2014年12月28日日曜日

#129 「ネトウヨ」とは何じゃいな――方向を正そう

 今月6日から15日間入院していました。以前から引きずっていた脊柱管狭窄症が悪化して手術を受け、その後のリハビリのためです。今もコルセットを付け、杖を使って歩く訓練をしています。長く座れない、長く立てない状態なので、今回はまあ手抜きのような稿を届けます。

「ネトウヨ」とは何じゃいな  

 テレビの番組の中で初めて「ネトウヨ」の言葉を聞いた時、まったく意味がわからなかった。面食らった。  しばらく観ていると、それが「ネット右翼」の略語であることを知った。ひどい略語が流行っているにしてもこれはひど過ぎる。
  「ネトウヨ」というのは、主に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)がインターネットで呼び掛けて集めているグループ。彼らは東京の大久保にある韓国・朝鮮料理店街に押しかけて「国に帰れ」、「朝鮮人を日本から叩きだせ」など憎悪表現で街宣をしている。
 なぜ彼らは右翼なのか?  
 国粋主義を掲げるが、必ずしも外国人排斥ではない正統右翼にすれば、とんでもない迷惑なことだろう。  「ネトウヨ」は右翼というより、アメリカで外国人や移民に反発する白人貧者層の団体に近い。ドイツで極右と呼ばれるネオナチにも近い。
 在日というのは戦中に労働者として日本に連れてこられた韓国人・朝鮮人の子女であり、今は三世の時代だ。彼らは韓国系、北朝鮮系、無国籍であるほかに、最近日本の国籍を取る人たちが増えていると聞く。今さら韓国の閉塞社会に行けないだろうし、まして北朝鮮には行かないから、これからも帰化は増えるだろう。
 問題は、差別はすぐにはなくならないことだ。そして、在日から日本人になると「国に帰れ」はもう通用しない。
 諸君よ、「ネトウヨ」がやっているインターネットの利用こそ私が要請している「若者世論ネット」として呼びかけている。ただし、「ネトウヨ」集団は方向を間違っている。

珍奇な名前は子供が迷惑  

 今年生まれた子供で最もよく使われた名前を男女各10がテレビで報道された。なんとすべてが振りかな無しでは読めないことに驚いた。
 若い夫婦は子供の名前を決めるのにインターネットで姓名判断のアプリに依存しているのだそうだ。そんなアホな。
 親の勝手で子供に凝った名前を付ければ、子供は生涯手書きに苦労する、学校の先生も市役所も苦労する、社会保険庁は入力ミスをするなど迷惑は広く及ぶ。何度も言うが、「子供の個性は子供自身がつくってゆく」のだ。親は芸能人の芸名のような名前を使うな。
 諸君はバカ親になるなよ。

果てしなく広がる英語カタカナ  

 ここでは「アップ」を挙げてみよう。集めてきた順に書く。

 リストアップ、ラインアップ、ギブアップ、スピードアップ、ヒートアップ、シャットアップ、パワーアップ、バージョンアップ、メークアップ(make up、昔はメイキャップと言っていた)、キャッチアップ、ギアアップ、クローズアップ、クオリティアップ、チェンジアップ、テークアップ、ワインドアップ、レベルアップ、グレードアップ、 バッターアップ、ショウアップ、ライトアップ、ボトムアップ、ヘッドアップ、グレードアップ、タイムアップ、ベースアップ(基本給の賃上げのことで英語ではない)、 サインアップ、アップアップ、キャリアアップ、ズームアップ、チューンアップ、 バックアップ、ピックアップ。  
 (注.アップアップは私のジョークであっぷあっぷすること)

 アメリカでも外国語が国語化している例は珍しくない。どういうわけか、フランス語に比べてドイツ語やスペイン語が少ない。
  
   どう見ても日本語の中の外来語カタカナ使用は乱れている。言葉は生き物と言われ、規制が利かない。日本語を学ぶ外国人がこんな日本語についていくのは大変だね。
 諸君たちの時代にはどうなるやら。                (完)

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2014年12月4日木曜日

#128 隠れ漁船軍団に警戒――中国政府は本当に強権か?

 中国のサンゴ密漁船がすごいな。
 マスコミでは事実の報道が使命だから、私のように自由な発想を伝えられない面があるにしても不満を感じます。もっとも、特にテレビの映像では事実の細切れを集めて嘘をつくれます。
  さあて、私の発想ゲームを披露しましょう。

中国サンゴ密漁船の陰に政府あり  

 今回、200隻を超える中国漁船が小笠原海域に現れた時、私は直感的に中国政府が背後にいると思った。
 あの上海での激しい反日デモのテレビニュースで、真新しい5メートル以上もある横断たれ幕、無数の旗、看板などを見た時、こんなものを失業者や学生が用意できるはずがないと思ったことを思い出した。あれは中国政府が日頃不満を抱く無収入者階級を利用して、日本政府を威嚇したのだろう。
  なぜ中国漁船群の背後に中国政府の影を見たか?
 いくら赤サンゴが一攫千金になるとは言え、200隻の中でうま味にありつけるのは高々1割だろう。食いっぱぐれの漁師にもこんなことは分かっている。それでいて大陸の母港から2千キロも離れた小笠原海域に出てくる。そのための燃料費、食糧費、人件費のコストは巨額になり、漁船オーナーが支えられるものではない。 誰が支援しているのかと言えば、中国政府しかない。
 

  中国政府の狙いは何か?
 これまで中国政府には手付かずだった太平洋の小笠原海域における日本の警備力を探るためだっただろう。そのためにボロ船まで集めて隠れ軍団を組織した。サンゴ漁には高度な技術は要らないし、真似ごとをしている漁師にはサンゴを獲れても獲れなくてもよかったのだ。 当然、本土から遠く、広い海域をカバーしきれない海保巡視船の限界を知っていた中国政府は、海上自衛隊の出方を見ようとしていた。
 しかし、海自は「来い、来い」には乗らなかった。
 日本政府が対応したことと言えば、海保が領海を侵犯した3隻の漁船を曳航し、船長を逮捕したことに加えて、罰金を急遽3千万円に上げたことだ。

次に何が起きるか?  

 海自艦艇と対峙したい中国海軍は、サンゴ漁を隠れ蓑にして組織した漁船軍団を尖閣諸島海域に配置してくるかもしれない。中国の中央政府は人民解放軍を統治できていないという専門家の診立てが現実なら、充分考えられることだ。
 200隻もの漁船群が尖閣の経済水域と領海に入り込んできたなら、もう対応はお手上げだろう。   
 過去に数十隻の中国漁船が黄海の韓国水域で違法操業を繰り返した時、韓国の巡視艇は取り締まりに手を焼いた。漁師たちは7,8隻の漁船をロープで束ねて曳航を妨害するばかりか、韓国艇の乗組員に対し鉄棒を振り回した。
 中国漁師たちは自国の沿岸で乱獲して魚が獲れなくなると、黄海の韓国水域で乱獲。軍事面に加えて、漁業面でも中国漁船群は尖閣に押し寄せることに疑いはない。
 かつてソ連時代に、ロシア人の漁船員が根室や小樽に上陸して、マナーの悪さや品性の低いことで嫌われた。バーやレストランで「ロシア人お断り」という張り紙が出たそうだ。
 私の推測であるが、中国人漁船員も当時のロシア人並みかもしれない。

北京の大気汚染と中国政府

 先般の北京APECの開催中は青空が甦った。
 中国政府は市内に乗り入れる車のナンバーで区分けして、総数を半分に規制し、近隣にある工場の操業を止めさせた。相変わらずその場しのぎの対策で外国人に対して体面を保った。 北京オリンピックの時も同じだった。外国人を気にする行事が終わると元の黙阿弥で少しも変わらない。 
 中国の中央政府は独裁強権であると言われるが、本当に強権を行使しているのか。 前述した東アジア海域に軍事基地をつくる人民解放軍のほかに、採算が取れる見通しもないのに新線を建設する鉄道省、汚職が常態の地方政府、決算書も信用できない国営企業に対しても、中央政府の強権が及んでいるとは思えない。               (完)

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2014年11月17日月曜日

#127 日本と世界の財政危機――政府はどうするのか?

 国の債務残高増が止まらないベルギーでは、政府が覚悟を決めて厳しい緊縮財政に踏み切りました。途端に、福祉予算の削減や景気の後退に反対する市民が10万人規模のデモに参加し、警官隊と衝突しました。 ベルギーのみならず、これまでにギリシャ、スペイン、トルコ、フランスでも緊縮財政が取られ、激しい反対デモが起きました。
  ひるがえり、日本では今年度予算でも国債の発行は増えて累積債務は1000兆円を超えています。政府は国債の抑制を言うだけで危機感は弱い。不思議なことに、野党もあまり声を出さない。 国債残高は諸君の時代にツケがまわります。これでよいのか?

諸君はアメリカの議会選挙をどう見たか?

 私がアメリカ生活を始めた1978年から帰国するまでの約18年間、カーター政権を除いてアメリカの議会は上院か下院のどちらかが与党少数のねじれが続いた。やっと与党が両院で多数を占めたのはリーガン(現地の発音)大統領の2期目だった。そしてクリントン大統領になってまた両院で与党少数になった。むしろ、ねじれは常態なのだ。
 それにも関わらず、日本のメディアはアメリカ政治の一大事と言わんばかりに誇張し、オバマ大統領をレームダック(lame duck, 足が悪いアヒル)と呼ぶ。メディアはアメリカ大統領の偉さを分かっていない。つまり、多数派の共和党がどんな法案を通しても、大統領が署名しなければ成立しないのだ。さらに、議会の権限を凌ぐ大統領令という伝家の宝刀がある。  
 今、大統領に対して共和党が反対している政策には。銃砲規制と移民政策のほかに、政府管掌の国民健康保険制度がある。
 これが最大の争点なのであるが、共和党は民主党の国民健康保険制度に大反対している。ある市民は、「なぜ我々が貧者の保険まで面倒を見なければならないのだ」と言っていたが、元は銃規制と同じく、「自分の身は自分で守る」という伝統の考えなのか。
 かつてクリントン大統領が就任してファーストレディになった夫人が、国民皆保険制度を推進しようとして挫折した。反対が強かったからだ。10年後、オバマ大統領が皆保険の形を変えて、有志の国民が加入できる国の保険を設立した。加入者は増えている。
 共和党議員の中で日本や北欧の国民皆保険制度が破綻寸前であることが知られている。そして、長年財政赤字が続くアメリカでは実現できないと主張している。   リーガン大統領は、少数派の上院対策に苦労し、あの独特の話術を利かせて対立する民主党議員に一人ずつ電話をかけて自分の法案に賛成するよう説得した。リーガン大統領は一本釣りを試みたのだ。後に「リーガン・デモクラット(民主党)」と呼ばれる支持者をつくった。

 リーガン大統領2期目の1987年、初めて両院で多数派になった時、共和党上院リーダーのベーカー議員がテレビの会見で、「我々は長く少数党であったから、対応がまだよく分からない」と言ったことに驚いた。率直な人だな、と思った。彼は後に駐日大使になった。
 因みに、日本では議会の党代表を「院内総務」(多数派はmajority leader)と言う。こんな珍訳をつけたのは外務省か?

  さて、オバマ大統領はこれから共和党に対してどのように説得力を利かせられるか?

まだ増え続ける年金、福祉、医療の予算  

 今年度の国家予算100兆円のうち償還と新規の国債費が約40兆円を占めるが、まだ増える。国が抱える累積の国債と短期借入の総額は1000兆円を超えている。年度予算の10倍、GDPの2倍という異常さ。今年も11兆円が増えた。国民一人当たりの負担は800万円にもなる。
 赤字が止まらないのは、主に年金、福祉、医療の分野で、消費税を10%に上げてもま だ及ばない。
 例えば、65歳以上の高齢者が使う医療費は一人当たり70万円と言われる。私はこれまでほとんど高額医療費を使ったことがないが、一昨年に前立腺癌が見つかり、40日間の通院で放射線治療を受けた。国の負担は70万円を超えただろう。
 健康管理によって病気にならないように誰もが心がけていても、病気は突然やってくる。誰もなりたくて病気にならない。高齢者が増えれば増えるほど国の医療費が増えることを抑えられない。   
 分かっていることは、団塊世代と私のような団塊前世代が死ぬまでの20年間は医療費総額(受給者が支払う保険料と国の医療費負担の総額)が年間60兆円になる(現在は40兆円)ということだ。この難局を克服すればその先は見えてくる。
 結局、あれやこれやで今のままでは国の累積債務は増えこそすれ、減る見通しが立っていない。財政再建が長く叫ばれながら、減らせないのは政府も議員も危機感が弱いからだ。

 国は企業の危機対応を見習え  

 企業が累積債務と年度赤字に直面すれば、リストラとあらゆる経費のカットを実行する。今の国も同じことを実行するしかないのに、なぜできないのか?  日本経済を収縮させる政策を除いても、私に言わせれば、打つべき手はいくらでもある。具体的にいくつか挙げてみよう。  

  1) 首相の「ええかっこし外交」にブレーキ 地球俯瞰外交などというのは、しょせん首相個人の満足になっても金を食うだけ。一回外遊すれば、2機の専用機を飛ばすのに数百万円の経費がかかるとか。これに訪問国への手土産に100億円単位の援助資金供与。国際会議への出席は仕方ないが、それ以外の訪問外交は当面止めるべし。さらに与野党の議員が大挙して中国や韓国に公費で訪問することも自粛すべし。

 2) 海外公館の人員縮小と予算3割カット 外務省では大使は特別処遇されているが、首相も外相もいつでも飛行機で飛んでいける今、戦前の特命全権大使ほどの重職ではない。大使以下の外交官も当面給料カットを我慢してもらう。

  3) JETROの海外と国内事務所の削減 JETROは戦後日本企業の輸出や海外進出のために多大な貢献をしてきた。今では国際コンサルタント会社や銀行の海外支店が相談に応じることができる。民間が力をつけてきた。国内でも中小企業基盤整備機構や県の支援組織と業務が重複している。削減で職を無くした人材は企業が受け皿になればよい。 まだ整理すべき外郭団体は多いはずだ。

  4) 国連予算の削減 本稿でも書いたことで、国連への拠出金の削減。東京にある国連大学支援からの撤退。大学の名がついているが、実態は研究機関であり、必要なら大学研究所や民間のシンクタンクに委託すればよい。

諸君、「若者世論ネット」を立ちあげよ

  私がアメリカ生活中に連邦政府も州政府も省エネ政策を打ち出し、盛んに市民に訴えた。しかし、私の感覚では「しょせん金持ちの倹約」で倹約のうちに入らない。よく腹立ちを覚えた。 今は日本政府の財政改善は掛け声ばかりで、「しょせんお坊ちゃん宰相の倹約」で感覚に限界がある、と腹立ちを覚える。
 諸君よ、累積債務の問題は他人事ではない。立ちあがれ!ネットに距離はない。北海道と沖縄の間で瞬時につながるのだよ。                   (完)

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2014年10月28日火曜日

#126 北京たよりーーモンゴルの『ゲル』と『パオ』

 I氏が独自に中国と相撲を結ぶ話を伝えます。彼は相撲にも造詣が深いですね。 私は北京大相撲について長い間忘れていました。
 また、CSは若者諸君すべてに有用な心がけだと思います。

   ―――――――――――――――――――――――――――

 ひと昔前、北の富士と琴櫻が東西の横綱を張った1970年代の前半に北京場所が首都体育館で開かれ、周恩来首相も会場で拍手を送る映像が残っています。戦前の周青年の日本留学日記には相撲見物に行ったという記述はないと思いますが、1972年の秋に日中国交正常化を成し遂げた立役者として直後の大相撲興業には当然のように駆けつけたのでしょう。
 1971年春に北京での周首相との座談会に恵まれた時には、雛祭りの話題になりましたが、大相撲のことには触れなかったと思います。様式美が残される相撲の世界とはいえ、国交正常化を祝うイベント相撲の横綱が「富士」と「櫻」だったというのも、十両以上の関取の他に唯一の中国籍力士が特別参加し、その醜名(四股名。しこ名)が「清ノ華」だったということも、当時の友好気運に溢れていた時代の記憶とともに残っています。

