2018年12月30日日曜日

#204 日米のプロ野球を回顧――FENラジオから50年

 本稿では最近は深刻なテーマについて書いてきましたが、今年最後はがらっと変えて野球の話を書いてみます。  もともと対米中の1985年から物書きを始めた時は週末スポーツライターで、日本の月刊誌にいくつも掲載されました。本稿にもアメリカの高校野球について書いた小説があり、『オー、マイボーイ』で検索してもらうと出てきます。 
 今回は多くの話題が多かった日米のプロ野球について回顧してみましょう。 
 もともと小学校時代から野球狂であった私が、プロ野球に魅かれるきっかけになったのはアメリカのプロ野球が1949年(私は小学2年)に初めて来日したマイナーリーグAAAのサンフランシスコ・シールズでした。 
 日本のプロ野球が全東軍、全西軍、巨人と7戦して全敗。川上、大友、金田、スタルヒンの時代でした。当時から見れば日本のプロ野球は強くなったものです。 
 私は東京勤務時代に社宅のあちこちに風呂場などに3台の安いラジオを配置して、米軍基地のラジオ局であるFENをいつでも聴けるようにしていました。球場の歓声が入り、早口の大リーグ中継放送をよく理解できませんでしたが、後にニュースが分かるようになりました。

 ◇ 大リーグの麻薬使用が広がる
 私が大リーグの試合を初めて球場で観たのは1974年だった。 日本企業からアメリカに出張した時、週末にフィラディアまで観戦に出かけた。当時はフィリーズの黄金時代て、投手にはスティブ・カールトン、4番打者にはマイク・シュミットがいた。この二人は後に野球殿堂入りした。
  最初の印象は球場の雰囲気に日本の球場に比べて独特の華やかさかあることだった。 当時、外野手の間で麻薬が広がっていたと言われていた。アメリカ人で友達の野球通によると、鋼板かコンクリートで作られた外野フェンスにぶつかる激痛と恐怖に耐えるために麻薬を使用したのだという。 大リーグ機構はこれから麻薬の使用を禁じる対策としてソフトな外野フェンスに変えた。
 私が観戦した時にはまだ堅いフェンスで外野フライをフェンス際に外野手が追うのにスリルがあった。以後外野手の怪我が減った。

 ◇ ウイリー・メイズの引退
  アメリカ滞在中に、1973年に引退したメイズの引退セレモニーをテレビで観た。暗闇の球場のマウンドにスポットライトが当たると、メイズが立っていた。セレモニーは素晴らしい演出だった。
  彼は生涯660本の本塁打を打ち歴代3位、守備も巧く「史上最高の中堅手」と称された。サンフランシスコ・ジャイアンツ(前ニューヨーク・ジャイアンツ)では彼の背番号24は永久欠番になっている。1979年に野球の殿堂入り。
  後に長嶋選手の引退セレモニーではメイズのセレモニーと同じ演出が使われた。私には二番煎じであったが、感動的だった。

 ◇ 今年のクライマックス・シリーズ(CS)
 CSに異変が起きた。セリーグで4位に低迷していた巨人が終盤で3位になり、滑り込みでCSに出場したことだ。67勝71敗で負け越しの球団がCSに出たことは初めて。
  2007年にCSが発足した時、巨人の渡辺恒雄オーナーがCS制度に反対し、「巨人がパリーグの3位球団と試合できるか!」と言った。
  私はパリーグで優勝したライオンズのオーナーに「負け越しの巨人と試合できるか!」と言ってほしかった。巨人が第一ステージで負けたからいいものの、日本シリーズに出ていたらもっと話題になっただろう。
  負け越し球団が日本シリーズで勝って日本チャンピオンになれる可能性がある制度は早晩改革する必要がある。さしあたり負け越し球団はCSの出場資格を失うことにすればいい。
  もともと大リーグの26球団に対し、日本では12球団しかないのだから二段のCSは要らないのだ。リーグ1位と2位の球団でCSをやればいい。 しかし、CSが各2球団になると、試合数が少なくなって野球機構NPBの収入が減るから容易に改革が進まないだろう。
  因みに、NPBの経営資金は主にオールスターとCSの興行収入に頼っているからだ。
  NPBはどう対応するのか? 

