2009年10月20日火曜日

#16 外国語学習に試験の効果が大きい

出ました、出ました!
 #14の「東京オリンピックはもう要らない」を書いたのは10月3日、この中で広島オリンピックを提唱しました。それから一週間後の11日、広島市長が2020年のオリンピックに広島・長崎で開催することを記者会見で表明したのです。メディアはオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞したことと関連付ける報道をしていましたが、まったく見当違いであり、秋葉市長は年来構想をあたため満を持してこの日に備えていたのだと思います。
 さらに、私はインドが出てくることを書きました。それが14日の新聞に報道されました。まだインド五輪協会の副会長が発言したもので、正式表明ではありませんが、必ず名乗りを挙げるでしょう。20年にはアジア開催の可能性があるので、インドが全力を尽くしてくるはずです。そのためには、インドの「国家オリンピック」に対し、広島は「市民オリンピック」に仕立てることが重要です。広島オリピックについてはいくつか提案を持っていますので、詳しくはいつか稿を改めて書くことにします。

 
 さて、前回、小学校英語と英会話について書いたことで、出張中の面談やメールでリクエストがありました。ここでもう一回書くことにしましょう。

  
  外国語学習に試験の効果が大きい


☆ 台湾には年に1,2回出張しているので、多少は北京語をしゃべらないと失礼(?)になると思い、時々勉強を始めてから2年になる。基本の4声の発音だけはNHKのラジオ番組を聴いて習得したから、レストランや駅で簡単なことを話すと相手に通じるが、長く話されるとさっぱり分からない。
 ええ加減な勉強なので、新聞も読めないし、短い文だけしか暗記できない。あきらめたというか、これ以上の進歩を望めない。台湾で北京語を使える機会があるというのに。
 なぜ私の北京語は上達しないか? 歳のせいではない。
 それは試験の集中力を得られないからだ。なんと言っても試験による効果は大きい。受験でも学校の定期試験でもいい、試験勉強をしっかりやることが大切。試験に一点でも多く取るために集中するが、結果の点数は良くなくてもいい。
 諸君が子供さんのためにボクシング選手の生活態度に喩えてアドバイスしたい。
 ほら、ボクシング選手は多くが仕事を持ち、毎日猛練習できない。彼らは普段は早朝のロードワークと基礎的な練習をし、試合が近づくと集中してリングで実戦練習に移る。これが英語学習のコツ。
 諸君自身が英語に取り組むなら、英検のほかにTOEFLという世界共通の英語試験がある。日本の各地で受けられるので、これを励みにすればいい。回を重ねるごとに点数が上がれば意欲も高まるだろう。ビジネスマン向きのTOEICという試験もある。
相乗効果として、親が英語を勉強する姿勢から子供が刺激を受けるに違いない。

☆ ヒアリングの問題。私の経験では、機会が減るとヒアリングの力をいちばん失いやすい。しかし、一度身につけた能力は、また回復も早い。
 普通の環境に置かれている人にはヒアリングを上達する機会がない。ただし、岡本流はラジオの英語講座を聴き流しにすることだ。毎日でなくともいい。これはランニングやラジオ体操でも同じことで、継続の意志を試される。
 単語を増やすにはどうすればよいのか?この質問を受けたことは数えきれない。私の答えは、ヒアリングと同じで、ラジオの英語番組やテレビの英語ニュースを聴き流しして憶える。高校卒業以来、単語帳もメモの類をつくったことがない私は、その代わり、薄い英和辞典を10冊くらい持ち、家のどこにでも出張の鞄にも入れて、知らない、あるいは忘れた単語を即座に引くことにしている。
 ところで、大学受験の共通一次試験に英語のヒアリングを入れていることは、私に言わせれば、クレージーかアホじゃないか。さらに、私立大学の理科系学科が受験科目に国語を課さないで英語を入れていることもおかしい。
 さらに、本試験の合否が決まる総合点数に英語を入れていることもナンセンスだ、と長年主張してきた。これは各々の学科が必要とする英語力を見るために、最低点数を設定して受験者を足切りすることで参考科目にするべきだ。理科系学部では入試において問うべきは、基礎的な学力と論理的思考力なのだ。

 また、得意の堅い話になってしまった。
 結びは、「継続と集中力は力なり」 どんな仕事をするにもこれで実力の差がつく。親なら、子供さんによく知らしめてほしい。


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2009年10月8日木曜日

#15 英会話くそくらえの気概

 台風18号は珍しく陸を北上する進路を取り、予測された水害より大きな風害が出ました。死者4人であったことは不幸中の幸いです。台風のため私の出張が中止になり、予定が混乱しました。このため時間ができて本稿をものにすることができました。こんな短い間隔で続けて書けることはめったにないでしょう。

