2010年5月29日土曜日

#33 柔ちゃん、無理、無理ーー女が政治を危うくする

 最近は鳩山首相を揶揄する川柳やコントの傑作を新聞で見ます。私は閃きを得るのにセンスがなさそうです。しかし、ふと一つのコントを思いついたので披露します。新聞の投稿先を調べることが面倒だし、それに傑作の水準になるかどうか自信がありません。

      「基地移転、読み違い
        5月末、決着。
        5月、未決着
          ――あわて者―― 」


◇ タレント選挙の再来
 7月の参院選挙にわんさとスポーツ選手、歌手、芸人が主として民主党の候補に選ばれた。中でも谷亮子はまだ現役の柔道選手であることから、週刊誌やテレビで批判されている。「柔道もオリンピックで金メダルを目指し、その上国会議員もやる?ええ加減にせえ」という声は私の周囲でもある。私もそう思う。
 この際、彼女に犠牲になってもらって言いたい。他のタレント候補にも通じることだ。
 第一に、国政を目指すなら、市会議員か県会議員からキャリアを積んでから国政に出る「政治の王道」を歩め。さもなければ、結局、なりふり構わない小沢幹事長に議会での数合わせと民主党票の上積みに利用されるだけ。当選したところで、これまでもそうであったように、日本のスポーツ振興などと言うのが関の山だろう。議員になってから勉強する?そんな国会議員は要らない。むしろまともな候補者の機会を奪うことを考えてほしい。 
 第二に、彼女は北京オリンピックの代表を選ぶ選考会で敗れながら、「金メダルの可能性が高い」という連盟の不公正な判断で代表に選ばれた。そして、オリンピックでは準決勝で負けた。彼女がいつまでも金メダルに固執する間に、他の人材が道を阻まれることに気付くべきだ
 谷さん、もう充分日本柔道に貢献したではないか。

◇ 社民党代表の反政府活動
 福島代表が普天間基地の辺野古移転について、閣議決定に署名しないことを正式に表明した。閣僚の一員でありながら沖縄を訪問、県民に協力して政府に反対するというのだから、代表は連立離脱の腹を決めたのだろう。彼女の、言わば、独走に対して党内でも意見が分かれているという。
 福島大臣が辞任を拒否し、民主党に内閣を追われるという形になれば、社民党が持つ300万票を固められるという読みもあるだろうが、連立を離脱すれば民主党から選挙区候補が攻勢をかけられる。社民党には一歩退いて閣外協力という選択はなかったのだろうか。もともと両党の争点は、始めから分かっていたことであるが、沖縄基地問題だけなのだから。
 他方、民主党は基地移転の取り扱いで日米合意文書には辺野古の名前を明記し、三党合意の閣議決定には名前を出さない、しかも前例もない閣僚署名なしの首相発言にするという。論理に外れるどころか、閣議の威信も節操もない。
 結局、鳩山首相が福島大臣を罷免した。かろうじて日米合意と閣議決定の内容が異なるという二重帳簿を止めて閣議の威信と国際信義を守った。
 ところで、福島代表は消費者・少子化担当大臣として化粧ののりが悪い日もあるほど苦労を強いられた。女性議員の中で傑出した人材であることに変わりがない。もっとも代表を大臣に任命した鳩山首相の責任ではある。

