやっかみ半分で感じますが、それはそれで、社会の変化の一つであることに間違いなく、文革時代のように個人生活のささやかな愉しみを、短絡的強圧的に否定するような時代には戻ってほしくありません。ただ、気になるのは。かなり多くの飼主が、街中で犬を制御する紐を装着せずにいることです。
 
 犬・猫・蝙蝠・狐などに咬まれると狂犬病に感染するおそれがあり、発病するとほぼ100%死亡するとされています。空港の入国審査場の前に通過する検疫デスク。日本の検疫デスクに置いている海外の各種感染症の資料の中でも狂犬病への注意喚起は特に目立ちます。羽田には発症した犬の写真が掲示されています。以下、羽田空港や関西空港で入手した資料の受け売りです。WHOの推計によると、世界で毎年5万5千人が死亡しており、アジアが大半。厚生労働大臣が指定する狂犬病清浄地域は日本、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、グアム、ハワイ、フィージー諸島のみ。インドの20,000人を筆頭にパキスタン,バングラディッシュ、ミャンマーで毎年1,000~2,500人が死亡しています。中国では2,400人という、2008年に中国政府衛生部が発表した数字をそのまま挙げているようです。

 2009年の赴任前に会社から指定された病院で4種(破傷風、狂犬病、日本脳炎、A型肝炎)の予防接種を受けました。それぞれ、半年間に3回接種すると有効期限が伸びるとの説明で、帰国の都度に接種しました。他が5~10年の有効期限であるのに対して、BABIES(「狂犬病」では海外では通じないといけないので手帳に記録しました)は2年のみ有効と医師からの指導を受けました。
 ワクチン予防接種が有効であり、犬を初めとする動物に近づかず、医療機関が近くに有る都市に居れば、それほど神経質になることもないとも聞きました。
 赴任してから、僻地への出張もあるので予防接種をして来てよかったと、先ず思いました。その後に北京での発症例が報告され、飼主の「文明」の度合いに疑問を感じる実態を体験しました。そして条例の施行過程から見て、その普及には時間を要するだろうな、と思っています。何故、従来はドイツよりも高い登録料を設定していたのかも不思議です。
 愛玩ペット、ステイタス、贅沢といった概念とは違う次元で、動物をパートナーとして捉え、社会の中で共棲するための手続きと訓練を施すことが大切だと思います。その為には、犬より先に人の意識向上が大切だと思います。こんな半可通の話を、春節休暇の帰国中に参加したセミナーで、面識を得た動物薬品メーカーの方にしたら、日本では狂犬病が発生していないものの、意識や制度には共通する問題がありますね、ということを教わりました。また、同じメーカーのドクターが、浅田美代子によるドイツの犬の旅番組をご覧になっていたので話が深まりました。

 愛犬家と言い、嫌煙派などと言います。その他にも愛○家、嫌○派と呼ぶ習慣が広くあります。一方的に相手の事を決めつけずに、お互いの好みや体質や育ちの違いに想像力を働かせ、智慧を使ったルールの下で、一定の距離感を保つことが、「文明」に繋がるのではないでしょうか?○の中に、色んな漢字を入れて、考えてみたいと思います。例えば、「中」とか「韓」とか。
 辰年の初めから、犬の話に終始しました。故郷の九州では、年の初めの時間が早く過ぎることを「一月は往ぬる、二月は逃ぐる、三月は去る」と言っていました。その九州の生家には、「ロク」という飼犬が居て、母の実家にも「ハチ」という犬が居て、まさに犬と無心に遊んでいました。  (了)

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2012年2月24日金曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#22、2月、2012  維新の会は保守本流かーー国政進出の狙い