  相撲の土俵の房の色、青・赤・白・黒の意味は? 東宮御所に住んでいる人を何故に東宮(はるの宮。皇太子)と呼ぶか? などなど身近な事例から、「青春」「朱夏」「白秋」「「玄冬」を導き、「青龍刀」「朱雀門」「白虎隊」「玄武岩」などへ派生しながら五行説の方位・季節・色などの入門ができます。
 北の富士が横綱だった頃に、庄司薫が書いた四部作「僕の好きな青髭」「赤頭巾ちゃん気をつけて」「白鳥の歌は聞こえない」「さらば怪傑黒頭巾」もこの五行説に従った題名だと思っています。  しかし若く元気な北の富士さんも古稀となる今、庄司薫という小説家を知らない若い人たちにこの四部作の話は通じません。有名ピアニストの旦那という言い方も失礼ですし・・・。
 庄司薫を知らないであろう20歳前後の学生の志向に配慮しながら、今年も奈良の大学で集中講座を務めました。中秋節休暇と夏休みの残り(甲子園を二日間だけにする我慢が必要)を利用して、毎年名月の時期に月餅を土産に母校を訪ねます。
 今年は天候にも学生にも恵まれ、秋場所の隠岐の海以上の気合を入れました(入れさせられました)。  過去5年の経験から、15コマ(90分/コマ)の最初の2コマを概説と互いの自己紹介に充てることにしています。その段階で登録者の中から、気合を入れて授業に来る学生の志向や要望を聴き取ります。
 準備したテーマの選択と修正をしながら、授業プランを伝えます。  レベルの高い中国語力と一定の中国実地体験がもつことが分かり、将来へ希望する方向も見えてきたので、今年は「CS」(CUSTOMER SATISFACTION。顧客満足)を軸にしようと決めました。授業料を払って受講し、文科省認定の単位を取るという顧客(学生)の基本的な要求を満たすことが当方の最低限のCSであります。
 CSの事例として、自己紹介は日本人相手に中国語ですることはありえず、「日本を知らない中国人に日本人の自分を紹介する」という基本を徹底。地名などの固有名詞に注意を払い、省・市・県で小さくなる中国の行政区分に注意。北京留学経験など中国人が関心を持つ事柄を挟む。紹介が終わって、質問がたくさん出てくるような構成にすること(溝通=コミュニケーションのキッカケという目的を認識する)といった指摘を重ねます。
 通訳者という仕事と立場の理解にもCSが肝要です。
 商談前の準備として、商談中の集中力(1時間が限界。それでも60%伝われば御の字)を関係者に理解してもらう。主語述語を明解にした短いセンテンスで区切ってもらう。外来語は極力避けてもらう。和歌俳句、漢詩や駄洒落も控えてもらう。通訳者の顔を見ず、しっかり商談相手を見てもらう。商談後の内容確認が最も大切などなど・・・  会食の席順などの基本を知ることも大切ですが、最近では敢えて拘らない新思考の中国人も居るので、臨機応変に判断。しかし通訳者の座る席はその場の鍵を握るので重要。

         (中略)

  授業の3時限目は13時からで、頭部(特に眼球付近)の血液が腹部の応援に行く時間帯です。ゲーム的要素を取り入れた漢字の話をしながら、柔軟な思考や発想を刺激することにしています。口や手を動かしていると頭も動き、眠気も覚めるようです。
 それを乗り切り5時限目は18時まで。山の端に大きな月も上がり、駅行きのバスも最終便です。二日目は同窓の下村教授・山澤さんと台湾からの王教授との会合の為、授業は17時には切り上げました。会合そのものは啓発の多い有意義なものでしたが、翌朝一番の学生からの「昨晩は愉しかったですか?」という言葉には、深読みすると「一時間の授業を聴けずに損した」という語気を感じ、CSの揺らぎを憶えました。
 最終日も順調に授業が進み、山之辺の道の近くでのランチミーティングもできました。課外学習という程のことではなく、例えば皿の上にあるタルタルソースの語源は韃靼族(タタール)から由来し、東大寺三月堂でのお水取りの韃靼(だったん)儀式も、大陸と若狭との交易の名残でしょう、「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」という一行詩も・・・といったお喋りです。(蝶々)  
 最終テスト結果も自己紹介を兼ねたスピーチもかなり高いレベルでした。それ以上に授業に取り組む気合に快い印象を感じました。「慣れ」ではなく、「馴れ」や「狎れ」に陥ってはいけないと言っている自分が授業に「馴れ」てしまっていたと反省しました。
 来年に向けてもっと気合を入れた準備をしようと思い、すでに良いテキスト(大連理工大学発行)を入手しました。一年一度、その年にどんなことを学んできたか、どんな新たな経験をしてきたかを自己検証しながら、次世代に伝える場を与えてくれる同学の教授に感謝するばかりです。教授は毎年、拙文の「上海たより」「北京たより」を編集し、適切な写真も付した上で製本して、集中講座に間に合わせてくれます。
  玄武の方角の夕焼けを見ながら、この先をずっと行くとモンゴル草原があり、ゲルで育った逸ノ城の故郷に繋がるのだと想像の翼を拡げました。NHKの藤井アナウンサーが「最近はウランバートルなど都市出身者が大半ですが。この逸ノ城は遊牧民としてゲルで暮らし、馬を乗りこなしてきました」と終始「ゲル」という単語を使っていました。遊牧民の移動式住居を「包(パオ)」と漢族が呼び、饅頭のような仮住まいという一種の蔑称が長く流布していたので、「ゲル」が勢いを得たのも喜びでした。                         (完)                                  

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2014年10月14日火曜日

#125 人生に使う帰納法とは?――ノーベル賞を考える

 前回でウクライナとスコットランドについて書きましたが、お誉めの意見一つをもらったものの閲覧はこれまで低調です。そりゃあ若者にとっては、いや誰でも関心事ではないから当然の結果でしょう。  しかし、私の意図にはもっと大事なことがあります。
 日本、アメリカ、台湾3国の国際関係を一つの専門に研究している私には、ウクライナもスコットランドに関しては素人なのですが、これが発想を考える上で訓練になるのです。 私の発想の元は帰納法に基づいています。
 諸君たちが仕事や私生活で決断する時に有用なことで、10人に1人でもいい、リーダーになる人材に分かってもらえればよいと思います。 説明してみましょう。

◇ 帰納法とは?  

 辞書によると、「個々の具体的事実から一般的な命題や法則を導き出すこと」と書かれており、演繹法とともに思考法の一つ。分かりやすく言えば、断片的な情報を分析して結論を出すことだ。  前回の稿ではこれに基づいて推論し、予測の結論を出している。結論が2打数1安打になるか、2安打になるかはいずれ分かる。どっちみち当たり外れがある。
 さて、ここが重要なことであるが、諸君たちが仕事や私生活で岐路に立った時、この帰納法で考えると、直感に頼るよりは確かな決断を与えてくれる。諸君たちは日常的にこの思考法をしていると思うが、もっと意識することだ。

 先ず、関連する大小の情報を集める。ばらばらに紙に書いてみる。
 次に、分析して重要度によって取捨選択する。
 最後に、決断する。

 
 私はこれまで何度も危ない橋を渡ってきた。集められる情報は常に不充分であるが、それでも決断しなければならない。結論を誤ったこともある。それでも全体としては正しい決断をしてきたことが多い。大学の教養課程で論理学を学んで以来、何十年も思考法を鍛えてきたお陰だと思っている。誰でも安くて買える新書も読んできた。
 諸君たちにはどんな職場でもリーダーの資質を磨くことを意識して心がけてほしい。  

 ノーベル物理学賞  

 今年のノーベル物理学賞を日本の3氏が独占したことについて、日本のメディアはものつくりとしての青色LEDをとらえ過ぎている。  
 平和賞と文学賞を除く科学分野のノーベル賞は、本来、現象や理論を「発見」したことに与えられる。付帯的にものの「発明」が評価される例もある。
 実例をいくつか挙げてみよう。

 ショックレー博士の半導体。
 彼は真空管に代わる半導体を1950年代から実用化の研究をし、その課程で世界で初めて素子の材料を発見し、理論を確立した。1956年に他の二人とともにノーベル物理学賞を授与された。 江崎博士は独自のトンネル理論によって1973年に物理学賞を授与された。半導体素子の一つであるエサキダイオードが実用化された。
 どちらもその後世界で各種の半導体(トランジスタもその一つ)が広く使われることに貢献しているが、賞の対象は発見だ。 今回の青色発光ダイオード。日本の3氏が今年の物理学賞を独占した。原理の発見から実用化まで受賞者の色合いが異なるが、発見→実物つくり→製品化→マーケティングまで日本1国で成し遂げたことは世界で稀有な例だろう。

平和賞  
 市民団体が「日本国民」を対象として平和賞獲得運動を展開してきたが、受賞できなかった。私は受賞の可能性は無いと思っていたが、ノーベル委員会によって候補の一つにされたことは驚きだった。なぜなら、私は憲法9条の②項については改訂論者であるし、9条全体の改訂派は国民の半分になるかもしれないからだ。
 諸君たちはあまり読んでいない六法全書には9条はこう書かれている。

   ① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と 
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄す 
   る。
   ② 前項の目的を達成するため、陸空海軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。  

 今回、長年、児童労働の撲滅のために活動してきたインド人のサトヤルティ氏(60歳)が受賞したことは当然であるが、パキスタン人の少女マララ氏(17歳)の受賞には疑問を持った。活動実績はまだ弱いからだ。
 ではなぜか?
 銃弾で倒れて九死に一生を得てカムバックしたことに激励賞の意味があるほかに、大戦後ずっと領有権で戦争をし、今も戦闘をつづけているインド、パキスタン両国の間でバランスを取ろうとした配慮もあるかもしれない。                              

経済学賞  
 今回はフランス人が25年振りに受賞した。
 それにしても日本人が受賞どころか候補にも挙げられないのは情けない。
 全国に約600ある大学の中で、ほとんどの大学に経済学部があり、教授以下の研究者は4~5千人もいる。戦後しばらく理論を証明するための設備も予算も不足していた時代に受賞した物理学者に比べれば、研究環境も良くなり、スーパーコンピューターも使える今、経済学者にハンディはない。
 テレビ出演に見向きもしない本物の経済学者もいるはずだ。もう次世代に期待するしかないか。                  (完)

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2014年9月18日木曜日

#124 ウクライナ紛争とスコットランド独立――欧米のメディアは一面的

 明日(9/19)にスコットランド独立の結果が出ます。八卦見が結果を予測してみます。当たるかどうか?
 連日テレビニュースで報道されているから、若者諸君も知っていると思います。「関心がない」とか「わからない」と言うかもしれませんが、私も諸君と知識にたいした違いがあるわけではありませんが、違いは発想してみるかどうかでしょう。
 ウクライナとスコットランドの違いを述べてみます。

ウクライナ紛争とプーチン大統領  

 ウクライナ紛争について日本のマスコミ報道では一様に欧米側の報道をしている。 つまり、ロシアが介入しているとし、そのためにEUを善玉、ロシアを悪玉にしている。本当にそうだろうか?
 ロシア軍がドメツク共和国に軍事支援をしていることは事実かもしれないが、私は敢えて異論を供してみたいと思う。
 先ず、ウクライナの反政府グループは日本では親ロ武装集団、親ロ自警団(珍訳)などと呼ばれるが、本来は反乱軍だ。現に海外ニュースでは反乱軍 rebel troopsと呼んでいる。ただ、オバマ大統領の演説では親ロ同調者pro Russia sympathy(正確にはsympathizerではないか?)という言葉を使っていた。日本語のシンパの語源だ。
 そもそもウクライナ紛争の始まりは、今のウクライナ政府が性急にEU加盟に傾いたことにある。ポーランドがEUに加盟して経済が発展したことに刺激された。ウクライナがロシアよりヨーロッパ世界に魅力を持ったことはある程度理解できる。
 ところが、ポーランドがかつてソビエト連邦の外で独立国であったのに対し、ウクライナはソ連の内国、それも最大の衛星国であったことに大きな違いがある。従ってプーチン大統領はウクライナがEUに加盟することを認めるわけにいかない。
 プーチンはクリミアの「併合」を支持したが、ドメツク共和国の「独立」を認めず、中立の立場で成り行きを見ている。もし独立を認めるなら、たちまちチェチェンの独立に勢いを与えかねないからだ。
 ロシア軍がドメツクに兵士を送っていると言われるが、正規のロシア軍ではなく、あれは共産党、狂信的ロシア民族主義者、退役軍人の一派だろう。いずれも反プーチン勢力なのだ。プーチンの統治権力が及ばないのだろうが、彼は権力が及ばないことを公にできない苦しい立場だ。
 ロシア軍が最新のミサイルを含めて武器供与しているとしても、末端ロシア軍に対する管理はいい加減だから、穴が空いたざるみたいなものだろう。
 私はプーチンに同情的だ。日本政府にはEU米国連合に対し、経済制裁には一歩後方で独自外交をしてもらいたい。
 その昔、私が渡米して間もなくテヘランで起きたイラン革命政府による米国大使館の占拠事件に対して、欧米が経済封鎖と外交断絶を行った時、日本政府はイランと国交を維持した例がある。数少ない独自の日本外交だった。

スコットランドの独立  

 独立を問う住民投票では、賛否の世論が真っ二つに分かれている。私は独立賛成派の中に投票所に行ってから考えを変える市民がかなり出て反対派が勝つと思う。本来、独立するという重大事にいざとなってびびることは当然だ。
 政治的野心を持つリーダーによって、煽られる大衆はいつでも馬鹿を見させられるものだ。独立さえすれば希望が実現する、あるいは事態が改善されるというのは、多くの場合幻想みたいなものだ。そこには論理の短絡がある。独立しても現状が変わらないか、かえって悪くなることもある。
  人は得るものを見るだけで、失うものを考えないものだ。そもそも独立派のリーダーに統治能力があるか?
 ただし、ウクライナの2州が行った住民投票は非合法であるのに対し、スコットランドでは2年も前から中央政府との協議があり合法だ。武力行使もない。
 この投票結果に他人事と思えない国がいくつもある。
 チベットと新疆ウイグルの独立運動を抱える中国とカタルーニャのスペインだ。イラクのクルド族も完全な独立を求めるかもしれない。

ウクライナ反乱軍はどうなるか?  

