2010年7月28日水曜日

#36 世論調査は時に有害ーー民主党は大敗しなかった

 今回の参院選挙について新聞もテレビも「民主党は大敗した」と伝えました。わずかの少数が「大敗しなかった」という意見を述べていました。確かに民主党は参院で過半数を取れなかったので負けたことになるのでしょうが、これは選挙前に予想されたことです。本稿#24(今年1月)で私も過半数を取れないと予想しています。
 先日のこと、鳩山前首相と、得意の雲隠れをしていた小沢前幹事長が、民主党敗北の原因を菅首相が消費税値上げを言ったことだとする意見を新聞が伝えました。これが本当なら、なんという厚顔の男たちか?
 今回は控えていた政治を取り上げ、加えて世論調査について考えてみます。

◇ 菅首相は貧乏くじを引いた。
 本稿#32で参院選挙までは鳩山首相に居座ることを願ったが、しょせん無責任で格好だけの男にはかなわぬことだった。お陰で後を継いだ菅首相が貧乏くじを引くことになった。なぜなら小鳩政権が負うべき選挙の敗北の責任を菅首相が責められることになるからだ。誰が後任首相であれ、民主党は今度の選挙では勝てなかった。
 ただ、菅首相が責めを負うべきことは、消費税率の10%に触れたことではなく、批判を浴びるとすぐに所得税で調整して還付すると発言して腰が砕けたことにある。その対象も年収200万円の低所得者から400万円まで発言がぶれた。これでは一国のリーダーは務まらない。私は鳩山首相に当初変身を求めたように、菅首相にも変身を期待したい。つまり、市民運動家気質からナンバーワンの権力者に完全脱皮してもらうことだ。
 世間の声は厳しい。鳩山前首相について、「なんであんなのが首相になったのか不思議」、「仮にだ、鳩山にどの大臣を任命するのか考えてみたらいい。任せられる適職がないじゃないか。その程度の玉なのだ」と言う。「彼は頭が良いのだが、バカなのだ」と、これは私。実際、官僚にも学者にも頭は良いのにバカなのが少なくない。
 相変わらず軽薄なメディアが言う。「理想主義の鳩山に対して現実主義の菅」だと。あれは理想主義ではなく、幻想主義だろう。
 菅首相閣下、前首相の轍を踏むなかれ。世論調査に揺すられるなかれ。

◇ 政治家は世論調査を超越すべし 
 実例をいくつか挙げよう。
 先ず、NHKが相撲名古屋場所のテレビ中継に関する世論調査。場所前にNHKが寄せられた多数の意見を集約すると、中継反対が60%を超えていた。だからNHKは民意に沿って中継をやめることを決定した。こんな意見は市民がOX式の一つを選択するのに一時の感情にとらわれているから危ない。加えて、この調査の欠陥は前例がないことで、過去と相対的に比較できないので信用できない。まだ選挙事前の世論調査では、同じ質問に対して調査されるので、過去のデータと比較できる点である程度信頼性がある。
 NHKが視聴者からの多数意見に基づいて中継中止を決めた時、私は家内に言った。
 「見ていろよ、名古屋場所が始まったら中継中止に反対する意見が逆転するよ」と。
 いざ場所が始まると、今度は中継を求める意見が過半になったという。移り気で、大して考えずに感情で決めるから、大衆の意見とはこんなものだ。
 民意に従うだけで結論を決めるのなら、NHK幹部も政治家も要らない。
 蛇足をひと言。NHKは4億円とも5億円とも言われるテレビ放映権料を相撲協会に払わなかった。視聴者は既得利益を失ったのだから、要求する権利がある。「ゼニを返せ!」と。これがものの道理だろう。

◇ タレント選挙の顛末は? 
 時代が変わったな、と思う。
 「タレント候補にも出馬する権利はある。しかし、いきなり国政ではなく、市会議員か県会議員から始めよ」と本稿#33で書いた。知名度で国会議員になろうなんて厚かましい、と思う私は強豪候補の谷亮子を標的にしたが、やはり彼女は強かった。
 しかし、他の元スポーツ選手、芸能人、テレビ関係者のタレント候補はほとんど落選した。
 ここでは、私がよく知る大阪の選挙結果について紹介し、皆さんの参考に供したい。
 定員3の大阪選挙区では民主、自民、公明党の候補が一人ずつ当選した。
 小沢戦略による民主党二人目のタレント候補・岡部まりは次点で落選。それでも61万余の票を集めた。彼女が選挙記事の中で「大阪は愛と人情味を持った温かさのある街」と言っていることには、そのピント外れに寒気すら覚えた。十数年前に刊行された著書の中で、企業誘致をするために大阪の長所として財界人が「大阪は人情が厚い」と言っていることに対し、こんな非論理的な考えを批判したことがある。その後講演ではいつも「交通体系が素晴らしい、不動産が割安、いつでも人材を集められる、災害が少ない」などの長所を挙げるべきだと話してきた。私のせいかどうかは分からないが、ここ10年は「大阪が人情に厚い」とは聞いたことがない。もう岡部は感性が古すぎる。こんな手で大阪人を釣れると思ったのか?
 選挙区に異色の候補が出馬した。山分ネルソンとい候補で、マレーシア出身の産婦人科医、36歳、今年1月に日本に帰化。勤めていた病院で同僚医師3人が倒れたことから、日本の医療改革のために出馬したという。マレーシアの高校を卒業後、北大薬学部卒、さらに阪大医学部を卒業して薬剤師と医師の資格を持つという英才。医師不足の改善を訴えながら、自分は医師として一線を離れて政治を目指すというのでは、私は彼に投票しない。まだ10年は早い。それでも10万票を取った。善戦だろう。私は医師に戻ってくれて良かったと思う。
 比例区には落語の桂きん枝が民主党から出馬した。選挙前に新聞が「大阪にはお笑い票が百万票ある」と書きたて、大阪お笑い芸人のスターたちが応援に勢ぞろいしたが、彼の得票数はわずか約4万8千票で落選した。大阪人はもうバカじゃない。むしろ大阪より、東京選挙区で蓮舫候補に170万票も投じた東京都民の民度が怪しい。
(文中敬称を略させていただいた)