橋下市長が坂本竜馬の国政政策にならって「船中八策」という維新の会が国政進出するための政策目標を発表しました。実現できるはずがない、と国会議員たちから批判を受けていますが、彼は当然予想したことで、今、実現の可否はどうでもよいことでしょう。
 大阪市職員は市長就任以来これだけ締め付けされているにも関わらず、まだ自ら姿勢を改めることができず、綱紀の緩みが根深いことを示しています。橋下市長には国政も大阪市政の延長線上に見えているに違いありません。
 その国政では本来保守党である自民党が、『若者塾#65』で書いた保守になりきれない。選挙目当ての大衆迎合に流され、解散ばかり叫ぶざま。橋下市長は維新の会を保守本流政党に育てることが目標かもしれない。
  
 ここでは、府・市政の具体的案件を挙げて、私の考えを述べることにします。

市職員の選挙違反を追及 
 幹部以下の全職員を対象に選挙活動に加わったかどうかを尋ねるアンケート調査を実施したが、労働委員会の要請を受けて橋下市長は中途で取り下げた。主犯の幹部はすでに退職したから、開封したところでみんな「加わらなかった」と回答しているだろう。
 さらに、選挙前と選挙期間中に交わされた内部のメールを調査している。処罰の対象になる違反者が出るかもしれない。
 市長は組合事務所を市庁舎から退去を求める命令を出している。
 いずれ一歩譲って落とし所を見つけることで矛をおさめる計算をしているだろう。完全実施を見送っても職員の規律引き締めと組合対策として充分な効果があったからだ。
 他人事ではない。どの市においても、現職支持のために職員が票固めをしたり、選挙事務所で手伝いをしていることは常態だ。こちらにも橋下市長のパンチが利くことを願いたい。

府庁舎のWTCへの移転 
 松井知事が条例を通さずに職員全体をWTCに移す決意を固めた。姑息な手段だと他党から批判されているが、このまま実行するだろう。過半数を制している議会では条例を通すこともできるが、実行が先延ばしになる。
 府庁舎のWTC移転は橋下前知事が実行するところだったが、東日本大震災の時に壁の一部が落ちたことで、耐震性を疑問視されて一旦中止していた。
 WTCの耐震強度と液状化対策が足りないと学者が見解を出してから騒ぎになったのであるが、その見解には不合理があると私は考える。
 第一に、淡路神戸大震災が起きた時、WTCは完成間際で内装工事をやっていた。この時には特に被害はほとんどなかった。液状化についても報道もされなかった。それが東日本震災では大阪は震度1だった。私は神戸震災時の目立たないひび割れが東日本震災の揺れで外に出たのだと思う。
 第二に、メディアが一方的に学者の見解を報道し、建設当事者の見解を確認しないことは片手落ちだ。設計は日本のトップレベルである日建設計、施行は一流のゼネコン共同体が担当した。彼らに見解を訊きたい。
 人は実務経験もない学者の言うことを信じるから危ない。
  
  耐震強度は充分なのか?
  長周期地震に対しても液状化対策が設計で考慮されているか?
  補強が要るにしても、何十億円と言われるような大工事が必要なのか?

終わりに、埋め立て地である東京の豊洲には何棟もの高層ビルが建っている。液状化対策に関してこれらとWTCの設計・施行に違いがあるのかどうか。物言いをつけた学者と、建築当事者に見解を求めたい。

近代美術館を今の府庁舎につくる 
 松井知事は大阪市が予定している近代美術館を府庁舎につくることを提案した。彼はWTCの強度について確証を得ているのだろう。
 私は本稿の中で近代美術館を天王寺公園内に建設することを提唱してきたが、府庁舎利用については中之島の立地よりは良いことを評価する。予算も補強費と改装費で済む。
 何よりもWTCが生きる。
 また、つい先日、松井知事と橋下市長が共同で、中之島図書館を美術館にするという構想が発表された。近代美術館とは同じなのか、別構想なのかまだ分からない。