 さて、本題に入るとして、今年1月に小学校5年から英語教育が必修になりました。全国的で実施されるのは2021年からということです。 これまで16年間は英語教育が総合学習の中で「国際理解」の名目で行われてきましたから、必修に格上げされたことになります。
 文部科学省と英語教育の早期化を唱える推進派は、「これで日本の国際化が進む」とか「英語に親しむ子供が増える」とか言っています。しかし、新聞、月刊誌、テレビなどメディアで彼らの意見を知ると、彼らの目的は英語教育ではなく、英会話教育なのです。これは危ない。その上、年間35時間の授業によりたかが英会話の出来不出来で子供たちが差別化され、英語に親しむどころか、早くから英語嫌いの子供をつくる反面を見落としています。
 若い世代の皆さんが子供さんの教育に惑わされないように、小学校英語の与える影響を考えてみましょう。


  ☆ アメリカの話

  日本の在米子会社で経理責任者をしていた友達が、ある日、私に電話の中でこんな悩みを話してくれた。彼が工場のある田舎町に家族とともに赴任して3ヶ月が経った頃、幼稚園に通う次男がこんなことを言い出した。
 「ボクは英語が嫌い。アメリカの生活もいやだ」
 最初、私は環境が大きく変わったことによる順応の初期トラブルだと思った。よくある話。しかし、親父が言った次の言葉で私はぐっと慎重になった。
 「この坊主は変わり者でね、浪花節が大好きで、子供にしては感心するほどうまい。意見をはっきり言いよる」
 うーん、と間を置いて私は言った。
 「そりゃ、面白い子だね。見どころがあると思うよ。親が初期トラブルとして様子を見るか、それとも子供の意向を汲むか、難しいところだね」
 他人はこれ以上入っていけない。雑談をして電話を切った。

 一年も経った頃、彼と話す機会があった。次男坊のことを尋ねた。
 「実家を守っているばあさんと住むと言って、さっさと九州に帰りよった。ワイフと長男も帰国するから、オレは単身赴任になりそうや」
 次男は浪花節をのひのびと唸っている様を思い浮かべた。

☆ 台湾と韓国の早期英語教育

 
 韓国では1997年に小学3年から公立学校で英語教育が始まった。韓国の英語熱はすさまじく小学生対象の英語塾が多数あり、最も極端な例は、韓国の教育では英語がうまくならないという理由で、母親が伴って子供をシンガポールやオーストラリアに留学させるそうだ。韓国の友達によると、ホンコン人やシンガポール人が英語によって国際化に有利に立っているということから、政府が影響を受けたのだという。彼は韓国にとってそんなに英語が大事なのか、と疑問を持っていた。

 台湾では2001年に小学5年から英語教育が導入され、2005年に小学1年からに変えられた。
 私は台湾には会社の仕事と執筆で毎年1~2回行っているので、現場の事情に直接出会っている。是非を語るには事例が少ないが、事実だけをを紹介してみよう。 日本企業時代に初めて台湾に出張した1975年、民間企業とは日本語、官営大企業の幹部とは片言の英語で打合せした。いずれも技術内容であったので、特に不自由はなかった。それから34年後、国立研究所で数人の打合せでは出席者全員がアメリカ留学経験者で、多少の訛りはあっても英会話に堪能であり、私も自由に英語を話せるようになっていたので、打合せは実にスムースだった。ところが、民間企業の技術者たちとの打合せでは、彼らの英語も日本語も中途半端なため、通訳の助けが必要だった。昔のように、日本語に堪能な台湾人は70歳以上の世代に限られてきている。
 本省人と呼ばれる台湾の多数派は、北京語と台湾語の二つを話し、さらに英語と日本語に堪能であることは実に困難なことだ。

☆ 小学校の英語教育推進派の貧しい意見


 数年前、NHKテレビ番組で小学校の英語教育について賛成派と反対派の4人の論者が意見を述べていた。要点を絞ると、教授はひたすら「英語は日本の国際化にとって重要であり、これで小学生も世界に目を開ける」の一点張り。もう一人の高名というジャーナリストは「記者としてアメリカに一年滞在した時、パーティにおいてさえアメリカ人とまともに会話できず、恥ずかしく悔しい思いをしたので、これからの子供たちにはこんな思いをさせたくない」と言う。二人とも反対派のように論理的説明をできず、賛成の根拠は国際化の御旗と恥ずかしい思いだけだった。> 英語教育について私が知らない根拠があるのかもしれないが、二人の意見は私が周囲で聞く母親たちのあせりみたいなものだ。

☆ インターネット時代の英語

 インターネットで商談を進める場合、相手の顔が見えないので、正しい英文、つまり、文法が正しい英文を書かなければ信用を得られない。先ず、書く前に読めなければならないことは言うまでもない。いちいち他人に翻訳してもらうのでは、金も時間もかかる。
 私は今、日本の従来型の読み・書き・文法中心の英語教育が見直される時期だと思う。早い話、私が英語にうまくなったのは、古いと言われる学校教育のお陰だ。私は30歳から英会話に真剣に取り組むようになった。もう一つ、最近NHKの日本語に批判を強めているが、他方、感謝もしている。私の英会話はもともとNHKラジオ英会話によって上達した。英会話なら30歳でもいつでも始められる。多少日本人訛りがあっても、例えば、アメリカに留学したり、生活したりすれば訛りも取れていく。正確であれば、日本人訛りのどこが悪い!私が知る英語の名手はほとんど30歳を過ぎてから英会話を始めている。
 
