2010年2月26日金曜日

#27 海外援助より自国民に予算を使え

「海外援助より自国民に予算を使え」というのは、私がアメリカ生活中の80年代大不況時にプアホワイトと呼ばれる白人や貧しい黒人のグループが訴えました。おそらく今の不況時でも言われているでしょう。彼らは外国人に対しても、仕事を奪うと言って排斥の動きをします。新聞に意見を書き、デモをすることもあります。
 これに比べると、内心はとにかくとして、日本では外国人労働者を排斥する表立った世論はありません。日本人はおとなしい気質だと言えますか。排斥ではないが、政府が日系ブラジル人をビザ発給時の資格に基づいて、つまり饅頭のあんこ(論理)に基づいて彼らの帰国を進めたことがあるくらいです。日本に居ても求職機会はどうしようもないのだから、ほかに選択がありません。政府は帰国の飛行機運賃を支給して義務ではなく、饅頭の皮(非論理)によって人道支援を行いました。
 さて、日本政府の海外援助はどうなのでしょうか?どうもバラマキ支援になっている面があると感じています。


◇ 前稿「ハイチ株式会社」について

 災害復興のその先について、友達が賛否両論の意見を述べた。

「国連による統治なんてできるわけがない」
「いや、コソボだったか、国連の暫定統治の実例があるよ」
「思い切って軍隊を解体しないと、またクーデターが起きて内戦になるかも」
「だいたい、あんな国に軍隊が必要なのか?どこの国も攻めてこないだろう」
「そうだよ、警察をまともにするだけでいい。中米の優等生コスタリカには軍隊が
ないのじゃないか」
「できるできないの話じゃない。何も変えなければ何も変わらない。ああいう途上国が自立するためには農業、漁業、観光が基本だろう?南太平洋の小国には伝統的な生活を守りながら自立している国がある。隣国のドミニカもその悪影響を観光に受けているだろう。ドミニカと一体の経済開発を進めるべきだ。特に、国内が混乱して治安が悪いのでは観光客が来ない」(岡本)
「ハイチについて喩え話をするとだな、ある県が昔の琉球語で周囲の県が日本語というのでは、経済振興もできないわな。工業規格も条例も違えばなおさらだ。こんな対象はアフリカにいくらでもある」

◇「戦争がなくなると地球が滅びる」

 古い話になるが、月刊誌の対談でアフリカについて、 渡部昇一上智大学教授(当時)と日本のロケット開発先駆者の糸川英夫東大教授(故人)が「戦争が無くなれば地球が滅びる」と言って世間から非難を浴びたことがあった。
 あれから30年経った今日でも、アフリカの多くの国が政府は内戦状態で統治能力がなく、民族融和、経済開発、教育振興、医療制度、人口抑制など、どの課題にも進歩が少ない状態は変わらない。前述の発言は良識として受け入れがたいが、両氏の発言は現実であるかもしれない。
 これら生活保護国と言うべき国でありながら、政府関係者は先進国の金持ち並みの生活をしている。日本政府の政治家も上級官僚もこんな生活はしていない。
 もう25年も昔のこと、勤めていたアメリカ企業の仕事でアメリカ政府IDA(国際援助庁)が援助する国際入札を担当した。アフリカでは大国であるE国が設備の入札を実施したのであるが、その援助を受ける側の出先官庁であるニューヨーク事務所を訪ねた。同時テロでなくなった世界貿易センターの高層階にある事務所を見て驚いた。窓から高層ビル街を見渡せるホテルのスイートルーム並みの事務所には、立派な応接セット、責任者の豪勢な机と皮張りの椅子、それに大型テレビがあった。ここに責任者と部下にアメリカ人の秘書が働いていた。
 「立派なオフィスですね」と私が言うと、「アメリカの政府援助や企業からの投資を呼び込むのに必要なのです」と責任者が答えた。日本人の感覚なら、こんなことをしている国には援助したくないと思った。入札では最終選考に2社の中に選ばれたが、なんと最後には2社に入らなかったヨーロッパのメーカーが自国政府による低金利を決め手にして受注をさらった。今でも腹立ちを覚えるので、ここに書いている。地元選出の下院議員を通じて報告し、抗議をしたが、型通りの返信しかなかった。アメリカ政府がお人よしである一例だ。アメリカ企業も日本企業もこういうアフリカの国との商談には苦労しているだろう。
 昨年のこと、日本政府が東京で主催したアフリカ会議があった。会場に金色のロールスロイスを乗り付けたアフリカの国の代表者がいた。超高級ホテルの所有車だろうが、それにしても日本や他の先進国の政府から援助を受ける国の態度はでかいな。