堺市長が大阪都構想に反対 
 「堺市は政令都市のままで発展させる」として大阪都には加わらないことを発表した。
 私の読みでは、これは選挙戦略かもしれない。つまり、一旦反対表示をしたことで次期市長選のために堺市民の票を得ようとしたのではないか。
 私は狭い大阪府をいじくり回してもたいした改革はできないと考えており、堺市が周辺都市とともに「大大阪市」、府は奈良県と和歌山県と合併して「関西県」をつくることを提唱している。

市長選投票率、やったぜ、大阪の若者諸君 
 本稿#20で投票率を押し上げたのは若者世代だと書いたが、友達から根拠がなく推測に基づいていると指摘された。その通りだった。
 先日、大阪市選挙管理委員会の発表を新聞が伝えた。これによると、「30代が20.8ポイント増の52.8%、20代は37.5%、世代全体で17ポイントアップしていた」と。まぎれもなく若者世代が動いて橋下候補補を当選させ、次世代が自分たちの市長を選んだのだ。(完)

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2012年2月15日水曜日

#65 「バカになれ」とはーースティーブ・ジョブズも言っていた

私が「バカになれ」と最初に言われたのは、もう半世紀も前に大学野球部のコーチからでした。入学間もなく、コーチからスリークオーターのフォームをアンダースローに変えることを勧められ、納得できないまま練習をしていました。バッティングピッチャーとしてもコントロールの良さを打者から評価されていましたから、縦横の変化球のコントロールに自信を持っていました。しかし、コーチはオーバースローの速球投手の後に登板する救援投手を求めていたのです。こういう時にコーチは「バカになれ」と言ったのです。
 つまり、「バカになれ」というのは、迷いを捨ててひたすらアンダースローに取り組めと示唆したのです。163センチの短身の不利がなく、効果てきめんでした。威力が増し、入部してから一ヶ月も経たない春のシーズンから登板して実績を出せました。これでも北海道のノンプロとの交歓試合では打たれなかったのですよ。
 その後社会人になってから望まない仕事に就いても、バカに徹してベストを尽くしました。今も時に『若者塾』の執筆に意欲が減退してもバカを続けています。私は筋金入りのバカだと自覚しています。
 アップル社の創立者で昨年亡くなったスティーブ・ジョブズが、“Stay hungry, stay foolish”と言っていたことを知りました。彼も「バカになれ」と言っていたのですね。

◇ 求職は嫌な仕事から選んでみよう 
 新聞の求人広告が紙面の全面に出ている。
 諸君の中には見ている人がいるだろう。そこで取りたくない仕事を五つ挙げてみよう。さらにその中からもっとも取りたくない仕事を選ぶ。この仕事でベストを尽くすことにより、「バカになれ」の極意を得られるはずだ。
 本稿#18「馬鹿に徹せよ」の中で、新しい職場に入った時の心得を下記のように挙げている。参考にしてほしい。(注。その後本当の馬鹿と区別するために、前向きの意味を含む方はバカと変えた)

 1)守備範囲に徹して黙々とベストを尽くし、他人のことに口出ししないこと。
 2)自分ならこうする、という改革案はメモに取り、周囲に話しないこと。
   追記。改革の考えを上司から訊かれたら一つだけ述べること。
 3)嫌な上司からは反面教師として学ぶこと。
 4)辛い仕事を取らざるを得なかったことは実力が及ばないからではなく、不運と考えること。
 5)会話を苦手と思っていても、仲間をつくり世間話を交わすこと。

◇ 10人に1人のリーダー 
 先月に『言論大阪#21』で武士道について書いた。異論も持たれるかもしれないが、要するに、いろいろある武士道の中で自己規制のかなめにしてほしいことだ。
 諸君がどんな職場で働いていようが、10人に1人でいい、リーダー意識をひそかに持ち、静かにリーダーの資質を磨いてほしい。つまり、10人に1人が武士になれば諸君が社会の改革に自ずと反映するということだ。
 私は何度か武士だと言われ、外観にも出ていると指摘されたことがある。もし外観に、例えば、偉ぶっていると見られるなら不徳のいたすところ。私が言う武士道はあくまで5Dによって自己を律するための糧にしている。