 プーチンの支持が得られなけれは、遅かれ早かれ反乱軍の内部抗争が始まるだろう。幹部はウクライナの法律によって騒乱罪か反逆罪によって厳罰に処されるから、彼らはロシア領内に逃げ込むだろう。
 他方、一般市民のためには、スコットランドでもドメツクでも政府をこれだけ脅かしたのだから、その後に政策の改革がなされるだろう。             (完)

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2014年9月13日土曜日

#123 「北京たより」――『七七の因縁』

 最近、「上海たより」の著者I氏は仕事の拠点を大半北京に移しています。 今回彼の寄稿には民間の中国人との交友からメディアには出ない中国情報が書かれています。貴重な情報であると思います。 また、若者諸君には日中史が参考になるでしょう。

     ――――――――――――――――――――――――――
 「北京たより」
 ソフトブレーンチャイナ( http://www.softbrain.com.cn/e-zine/jp.html)グループ創業者 宋文洲さんのメルマガを毎月配信してもらっています。 2014.7.14付けの第253号の人気コラムには「七夕の星空が伝える愛」と題する文章が載っていました。
     ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 夕暮れが空を染める頃、私はハワイに向かうためにJALカウンターにいました。 そこに浴衣姿の女性職員が居ました。「毎日こんな綺麗な服を着るのですか」と聞くと「今日は七夕なので着ている・・・という書き出しで、宋文洲さんは日本に七夕習慣があることに驚きつつ、夏の夜に母の膝で聴いた牽牛織女の話を懐かしみながら綴っています。そして締めくくりには、「私は思わず日本人の妻の手を握りしめ、中国人の私との間に銀河が作られないことを祈りました」と浪漫と切実な願いを記されています。
 更にP.S.として「JALさんの心遣いに感謝します。日中の文化的つながりに感謝します」という一節も添えられていました。  陽暦の7月7日、上海のとある洋館の一室。報道・製造・教育・飲食業などバラバラの分野の6人が集まり、共通項である「ヤンチャな大人の真面目なお喋り」をしました。
 帰任辞令が出ても、当局から後任者の就労許可証が下りる時期が読めない支局長への何回目かの送別が主目的でした。  国木田独歩研究を専攻した東北人と上海文化継承者とも言うべき生粋の上海っ子、ともに留学やその後の仕事で日本との御縁が深い二人の女性の参加で、真面目なお喋りの幅が拡がって行くのを感じました。
 浙江省のキリスト教取材でスクープを連発するなど「発信力」旺盛な支局長の、「七夕開催にしましょう」という意向で決めましたが、言わず語らずその日が盧溝橋事件から77年目の当日に当ることは意識していたと思います。 「蛻変の会」という大仰な会の名前には、単なる現状脱却を意味する「脱皮」ではなく、内実変容を目指したいという想いが込められています。「蛻(ゼイ)=蝉」でもありますが、ひと夏の経験に終わらせないように地道に想いを繋げていきたいと思っています。
 その支局長から4月20日に、商船三井の船舶「BAOSTEEL EMOTION」号の差押の一件について問われました。船名から類推すると、宝山(BAO SHAN)製鉄の鉄鉱石運搬の為の船でしょう。『大地の子』を持ち出すまでもなく、宝山合作事業は日中国交正常化のあとの巨大プロジェクトでした。4月22日に、以下愚考します、と返信しました。

  ① 日本で法律を学び、海事も専門の弁護士に法的な見解を確認することから始めるべき
 ② 法的に決定されていても、その執行と手続き過程とタイミングには諸説反発も出てくる
 ③ 甲午戦役(日清戦争・今年は干支10巡=120年)以降の物申すカードは中国側に多くあり、直近四半期にそのカードを恣意的に切り始めた。
 ④ 民間の動きを容認・黙認する手法は、民心掌握を安上がりでできるし、いつでもグリップを握って恣意的に収束させることも可能
 ⑤ 戦前に大陸と「縁の深かった」日本企業は、その後の資本変遷に関係なく旧事を追求されるリスクがある。今回の事は該当する企業に躊躇させる理由を与えたでしょう
 ⑥ 以上は一般論ですが、「カードの多さ」、「恣意的」、「民間利用」というのが切り口です。

 裁判経緯も背景も知らない人間が、「どう思います?」と聴かれて、何も調べもせず、一般論を喋っただけの内容です。ところが、数日後に急転直下の動きがありました。 日中戦争が始まる前後の船舶賃貸契約をめぐる賠償請求訴訟に絡み中国の裁判所に輸送船を差し押さえられた商船三井が、裁判所の決定に基づいて40億円強の供託金を中国側に支払ったことが4月24日分かった。商船三井は、差し押さえが続けば業務上の悪影響が大きくなると判断、裁判所が決めた賠償金に金利分を加えた額の支払いに応じたとみられる。輸送船の差し押さえは24日中にも解除され中国浙江省舟山市の港を出ることができる見通し。上海地裁は今月19日に同社が所有する鉄鉱石輸送船「BAOSTEEL EMOTION」を浙江省舟山市の港で差し押さえた。(4月25日、共同)
  後日、日本留学・就職後に天津で要職に就いている友人が、以下のコメントを届けてくれました。
   ・中国外交部は「戦争賠償と関係ない民間訴訟」と言ったものの、すべてはそうではないと思います。 
   ・77年前当時の経緯を詳しく察知していないが、本件訴訟は6年前(2008年)、確定判決は 4年前(2010年)。船は以前から中国とオーストラリア間の鉄鉱石等運送で往復しているにもかかわらず、一貫して差し押さえされていません。つまり、中国政府は過去遠慮(?)していたが、今は強気に出ても構わないと判断したのではないでしょうか? ・その背景は、①安倍政権の政治姿勢、②日中領土問題等を巡る中国内世論への配慮、同時に今後民間訴訟容認(又は支持)の姿勢を日本側に表明したい意図があると思います。
 77年間の経緯や背景を知らなければ始まらないと啓発されたところに、5月22日付けの『南方周末』に、本件に関する郭絲露記者、劉俊記者らの共同取材記事が掲載されました。 記事から陳家4代の軌跡を時系列的に抜粋整理してみました。多くは記事の引き写しで、裏付け確認は僅かしかできていないことをご諒解願います。        (了) 

  「船王」討船77年 対日民間索賠勝訴第一案始末(抜粋)
 1926年 北伐戦争の渦中、上海寧波航路船員の陳順通は、偶然の機会に国民党の四大元老の 張静江を助け、その知遇を得る。国民航運公司の幹部に任じられ北伐軍の火器搬送。
  1930年 陳順通、中威輪船公司を設立(登録資金30万民国元) 1928年~1937年は近代中国経済の「黄金時代」。年10%超の高度成長時期  中威公司の資産は100万民国元を超え、「新太平」「順豊」「源長」「太平」の4船を 保有。中国最大の船舶会社の総師として、陳順通は一躍「民国船王」と称される。蒋介石からも重用され、上海市航業同業公会執行委員に。陸伯鴻・杜月笙らも会員。     
 1936年 「新太平」「順豊」を日本の大同海運株式会社へリース(期間1年。代金未収)
 1937年 日中戦争拡大。 国民政府に徴用接収された「源長」は江陰要塞防御の為に自沈
 1938年 大同海運から2隻の船舶は日本軍に「合法捕獲」されたとの通知。  中威機器廠(上海)も日本軍により占拠された。
  1939年 国民政府の命令で残る「太平」も鎮海関に自沈させられ、中威公司は正式破産。
  1947年 旧知の駐日本占領軍高官に調査依頼するも、日本軍に接収された2隻は1938年 戦火により沈没していた事が判明。「現物償還以外の路」を尋ねるよう示唆される。
 1949年 「一代船王」陳順豊が逝去し、長子の陳洽群が継承
 1958年 蒋介石と近い陳洽群は反右派闘争を回避するため、香港へ移住。訪日活動再開。
 1960~1970年前半、文化大革命により陳家の財産は更に減少。大同海運が資本変遷後に吸収された三井集団は「戦時中の事には対処できない」との姿勢、日本の弁護士からは「陳氏が台湾人なら中華民国政府は賠償放棄した。香港人なら英国に訴えるべき。中国とは国交なし」と言われた。 伝手をたどり頼った周恩来首相からは「中威訴訟は人民外交で対処せよ」との指示。 1974年 東京地方裁判所の判決で中威敗訴。陳洽群は東京中等裁判所へ上訴。
 1978年 鄧小平来日。日中和平友好条約締結。駐日大使館筋より陳洽群に「訴訟争議は宜しくない」との通知。ほぼ無一文状態で、18年ぶりに上海へ戻る。  その後4回の訪日、6回の北京での上訴も空しく陳洽群は逝去。陳春が後を継いだ。
 1987年 陳春は上海海事法院へ訴状提出。強力な弁護団が組織された(司玉啄、高宗澤ら)
 1991年 第1次開廷。当時の報道では、陳順通は日本に船を提供した「漢奸」と看做す傾向。
 1996年 第4次開廷。三井側は「契約違反、損害賠償」→「道義的責任、損失補填」に転換。
 2007年 上海海事法院 一審判決 陳家勝訴。双方上訴。   
 2010年 上海市高級人民法院は原判決を支持し終審。最高法院も被告の再審要求を却下。       
 2012年 遅々として執行しない法院に抗議の声。陳春は強制執行申請書に署名して、逝去。   
 2014年 4月19日 強制執行。20日 陳春の納骨葬儀。安倍首相は商船三井社長に事前報告   
      欠如を咎め、早急に事態解決を指示。24日、上海海事法院は三井の義務履行を宣言。                 
                                                 (以上)

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2014年8月30日土曜日

#122 NHKテレビの世論誘導――声高の意見より危ない

  なんぴともマスコミがつくる世論の影響を免れることはありません。特に人が民放テレビより信を置くNHKテレビの報道に注意することが必要です。
 なに、諸君はテレビニュースを観ないから心配ご無用と言うか?しかし、スマホから得る断片的な情報はもっと危ないよ。  ここで、最近のNHKテレビの看板番組二つを例に取り、その危うさを指摘してみましょう。

外国人労働者の受け入れ「日本は遅れている」

 NHKテレビの「クローズアップ現代」で政府が進めようとしている外国人労働者の問題を取り上げた。  国谷裕子キャスターが専門家との対談において、各国との比較を論じる中で専門家は日本が労働者受け入れについて遅れているという発言をしていないのに、国谷は遅れているという印象を視聴者に与えようとした。
 すでに韓国は外国人労働者を積極的に受け入れているが、おそらく内政に困難をもたらすだろうと私は思う。なぜなら韓国も日本もシンガポールやサウジとは違い、場当たり、あるいは対症療法の域を出ないからだ。
 シンガポールとサウジでは、外国人労働者の受け入れは常態であり、移民は認めないという政策を確立している。建設工事や医療・家事の底辺を埋める外国人は、一定の任務が終われば出国させるのである。こうして高級官僚(王族)→官僚、外国人を含む専門職→一般市民→外国人労働者という4層の階級社会をつくっている。
 他方、EUの先進国には大量に職を求める外国人が流入しているのは、必ずしも政府の政策ではない。流れに抗することができないのが現実なのだ。
 結論を言うと、日本は外国人労働者の受け入れに関しては、先進国の中で標準であり、遅れていない。どの国も専門職ではない一般労働者の受け入れを法律で規制している。アメリカで外国人労働者、特にメキシコ人が目立つのは、2千キロ以上も陸(川も)に沿って国境が広がっているため、違法入国者を防ぎきれないからだ。
 今、人手不足が騒がれているが、日本では労働市場の需給がいびつになっていて、そのうち人余りの職が露見してくる。例えば、テレビ関連の仕事もバーやクラブなど夜の業界は縮小してゆく。処遇も変わらない。
  若者諸君よ、建設労働者や長距離トラック運転手(大型免許を取るのに支援をしてくれる)などの賃金は上がるから、先入観にとらわれずに、思い切って肉体労働で汗をかいて資金を貯めよ。考える労働者になれ。
  たとえ子会社や下請けでも正社員になれば、福利制度を受けられる。 「オレは体力がない」だと?そうなら、体力をつける機会だ。高校でも大学でも運動部に入った最初の一週間には疲れがたまって辛い。そして馴れる。考える力と体力、それに金は人生に必要な資産だよ。  

NHKスペシャル「どう守る?日本の平和」  

 「NHKスペシャル」には優れた番組が多い。
 しかし、今月15日の番組はひどい内容だった。政府の集団的自衛権の閣議決定について賛成派と反対派が議論したのであるが、論理的に意見を述べる出席者数人の中で、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(以下敬称略)の尖閣諸島に関する意見に驚いた。
 「中国は尖閣島を絶対取りにこない」、「中国には尖閣から何も利益を得られない」などの意見は非論理的で、高名なジャーナリストの考えとはとても信じられない。彼は世界各地の紛争現場で取材をしてきたと言うが、集団的自衛権とは関係がない。
 尖閣島は中国の領土となり、東シナ海を支配するために海軍基地が建設される。沖縄に脅威を与え、周囲の海域は当然独占的経済圏(漁業権も)となる利益は計りしれない。韓国が竹島に軍事施設をつくって軍隊を駐留させているように、あるいは中国がフィリピンと領有争いをしている南沙諸島の一つに海軍基地を建設しているように、実効支配の布石になっている。
 もし中国が尖閣に基地をつくり始めたら、多分漁船の避難施設と称するだろうが、日本政府は自衛隊を上陸急襲させて島を奪還する決断をできるだろうか?
 世論をどうにでも操作できる中国政府と、おそらくマスコミ主導の大きな世論の反対に遭う日本政府とでは差があり過ぎる。その上、日本は火の粉がふりかかれば払うだけで、先に仕掛けないことを中国に見透かされている。 諸君はその時どう考えるのか?

 さて、なぜ鳥越は名声を下げかねない意見を述べたのだろうか。彼は根っからの理想的空想的平和主義者なのだろうか。それとも、うがち過ぎかもしれないが、NHKの意図を汲んで世論をつくることに一役買ったのだろうか。             (完)  

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2014年8月11日月曜日

#121 安部首相は右傾化しているか――財政赤字対策が弱い

 友達から私は最近右傾化したと言われています。否定はしませんが、考えがあってのことです。 先月末に安倍首相は企業人70人を引き連れて中南米5ヶ国を訪問しました。いくらの資金援助を与えるのでしょうか。アフリカの国を訪問すれば900億円、今度岸田外相がウクライナを訪問して1500億円、1兆円を超える累積債務を抱える国がこんなことをやっていてよいのか。国連常任理事会を改革するために票集めの目的もあるかもしれません。
 前にも書きましたが、一体、国連関係費を含めて外交予算はどうなっているのか?  これは本当に諸君たち次世代のためになる先行投資なのか、考えてほしい。

自民党は右傾化したか?  

 「自民党が単色化した」という批判を評論家がどこかで書いていた。私に言わせれば、保守党らしい保守党になってこれでよいのである。 かつて社会党が健在の時代でも、「自民党は右から左まで人材を豊富にかかえる総合商社」と称した自民党に対し、社会党は反対政党にとどまり、結局、解体の憂き目に遭った。
 わけが分からないような自民党が野党の成長を阻んできたのだ。もうこんな自民党は要らない。左派リベラルが左脳だけしか使わない野党も要らない。
 アメリカでは、共和党リベラル派と民主党保守派は紙一重の違いしかないが、主流派には社会政策などに大きな違いがある。共和党議員の中にも、支持団体にも極右派がいるが、主流にはなれない。
 さて、安倍首相は右傾化しているのか?  安倍政府はアメリカの標準で言えば、今のところ保守中道右派という位置付けだ。閣僚の人選にもバランスがある。
 問題は、来年9月の総裁選で首相が再選されてからどう変わるかだ。ここでさらに右傾化し、国粋主義や神国思想が出てくると民主党を中心にして政権交代できる野党が中道左派勢力として結集することを期待したい。
 新政権ができても、左派左翼の政治家と学者は失望するだろう。それでも反政府勢力として飯を食っていける。

政府の新政策と財政赤字  

 安倍首相は9月の内閣改造に合わせて、安全保障法制、地方創生、スポーツなどの新省庁を設立するという。既存の縦割り省庁間にわたる課題をまとめて横断的機関をつくる構想ではないかと思う。  これはよいのだが、安保法制,地方創生,女性活用、スポーツの新省庁を設立することが、本当に政策推進に最良の効果があるのか?省庁と外郭団体の増殖にならないのか?
 ところで、民主党政府が果敢に行った事業仕分けのフォローはどうなったのだろうか。累積の財政赤字を減らすには血を見ても自民党政府も継続してやらなければならない。