◇ ニキタ小沢党第一書記
 ニキタと言っても若い世代にはぴんとこないだろう。ニキタとは1950年代の旧ソ連の最高権力者であったニキタ・フルシチョフのことだ。フルシチョフは共産党第一書記、その下に首相が置かれていた。後に彼は首相を兼務し、独裁者として君臨した。
 そう、小沢幹事長は事実上の党第一書記なのだ。社民党対策でも何でもすべからく鳩山首相は小沢第一書記の選挙戦略に縛られていると言えよう。小沢短期選挙戦略が中長期の政治より優先されているのでは、選挙の功罪の「罪」が大きい。民主主義の根幹であるべき選挙の重みが揺すられている。
 諸君はソ連には選挙がなかったが、日本には選挙があるから独裁者が出ることはない、と反論するかもしれない。しかし、第一次世界大戦後に成立したドイツのワイマール共和国(高校でこう習ったが、現在はヴアイマル共和国と呼ばれる)は理想的な憲法に基づく民主主義国であったが、政治の混乱からナチ党のヒットラーが台頭する結果を招いた。ヒットラーは軍人ではなく、憲法の下で選挙によって堂々と首相に選ばれた。
 小沢ガールズよ、小沢ガールズ候補よ、うまく今回の選挙で当選したところで多くが次の選挙では落とされる。大衆はいつまでもバカじゃない。結局、長い人生のキャリアが壊される。それでよいのか?

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2010年5月17日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』5月創刊号、2010

    大阪は地元メディアの空白地域 
                  経営評論家・岡本 博志
 

 95年にアメリカから帰国、茨木に住み始めて間もなく、大阪が地元メディアの空白地域であることに気付きました。それまでアメリカで17年余り地方都市に住んで慣れ親しんできたような地元メディアが茨木にも大阪にもないのです。何しろ人口2万人の小都市には地元のテレビ局、ラジオ局、それに100年以上の歴史がある地元新聞のメディア三器があったことに比べて、人口27万人の茨木には三器が一つもないという違いに驚きました。

 町の事情を知るよすがと言えば、市役所の広報冊子と北摂地方のリビング情報紙しかありません。もし地元新聞があれば、地元の商店やビジネスの情報や広告に役立ち、膠着した市政も変わります。そこで同志とともに事業計画をつくり、電力・ガス会社の赤字を出さない公益事業として支援を求めましたが、残念ながら共感を得られませんでした。

 本題に入ります。

 人口800万人の大阪府、260万人の大阪市においても、全国では珍しいことですが、三器のうちラジオ局しかありません。
 なぜなのか?この疑問が一つの動機になって大阪研究を始め、97年に私の著書として4冊目になる『大阪がかわる 地方がかわる』を書きました。(注記)
 大阪には地元メディアがない?その実態を説明しましょう。

 ≪新聞≫
 

 日経を含めて全国紙5紙があるが、大阪版の紙面は限られていて大阪に関する情報は少ない。月刊誌のような評論に対する反論や意見を掲載するスペースはない。さらに、各紙間で厳しい販売競争があり、大阪にとって本当に必要な問題を正面から取り上げることは、購読者に受けないので自ずと限界がある。

 唯一の地元紙として大阪市を中心に販売されている『大阪日日新聞』があるが、発行部数か1万部足らずであり、影響力が小さい。違いは『神戸新聞』、『京都新聞』、『奈良新聞』と比較すればよく分かる。
 『大阪日日新聞』には組織があり、記者も居る。大阪には東京の月刊誌にも出せる人材も少なくない。ゼロからスタートするより、この新聞を発展させられない?経営の問題というより、大阪人の支持が問題だろう。当時、「しょせん大阪は民度が低いのだ」、「大阪は全国紙とスポーツ紙が支配しているから地元新聞が育つ余地はない」と支援を求めた会社から言われたが、本当にそうなのか?
 他の県民ができることを、なぜ大阪人はできないのか?

 ≪テレビ≫

 新聞と同じく、大阪のテレビ各局もNHKも、地元番組を持っている。それでも実態では東京局の支配下にある。
 地元番組の一つ、午後のバラエティ番組では、漫才や落語のタレントが民意を代表しているかのようにふるまっている。私はスポーツクラブのサウナ室に置かれたテレビでこれらの番組を観せられている。いつも、ええ加減にせんか、と思う。名実ともに地元テレビである京都テレビやサンテレビ(神戸)は全国番組も大阪民放の番組も放映していない。アメリカの地元テレビとそっくりで、自主独立のテレビ局だ。
 「若者塾#17」で書いたように、民放テレビ局の再編を待つしかないか。その時には、新大阪テレビ(現在の大阪テレビは日経系)を地元資本で設立する日が来るかもしれない。
 