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2010年7月4日日曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#3,7月、2010

  大阪都より大阪市を日本第二の都市に復活
   ――大阪市の面積は横浜市の半分にすぎない――
                      経営評論家・岡本 博志
  
 橋下大阪府知事が提唱する大阪都構想は人心を一新し、次世代のために大阪に活気を蘇らせる効果があることを評価できる。しかし、そのためには条例や法律を改正する法的手続きが必要である。
 私は大阪都構想や関西広域連合の前に大阪市と隣接する周辺都市を合併し、横浜市に次いで日本第三の都市である大阪市を再び第二の都市にすることを提唱したい。この新大阪市構想は、橋下知事の大阪都構想を進める障害にはならない。
 

  大阪市の面積は横浜市の半分

  先ず、下記の表をご覧いただきたい。
    
  大阪市と横浜市、神戸市、京都市の比較

           面 積 ㎢   人 口  千人
   大阪市     227       2,663
   横浜市     437       3.673
   神戸市     552       1,536
   京都市     827       1,770

 これから分かるように、大阪市の面積は横浜市の約半分に過ぎず、神戸市は大阪市の2.4倍、京都市にいたっては3.6倍もの違いがある。神戸、京都の両市とも積極的に周辺市町村との合併を進めてきた。振り返ってみると、横浜市が大阪市の人口を上回ったのは1980年代の初めであった。これに対し、大阪市は30年もの間、現状維持のままにしてきた。この間、
私が知る限りでは、経済界からも、市民からも大阪市拡大合併の話を聞いたことがないことを不思議に感じるほどだ。メディアも取り上げることがなかった 。
 今や、日本第二の都市である横浜市と大阪市の間では約100万人の開きができてしまった。「大阪市は昼間人口では今も日本の第二の都市や」、「都市の風格では大阪が上」という声があるが、世界の統計では住人人口が基準なのであり、世界中の観光ガイドや人口統計では大阪市は日本第三の都市なのである。
 正確な記述では、横浜市を「日本最大の市町村」としているが、これは東京都が県に相当し、都市に見られないことによる。しかし、戦前は東京市であった特別23区に限っても、東京は日本最大の都市であるから、やはり世界の統計では東京、横浜、大阪の順にされている。

 
  京都市と神戸市では合併を促進

 実例を挙げてみよう。
 京都市の北、かつての北桑田郡京北町山国は南北朝時代に光厳院上皇が蟄居した村として知られ、常照皇寺がある。ここは合併により現在は京都市右京区になった。その昔、京都駅から国鉄バスで2時間以上かかったこの寒村が京都市とは驚く。
 有馬温泉までは都心から六甲山を超えて電車かバスで1時間以上かかる。今ここは神戸市北区である。このような広域合併は全国にいくらでもあるだろう。
 そこで、大阪市と隣接する豊中、吹田、守口、東大阪、八尾の5市を合併すると、新大阪市の人口は432万人となり、横浜市を約70万人超えることになる。 それでも面積は410㎢で横浜市より狭い。
 驚くことはない。何十年もの間、これらの隣接市のほとんどは大阪市の市外局番06に含まれて広域経営区になってきた。神埼川の対岸に位置する兵庫県尼崎市でさえ、昔から大阪市と同じ局番06だ。大阪市営地下鉄の路線も延びており、広域行政区になっている。合併に何も感じず、動かなかったのは各市の行政だけだった。経済界も市民も動こうとしなかった。

 合併で無理やり人口を増やしてなんの意味があるのか? こう反論されるかもしれない。しかし、私は大阪市の都市としての勢いには名実ともに大事であると信じる。名とは言うまでもなく第二の都市の地位を取り戻すことである。

  平松市長に仕掛け花火を求める 

 合併構想でも何でも、友達は「大阪は地域エゴをぶつけ合うだけでバラバラ」と言う。私は言う。「大阪はどこかだらっとしていて締りがなく、感性が鈍い風土」と。
 これまで平松大阪市長は橋下知事が次々と打ち出す改革提案に振り回されて受身であったと思う。ここらで「大大阪市」を実現するために、大阪市独自の仕掛け花火を打ち上げてもらいたい。命名して「西の横綱」花火としよう。
 はたして、大阪は目覚めるか?
            (完)

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