EUとIMFの女性代表  

 先月だったか、EUとIMFから相次いで代表の女性が来日し、「日本が国際競争力を高めるために電力料金を下げることが必要」、「国の財政赤字を減らさなければならない」と発言した。前置きや前後の文脈があったかもしれないが、テレビのニュースではこれだけの報道しかしなかった。   
 私は反発した。「日本に来るなら少しくらいは事前に勉強してこい。原発問題で電力会社はいかに苦しんで料金を上げているか。政府は成果がまだ出ないとは言え、財政赤字の削減を重要課題として取り組んでいるか。彼女たちは知らないのか?アホか」という風に。
 EU加盟各国の中には優れたリーダーがいるから、この程度の上部機関のトップでよいのかもしれない。
 滞米の18年間に何度かアメリカ人から「ヨーロッパ人はアメリカに優越意識を持っている」と言われたことがある。彼女たちにも日本に対して生来の優越観が出たのか。
 そもそも私はリーダー(広く官庁や企業を含めて)の男女輪番制も割り当て制も支持しない。日本政府は人手不足対策と人材活用策の一つとして、女性登用の法整備を掲げているが、推進期間を設けて時限立法にすべきである。
  アメリカではこうした格差是正のためにAffirmative Actionという法律がある。ただし、就業に限らず、大学入学に対しても、女性、黒人、ヒスパニックを優遇している。

国の財政赤字削減が進まない

 今月、国の借金が1000兆円を超え最大になった。国の借金というのは国債、借入金、政府短期証券の合計で、国民一人当たり800万円になる。 毎年の予算90兆円の中から約1/3を国債の償還に充てられる、つまり借金を返すのに新たに借金をして返済している。そして、今も国の借金は増えている。異常事態だ。
  諸君、これを次世代に負担させるのだ。知っているか? せっかくヨーロッパ国際機関のお偉方からアドバイスされたのだから、財政の最悪状態を改善する策の一つとして日本の国連分担金を延滞しよう。アメリカでは日本が世界第二位の分担金を負っていることは知られていない。世界でもそうだろう。 国際的に延滞が報道されれば、日本の貢献を知られることになろう。     (完)

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2014年7月25日金曜日

#120 国連を過信、現実を直視しない――マスコミの責任か

 この暑さで執筆の気力が減退。その上持病の腰痛がきつく、今月は私自身のブログ執筆は初めて。 I氏の癒しのエッセイから私の硬い話に戻ります。
 集団的自衛権など政治問題、社会の事件、世界の紛争を話題にして諸君たちの既存の考えに対して揺さぶりをかけます。揺さぶりと、逆に揺さぶられることも思考の源泉です。
 共感でも反感でも精いっぱい感じてください。また、私に誤りがあれば正してください。

憲法解釈の変更を問う  

 騒がれてきた憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を認めることを政府が閣議決定した。  閣議決定というのは、法律の枠内でできることについて重要施策を実行することを決める政府の最高機関だ。会社で喩えれば、取締役会に当たるだろう。
 今回大きく騒がれたのは、政府が40年もの間、守ってきた「集団的自衛権は有するが行使できない」という解釈について、「行使できる」と変更したためだ。世間では、取締役会ではなく、株主総会で決めなければならない、つまり憲法改正を国会で決めなければならないという意見が見かけでは強い。
 40年前の東アジア情勢はどうだったか?
 中国政府が鄧小平によって改革開放政策を実行したのは1980年のことで、社会主義から社会主義市場経済に大きく体制を変えて35年、貧しかった中国を経済大国に押し上げた。彼は「黒い猫でも白い猫でもネズミを取るなら猫に変わりはない」という有名な言葉を残した。
 要するになんでも国の歳入が増えればよい、という強引な政策によって軍事費を増やせたことで、軍事大国になったのだ。これが東シナ海と南シナ海における脅威になった。さらに西太平洋にいたるまで支配地域を拡大することを公言している。
 中国にとっては尖閣島も沖縄群島も邪魔な存在なのだ。このことは地図を見ればよく分かる。  これでは日本国は座して対応をこまねいてはおられない。  どんな大企業でも40年前の経営にとどまっていては生き残れない。ライバルの経営改革に対応しなければならない。  

小沢一郎の「普通の国、普通の軍隊」  

 憲法全体を置き替え、自衛隊を軍隊にして国連決議に基づいて世界に派遣できるようにすることを、小沢一郎生活の党代表が提唱したのはもう20年も前のことだったか。日本国軍隊を国連の下に置くという国連中心主義を唱えた。集団的自衛権も当然含まれた、と思う。
 国連の実態を考えると、今に思えば絵に描いた餅だった。話題にはなったが、世間ではあまり反対がなかったように記憶している。
 岩手県選挙区の若者諸君よ、政党遍歴王、政策変節王の小沢一郎に代えて新しい候補を育てるべし。
 小沢一郎も日本人の多くも国連は善であると過信している。

国連は機能していない  

 イスラエル・パレスチナ紛争、イラク内戦、アフガン紛争、シリア内戦、ごく最近ではウクライナ紛争に対して国連の働きは無力。国連がやっていることと言えば、非難決議、和解勧告、総長声明くらいで、実効性に乏しい。長年言われている改革はできていない。これからも変わらないだろう。    
 日本は国連にアメリカに次ぐ巨額を拠出し、その他PKO支援と関係機関に1千億円を払っている。国連分担金で中国の6位はまだしもロシアは15位にとどまる。事務総長を出している韓国は11位であるが、毎年の支払いが遅れ、延滞率は80%だという。
 アメリカも10年以上延滞している。滞米生活中の80年代、アメリカでは国連改革の世論が盛り上がり、政府は元上院議員(その前はペンシルベニア州知事)を国連に送りこんで改革を試みたが、この伏魔殿をいかんともし難く、匙を投げた。
 どんなに貧しい国でもメンバーの資格を与えられ、特権外交官として本国では考えられないようなニューヨークの優雅な生活を送っている。数で決められる議決では改革案も通らない。

 私は、本部を解体して難民高等弁務官(なんたる訳語か)、WHO、ユネスコなど下部の実務機関のための管理本部に縮小すべきだ。日本は戦勝国体制の常任理事国になれないまま、国民の税金を浪費することは我慢ならない。

ウクライナ内戦にも国連は無力  

 今起きている内戦中に旅客機撃墜事件が起きた。墜落現場で親ロ武装グループが現場の調査を妨害していると伝えられる。この時こそ、ウクライナ政府は現場保存と国際調査団の保護を目的として戦車、歩兵部隊、空挺部隊を集中的に投入して武装グループを駆逐する好機だった。国際世論の支持も得られる。  やはり長くソ連傘下にあって安全保障と国防をソ連に委ねてきたため、国策の決断力が経験不足であるかもしれない。あるいは、素人の友達が言うように、ウクライナ軍の戦力が弱いのか。
 国連は何もできないだろう。             (完)  

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2014年7月1日火曜日

#119 上海たより――台湾紀行

 
  I氏が台湾を訪れました。台湾通の私も知らないことを書かれています。彼は日本で俳句の会に参加されているので、最後に一句で締めくくりです。

 
   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 海上を飛ぶこと半時間余り、懐かしの台北陽明山が見えてきました。その中腹に所在する文化学院大学から交換教授制度で来日されていた江樹生教授から閩南語(閩は福建の古名。福建省東南部から広東省、台湾で使われる中国語の一方言。台湾語とも称される、と広辞苑には書いています)を2年間教わりました。華僑の友人と二人だけの不肖の受講生は、熱心な江教授を嘆かせ続けました。その後、江教授は、かつて台湾を占拠していたオランダに残る文献を追って、欧州へ留学されました。餞別代わりに学生にとっては、なけなしの金で買った大和赤膚焼の小皿をお届けしたのが唯一の慰めです。思えばそれが台湾との御縁の始まりでした。

 初日の台北では亜東関係協会(台湾側の対日本窓口)での外務官僚の勉強会に特別参加させて貰いました。当日の講師を務められた邦銀支店長の御好意によるものでした。その夜は、上海・香港以来の御縁が続いている学兄が亜東交流協会幹部として着任されたので、銀行支店長とともに囲み、台湾にちなむお話を聴かせて頂きました。
 その中には、1942年5月8日に没した八田與一の命日に、南嘉義の烏山頭ダムで営まれている追悼会に出席された支店長の興味深いお話もありました。
 翌日早朝の新幹線で嘉義に向かい、台北日本商会と台日産業技術合作協会の共同主催による活動に参加。耐須集団傘下の食品大手の愛健集団(特定保健食品14種類を開発)、合成樹脂とその収益の社会還元で有名な奇美集団や工業開発研究院などを訪問。夜には台南市長の頼清徳市長が参加された交流懇親会に加えて頂きました。
 頼市長は1959年生まれ。医学を専攻されたスマートな方。ごく一部の街の声(タクシーを運転してくれた人たち、水割りの酒を作ってくれた人たち)にも頗る評判が宜しいようでした。民進党の「次の次」を担う全国人気ナンバーワン市長とのことでした。 台北支店のスタッフ全員とのランチミーティングでも、「次」の総統候補とされる蔡女史が「お嬢さま育ち」であることが話題になりました。父親がフォルクスワーゲンの総代理商、大学に通うにも高級外車を運転していたという出自と対照的に、頼市長は2歳で父親を亡くし、台湾大学、成功大学の医学部を卒業した刻苦奮励の評判も聞きました。
 台北市長時代の高い評判が見る影もなく、今や支持率が20%を切ろうとしている国民党の馬英九総統の例もあります。頼氏には一寸先が闇の世界で自重自戒しながらも存在感を高めて貰いたいものだと、深夜の坦仔麺(50新台湾ドル)を高校の後輩でもある当社の支店長にご馳走しながら語り合いました。美味い坦仔麺を求め歩き、かなり遠くで見つけた半露半屋の店からホテルまでのタクシー代(110新台湾ドル)は支店長に払ってもらいました。
  亜熱帯の6月に鳳凰花の赤、阿勃勒の黄が咲き競う古都台南での土曜の朝。支店長とは別の自由行動をさせてもらい、往時に長崎平戸と結んだ貿易港安平古堡(1624年侵攻したオランダ人が建てた熱蘭遮城;Fort Zeelandia。鄭成功も拠点化。倭寇など日本関係資料も多く掲示。英国との戦争に備えた砲台跡やオランダ式漆喰やレンガ建築遺跡も)に行きました。NYのマンハッタン島に柵が設けられた頃に、オランダ東インド会社が安平砂洲に設けた貿易拠点。NYの柵はウォール街に進化しましたが、安平の城は古跡観光地に留まっています。
  その記念館の売店にオランダ人総督日誌の中国訳版が置いていました。大部4分冊、1分冊1,600台湾ドルの本。高い、重い、直ぐには読めないから、この本には出会わなかった事にしようと思い始めた刹那、ふと翻訳者名に眼が留まりました。訳者江樹生?が江樹生先生!に変わるのは直ぐでした。前の晩、支店長に話した閩南語の先生、その人の名前でした。すぐに訳者前言を読むと、1971年に文化学院から日本へ、阿呆な生徒に呆れてとは書いていなくて良かったですが、直ぐにオランダへ渡り交流史研究を深めたとありました。間違いなく江先生である御縁に驚きました。 
 入場門で事情を話し一度町に出て、現金を引出してから売店に舞い戻り、第1冊だけ分けて貰いました。限定300セットとあるので、分割販売は店としても困ったことでしょうが、個人的な熱心さと大陸富裕層とは違う財布の薄さを理解してくれたのでしょう。

  在来線の台南駅。成功大学キャンバスの見えるベンチで列車待ちをしている間、支店長にオランダ人総統日誌を見せて顛末を話していたら、彼は発行者として頼清徳と書かれているのに気付かせてくれました。それが前夜ご挨拶した台南市長であることを二人で確認しました。台南市の文化事業として支援した書籍発行であることを理解し、ますます市長への好感度が上がりました。 お二人の名前が並んでいるのを見て、まさに温故知新の御縁への感慨を深めました。
 台北に戻った夕方の会合。台湾での生活が長くなった友人(奥さんの実家は民進党支持)とお喋りをしながら台南での思い込みの検証をしました。 6月3日午後、深圳での主管者会議を終えて三々五々それぞれの拠点に戻る仲間(中には残った紅ワインを持った人も)と別れて、独り北京行きのフライトに乗りました。向かい風のせいか1時間遅れて4時間近くの機内で、ひたすら『嘉南大圳之父;八田與一伝』を読み続けました。
  嘉義から台南への移動途中、戦前に東洋一と謳われた烏山頭ダムの官舎跡そしてダム建設功労者として今も慕われている八田與一夫妻の墓と作業着姿での半跏思惟風の坐像を参観できました。主催者の参観と昼食を共存させる時間と場所への配慮と選定に感謝しました。駆け足参観だったので、売店で中身も見ずに伝記だけを買いました。巻頭に「八田與一が台湾に留めた恩徳と功績」と題する李登輝元総統によるいわくつきの文章が載せられていることも知らずにいました。(2002年、慶応大学「三田祭」での講演予定原稿。
 日本政府からのビザが発給されず、幻の原稿となった文章) 翌日の北京では、語学研修生とその友人のイタリア人留学生らとの会食場所として長安街に近い店を指定。食後、25年前に戦車が実働した長安街を歩きながら往時茫々を実感じました。  

  あの日から胸の振り子は朱夏を指し              (了)

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2014年6月18日水曜日

#118 地方の民放局から台湾ニュースを――NHKは反台湾か?

 私は日本放送協会NHKを日本語破壊協会と呼んでいます。ニュースなど報道番組における日本語の乱れがひどいからです。 世間では組織と偏向番組について批判が高まっています。
   もう10年も前に、『週刊サンケイ』に100回以上連載されていたNHK番組の思想偏向を指摘する記事を3,4回読んだことがあります。残念ながら同誌は現在休刊になっているとのことです。
 番組の偏向は国際ニュースにもあります。NHKは親中国と言われているように、確かに中国に関する報道が多い。と同時に台湾軽視の姿勢が目立ちます。これはトップの方針なのか?

 今回は台湾報道を中心に書きます。

日本にとって台湾は重要な存在  

 中国政府は、日本海、尖閣諸島を含む沖縄沖から台湾、フィリピン、インドネシアまでの東シナ海、南シナ海に及ぶ海域に第一防衛線を設定している。大戦直後にはアメリカの海軍が提唱したアチソン・ラインとほぼ同じだ。
 地図を見れば分かるように、台湾はこの防衛線の真ん中に位置する。中国政府が、尖閣諸島どころか台湾も領有化することを公然と発言している今、日本にとって台湾は重要な存在だ。にも関わらず、日本の市民大衆は台湾に関心が薄い。
 言ってみれば、台湾は最も親日の国だと単純に嬉しがっているだけ。

NHK国際ニュースの偏向

 早朝のNHK・BSテレビの国際ニュースを観ると、海外20ヶ国以上のテレビ局からのニュースを報道している。おかしいことに、この中に台湾は入っていない。 他の国際ニュースやアジアのニュースでも、インド、タイ、フィリピン、シンガポールのほかに近隣のロシア、韓国、中国、ホンコンのテレビ局からのニュースは常時報道されるが、台湾テレビ局からのニュースは含まれない。
 他国なみに台湾について政治、経済、社会の日常を知る番組がない。時々、民放テレビが台湾に関する番組を放映しても、出ない方が観られる(70年代末から80年初めにアメリカ社会が緩み、やる気もないマナーも悪い店員が見られて「居ない方がよく売れる店員」と言われた)変なタレントを起用するグルメと観光の番組のみ。台湾のドラマも一つくらいは観たい。
  (NHKの偏向については本稿#25(2010、1月)の中で書いている。「岡本博志の若者塾#25」で検索すると開けます)

地方テレビ局から国際地方化  

 私の造語「国際地方化」を1987年以来に著書、評論、講演で提唱してきた。その後、地方都市間の姉妹都市提携、大空港を除いて19に増えた地方の国際空港、地方立地の企業が東京の海外部門を経由しない海外事業の事例が増えてきた。
 もう一つ提案したい。それは全国の地方テレビ局が、東京キー局から海外ニュースのおもらいをやめて、独自に海外テレビ局との双方提携でニュースを報道することだ。双方が地方事情について知り合うことができる。
 NHKの偏向がいつ改善されるか分からないから期待しても仕方がない。ここは地方テレビ局の出番だ。 ことはテレビだけではなく、新聞にも偏向がある。 この稿を読んでおかしいと思わなければ、諸君の感性はおかしい。おかしいと思うなら、インターネットで意見を出してほしい。                         (完)

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2014年6月13日金曜日

#117 憲法改正の実現は遠い――尖閣に何が起きるかが問題

 このブログについて長くて堅いというのが定評(?)らしい。主に年寄りからの意見です。私もそう思っています。 しかし、老い先が長くない私にしてみれば、若者に何か遺したいと願うことから、面白いことを軽く書いても意味がないのです。仮に面白く書こうとすると、真面目な番組で身についていないおふざけをするNHKのアナウンサーのように、しらけてしまうかもしれません。
 もともとおふざけは芸として難しいものです。 ご意見に耳を傾けて、先ずは一節を少しずつ短くしていくことにしましょう。

 今回は改憲と憲法の解釈変更について書いてみます。諸君の時代にはどうなっているか?