◇ 右派と左派のイデオロギー対立の時代は終わった、
 得意の堅い話を一つ。
 右派を右翼と言うと国粋主義、左派を左翼と言うと社会主義というイデオロギー(政治思想)の対立が終わった。元左翼を含む民主党が政権を取ったことで、民主党政権は国政を担う現実に直面した。これで民主党政権に変わった意義がある。
 諸君にも、おそらく多くの人にも、分かりにくいことかもしれない。それでは今の対立、というより違いは何なのか?
 今は保守とリベラルの対立の時代になっている。リベラルなんて一体何なのか?
 そこで、私なりに内政について一つの参考に供したい。

   保守――国益、伝統、社会の紀律を重視する。経済政策を重視、大企業
         優先は否定できない。弊害は官僚支配になりやすく、
         官僚の中に公僕の使命を軽んじ、市民に顔を向けない
         「宮僕」を生む。

   リベラル――個人益重視、紀律に緩やか、社会福祉政策を重視、弱者
        支援。弊害は社会全体が緩み、リベラルの中の少数ツッ
        パリ派が跋扈する。

 時代を振り返ると、自民党が国民政党と称して国粋派から左派までを含むことで長期政権を維持し、そのために責任ある野党の成長を阻んできた。
 さて、私は何派か?私は無党派ではなく、時代によってリベラル派と保守派の間で政権支持を変える転党派だ。次世代の諸君はどう考えるか? 
                                   (完)

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2012年2月6日月曜日

#64 金を少しでも貯めようーー自己規制の挑戦

一月にはやっとのことで『言論大阪』を一つ書いただけで『若者塾』を書けませんでした。苦しい正月の出だしだったのです。
 現在、経済小説を書いているのですが、これから10年生かされる間に二つ書く経済小説の一作目です。パソコンに向かうと頭が痛くなったり、眠くなったりして執筆拒絶症にかかっています。以前にも経験したことで、作家は「ブレーキがかかる」、「ペンが折れる」とも言っています。風邪を引いたせいもありますが、それよりもうまく表現できないのです。昔風に言えば、書いた原稿のできが不満足で、原稿用紙を丸めて捨てるような状態です。
 丸1ヶ月間、読書三昧に逃げ、蔵書処分の意図もあって手持ちの古い本を読みふけっていました。読みさしや読んでいない本が何冊もありました。昔、定期試験が近付くと、いらいらして読書したことを思い出しました。
 会社の仕事でも気力が減退するスランプを何度も経験しました。こういう時、仕事がたまっても一時休養するか、それでも自分を駆り立ててもがくかの選択がありますが、私はもがくタイプでした。諸君にも好不調の波があるはずで、どちらのタイプでしょうか。
 閲覧数も減りました。「堅い」、「長い」の意見、「もっと辛口で書け」、「もっと自分のことや体験を書け」という要望に応えられなかったせいでしょう。顧客の要望を満たせない商品が市場から受け入れられないことと同じことです。
 今年は要望に応えることと、もっと若者諸君に直接役に立つような内容にすることを肝に銘じます。月刊誌の論文調と言われる文から脱皮、品位がないときつい批判を受ける覚悟でやりますよ。