気の毒だった高橋監督 
  来期から原監督に代わって巨人の補強が目立つ。補強らしい補強をしてもらえなかった高橋監督は気の毒だった。
  今シーズンの半ば、友達から巨人について訊かれた。 私は答えた。「今の戦力では3位になるのさえ難しいだろう。なぜなら下位打者のほとんどが他球団に行くならレギュラーになれないからさ」    私でさえこんな見通しをできるのに、フロントは手を打たなかった。高橋監督は若手で無名の岡本(年俸1200万円、来期は8000万円)を4番打者に育てた功績があったが、フロントは打線の弱さを認識できなかった。
   巨人の監督の人選もおかしい。巨人が監督の条件として、現役時代に有名選手だったこと、話し上手であることらしいが、これでは強いチームになれない。他の球団や大リーグの監督と比べてみれば分かる。 無理に思えるほど広島など他球団から有力選手を入れたが、はたして来シーズンはどこまでやれるか?少なくとも苦手の広島を弱体化したが。         (完)

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2018年11月28日水曜日

#203 年寄りが重荷の日本――きわどい饅頭論

 政府統計の予測によると、2025年には65歳以上の人口が3600万人を超えるということです。近未来のことだから外れることはないでしょう。全人口の約4人に1人が高齢者とは恐ろしい。  
 政府はあれこれ方策を考えていますが、この困難はちょっとやそっとでは克服できそうもない。我々年寄りは逃げ切りセーフであるが、若い諸君たちには大変なことです。
 論理が正しくとも正しくないことが世にあることを諸君の思考に委ねたい思います。

 ◇ 日本の人口減と社会福祉予算 
 もう20年も前のこと、高齢者が増えて国の医療費負担が重荷になってきた時、大阪市内のコーヒーショップで本を読んでいた。そこへ20代の4人が隣席に座った。いつものように若者たちの声を聴いていた.
 やがて彼らの話題が年寄りのことになった。これまでの若者に比べると、多分テレビのワイドショウから仕入れたのだろうが、まあまあまともな議論を始めた。黙って聴いていた。盗み聴きなのであるが、私にとっては世情を知る機会だった。 記憶に従ってかれらの会話を再現してみよう。

  「一体このまま年寄りが増えると、国の年金負担がオレたちの時代にはどうなるんやろ」
  「年金だけやない。高齢者医療費はもっと悪い」 
  「政府は年々財政負担が増えて赤字がますます悪くなるのに、何も手を打たないな」
   「消費税を値上げすると言っている。それでも焼け石に水やな」
  「いや解決策はある。年寄りが死ねばええのや」
   「そりゃ、無理やで。殺すわけにはいかんやろ」 

 私にはまだ他人事だったから、アホなやっちゃと聞き流しにしたが、今なら腹を立てるだろう。彼らは少なくとも危機感を持っていたが、一般市民の関心は薄かった。

 ◇ 延命治療は本当に正しいか 
 その後20年、最近では延命治療が問題にされてきた。 延命治療というのは、治療で回復することがない病気の高齢者に対し、人工呼吸、 胃ろう(喉に管を入れ、流動食を流して栄養を取る)、点滴などで延命をすること。 多くは意識がない。家族には大変な重荷だ。 
 私は当地で入院して寝たきりの旧友を2年以上、ひたすら意識が戻ることを願って見舞いを続けたが、無意識のまま亡くなった。その大病院には無意識の寝たきり患者があふれていた。
 私はこの機会に遺言の形で「延命治療は受けない」と書いた。なぜなら家内も家族も口頭で医師に死なせてほしいと言うことは困難だからだ。  
 他方、命を救うことは医師の使命だとする医師も死ぬことが分かっていて管を外すことができない。  周囲には親戚が寝たきり患者がいるが、他にも多数、もう数年も延命措置で生きている(これでも生きているのか)。すべて国の高齢者医療保険が適用されている。

 ◇ 「楢山節考」と姥捨て山 
 1957年に深沢七郎が小説「楢山節考」を書いた。木下恵介によって映画化もさ れたので評判になった。今は忘れられたが、テーマは生きている。
 村人が食べていくのも困難な貧しい村で、村の規則によって高齢者を山に捨てるという深刻な哀しい話だった。
 仮に、日本が崩壊の危機になった時、法律で延命措置を禁止したら、諸君はどう考えるか?
  次の世代が生き延びるためにやむを得ないというのは論理的に誤りではないだろう。

優生保護法と被害者の保障 
  戦後間もない昭和23年に国会で優生保護法が成立した。 この優生保護法は劣勢とされる女性に不妊手術や、病気の赤ちゃんと診断された時は中絶を法律の名で行い、強制したのだ。母性の健康と生命を守るという名目もあった。
  これが70年後の今、被害者が人権を無視されたとして政府に保障を求める訴訟を起こしている。政府は当時の政府の誤りを認めて対応している。 さて、本当に当時の政府は誤りだったのだろうか? 
  優生保護法は民意によって選ばれた国会議員か発案し、国会で法律になった。政府は法津のもとに行政機関として対応する義務があった。他に選択はなかった。人道上の問題はさておき、論理だけから言えば、当時の政府に誤りはなかった、と私は思う。
  韓国政府と比較してみよう。 韓国政府は慰安婦と徴用工の問題について、わずか13年前に両国政府間で交わされた合意に反して日本政府に対して保障を求めた。これは論理に反する。論理が反日政策の一つとした非論理を韓国世論に迎合して無理やり通したのだ。
  これの反対例。私がアメリカ生活中に、ノーベル賞の受賞者の精子を使って優秀な子供をつくる運動があった。短いテレビの報道を一回見ただけで盛り上がりはなかったようだ。友達の話ではユダヤ人のグループだったという。 
 帰国してから全国紙に面白い小話が出た。天才学者が若い美人に結婚を申し込み、「私の頭脳と君の身体から素晴らしい子供ができる」と説得したら、美人が言った。 「その逆で私のオツムとあなたの身体で生まれてくる子供が心配」だと。