  ≪ラジオ≫

 大阪のラジオにはまぎれもなく地元局が多い。大阪市や周辺都市にはいくつもFMのラジオ局がある。ここでは二つを紹介しよう。
 「大阪ラジオ」と「FMCOCOLO}は系列とは無関係の独立ラジオ局だ。
 「FMCOCOLO」76.5MHzは、主に関西在住の外国人に地元情報を提供するために、大阪経済界が出資して設立されたラジオ局。日本語も使われるが、英語のほかに中国語などの外国語が使われている。音楽番組と地元情報をふんだんに聴ける。ここで話される英語国人以外の外国人による英語がわかりやすい。若者諸君、テレビを観ているより、このラジオを聴いた方がためになるよ。

 ≪月刊誌≫

 大阪には言論月刊誌がない。『大阪人』という月刊誌があるが、文化・観光情報誌だ。東京の有力月刊誌が相次いで廃刊に追い込まれる時節、活字離れの時代に大阪に言論月刊誌を期待することは無理というもの。そこで、私がネット月刊誌『言論大阪』をここに立ち上げることにした。ささやかなチャレンジだ。> また。絶望的なことを始めよった、と友達から言われそうだ。全国の読者には、大阪の問題は全国どこにもある問題の縮図であることがわかるだろう。自分の地域を見つめなおしてほしい。

 (注記)『大阪がかわる 地方がかわるーー国際地方人の大阪逆移住記』、三一書房刊、1997。刊行後13年、その間に予測や提唱通りに実現したことも、まだ変わらないこともある。 当初、梅田の紀伊国屋書店のショウウインドウに展示される、月刊誌の書評に取り上げられる、朝日新聞のインタビュー記事が大きく出る、など幸運に恵まれた。しかし、間もなく出版社の労使争議がこじれ、7年も倉庫をロックアウトされて本の出荷を止められた。今も悔しい。現在、出版社に在庫があるが、インターネット通販では定価の半値くらいで売られていることがある。

    

 

 

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2010年5月8日土曜日

#32 鳩山首相は居座るしぶとさを持てるか

 「若者塾」の読者が増えないことに意欲をそがれています。読者は、北海道から沖縄まで、海外ではアメリカ、台湾、中国まで広がりがありますが、残念なことにほとんどが知友人であり、しかも50代以上の世代です。
 ただ、閲覧数を増やすだけなら、知友人読者を会員グループ化して新作が出るたびにメールで配信すればよいのですが、それでは不特定の若者読者が増えることを把握できないし、知友人に対して押しつけがましい。
 若者に私のメッセージが届かない、これは10年来の課題です。
 張ってある今月のカレンダーに「忍耐とは希望を持つ技術である」という標語が書かれています。苦労している諸君にもこの標語を贈ります。もちろん私自身もこれを地でいっています。

◇ いじわる仮想対談
 首相「リーマンショックが鎮まったら、今度はギリシャショックでまた景気が影響を受ける。景気、基地、金の3Kは荷が重いな。ボクは経済を集中して勉強していないから、自信がないよ」
 夫人「誰だってそうよ。首相が全分野で専門家になれないわよ。ねえ、もういつでも首相を辞めてもいいんじゃない。自家用ジャンボであちこち外国旅行をやらせてもらったし、いろんなパーティも楽しかったわ」
 首相「うん、固執する思いはありません。しかし、自民党が麻生首相で選挙に臨んだように、7月の参院選挙まで降りないつもりです。ボクが降りない限り、誰も降ろせない法制度になっていますから。今、菅さんに首相をやらせれば、彼が貧乏くじを引くことになります」
 夫人「選挙で勝てなければ、菅さんが首相になれるかどうか。党がばらばらになるのでしょう?」
 首相「そうかも。いや、第一党の地位まで失うことはないでしょう。何しろ彼は結党以来苦労を共にしてきた同志だから、首相になってほしい。ボクは流れに乗って首相になりましたが、本当は菅さんの方が首相の資質があると思います」
 夫人「あなたは自分の思いに振り回されたのよ。首相として大衆が嫌うことはやりたくなかった。そうでしょう?」
 首相「そうかも。基地問題にしても、国家間の合意だから、自民党の決めたことを引き継いでいればよかった。ただ、自民党はアメリカの要求を受け過ぎているという思いと、前政権の政策は何もかもだめだという思いに支配されたんですね」
 夫人「もう無理しないで、普通の生活に戻りたいわ」
 