◇ 超緊縮で知恵を出すことは面白い 
 諸君は私が老後に悠々自適の生活をしていると思っているかもしれない。ところが、完全年金生活に入っていつも小遣いに不自由している。今では講演料もわずか、執筆も金にならない名ばかりの作家生活。昨年からは引越し資金をつくるために、我が家は超緊縮財政を実行している。家内の事業仕分けにより、文化費ゼロ、本代ゼロ、間食費ゼロ、交際費は最少、旅行は年一回、葬儀や法事があった場合は旅行なし。
 さらに、事業仕分け屋は外食を含めて食費を圧縮するとのこと。私はもともと大学と会社の寮生活のお陰で粗食志向だからno problem ! それどころか、アメリカ時代にビジネス会食で美食をしていたせいか、帰国直後の健診で脂肪肝、コレステロール、高血圧(軽度)、中性脂肪過多、大腸ポリープの5種目に引っかかった。ポリープ切除以外は薬と雑食だけで2年くらいで全快した。
 今年は私の携帯電話をもっとも簡便で安いものに変えられる。私はすべてパソコンに集中しているから、多機能のスマホは要らない。no problem !。通信費も安くなる。
 この半年の倹約強化生活で気がついたことがある。それは、始めの不満から我慢の苦痛に変わり、今は面白いという風に気分が変わってきたこと。そう、諸君、倹約の限界を追及することはなかなか面白いよ。

◇ 金を全力で貯めよう
 諸君の中で困窮しているか、失業中なら、「気楽な年寄りが何を言うか」と叱られるかもしれない。それでも、倹約の限界を求め、1円でも貯めることを求めたい。今はそんな時。金を貯めることで自己規制を鍛練してほしい。
 健康管理も大事。昔、学生寮に生活していた時、倹約を極めていた後輩のM君がいた。彼は貧しい家庭の出身、奨学金二つをもらう医学部生だった。ある夜、彼の部屋をのぞくと、安く手に入れたキャベツ、人参、きゅうりをそのままかじっていた。彼曰く、「腹に入れば栄養に変わりない」と。学寮食では野菜が不足するから、これが彼の健康管理策だった。私はここまで徹しられなかったが、いつも空腹をしのぐために、学生食堂で昼食を取る時には、「ライスカレーライス」を得意技にしていた。つまり、安いライスカレーに追加のライスを取り、一人前のカレーを二つのライスにうまく均等に配分した。
 今、貯金箱に入ってきた500円玉を貯めている。一年に7,8万円が貯まる。
 自己規制は生涯の財産だ。困難な時こそ自己規制を試す機会になり、知恵を呼ぶ。

◇ 消費税が8%に上がる 
 諸君には痛いことかもしれないが、まだ先の話だから苛々することはない。
 70歳以上の医療費負担を20%に上げることが先送りされて残念。これで2790億円の老人医療予算を削れなかった。若者のために浮いた分を使えばよいと思っていたから。週に2回狭窄症の痛みが残るのでリハビリに通っていたが、約30分の機械治療がたったの120円(1200円の間違いではない)、医師の診断を受けても340円、いつも年寄りの客でいっぱい。これじゃ国の医療予算が持ちこたえられるわけがない。
 前回、消費税が5%に上げられる時には反対で大騒ぎした。大阪では近隣の町からおばはんと婆さんの群れがデパートなどに事前買いのため押し寄せた。1万円の買い物をしても、値上がり分の2%は200円で電車賃も出ないというのに。
 今回も8%に上がっても差は3%、我々は倹約でしのげる。経済のためには金持ちがどんどん消費してくれればよい。
 諸君、世間の風潮に乗せられるなかれ。             (完)

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2012年1月30日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#21,1月,2012   新生大阪の時代が始まるーー橋下市長の政策に是々非々ーー

橋下徹大阪市長が就任して一ヶ月余り、例のスピードによって精力的に改革を始めました。個々の政策には反対意見が少なくないが、前市長の再選に比べれば大阪に清新の空気があふれていることは間違いがない。勢いももたらしています。
 選挙を動かした若者諸君のために、年初に当たり、大阪市政の問題を挙げてみましょう。