憲法改訂とアジア情勢  

 「集団的自衛権を持つが、行使できない」というのは、これまで歴代政府が政府の一部局である内閣法制局の解釈に従ってきた。本来なら、憲法を改訂して他国並みに集団的自衛権の行使をはっきりすべきだという野党の主張は正論だ。
 しかし、現実には憲法96条に改正の要件は、国会議員の2/3以上の賛成で発議し、その上で国民投票によって過半数の賛成を得なければならない、と定めている。これはほど遠いことで、改正が実現することはいつになるのか分からない。諸君たちの時代にさえ実現するかどうか。  
 その間にアジア情勢は刻々と変化している。  中国は東シナ海と南シナ海の全域を「排他的」(私は「独占」と訳すことを提唱)経済水域を事実上中国の内海化することを着々と実行している。
 中国は南シナ海に石油掘削施設を設置し、さらに小島を埋め立てて軍事施設を建設しようとしている。いずれもこのままでは実効支配になってしまう。
 ベトナムとフィリピンが艦艇を派遣して阻止しようとしているが、もう遅い。中国が工事を始めた時に阻止しなければならなかった。他国のことは言えない。半世紀前に韓国が武力行使によって竹島にヘリポートと監視施設の建設を始めた時には、日本政府は抗議をしただけで黙ってなりゆきに任せて今日にいたっている。
 ベトナム、フィリピン、日本は中国と韓国の実効支配を排除するには武力行使の手段しか打つ手がない。戦闘をいとわない中国相手ならとてもやれない。

  ◇ 改憲のハードルは高くないのに

 改憲発議のハードルが高過ぎとされ、そのせいか戦後に制定されてから一度も改正されていない。  「これまでうまく機能してきた」とか「国民の意見が盛り上がらない」と言われて改正に反対が強い。自民党も長く改正を唱えながら、選挙対策のゆえか本気で国会に発議をかけたことがない。  軍国主義と敗戦の反動から終戦直後に制定された現行憲法を変えることは長くタブーだった。
 アメリカがつくった憲法であることは歴史的事実ではあるが、この絶対的平和憲法は我々日本人の手にある、つまり日本人が保有する憲法だ。今は日本人が変えようと意図すれば変えられる。アメリカは関係がない。
 さて、本当にハードルが高いのか?  因みに、アメリカでは憲法改正(Amendment修正と言う)には連邦議会両院で2/3以上の賛成により発議、各州の3/4の賛成が必要とされる。1788年に憲法が制定されてから今日まで26回修正されている。 もう一つインターネットで調べてみると、日本と同じく敗戦国のドイツでは、連邦議会両院の議員総数の2/3の賛成が憲法改正の要件であり、国民投票はない。これまで時代に合わせて50回以上も改正されている。  こう見てくると、日本の改正要件は決してハードルが高いとは言えない。

  ◇ なぜ憲法の解釈変更か?

 改憲が当分できないことを知る自民党・政府は、集団的自衛権を行使するためには憲法の解釈変更しかないと判断しているのだろう。国の安全保障を担う政府は正論(往々にして空論)より現実につくことは当然のことだ。
 ところが、国会の会期末が22日に迫る今、公明党が集団的自衛権を閣議決定することに反対を続けている。創価学会政治部の平和主義公明党は簡単に譲るわけにいかないが、どっちみち条件をつけて合意するだろう。なんでも反対の姿勢を続けた後で、政府案に合意することは地方政治でも国政でもよくあることだ。
 さて、なぜ改憲を今できないのか?
 これには長年蓄積されてきた根深い改憲アレルギーがある。 それは、表面的に反対勢力が強いことであり、野党の議員が国会で「子や孫を戦争に巻き込んで犠牲者が出てもよいのか?」、「世界中でアメリカ軍に引っ張られて戦争することになる」という短絡した発言に大衆は説得される。反対集会やデモに参加するオバサンやバアサンは日本が置かれた状況を認識しているのだろうか。諸君は?

◇ 中国に対する抑止力  

 東シナ海における中国の海軍と空軍は日本の脅威になっている。特に尖閣島と海域に対する脅威は誰にも分かるはず。 ベトナムやフィリピンが領有を主張する島に中国が施設建設と島の埋め立てによって実効支配をしようとしている。残念ながら両国のアクションは遅かった。もっと早い段階で対応すべきだった。
 今、いつでも中国は尖閣島に施設の建設をして実効支配に出る恐れがある。将来に改憲をするにしても、法律整備もすぐには対応できない。今は憲法の解釈変更で対応することはやむを得ない選択だ。
  マスコミは、内閣法制局の後退と政府の人事介入を批判するが、もともと政府内閣の部局、つまり行政の機関が国の安全保障政策を支配することがおかしい。本来なら司法機関として最高裁に属すべきなのだ。 因みに、アメリカの違憲判断は連邦最高裁が行い、8人の判事は時の政権が任命し、議会が承認する制度になっている。それでも政権の政策遂行に有利な判事が任命される。 集団的自衛権の行使は当座限定でよいから、早く閣議決定すべきだ。これが中国に対する抑止力になる。                   (完) 

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2014年6月1日日曜日

#116 政治の右と左、保守とリベラルとは?――整理を試みる

 前回でウクライナの騒乱について他国の例も挙げて書きましたが、読者からの反応は鈍く、一ヶ月に500を超えたこともある閲覧数が初めて300を切りました。考えれば無理もないことで、日本にとってウクライナは関係がない存在ですね。タイトルも良くなかった。週刊誌調に「中国に飛び火するか―ウクライナの騒乱」にすれば良かったかな。  
 しかし、私はテーマが何であれ、諸君たちが次代の中心になるので、近未来の時代を意識して書いています。 以前に中年世代から質問を受けたことで、また最近若者から訊かれました。右派、左派を初め、政治と社会の思想について言葉が混乱しているので、今回は用語について整理してみましょう。

右か左か、ややこしい区分け  

 人は区分けをしたがる。あの人は右か左か、のように。さまざまな用語が使われているのでややこしい。そこで思想の用語を挙げてみよう。
 先ず「右」からは、右派、右翼、保守、国粋主義、極右。
 右派は穏当な表現で、政治的にも社会的にも大きな変革を望まず、国家の在り方と伝統を重んじる。保守主義と同義。右翼と呼ぶと右翼団体のイメージと重なるようであまり使われない。国粋主義というのは、天皇を頂点とする国体護持を唱える日本の伝統的国家至上主義であり、右翼団体が信奉する。極右も国粋主義とおおむね同義であるが、日本ではヨーロッパで最近台頭するような極右政党は見られない。
 次に「左」では左派、左翼、革新派、リベラル、進歩主義、社会主義、共産主義、過激派など。    
 最近では左翼、革新派、進歩主義の言葉はあまり使われなくなり、反保守としてリベラルがよく使われる。リベラルは個人の権利や社会の変化に寛容である反面、伝統的価値観があいまいで国家観が薄い。  
 そのほか中間の用語として中道保守と中道左派がある。

諸君に問う、保守かリベラルか

  講釈をさておいて、一つの例で諸君の考えを問うことにしよう。
 アメリカでは最近、いくつかの州で同性結婚を認める法律が通った。これからもっと広 がるかもしれない。 私がアメリカの地方都市に住み始めた1978年には、同性結婚どころか同性愛も社会の表では認められていなかった。同性愛を表社会でも認知されることを求める運動がデモの形で行われていた。
 町の友達との会話では、「同性愛は勝手にやればよいが、押入れの隅に引っ込んでいろ」と言い、デモに反発していた。私はここまで言わなかったが、内心では「何も騒がなくていいだろう。静かにやればいいではないか」と思っていた。
 それが90年代になると、ニューヨークや西海岸、特にサンフランシスコでは大規模な同性愛者によるデモが行われ、出張した時には「我々は同性愛でござい」と誇示する七色の旗があちこちの家に掲げられているのに驚いた。 そして、今や同性結婚でさえ法律で公認されるにいたった。
 30年でこれだけ変わったのだ。最近、アメリカ人の一人が、「離婚率が5割を超えたのだから、普通の結婚に大した意味がなくなったのだよ」と言う。 さて、私はと言えば、DNAが起因するという同性愛を認めるにしても、同性結婚には反対だ。つけ加えると、夫婦別姓も子供が迷惑するから反対だ。夫の姓で戸籍に入っても妻が職業上の理由で姓を変えたくないなら、そのまま通称として旧名を使えばよい。
 因みに、私は本名が博で、博志はペンネームで通称であり、本名は公文書でしか使わない。 こと同性結婚に対しては、私は保守派である。そして、日本はアメリカ社会に追随せず、日本には日本の社会があると信じる点で保守派である。私は日本が特殊社会ではなく、アメリカが世界のどの国にも参考にならない特別の社会であると思っている。
 諸君は保守かリベラルか、どちらか?

政党と私の政治遍歴

 かつては政党の違いが分かりやすかった。 若い頃は自民党と社会党の二大政党時代だった。 
 日本企業の労働組合の影響で社会党を支持していた。加えて、日本の政治に疑問を持ち、社会主義に期待を寄せていたこともある。 田中元首相は、「自民党には右から左までの人材を擁し、総合商社みたいなものだ」と言って国民政党と称し長期政権の基礎にしていた。自民党はまともな保守政党ではなかったから、そのために野党が育たなかった。
  当時言われていたことがある。「30代で自民党支持はバカ、40代になっても社会党支持はバカ」と。  
 最近では、ソ連が解体した後、マルクス主義が衰えた。それまで左派あるいは左派急進派として鳴らした学者や評論家は拠って立つ足場を失った。彼らはその代わりに嫌日・反日で飯を食っている。こういう連中「はねっかえり左派」が国立大学とNHKにいる。国と視聴者に養われる身でありながら。                    (完)

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2014年5月18日日曜日

#115 ウクライナの悲劇――騒乱は終わらない

 植民地国の中の少数派民族が、ある日、支配国が変わると一等市民から二等市民に地位が落ちます。そこで、少数派民族は独立に動きます。世界で起きてきたことが、今ウクライナで起きようとしています。一つの救いは、両者の間で宗教闘争がないことです。  日米のマスコミ報道から見ると、ソ連の中で大国であったウクライナは政府リーダーも軍隊も弱い印象を受けます。
 諸君に頭の体操のネタを提供してみましょう。八卦見の予測が当たるか、外れるか?

◇ カナダ・ケベック州の独立運動

 私が70年代末に渡米して間もなく、カナダの東端モントリオールでフランス系市民がイギリス系市民の住む高級住宅地を襲い、焼き打ちにする事件が起きた。 カナダで唯一のフランス語圏であるケベック州で、少数派でありながら良い生活をするイギリス系住民が狙い打ちされた。経済格差に不満を持つ貧困層の怒りが爆発したのだ。
 ケベック州には従来からフランス語圏として独立運動があるが、大した勢力になっていない。仮に住民投票をしたところで、多数派のフランス系住民が勝ってもなんの解決策にもならない。他の州と米国との経済関係を考えれば、独立が貧富格差の改善にならないことを良識ある州民が理解している。カナダの一大観光地域であるから、外国人と接して国際感覚もある。
 カナダの首都オタワは隣りのオンタリオ州にあり、一割くらいのフランス系市民がいると言われる。少ないとは言え、中央政府の官僚も国会議員も英仏両語に堪能でなければならない。教育でも英語圏の子供たちにはフランス語が、フランス語圏では英語が小学校3年から必修科目として教えられている。
 ある年の夏、家族とモントリオールにバケーションで出かけた時、郊外のホテルに一週間泊まり、ケベック市やオタワなど近隣を列車と車で回った。この間に接したフランス語訛りの英語は優しくて気に入った。他方、ビジネスで付き合いがあった英語圏のカナダ人はほとんどフランス語を話せなかった。「必要が外国語のレベルを決める」という私の持論通りだった。

◇ 親ロシア派のウクライナ人は問題だらけ

 東部2州の親ロシア派市民が住民投票を行い、独立賛成票が90%で圧倒的多数の支持を得た。初めから分かっていた当たり前の話だ。多くの反対者は投票に行かなかっただろう。  親ロ派はEU寄りの中央政府に反対し、かつてソ連傘下で甘受した一等市民の地位を取り戻したい。本来国語であるウクライナ語を話せない彼らには、当然ロシア政府傘下に入りたいのか。
 しかし、黒海の要衝にあるクリミアを併合したことでロシア政府には充分だ。軍事品と資源しか海外に売れないロシア経済は楽じゃないから、お荷物になりかねない2州には大した支援をしないだろう。ケベック州民とは違い、内陸の奥深くで世界情勢にうとい田舎者の親ロ派には分かっていないようだ。
 親ロ派が抱える問題を指摘してみよう。  

 第一に、親ロ派が求める独立とは何か?ロシアに併合されて自治共和国になるのか、ウクラナイナの中で自治共和国になるのか?これは住民投票では問われていないので、同じ州内か2州間でもめることになるだろう。  
 第二に、自国の資産である建物を破壊することには意味がなく、独立してから復興するには巨額の金がかかる。暴徒を抑制できないリーダーたちにはとても統治能力があるとは思えない。  第三に、武器を手にした私兵暴徒集団を武装解除できるのか?彼らから一旦武器を取り上げて紀律がある軍隊に組織化することは新政府の手に余るだろう。
 最後に、親ロシア派が2州を制圧した後、少数派のウクライナ人をどう扱うか?よもやウクライナ人を迫害して民族浄化の暴挙に走ることはないのか懸念される。

◇ 中国の植民地支配と住民投票  

 今回のウクライナ紛争に最も敏感になったのは中国政府だろうと思った。再度考えてみると中国政府の備えは万全だった。  中国は漢族とは民族が違うチベット、新疆ウイグル、内モンゴルの三つの植民地を支配している。濃淡の差はあるが、いずれも独立を求めている。しかし、ウクライナ親ロ派のように住民投票を求めたところで、その意味がない。というのは、いずれの地域でも移民した漢族が5割を超えているからだ。中国政府は内政では改革の成果を出せなくても、植民地に対してはすご腕を発揮している。
 もう一つ植民地がある。それは香港だ。  ここは日本の統治5年を除いてイギリスが100年間植民地として支配した。1997年に中国に返還されたが、今も女王任命の総督に代わって、中国共産党が任命する行政長官の下で統治されている。広東語と英語の時代から今は北京語(標準話)になったが、広東語が民の間では話されている。
 返還の交渉時、私も国際セミナーで講師の一人として話した機会で、香港出身の女性でアメリカの大学教授の講師と会食のテーブルで隣席だった。私が「香港返還では大衆不在で両国政府が空中戦をやっている。なぜデモの一つも起きないのですか?」と問うと、彼女は「香港は英国の植民地支配の芸術品で、大衆を政治から無縁にしていたのです」と言った。  
 今は人民解放軍が駐留させ、北京政府が力で支配している。         (完)  

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2014年5月7日水曜日

#114 「北京たより」の民間交流ーー個と集団を分けて考える

 4月16日、テレビのスポーツニュースで見たアジア・チャンピオン大会で日本・中国戦のサッカー試合はひどかったな。中国の2選手がボールに絡まない日本選手に対して故意に肘鉄をくわせたり、脚を蹴っ飛ばしたりしました。 諸君は腹を立てたでしょう。私もむかつきました。
  そこでです。二人の悪玉選手にも別人の顔があるかもしれないと考えたことがありますか?暴力の違反行為に対して声援を送る中国人観衆にも別の顔があるかもしれないと考えたことがありますか?