 これまでいくつか英語教育について書いてきたが、そのまとめとして立命館大学の教育論文誌『外国語教育におけるFD研究』(立命館大学教育科学研究所刊、1999年)に「実務英語と大学教育の役割」と題して書いた論文がある。論文と言っても難しい内容ではない。諸君が、あるいは子供さんがどんなレベルの英語を目指すかという点で参考になるだろう。
 英会話なんてくそくらえ、と書きたかったが、論文では省略した。希望の方にはコピーを送る。まあ、せめてコピー・郵送代80円切手2枚を同封してほしい。
 住所は、567-0027 大阪府茨木市西田中町8-14-503

 それにしても、躾教育、倫理宗教教育、パソコン指導、安全管理に加えて英語教育の負担が増えるとは小学校の先生には重荷を背負った受難の時代だな。 

 

 

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2009年10月3日土曜日

#14 東京オリンピックはもう要らない

 1016年オリンピックの開催地がリオデジャネイロに決まりました。
 私は見えている結果を事前に書きたかったのですが、東京都の招致活動に水を差すことを敢えて控え、執筆を延ばしてきました。私があちこちで述べてきた予測通りになったことは、少しも自慢にならない。なぜなら、私の周囲では――関西人を中心に少数の関東人――、全員が東京オリンピックに反対していたからです。
 今回は、オリンピックをテーマにしていくつか書いてみましょう。
会話集の中では、書くにはばかるどぎつい極論を排して、穏当な意見だけを紹介しています。

 
☆ 周囲の声。*印は岡本の意見。
   
 「今時、なぜ東京オリンピックなんや。環境とコンパクトが招致のテーマなんて世界に受けるわけないよ」
 「もともと北京オリンピックから2012年のロンドンの次にアジアの都市が選ばれることはないよ」
 「そうそう。次はインドあたりが開催に立候補するだろうな」
 「東京、ソウル、北京がやったように国威発揚をしたいから、当然インド政府もオリンピックをやりたいだろう」

 「私は今のままならオリンピックそのものを支持したくない。これでもスポーツかと思うような種目を増やして大きくなり過ぎたわ」
 「人が採点する種目はやめた方がええな」
 「国対抗で華やかな世界選手権がある団体競技をやめて個人種目だけに したらええと思う。競技というより、なんでも個人種目のお祭りに変えればい い」*
 「ボーリングやチアリーディングも入ってくるで」

 「招致の当事者はタテマエしか言えない立場やから、内心では一回の立候補では選ばれないと思っているはずや。また次もやるのやろな」
 「オレは東京を支持しないよ。日本でオリンピックをやるなら広島がいい。アジア大会を開催した実績があるし、なぜ広島か?なんて問われない。何回でも立
候補すればいい」*

 「今度はリオで決まりだろう」
 「3回目の挑戦というし、『南米に初めてのオリンピック』は説得力がある。リオに決まる」
 「そうなるな」
 

東京は開催資格があるのか? 
 オリンピックの主催は都市であることが条件になってているのに、東京都は都市ではない。他の国では市長が責任者としてプレゼンテーションに出ている中で、東京都知事が出ていることが問題視されるこ とがなかったのか。東京都はIOCが準都市扱いしているのか。
 そう言えば、以前に書いたことがあるが、日本の首府が東京都であることもおか しい。首府を規定する法律がないというが、本当だろうか。

 余談になるが、明治時代の始めには東京市があり、首府であった。廃藩置県の 時に、日本の三大都市圏であった東京、大阪、京都が府と呼ばれ、これが今も大阪府と京府として生きている。他の県の中で、当時最大の人口であったのは新潟県だった。47都道府県というのは話の中でも執筆でも長たらしいから、私は年賀状の住所には大阪県と書いてささやかな改革を提唱している。


あきらめが肝心
大阪が招致した時には、事業計画書の審査で選ばれた5都市の中に入った大阪は一次投票でわずか6票しか取れず落選した。それでも当時の市長と招致団は最終候補の3都市で争われたモスクワに乗り込んだ。まだ巻き返しの可能性があるとして、「ここで止めたら男がすたる」と言ったのだ。
入札の経験があるなら、こんな論理と情緒をごっちゃにすることは絶対しないし、発注者に相手にされない。論理思考の東京はこんなことをしないだろう。
 150億円の招致費用を使ったと言われる騒ぎはこれで終わった。石原知事が唱える「もう一度日本人が一つになり、若者に夢を与える。新しい東京を見てもう」というのは、広島であってもできる。海外から来る観衆のほとんどは東京を問するだろう。

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