◇ 武士、橋下徹之介
 彼は大阪で絶えて久しかった武士の市長だ。多くの問題を先ず論理に基づいて不合理を廃し、その上で現実に即して人道やしがらみに対する配慮で味付けをするが、改革に欠かせない論理(私が言う饅頭のあんこ)では妥協しない。
 江戸時代から町人の町と言われ、全国平均に比べればはるかに少ない武士役人による緩やかな統治の下で、町人が大きな自由を許されていた。それ以来最近まで大阪は町人の風土だった。市役所は長年町人職員によって支配され、市長はお飾り同然で町人の不合理、言いかえればエゴを正すことができなかった。
 これまで私は武士・町人論を書き、話もしてきたが、当然批判があるので、その真意を伝えてきた。ここでも書いておく。武士とは義務感、献身、紀律、尊厳、覚悟を持つリーダーを意味する。もともとアメリカ生活中に発想したことで、このブログに掲載している小説『オー、マイボーイ』の中で書き、5Dと称している。これは英語の単語から頭文字を取った。(Duty,Dedication,Discipline,Dignity,Determination)
 従って、5Dを持たない者は町人と呼ぶ。男女を問わない。
 
◇ 大阪都構想を知らない府民
 先日、長年付き合ってきたグループの新年会で大阪都について質問を受けた。なんとこの教養水準が高い連中でさえ、大阪都について正確な内容を知らない。よく他の事例にもあるように、政府や自治体がいくら説明しても、またメディアが繰り返し取り上げても大衆は理解していない。そのくせ「説明が足りない」とか、「説明責任を果たせ」とか文句だけは言う。
 そこで、諸君には要点を説明しておこう。大阪都とは、政令都市の大阪市と堺市を分解して10区くらいの特別区に再編することが骨子で、各区の区長は公選にすることだ。そして、大阪府の呼称を大阪都に変える。大阪市と堺市の名前が無くなり、市長はいなくなる。しかし、府下の茨木市も他市も現状と変わりがない。東京都に三鷹市や町田市があるのと同じ。
 そして、今の全大阪府が一人の大阪都知事によって統治されて二重行政と二重投資が改善されるというわけだ。
 これに対し、私は大阪都構想より、大阪府が奈良県と和歌山県と合併して関西県をつくることを提唱してきた。新県庁所在地は奈良市に置くことで、県政と大阪市政を切り離すことができる。
 橋下市長へ問う私の疑問。京都府でも兵庫県でも政令都市の京都市と神戸市が府県庁所在地であり、大阪府と変わりないが、なぜ大阪府だけを大阪都にするのか?

◇ 教育改革はいただけない
 維新の会は教育に競争原理を持ち込み、公立の小中学校にも広域学区を導入する。教育の市場開放なのか?
 これはいただけない。「子供たちに行きたい学校に行ける機会を与える。ひいては競争を高めて教育水準が上がる」からだと理由付けしている。子供たちに訊いてみるがよい。そうすれば、子供たちの希望ではなく、馬鹿親のエゴだと分かるだろう。
 橋下代表は大阪府の全国学力テストで下位にあることを過剰に意識しているようだ。学力テストのランキングは平均値であるから、大阪のようにピンからキリまで雑多な家庭が多い大都市圏では平均値が実態より低く出るものだ。上位の県はすべて地方であり、世界との比較でも上位はすべて中小国か政府強権国になっている。
 今から27年前に文部科学省が公立高校の広域学区制を導入した。私はこれに反対してアメリカから寄稿して読売新聞の「論点」で意見を述べた。公立高校ではできる限り、住む地域社会で教育されるべきだという主張をした。結びの部分を下記に引用してみよう。

 「幕藩体制下で帰属していた地域社会に対するきずなは、今は会社社会に対するきずなに取って代わられ、その中でわずかに残された地域社会との接触の意味が問われている。公立学校の学区はそれこそ児童、生徒が地域社会ではぐくまれるための最後の砦ではないか」(1985年、3月24日朝刊)
 
 改悪をやめよう。維新の会は国歌斉唱に起立しない左翼突っ張り教師に対して紀律を求めた。これだけでも学校に政治が入ることを防ぎ、紀律が利き、教育に緊張が出るだろう。さしあたり、広域学区化までジャンプすることはない。
 優秀な子供はどの学校でも育つ。
                                    (完)
 
 

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