◇ 自民党よ、新党よ
 どれもこれも民主党政権を倒すと言っている。首相が衆議院を解散しない限り倒せるわけがないではないか。それよりも消費税値上げを推進して、国家の財政破綻を避けるために国民に訴えよ。
 増税すれば景気が悪くなり、税収が減ってさらに財政を悪くするという考えは本末転倒だ。先ず財政再建があって、その下で景気を支える方策を出すことにこそ英知が求められる。今の政府は手術に同意しない患者に薬で延命させているようなもの。国債増発に英知は要らない。
 ギリシャを見よ。かつてのアルゼンチンを見よ。両国と比べ、日本は資本・貿易収支が黒字だから、毎月国庫への収入がある、つまり国の金庫が底をつかないという違いがある。国民貯蓄も高い。しかし、国の今の財政を家計に喩えれば、毎年収入と同額の借金によって消費し、すでに累積借金は年収の20倍になっている。しかも債権放棄、つまり借金の棒引きも許されない。ギリシャは公務員の給料引き下げに対して大規模なデモが行われ、さらに経済に打撃を与えている。国家の、特に危機においては、国家の政策が大衆に流されては危機を脱出できない。
 財政破綻した夕張の市民が困難に耐えてきた。今、政府が夕張の市民に求めたことを、国民に求めないなら、それは道理を外れることだ。
 
◇ 政局の予想、諸君と考えが違うか?
 6月に鳩山首相が辞任し、菅副総理が首相に昇格するとするという予測が高まっている。当然、7月の参院選挙に備える選挙対策だ。
 そうなら、政治の空白を避けるために、菅財務大臣と、鳩山首相とともに責任を取る平野官房長官の後任を補充するにとどまるだろう。
 私の予測は、希望でもあるが、9月の民主党大会まで鳩山首相を名誉首相のように棚上げして、菅副総理が主張する財政再建のために閣僚全員が一日でも早く行動を起こすことだ。先進国では最悪の財政危機にある日本では、財政再建は国家再建の原点ではないか。民主党が世論を超越できるか?
 どっちみち参院選挙で民主党が議席を減らすことは避けられない。しかし、第一党の地位を失うことはあるまい。そうすると、党大会で選ばれた代表が次の首相になる。それまでに幹事長の任命罷免権限を持つ鳩山党代表が小沢幹事長の首を切ったところで、小沢議員が代表選挙に立候補することを誰も止められない。いざ代表選では党内最大グループを率いる彼が勝つ公算は大きい。そして、衆議院で圧倒的多数を支配する民主党が彼を首相に選ばざるを得ない。参議院で他の首相候補が選ばれても、衆議院における選出が参議院に対して優先される制度では、誰も小沢首相になることを止められない。たとえ世論の大勢が反小沢になろうとも、支持率がいかに低かろうと、彼はもともと世論も支持率も信用せず、問題にしていない。彼は言うだろう。「法に照らして首相になることに何らやましいことはない」と。
 諸君、これは他人事ではない。次世代の日本がここにかかっているのだ。

 私が恐れることは、鳩山首相の進退の決断いかんによって、政権の混乱を招くことで、「ああ、やっぱり民主派政党というのはダメなのか」と、大衆を失望させることだ。いびつな環境で育ったがゆえに危機下の政治が分からない鳩山首相と、政策がご都合でころころ変わり選挙のことにしか頭が働かない小沢幹事長のツートップを退けることにより、新しい民主党に変わってもらわねばならない。
  

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