  今回、北京に活動拠点を半分移しているI氏からの「北京たより」を紹介します。

◇ 「個」と「集団」に分けて考えられるか?  

 中国の選手は、同格と思っている日本からどうしても点が取れない苛立ち、日頃持たされている反日感情があって思わず退場覚悟で暴力をふるったのだろう。自制心がある日本人選手から殴り返されないことを知っていた。これがヨーロツパチームの選手ならパンチをくらっていたに違いない。
 上海での政府後援の反日デモでは、中国人の若者たちが日本のデパートを襲って商品を略奪し、日本食レストランを破壊した。襲われた側は無抵抗で、警官も取り締まらなかった。 この時、一人の中国人が、彼ら暴徒の中にはデモが終わってから日本車のショウルームに車を見に行くような連中がいると言っていた。要するに、サッカー選手と同じでうさ晴らしをやったのだ。
 私が若い頃なら、「あのバカモンが」と腹を立てただろう。しかし、今は感性が鈍くなり、自制心も強くなったから、「待てよ。あの集団の中には善玉もいるはずだ。集団ひとからげで考えてはいけない」と思う。そう、実際には暴力を許さない善玉の中国人もいるのだ。

  ◇ 「北京たより」と個々の民間交流  

  商社の中国事業を統括するI氏からこれまで「上海たより」を度々寄稿していただきました。彼は最近月の半分くらいは北京で仕事をするようになり、民間交流の顔として活躍されています。今回は「北京たより」を寄せてもらいました。私の裁量で一部削除して諸君に紹介します。
  末尾には、中国に関心がある諸君のために、I氏からの参考文献を記します。
                ――――――――――――――――――――――――――

 「北京たより」   

  清華大学での日本語スピーチコンテストに続いて、今回も女子学生の目立たずとも大切な実務的貢献によって会の感動が深まりました。 木寺大使のスピーチもとてもユーモアに溢れ、垣根を低くする語り口で満場の共感を呼びました。記念撮影のあとは、握手よりもフリーハグでお開きでした。大使より別れ際に「若い人たちをしっかり支援してくださいね」と強く握手をされました。そこでシナヤカにハグをする機転が利かなかったので、次回の別の会合での愉しみに残しておきます。

   「隗より始めよ(先従隗始)」。 本来の『戦国策』での郭隗さんの昭王への建策(就職活動?)の意味とは、異なった用法が一般化しています。曰く、大事業を起こすには、身近なところから着手するべし。言い出しっぺから動きなさい。

  二日後の深夜にメールが届きました。 「突然の会場変更などありましたが、多くの方のご支援、ご指導により無事開催することができました。 当日は、中国人学生30名、日本人学生30名の計60名の参加でした。
 当初、当活動には中国人学生109名、日本人学生41名の計150名が登録していました。ですので、報告会には100名ほどの参加を予想していたのですが、急な会場変更などで参加人数が減ってしまったのではないかと考えています。 ただ、当初予定していた100名の合唱を披露することができませんでしたが、私たちの想いは伝えられたのかなと思います」

 太閤園、大横川、富岡八幡宮、柳橋「大黒家」店先、代々木上原からの小田急線沿線、茨木弁天と、今年は櫻に恵まれました。櫻狩の仕上げは北京西方の玉淵潭。金朝時代から 続く景勝の地。石碑によれば、東湖と西湖に分かれた敷地北西の一角に、1973年日本から多くの大山櫻が植樹された、それ以降に山東櫻などを植え足して「櫻なら玉淵潭」と呼ばれるまでになったようです。湖岸の八重櫻の下で、焼き栗を剥きながら、対岸から流れてくる毛沢東賛歌の懐メロ斉唱を聴くとも無く聞いていました。    (了)  

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■「僕らの日中友好@北京・我们的中日友好@北京」 ・Flickr(写真):https://www.flickr.com/photos/109475294@N02/sets/ ※これまでの活動全てを振り返ることが出来ます。 チェックしてみて下さい!
■「僕らの日中友好@上海・我们的中日友好@上海」※2013年3月に行った上海での活動 ・优酷(映像):http://v.youku.com/v_show/id_XNjI4NDE2ODEy.html ・YouTube(映像):http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=jWOfNwIAzJc ■Next Vision Asia ・facebook: https://www.facebook.com/NextVisionAsia ・Twitter: https://twitter.com/NextVisionAsia
(参考書物)   
 リービ英雄    『星条旗が聞こえない部屋』『我的日本語』
 カズオ・イシグロ 『わたしたちが孤児だった頃』   
 楊 逸      『時が滲む朝』 (以上三名は米英中のバイリンガル作家、中国現代史を背景にした作品)  
 道上尚史  『外交官が見た「中国人の対日観」』→前駐中国公使・現駐韓国公使  
 村上春樹  『中国行きのスロウボート』『ねじまき鳥クロニクル』 →春樹ワールドの背後にある中国近代史。神戸とノモンハン事件。
 中島 一  『中国人とはいかに思考し、どう動く人たちか』 →過激な装丁に惑わされずに読めば帯文とは異なる冷静さと緻密さ。  
   榎本泰子   『上海』→専門は音楽史研究。上海オタクの臭みもない。   
 堀田善衛   『上海にて』→ 1945年から1946年の青春の上海

5/11追記. 読者からの意見。「理性で抑制している個人の中にも善玉と悪玉が共存している」        

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2014年4月21日月曜日

#113 主婦グループがネット組織ーー年寄りも若者支援に出番

 主婦グループがやった!  神奈川県の主婦がインターネットで呼び掛け、これに応えて市民団体「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会を組織しました。ノーベル賞委員会に送った推薦状では受賞対象が「日本国民」になっているそうです。 私が提唱してきた「若者ネット」では当面は組織をつくる必要はなく、前回で紹介した台湾学生方式に倣ってネットで結ばれた緩やかな連帯を目指します。ネット交信を広げればよいのです。
 さて、年寄り諸君! 出番ですぞ。ツイッターかフエイスブックに「若者ネット」が組織されたら、知友人に紹介すればよいだけです。  
 今回は人生の再出発について書きます。

憲法9条とは?  

 憲法9条には二つの項があることはあまり知られていないようだ。その①項はよく知られる戦争放棄で、9条と言えば①項と思われている。もう一つの②項は軍隊を保持せず国の交戦権を認めていないこと。私は交戦がどこまで意味するのか曖昧であると感じている。
  従って、9条改正(改訂と言うべき)と言っても、私のように①項は変えないが、②項は現状に合わせて変えるべきと考える立場では9条を一つの括弧にくくられることは困る。
 現在、政府・自民党は集団的自衛権について憲法の解釈変更と憲法の改訂を議論しているが、国民の間で広く関心を呼ぶために良いことだ。言えることは、今のままでは良くないということだ。    
 憲法の見直しは9条に限らない。制定後68年も経ち、時代に合わせて何一つ改訂されないのは異常なことだ。改訂するなら、私は公明党が唱える「加憲」を支持する。平和憲法の原点が忘れられないように、現憲法の後に改訂条項を付け加えてゆくのだ。因みに、この方式はアメリカで採用されている。

引退スポーツ選手への勧め  

 前回、外国人労働者の受け入れについて書いた。友達の話によると、その背後には自民党の支持基盤の一つである建設業界が後押ししているのだという。充分考えられることだ。
 東北復興工事も、オリンピック関連工事も終われば工事は大きく減る。メーカーなら需要のピークに合わせて設備投資をしない。なぜならピークは一過性であり、ピークが過ぎれば需要が減って、設備過剰を招くからだ。
 当分の間、建設労働者が不足する見通しなので賃金相場が上がる。現在、人生の行方が定まらない若者にはチャンスだ。 引退したり、見切りをつけた元スポーツ選手が労働者に挑戦してみたらどうか。
 過去のキャリアを捨てて男が裸になって建設労働者に挑戦するのだ。選手時代に名声があろうがなかろうがキャリアにこだわっていては男になれない。結婚していてもなんら妻に恥じることがあろう。将来に備えて志を持つ限り尊敬される。
  例えば、元プロ野球選手。引退すると、ほとんどの選手が「恩返ししたい」と言う。きつい言い方で腹を立てるかもしれないが、「恩返ししたい」というのは、要するに解説者としてテレビに出演し、その間にどこかの球団からコーチなどスタッフとして雇われることを期待しているのだ。 確率から言うと、元有名選手でも機会は少ない。「解説者」が何十人もいるのだから大したギャラをもらえないし、毎年引退する有名選手が競争に入ってくる。
 アルバイト職で得る少ない収入でも、元選手と野球関係者が参加するゴルフコンペに出るなど顔を売るために交際費を使わなくてはならない。もう野球とテレビ出演の期待におさらばして新しい人生を切り拓こう。
 使い捨てにされる契約社員には貯金どころではなく、展望が開けない。まして、フリーターではどうにもならない。他人の目を気にせず、現状を打開しよう。 政府は新規雇用して賃金を上げる中小企業に対して補助金を出している。同様に、日本人を正規社員の労働者に雇う中小企業の建設会社、ゼネコンの下請けにも補助金を出すべきだ。素人でも5,6年働けば経験者になれるし、その中から図面を読める現場監督者の人材が出てくるに違いない。
  若者よ、他人がどう見ようとも格好にかまうな!5年も続ければ早起き、三食、身体強化(精神も)の生活3条件を身につけられ、その上に金を貯められる。  

なぜ世界一の都市に?  

 そもそも建設業の人手不足はオリンピック関連工事だ。  私はオリンピック招致に反対ではなかったが、東京開催には反対だった。今以上に東京にハード建設を進めてどうするのか?投資するならソフトの社会資本だろう。
 例えば、東京に選手村を建設してその後はどうするのだ? オリンピックのために巨額の予算が用意されたが、もっと新規建設を圧縮すべきだ。予算削減の一つ例を挙げれば、開会式は日本らしい抑制され、実がある企画にしよう。 北京オリンピックのような前菜もデザートもない主料理だけの中国料理のような開会式と、国威発揚はやめてほしいものだ。
 「東京を世界一の都市に」という馬鹿げた目標はむなしい。世界の大都市には各々違った性格がある。東京は東京らしい性格を出せばよいのだろう。        (完)

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2014年4月12日土曜日

#112 外国人労働者より日本人の人材――政府の政策はその場しのぎ

 諸君は、日頃マスコミから多くの情報を得てそのまま鵜呑みにしているのではありませんか?
 一つの例が、政府の外国人労働者受け入れに関してはマスコミの報道は浅いことです。
 移民問題について前にも書きましたが、その時私が移民排斥者に思われた意見をもらいました。しかし、そうではありません。外国人労働者の受け入れは政府が移民問題としてとらえなければいけないと言っているのです。
 ここでは外国人労働者についてもう一歩踏み込んで書くことにします。諸君たちに深く関わることです。

台湾の学生デモからの教訓  

 先月の中頃だったか、台湾の学生集団が議会を占拠し、外には10万人を超える学生が座り込みをした。彼らの目的は政府が中国と締結した貿易協定に反対し、議会が批准することを阻止するためだった。世界各地で起きている反政府デモの中で特筆すべき点がある。
 それは学生リーダーが6年も前に貿易協定に反対する運動を、フェイスブックなどネット交信を通じて他の大学に連携を呼びかけた成果だった。今では一般市民にも広がり、デモ参加者は17万人になったという。
 諸君は私が提唱してきた「若者ネット」を憶えているか?そう、台湾の学生たちがやったことは「若者ネット」を組織したのだ。諸君たちも先ず外国人労働者の大量受け入れに反対するために「若者ネット」を立ちあげてほしい。必ず民意を広く興し、政府を動かすことができる。ただし、6年もかけておれない。

  ◇ 外国人労働者を大量に雇う?  

 政府が東北の復興工事と東京のオリンピック関連工事の人手不足に対応して外国人労働者の受け入れを広げるという。滞在期間を3年から5年に延ばし、研修という名目で大量に入国させる。若者にどういう影響が出るか?
 《その一》国内の建設労働者の賃金相場が下がる。 長時間できつい労働だから、賃金が高いのは当然。ゼネコンを定年退職した友達の話によれば、労働者はよく飲み代に使うが、酒を自制すれば金を貯めることができる賃金が支払われているという。諸君が身体を鍛えておけば、将来何をするにしても資金をつくれるはずだ。
 《その二》5年後に離職した外国人労働者はかなりの割合で日本に住みたがる。 これは前回に日系ブラジル人を多く入国させ、中小企業を中心に労働者不足を埋めたが その後も多くが日本にとどまった実例がある。今以上に自治体やボランティアが人助け できるかどうか。
 《その三》今回は、ブラジル人に限らず、中国、中東、アフリカから労働者が入ってく る。 彼らはヨーロッパ各国ではもう歓迎されないし、職も得られない。 例えば、シンガポールやサウジのように建設労働者は外国人を使うことが国策で、工事が 終われば労働者を国外に退去させ、移住を認めない。実行する強権がある。
  対して、日本政府には彼らの国外退去を実行できるような体制が備わっていない。
 《その四》。日本語も英語も分からない、宗教の違いもある彼らを使うとすれば、現場監 督の苦労は大変なものだ。 アメリカでは建設現場で電気工を始め、体力が要る労働に女性が働いていることは珍し くない。経験がなくとも若者を雇用し、工事の職種で女性部隊をつくることもできる。 政府が外国人の研修に金を使うより、日本人の研修を支援する方が生き金というものだ。

介護士、看護士、保育士の人材も不足  

 介護士を例にして説明してみよう。  私の母が民営の特別養護老人ホームに世話になっていた時、親しくなった幹部や若い介護士と話す機会があった。要点だけを書くと、幹部の話では経営が難しいので7割の職員を非正規雇用に頼っているという。給料も安いので資格を持つ介護士でさえ退職が多い。実際、よく人が入れ換わった。転職、つまり介護職を止めて他の仕事に就くのだそうだ。もったいない。
 他方、若い介護士によれば、夫婦が同じ職場で共稼ぎしてやっと一人の子供を育てることがぎりぎりだという。参考までに、私が通っていたスポーツクラブでは7割以上が非正規雇用の社員で、若い社員は結婚もできないと言っていた。
 顧みれば、2000年頃から全国で福祉学部、OO福祉大学、福祉専門学校が新設されたにも関わらず、卒業生の多くが福祉の仕事に就かないために依然として人手不足が解消されていない。せっかくの投資が生かされないのは処遇が悪いからだ。

諸君が「若者ネット」で政府に要求すること

 1) 先ず、日本人、特に若者の人材を活用することに予算を使え。
 2) その上で外国人労働者は選別して少しずつ日本に入れよ。         (完)

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2014年3月31日月曜日

#111 世界の警察になるのかーー積極的平和主義は危ない

 ハーグで行われた日米韓首脳会談の冒頭、安倍首相はパク大統領に韓国語で話しかけました。あれは余計なオベンチャラ行為であり、私は不快感を持ちました。日本語か英語を使うべきだったでしょう。  諸君の感性はどうだったか?  さて、私は安倍首相の「積極的平和主義」外交に市民の一人として不安を感じています。この言葉が国際的には、「日本は軍備の増強によって国際紛争に武力介入に積極的になるのか」というシグナルを送りかねない。世界の警察国家の一員になるのか、と。単に「武力によらない平和貢献」の日本というブランドを確立すべきだと願います。

日米韓の首脳会談はアメリカの圧力  

 今回の三国会談はアメリカの仲介で実現したことは誰にも明らか。安倍首相は即座に受け入れを表明したのに対し、韓国は2日遅れでしぶしぶ同意した。日韓関係の改善をしぶっていたのは韓国だったことが国際的に知られてプラスだった。  
  マスコミは「アメリカの圧力」とか「対米追随」の言葉をよく使う。これには危ない一面がある。というのは、アメリカのマスコミが「安倍首相は国家主義者」というレッテルを張っているが、危ないのは反米保守主義者が愛国国家主義の勢いをつけることで、対するに親米保守主義者とは区別して考えなければならない。安倍首相は、ちゃらんぽらんにしてきた国家のあるべき形を求めているのだろう。
 諸君は、「日本は天皇を中心にする神の国」が唱えられる時には警戒が必要だ。安倍首相が自民党内外の国家主義派に流されるなら、私のような若い頃「進歩派」(当時こういう言葉があり、左翼中道派)だった私も反自民党に立ちあがる。

「アフリカで戦争が無くなれば人類が滅ぶ」

 この発言は、もう30年も前のことか、当時上智大学の渡辺昇教授と東大の糸川英夫教授が雑誌の対談で言っていたことである。テーマは世界の人口問題だったと思う。 この時代にもアフリカ各地で内乱や虐殺が起きていたが、今も変わらない。それでも世界の人口は当時の60億人から今は70億人に増えた。中国政府が一人っ子政策で13億人に人口抑制をしてきたにも関わらずだ。   
 アフリカでは今も内乱が起きている。一つ沈静すれば別の国で起きる。スーダンがその最悪の典型だろう。スーダンがイスラム国とキリスト教国の南スーダンに分離されると、今度は南スーダンで政府軍と反政府勢力が武力闘争を始めた。自衛隊100人余が平和協力の目的で派遣されている。 アフリカは変わるのだろうか?