 だらだらと長く書いてしまった。結論として言いたいことは、日本政府はアフリカ諸国に対するばらまき援助を変えてほしいことだ。アフリカ援助については、比較的政府が安定している、内戦がない、資源がない、中国も関心を持たない国に対して自立のためのモデル援助国をつくろう。日本の官民協力で援助ノウハウを注力して世界に見せよう。そして、他の諸国はかつてのヨーロッパ宗主国に援助を任せればよい。
 対GDP比で債務残高がだんとつで世界最悪である日本は、従来のばらまき援助を変えなければならない。政府も変わらなければならない。この時期、海外援助予算を効率的に絞り、若者に職業訓練と組み合わせて生活資金を払う制度を拡大してほしい。

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2010年2月4日木曜日

#26 発想ゲーム、ハイチ株式会社

ハイチ大地震後の国際支援が進んでいます。これから数年の間に倒壊したハコモノは新たに再建されるでしょう。しかし、ハコモノが再建されても、この国の自立は別問題です。政府の統治能力も民心の自立意識も容易には変わらない。大胆に変えなければ元に戻るだけです。
 これまで日本とはあまり関わりがなかったハイチを一つの例として、世界の発展途上国を自立させるための改革について、私の発想を紹介します。


ハイチの国情の実態
 ハイチはカリブ海の島、イスパニョーラ島にあり西三分の一を占める小国、面積は岩手県と新潟県を合わせた広さ。残る東側はドミニカ共和国。周辺の国と国勢を下記の表で比較してみよう。これから分かるように、ハイチはだんとつの最貧国だ。



 表の中でプエルトリコは独立国家ではなく、アメリカの領土で、議決権はないが、アメリカ議会に国会議員を送っている。英語とスペイン語が公用語として使われる。
 さあて、なぜハイチは貧しいのか?諸君に考えてもらいたい。 
 内戦が続いたせいもあるが、それよりもハイチだけが他の国と異なることがある。 それは他の国ではスペイン語が使われるのに、ハイチだけがフランス語国であることだ。さらに言えば、カリブ海諸国と中米諸国がすべてスペイン語圏である中で、ハイチは唯一のフランス語使用国なのだ。これでは貿易や産業振興においては大きな障害になる。言葉の違いがあれば観光客も呼び込めない。隣国のドミニカに比べて農地が荒廃して農業も遅れていると言われる。かつての植民地に対する面倒見が良くないというフランスの植民地であったことも不幸だった。

ハイチと国連途上国再生機構の発想
 長年経営者の内紛と統治能力がない中小企業は経営破綻を招く。自明のことだ。ハイチは経営破綻企業みたいなものだろう。地震災害から国際支援によって復旧したところで、その先には自立する見通しは立たない。破綻した企業の経営再建においては、外部から新しく経営者と経営チームを入れて従来とは違う抜本的改革策によって再建する。
 そこで、ハイチを一定期間に国連に統治を委ねてその経営チームによって再建する制度を導入することで再建する。日本の企業再生支援機構の国連版として、今後途上国支援のモデルケースに使う価値がある。どうにもならない国がいくらでもあるのだから、支援の仕方を変えなければ、単に対症療法として資金援助するたけでは無駄を繰り返すだけだ。
 国民が永続する貧困から抜けてまともな生活を希望するか、または貧乏でも独立自尊を選ぶか、国民投票を実施することで問うことから始めてみる。
新体制によって進めるハイチの抜本的改革として何をするか?


1)スペイン語を公用語に変える。言語改革には、日本語を北京語に変えた台湾、多言語から英語を公用語に変えたシンガポール、ロシア語から自国語に変えたかつてのソ連傘下の諸国の例がある。
2)ドミニカと合併して島と同じ名の「イスパニョーラ国」とし、その下にドミニカ州とハイチ州を置く。二者対立を防ぐためにもう1州を加えて3州にすることがよいか。

中小企業と国の「三ない」
 長年中小企業の経営改革と再建に関わってきた私が、破綻する企業の経営者に共通点があることを知った。それを私は「三ない」と呼ぶ。すなわち、(周囲の変化が)見えない、(改革策を)考えない、(従来のやり方を)変えない、の三つだ。
他方、途上国リーダーについても同じことが言えるだろう。
 さて、諸君たちも「三ない」にとどまっていないか?私の発想ゲームについて暇な時に考えてほしい。

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