アフリカ支援の新しいモデル

 アフリカは宗教対立、民族闘争、部族闘争の縮図だ。旧植民地宗主国であるヨーロッパ諸国の支援も効を奏さない。他方、安倍首相は外遊の度にアフリカ紛争国に何百億円の無償・有償のバラマキ資金援助を重ねている。一体、外務省の予算はどうなっているのか?別枠なのか? 有償支援と言え、返済される保障はない。尻拭いは、結局、諸君の時代に委ねられる。
  そこで、日本のバラマキ支援を減らす一方で、新しいアフリカ支援のモデルをつくろう。それは日本の官民学が行政、法律、ビジネス、環境の分野を総合する10年計画のプロジェクトだ。支援対象として①権力を私物化する独裁者がいない、②宗教対立がない、③民族・部族闘争がましなこと、④資源が少なく中国が関心を持たない、の4条件にかなう中小国一つを選ぶ。
  最近の若者は、私なら若くても身分保証なしでは行く気になれない国にでも、志を持って単身で出かける。大したものだと思う。日本には人材が豊富にいるではないか。

  私が米国企業に勤め始めて間もなく、週に2回、車を1時間飛ばして州立の夜間大学院に通った。15人のクラスで外国人のよしみから親しくなったアフリカからの役人留学生がいた。
 ある日、「こんな大国のアメリカで勉強して国にとって役に立つことがあるかい?なぜニュージーランドか台湾に行かないの?」と問うと、「政府給費ではアメリカの指定なんだよ。他の国では帰国後に昇進もないのだから」と彼は答えた。 日本政府はこんな愚をしてはならない。
 留学生を公費で招くなら、思い切って中米の小国でありながら民主国として独立独歩のコスタリカに派遣してはどうか。

政府は血税を無駄使いするな  

 かつてジョン・レノンは名曲「イマジン」の中で「世界に宗教がなければ~」、「世界に国境がなければ~」と歌った。私もよくそう思うことがある。しかし、現実は厳しい。国境どころか国の中で争っている国は絶えない。
 日本は先進国の義務として国際貢献をしなければならない。次世代に借金の山を築きながらもである。政府は先ずアジアの貧困国に支援を絞り、そのほかの国々には人道的支援にとどめるべきだ。
 政府は外務省の言いなりになるな、外務省は首相の言いなりになるな。       (完)

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2014年3月20日木曜日

#110 ああ、オリンピック!――その陰の面を年寄りが語る

 ソチで開催されたオリンピックもパラリンピックも過去のことになり、やっとメディアで報道されることがなくなりました。 みんながオリンピック、オリンピックとはやし立てると、その陰になる面が見落とされるものです。
 私はこれを書きたいと思っていましたが、今回、年寄り数人の意見をまとめてみました。時流に逆らうのでもなく、年寄りの臍が曲がっているわけでもありません。 若者諸君は反感を持つかもしれません。

オリンピックに対する年寄りの意見集  

 「女子フィギュアスケートでは浅田真央がショートプログラムでミスを重ねたが、あんなのは今まで見たことがないな」
 「オレは毒をもられたか、食べ物に睡眠薬を入れられたのではないかと疑っている」
 「ハッハッハ、なんたるユニークな発想だな。しかし、キムヨナムはオリンピック村から隔離されてホテル住まいさせたのは警戒心からなのか?」  
 「ペアとダンスはどこが違うんかいな。オレにはよう分からん」
 「一体、あんなのがスポーツなのかい?綺麗な衣装を着て音楽に合わせて踊る競技はフィギュアスケートだけだな。ありゃショウだよ」  
 「韓国がメダル取りに集中強化するショートトラックも面白くないな。スピードスケートの魅力がない。オレはフライ級スケートと呼んでいる」
 「小柄な選手が有利だからか?10ヶ国かそこらしか参加しない限定競争や」
 「そう、長野オリンピックで知事が水澄ましみたいと言って非難を浴びた。中国と韓国には格好のメダル取り種目だな」

 「あのバイアスロンで距離スキーと射撃の組み合わせは時代錯誤やな。日本選手は男女とも自衛隊員だが、80位とかみんな最下位。選手も本当は出たくないだろう」
  「バイアスロンは戦争ごっこだな。陸軍兵士が戦場をスキーで駆けながらライフル射撃をする種目。上位はフランス以北の国の選手ばりだ」

 「金が足りない、足りないと言うんだから、シーズン毎に設備を整えなければならないリュージュのそり競技を日本はやめた方がいい。50位とか80位なんてなんで代表に送るの?」
 「ほかにもあるよ。始めから上位に入れる見込みがない種目。ボブスレーとかスケルトン。高価な乗り物に乗って1/1000秒を争うなんて競技じゃないよな」  

 「モーグル、ハーフパイプ、それにオレは知らなかった種目のスロープスタイルなど審査員が点数をつける種目もピンとこないな」
  「アメリカではハーフパイプの競技は、スキー板やボードのほかに自転車を使う種目もあるよ」   
 「オレは人が採点する種目は好かん」 

  「10ヶ国しか参加しないカーリングも退屈やな。長野オリンピックから正式種目になって人気があるらしい」
 「読みや戦略が必要で氷上のチェスなんて呼ばれるそうだが、読みと戦略はどの団体競技にも必要で、カーリングに限ったことじゃない」
  「カーリングがオリンピック種目なら、夏のオリンピックにボーリングやペダンクがあってもおかしくないわな」  
 「ありゃ、スポーツじゃなくて遊びだな」  
 「そんなことを言えばほかにも遊び種目はいっぱいあるよ」  
 「ここで評論家先生の出番か。もともとオリンピックは遊びだったんだ。アメリカで読んだ本によると、それも金と暇がある貴族あるいは上流の紳士たちの間でな。だから彼らは郵便配達人や鉄鋼労働者など労働者階級は肉体プロとして排斥していたんだよ。これがオリンピックの崇高なアマチュア精神だった。我々は学校教育でオリンピックの表だけを教えられた。 その後、オリンピックはまともなアマチュア競技に進歩したが、ロスオリンピックで商業主義に変質して主催者が儲かるショウになった。今は冬季オリンピックに絞ると、17日間の大イベントに仕立てるためにどんどん競技種目を増やさなければならないのさ」

スポーツ選手の認知渇望症  

 滞米生活中に、町の親しい友達と会食した時のこと。ボクシングヘビー級の元王者、ムハメッド・アリが2度目の現役復帰をしたことが話題になった。
 「彼はね、人に忘れられることがたまらないので、またしてもテレビに出してほしいのだろう」
 「みんな元有名人はそんなものだろう」と友達。
 私はしばらくの間、これを「ムハメッド・アリ病」と呼んでいたが、批判的な意見があったので「認知渇望症」に変えた。
 マスコミも世間も「夢を持て」と煽りたてる。それでなくても、オリンピックを目指す若者が増え続ける。表の面を言えば、競技団体は底辺が広がるとして喜ぶ。他方、裏の面に目を向ければ、わずか1%にも満たない勝者を除いて多数の選手たちが夢をあきらめさせられる。そして、スポーツには集中できても勉強や仕事には根気が続かない不幸な人間をわんさかつくっていく。その後には長い人生がある。大事なことは、選手生活は一時の夢だったとさっさと忘れ、本番の人生に向き合うことだ。
 選手諸君、テレビ出演を求めず、認知渇望症にかかるなよ。普通の生活にはエキサイティングもない、大それた成功もないかもしれない。その代わり別の地味な夢を持てるかもしれない。              (完)

追記。大阪市長選。3月23日、投開票の結果、橋下市長が再選された。予想された通り、投票率は史上最低の23.6%で、橋下市長の得票数はたったの38万、この中には大阪都構想も分からない市民の橋下人気票が含まれるから、大阪都に賛成する市民はわずかだろう。
 橋下市長さん、大阪都構想は敗れたり!大阪市、大阪府の改革にはいっぱいやるべきことがある。どうか大阪都構想と心中しないでほしい。
 
 
 

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2014年2月21日金曜日

#109 大阪の若者諸君、これでよいのか――橋下市長の辞任

 大阪市の橋下市長が2月15に辞任し、3月23日に投票が行われます。大阪都構想のうち大阪市の区割りをどうするかという試案をどれも市議会が反対したので、市民の後押しを受けるために選挙をやるというのです。6億円の費用がかかるとか。むなしいことです。  諸君の多くには直接関わりがないが、橋下市長が果敢に時代を変革しようとした試みを知ることは有益です。
 なんと言っても明治以来の行政制度の改革は、諸君が住む県でも求められていることに変わりがないのです。
 私は95年に帰国してから大阪に住み、その間専門の経営のほかに地方政治の改革を研究し、実践もしてきました。この連載の別枠で「ネット月刊誌『言論大阪』」を26回書いて、関係方面に働きかけてきましたが、なかなか広がりませんでした。#25に大阪の課題をまとめています。「言論大阪」で検索すると開けますから、自分たちの町と比較して参考にしてください。

大阪都構想と大阪市長選挙  

 大阪都の構想は、東京都の例にならって大阪市を廃止する代わりに既存の区を1/6くらいの数の特別区にするものだ。  何が変わるのか?  私は前述の連載「言論大阪」の中で橋下知事(市長)の構想について「狭い大阪(府)をこねまわしところで何も変わらない」と疑問を投げかけてきた。
 橋下前知事は言う。
 「大阪に二人のリーダー(知事と大阪市長)は要らない」  
 「府と市の二重行政の無駄を省く」  
 「ばらばらの公共事業を一元化する」
 「府と市の水道事業を統合し、ダムやニュータウンの建設を中止する」
 これらの目的について私が言ってきたことは、いずれも現行の制度でも知事と市長が話し合えば改革できることだ。それができない。大阪都にするならできるのか?  
 要するに、目的がはっきりしないのだ。だから当時私の周囲でかなりの教養水準がある人たちでさえ「なんのために?」と問うほど目的が分からないでいた。まして一般の府民がどれだけ理解しているのか怪しい。
 さて、今回の出直し市長選挙について、世論調査では大阪市民の6割以上が支持していない。反対する議会の構成は変わらないし、無投票になれば支持率さえ分からない。有力政党が対立候補を出してくれれば、橋下市長への投票者数が一つの支持目安になるのであるが、どの政党も意味がない、あほらしいと思っているから候補者を立てないだろう。

次世代には大阪都より関西県

 橋下市長は在任中に大阪市の区割りや都構想の設計図をつくるという。しかし、議会は反対するから実現は進展しない。市民の多数も賛成しないだろう。なぜ橋下市長は情勢を読めないのか?単に掲げた公約に面子をかけているだけに見える。
 彼は道州制にも期待していない。何しろその道州制は提唱されてから半世紀も経っているのにさっぱり実現しそうにもない。 私は近隣の県統合への第一弾として、大阪府、奈良県、和歌山県を統合して関西県をつくることを提唱してきた。関西県の新県庁を奈良に置くことで全体が活性化されると思うからだ。大阪市は関西県の経済の中心であり、地域の最大都市である地位は変わらない。
 なぜ京都府と兵庫県との統合ではないかと言うと、年来「京阪神は一つ」と言われてきたが、私の生活観では「京阪神は一つずつ」なのだ。何をするにしても、ばらばらで統合の可能性は無きに等しい。  
 若者諸君よ、私がいつも言うように、次代は諸君がつくるのだよ。旧世代にやらせておいて、自分たちには「関係ないよ」と構えていてそれでよいのか?

曖昧な一票の格差と県の統合  

 2010年の衆院選挙では一票の格差が2.43倍、2012年の参院選挙では5.0倍でいずれも「違憲状態」という判決が出た。特に一つの判決は「選挙無効」とされた。
 全国各地での訴訟は憲法14条の「法の下の平等」を根拠にしている。それでは、一票の格差が何倍以内なら合憲なのか明確ではない。国会もそれなりに議員の選挙区割り振りを変えて是正したが、この程度の是正ではまだ違憲なのだ。各県に最低一人の議員を配する一人別枠方式があることが是正の制約になっている。また、厳格に有権者数を基準にすると、大都市圏からの議員が圧倒的に増えてしまう、これが公平なのか?
 是正の一環として、例えば、鳥取県と島根県を一つの選挙区にする合区が提案されたが、政党間で合意されなかった。これは選挙区以上の発想を与えてくれる。
 それは現行の各県の間で統合を進めることだ。なんと明治以来140年も現行の県制度は変わっていない。 例えば、人口58万人の鳥取県と岡山県、人口70万人の島根県と広島県を統合して、瀬戸内海から日本海まで一体の兵庫県のようにすることが挙げられる。すると、隣県との統合は土地柄が違い、郷土意識が強いからうまくいくはずがないと反論されるだろう。
 しかし、私はさらに反論する。260年間の江戸時代、300を超える大名領の藩があり、各々の藩意識は強かっただろうが、明治4年の廃藩置県で新政府がそのままの数で藩を県として大名から領地を取り上げた。その後18年もかかって今と同じ数の3府43県に統合した。
 東京府は東京都に変わり、北海道が加わって現在の47都道府県になった。 明治政府の困難に比べれば、47を40以下にすることはやれないはずがない。

橋下徹、もったいない人材  

 選挙強者の橋下市長には弁護士としての論理的思考力、スピーチの歯切れ良さ、ネアカで何を言っても心底から憎まれないキャラクターなど政治家としての資質が備わっている。大胆な言動も資質で、天性のユーモアもある。さらに大した戦略家だ。彼には大阪の社会、なかんずく行政の不合理性がよく見えたはずだ。
 ここからは私の推測である。
 彼は大阪をなんとか変えたいと思った。そこで、先ず大阪都構想に引っかけて大阪維新の会というアドバルーンを上げた。その先には維新の会を全国政党に育て、彼自身も国会議員になる大戦略を立てた。大阪都を実現するには国の法律を変えなければならないという大義が立つ。
 そして、国会で第三勢力になる日本維新の会を実現した。
 橋下さん、大阪都の設計図をつくるなんて大した意味がない。大阪市の議会も市民も支持しないのだから撤退を考える時だ。「ねばるか、退くか」という決断は本当に難しい。それでも、今は「ここで退けば男がすたる」などと非論理の思考はあなたに似合わない。
 日本維新の会の共同代表、石原慎太郎衆議員は高齢だから顧問に下がりたいだろう。あなたには「日本維新党」に会を改名して代表になり、国政改革を進めてほしい。               (完)

≪追記。3/27≫ 3月23日、大阪市長選挙の投開票の結果、予想された通り投票率は史上最低の23.6%、橋下候補がわずか38万票足らずの得票で再選された。この中には大阪都構想も分からない橋下人気票が含まれるから、大阪都構想の支持者はわずかだろう。
 橋下市長さん、大阪都構想は敗れたり! 大阪市と府の改革にはいっぱいやるべきことがあるのだから、どうか大阪都構想と心中しないでほしい。

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2014年2月13日木曜日

#108 世界で荒れる反政府デモーー大衆は分かっているか?

 カイロ、バンコック、キエフで10万人以上の大規模デモが起きています。いつまで続くか?
 一時荒れ狂ったイスタンブール、マドリッド、アテネ、プノンペンでのデモは静かになりましたが、どちらも首相が変わったわけではありません。大衆の不満はガス抜きをしておさまったのでしょうか。  
 民主主義の制度は常に揺すられるものです。逆に言えば、揺すられることこそ民主主義の根幹ですから、私たちはより良いものを求めるのであって、完全を求めることは非現実的なのです。
 私は中国政府の政策を批判する半面、独裁者政権ではない一党独裁の政体を支持し、発展途上国が建国の参考にできる新しい民主主義の形をつくってくれることを期待しています。つまり、大会社のように、優れた人材が競争で昇進し、役員の中から社長が選ばれる組織です。もし社員が投票で社長を選ぶような制度では会社は成り立たない。  
 今の西洋型民主主義は新興国の建国初期には合わない、と私は思っています。  さて、諸君はどう思いますか?

各国のデモの類似と違い  

 エジプトとトルコのデモで共通することは、政権がイスラム教原理主義を強めようとしたことにある。つまり、政治をコーランに基づいて支配を強めようとしたのだ。これに対し、大衆が反発した。
 この両国はもともと「世俗主義」の政治が行われていた。それにしても、マスコミが使う「世俗主義」の訳はいかにも次元が低く聞こえる。「政教分離主義」の言葉を使うべきだ。 「政教分離主義」とは宗教の原理ではなく、法律に基づくことであり、世界の多くで行われている。統治の手段として宗教を利用することは、政治のあるべき姿ではない。  
 自由な価値観を持てる私たちから見れば、なかなか分かりにくい。 バンコック(タイ)の暴動は上記2国とは違う。  
 インラック女性首相は2011年に首相に就任してから、連立与党で議会過半数を支配して政権運営をやってきたが、今回は空港占拠事件に次いで2回目の大規模反政府デモに遭っている。  反政府側の要求は、「インラック首相辞任と選挙の延期」であるから、仮にイ首相が辞任しても民主主義のルールに従って与党から新首相が選ばれる。選挙をしても与党側が勝つことが見込まれている。まして選挙をやらなければ現状維持にしかならない。おそらく新首相が選ばれたところで、反政府側はデモを続けるだろう。これは泥沼闘争だ。  
 これまでタイは軍部によるクーデターは2006年の一回だけで、民主主義が機能してきた国だ。デモ大衆の多くは、不満に乗じられて元副首相の反政府側リーダーの政治的野心のために利用されているのかもしれない。
  私が出張で行っていた70年代のタイは穏やかそのものの国だった。

集団的自衛権の解釈変更

  経済、財政赤字、社会福祉制度、原発事故の後始末など政治課題が多い今、なぜ安倍首相は集団的自衛権の解釈を変えることにこだわるのだろうか? 
 確かに、「我が国は集団的自衛権を有するが、行使はできない」という内閣法制局の解釈はおかしい。集団的自衛権を持つなら行使できることは当然の道理だ。そうかと言って今解釈の変更、まして憲法改訂は緊急を要する課題ではない。  仮の話を二つ挙げて説明してみたい。  

 尖閣諸島に中国軍が上陸するケース。  
 自衛隊は三軍を動員して島を包囲し、中国軍が退去しなければ陸上自衛隊が上陸作戦を敢行する姿勢を見せるだろう。他方、米軍は日米安保条約に基づいて島近海に空母を中心に第七艦隊を派遣し、後方支援に当たる。孤立した中国上陸部隊は撤退するしかない。いくら世論の支持を受けても中国政府はこんな冒険をするとは思えない。

 北朝鮮が嘉手納基地をミサイルで攻撃するケース。  これは米軍基地と日本領土が同時に攻撃対象にされることから、米軍は当然反撃態勢を敷くし、自衛隊も支援しなければならない状況に置かれる。しかし、日米両国軍がミサイルによる迎撃体制が敷かれているので、北朝鮮が攻撃する可能性は少ない。
  日本は集団的自衛権を行使できないとすれば、日米同盟が崩れかねない上に世界は理解に苦しむだろう。
 政府が今は事を急がずに、反対勢力が現実に直面するまで待てばよいのだ。念のため、憲法の歯止めとして日本が脅かされるケース以外には、遠くの国への攻撃に自衛隊の戦闘部隊を派遣しないことだ。あくまで自衛権に限ることが国是である。

日本のデモの実態

 特定秘密保護法をめぐり、国会前にデモの群衆が集まった。テレビニュースのインタビューに答えた群衆の中に、反対の理由を「言論の自由が失われる」と言っていたが、法律を理解していない。 取材とスクープの自由が脅かされ、国の安全保障に関わる情報にとどまらず、官僚が広く情報の囲い込みをする可能性はあるが、だからこそ秘密情報をチェックする機関が必要なのだ。マスコミの真価も問われる。
 国の情報保護については1985年の「スパイ防止法」も、2011年の「秘密保護法」も廃案になっている。日本を取り巻く国際情勢が大きく変わった今、リスクはあっても「秘密保護法」は国家として持つべき法律ではないか。                 (完)

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2014年1月23日木曜日

#107 中国人移民が世界に進出ーー日本人には他人事か

 前回、私の執筆目的を生きている間に遺書として出版することだと書きました。  諸君の中には気づかれる人もいるかもしれませんが、本当は目的というのはおかしいので、目標か計画と言うべきなのです。  私の目的は、若者諸君に自由な発想の広がりをつくり、論理的思考力を高めてもらうことです。発想と思考力は私自身の変わらぬ目的でもあります。
 さて、年末にプリンターのトナーの寿命がきてアウト、日によってパソコンも調子が悪い。結局、残りの年賀状は出せなくて失礼しました。気力喪失なのです。  この時、ふと思ったことですが、来年からの年賀状を止めようかと。70歳から年賀状中止宣言を出した友達もいます。年賀状はふだんメール交信をしない知友人には、生存確認の意味があると思うのですが。まあ、今から考えることは早い。
 諸君は年賀状をどう思いますか?

 前回では移民労働者と雇用の問題について書きましたが、今回は世界の移民を具体的な事例を挙げて取り上げてみましょう。移民については本稿で前に書いています。

世界に出ている中国人移民  

 中国人移民には今でもいくつか特徴がある。 1)大量に移民する。2)チャイナタウンをつくる。3)現地で同化しない(移民先の言葉を話せない)。4)貧困層が主体(当然のことであるが)。6)世界のどこへでも行く。7)不法移民が多い。  
 実例を挙げてみよう。  
 
 私は飲茶が大好物で、滞米中でも帰国後に渡米した時でも、マンハッタンのチャイナタウンにある大きな中国レストランに行く。飲茶というのは、何人ものシェフがつくる自慢の小皿料理(点心)をお茶で楽しむ広東省の習慣だ。
 ウエイトレスがワゴンに載せて食卓を回ってくる。  ある日、北京語(標準話)を話せるアメリカ人と会食した時、彼が北京語で話しかけると、中年の彼女は「分からない。広東語しか話せない」と言った。また別のウエイトレスに私が英語で、友達が北京語で話しかけた。彼女はどちらの言葉も分からなかった。  何十人もいる従業員はホンコン出身だった。チャイナタウンでは雑貨店がそろっており、英語なしで不自由なく暮らせるのだ。
 私は「彼らはどうやって労働ビザを取ったのだろうか?不法移民はどれくらいなのだろうか?」と思った。

  ホンコンが中国に返還される時、多くのホンコン人がカナダに移住した。カナダ政府の受け入れ条件は、専門職か資産(預金)を持っていることだった。政府は中国人移民が社会の底辺の存在になって、国の社会福祉コストの負担にならないようにしている。 このように職を持たない労働目的の移民を規制していることは、おおむね各国の標準的な移民政策だ。アメリカもオーストラリアも、ヨーロッパ各国も同じ政策を取っている。
 オリンピックの前年にバンクーバーを訪れた。アメリカの週刊誌が市民の1/4になるという中国人移民の多さについてホンクーバーと揶揄していたが、見るは聞きしにまさるとはこのことで、街路には予期以上に中国人があふれていた。

 移民政策の極端な例にシンガポールがある。シンガポールでは、建設や医療の補助的な労働者には外国人を使っている。ただし、彼らの移民は絶対に認めないと政府高官が発言していた。こうして高級官僚→専門職→官僚・一般職→外国人労働者という4層の階級を維持している。アラブの産油国でも労働者の移民を認めていない。
 人口千人当たりの警察官数は日本の2人に比べてシンガポールは6人(正規、非正規)であり、強固な警察組織が社会秩序を支えている。それでも最近南アジア系の労働者が暴動を起こした。珍しいことだ。私がシンガポールを最後に訪問したのは1977年のことであるが、当時でも警察国家という印象を持った。  

 中国人の労働者が移民化することがアフリカでもヨーロッパで問題になっている。  その一つ、アメリカの週刊誌が詳しく書いたイタリアでの話。  
 中部の繊維産業の町プラトは人口18万人、このうち合法非合法の中国人移民が増えて現在3万人に達し、町で最大のコミュニティをつくっている。中国人の犯罪も増えているという。
 ほかにローマとナポリにもチャイナタウンがあり、イタリア全体では中国人移民が10万人を超えた。  彼らは私が前述した7つの特徴をすべて備えている。こうなると、最近ではイタリア市民の間で中国人排斥の声が高まっている。
 
日本政府のビザ緩和  

 今度政府は永住ビザ(労働権も与えられる)の条件を緩和し、これまで10年住めば与えられる永住ビザを5年に短縮するという。予測される労働者不足に対応するためだろう。  シンガポールと違って、日本では入国管理や警察の取り締まり戦力は不充分だから、緩和に伴って不法滞在者も増える。  
 難民や移民の受け入れには、先ず法律によって政策をしっかり確立しなければならない。 法律は饅頭のあんこであり、あんこをしっかり練らなければ、取り締まりがちゃらんぽらんになってしまう。計画的戦略的移民政策が求められる。目前の労働者不足に対する場当たりの対応では次世代に悔恨を残す。
 若者諸君よ、移民規制に対しては、少子化対策になる、人道的ではないなど見かけの正論(?)が出てくるから警戒した方がよい。  最後に念のため確認しておきたい。前述した私の考えは一国に偏る大量移民あるいは難民についてであり、すでに日本に住む外国人のことではない。彼らも同国人が大量に日本に来ることは望まないだろう。  日本でも少数が外国人排斥を唱えているが、私は排斥には組みしない。                   (完)    

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2014年1月8日水曜日

#106 ブラック企業と移民ーー「若者世論ネット」の戦果

 諸君たちがやった! 世の中を変えたのだ。  それは諸君たちが自らの劣悪で不当な労働条件を訴えるために、インターネット上でブラック企業の名称を使い始めて摘発したことです。そして、厚生労働省が動き始めました。 
 私が「若者世論ネット」を提唱するよりもずっと前に、若者たちがインターネットによってお互いに呼応し、緩やかな連帯をつくっていたのですね。 これこそ「若者世論ネット」です。

 
  さて、昨年12月には本稿を一つも書けませんでした。一ヶ月間も穴をあけたことは初めてのことです。 その間、病気ではなかったし、体調も悪くなかった。炬燵でちびちびと酒を飲み、うたた寝。雑誌と本棚の古い本を読む。ただ書けなかったのです。発想はいくらでもあるのに、いざまとめようと思ってパソコンに向かうと気が乗らなかったのです。長く執筆していると、こういうブレーキは時たまあることですが、今回のブレーキは長かった。昔、会社の仕事でも不調の時期がありました。諸君も経験しているかもしれませんね。 正月が明けてようやくトンネルを抜けました。

  ある日、小説のほかにブログの執筆が時に重荷だと漏らすと、友達から「大して読まれていないのやから、止めてもっと老後を楽しめばええ。なんのためにやっとるんや?」と言われました。「それはな、オレの遺書にするからや。こつこつと書き、こつこつと金を貯めて自費出版をする。その時には寄付してくれ」と答えました。これは本気です。
 オレの志はまだまだ、おっとどっこい生きている!

「ブラック企業」とは?  

 新聞の記事によれば、ブラック企業とは「長時間勤務やパワーハラスメントなどで過酷な労働を強い、若者を精神疾患にしたり、退職に追い込んだりする企業。新入社員を大量採用した上で選別し、パワハラを繰り返して多数を辞めさせることや、低賃金で長時間労働をさせ、追い詰められた若者を使い捨てるのが特徴的なやり方」と要約されている。  
 雇用の問題は、たとえ雇用側に不法行為があっても雇われている側には雇用主に直接改善を求めることは難しい。労働基準局や弁護士に相談すると、調査に入ってくる過程で誰が訴えたのかばれてしまう。中小企業も零細店も労働組合とは縁がない。なにしろ、労働組合の組織率はたった17%で頼りにならない。だから退職するしかない。
 今の若い者は我慢が足りないと批判することはお門違い。これからは「若者世論ネット」がものを言う。労働条件があまりにひどい場合には、匿名か仮名でほかの若者に情報を流すことは有効だ。雇用主の名前と立地名を書こう。不運に遭っている諸君も、今しばし仕事で忍耐してほしい。

ブラック経営者は無くならない  

 現実を見れば、不当な労働条件で人を雇用し、やっと生きている中小や零細の企業は少なくない。「まともな条件では人を雇えない」という言い分もあるだろう。  しかし、今、雇用の需給が均衡してきて、その上に法の監視が強まれば彼らブラック経営者には困難な時代になる。おそらく非正規やパートタイムの雇用を増やして生き残ろうとするだろう。
 今また政府は人手不足に対処するために、外国人労働者の受け入れを考え始めた。バブル期に日系ブラジル人を中心に大量の外国人労働者を入れたが、今も35万人もの在住者が残っているという。3Kの過酷な労働に耐えてきた人たちだ。彼らが多く住む町では、自治体は大変な重荷を今も背負っている。彼らの子供たちの教育支援に多くのボランティアが貢献している。
 政府は前回の外国人受け入れから何を学んだのか?  今度は若者労働者に代わって、ブラック経営者は彼らを雇うだろう。すでに研修の目的で来日した外国人を、研修は名目だけで安い労働力として使っている。  諸君の雇用機会を脅かすことになるかもしれない。どう考えるか?

◇ 諸君に何ができるか  

 アメリカ政府はTPP交渉で日本政府を押しまくっているが、アメリカが圧倒的に強い農業も、実は合法非合法移民のメキシコ人労働者を抜きにしては成り立たない。いくら機械化されても補助的な労働者を必要としているのだ。移民労働者はいくら働いても農地を持てない。
 ヨーロッパの先進国でも、外国人労働者を二等市民にして産業が成り立っている。アメリカのメキシコ人の農業労働者に比べれば、自営の機会が多いかもしれない。 日本も例外ではなくなるだろう。
 話は飛ぶが、関西にある女子プロ野球リーグの選手は、将来に備えて試合がない時に職業訓練を受けている。野球はいずれ引退することになり、就職を考えなければならない。そのためにパソコンや経理などを勉強している、
  私が諸君に言いたいことは、不遇が会社のせいなのか、仕事のせいなのか、区別して考えてほしいことだ。上述の三つの例では将来の展望が開けにくい。しかし、ブラック企業でもその道のプロになれるなら、転社(転職ではない)の準備ができるまで簡単にやめない方がよいかもしれない。本稿#18の「嫌な上司」を読んでほしい。     (完)

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