 ◇ あんこだけでは饅頭にならない
 世の中は、特にビジネスでも政治でも基本は論理で成り立つ。つまり物の道理に従わなければならない。さもなくば「道理が引っ込めば無理が通る」ことになり、世の中が乱れる。 ところが、難しいことは、あんこだけでは饅頭ができないように、何事にも情実の皮である非論理が常に加味される。情実の中で最も説得力があるのは人道的配慮だろう。 
 それでも基本は論理が守らなければならない。本当に難しいことだ。            (完)        

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2018年10月31日水曜日

#202 スポーツの監督もお上頼りか――国に何ができるのか?

 新聞報道によると、相次ぐ競技団体の幹部によるパワハラ事件についてスポーツ界のみならず世論が政府による監督強化の声が上がっています。例によって、何かあるとお上頼りという風潮でしょうか。  選手が協会を訴える、極端な例では内閣府に訴えるというのはどこかおかしい。考えてみると、個人種目の選手です。もちろん、団体競技であっても個人が競技します。  彼らには社会経験が少なく、またチーム競技を知らないことが共通しています。  私は小学校では剣道(竹刀(しない)競技)、中学校から大学まては野球部でしたが、この経験から言うとチーム競技では監督によって運不運があることは普通であり、不遇であっても我慢しているうちに道が開けるので、私も誰も監督やその上にも上訴することは稀なことです。それは自滅行為だからです。 
 さて、監視監督をお上に頼って何を期待するのでしょうか?
 因みに、アメリカには国内オリンピック委員会の他には全国組織がないし、お上にスポーツ庁はありません。

 ◇ 貴乃花騒動 
 日馬富士の暴力事件から思わぬ展開になった。現役横綱と貴乃花親方の二人の人材 を失った。相撲協会とファンにとって不幸な出来事だった。
 それにしても、私が将来の理事長と思っていた貴ノ花の挙動は不可解だった。
  弟子の貴乃岩が暴力被害者であったことから、貴乃花親方が理事でありながら協会の理事会に出席せず、呼び出しにも応じずに審査協力を拒否した。理事会は会社で言えば取締役会だから欠席を続ければ取締役を解任される。貴乃花は理事を解任され、降格された。
 この頃、私は協会の措置は当然と思ったが、周囲は協会を批判し、貴乃花を応援していた。世間とはこういうものだろう。 
 ところが、彼が協会から離れ、部屋を解散すると世間の風向きが貴乃花批判に変わってきた。  少数派の意見にはこんなものがあった。 

 「運転手付きの高級車を乗り回し、毎度仕立ての高級背広を変えて、相撲部屋というのは儲かるもんだな」 
 「現役時代には多彩な技を使えた貴乃花が、なぜ協会に対しては突っ張りだけの単純な技しか使わなかったのか」 
 「相談相手の弁護士は何をしていたのか」 
 「結局、自分を追い詰めただけで、あんな態度では相撲界の改革はできない」
  「功をあせったのか、改革の計画も戦略もなかったのだ」 
 「純粋培養の育ちの限界だったか」 

参議院選挙にかつがれる 
 来る参議院選挙に自民党が貴乃花を候補に立てるという。
  彼は部屋を解散し、弟子たちを手放し、相撲協会と縁を切った。まったく自由の身になったのだから、ひょっとすると選挙に出るかもしれない。自民党の筋では70万票を取れると言われている。
  彼は演説では何を話すのか?
 今度の騒動では戦略的思考が必要なことを学び、どんな政策を訴えるのか? 

不祥事はスポーツ界に限らない
 官僚の文書改ざん、医科大学の不正入試、企業の品質検査ごまかしなど不祥事が相次いできた。数年の間に集中して繰り返し起きてきた。
 思うに、今は警察・検察の力が犯罪と辛うじて均衡を保っているようだ。

 ◇ 諸君たちに説いてきたこと
  私は本稿においてリーダーか将来のリーダーに対して、教養と論理的思考力を磨いてほしいと言ってきた。 教養とは人に見せびらかすためではなく、自分のデータベースを大きくし、いつでも必要に応じて取り出せることだ。教養は知識と言ってもよい。
  そして、論理的思考力とは道理に従って自分で考えることだ。世間に通用する道理には怪しいものがあるが、おおむね正しく自分の規範にすることができる。
 もう一つ。計画や戦略を立てる時には、普通の人が考える期間の2,3倍を設定するといい。成果が上がらなくてもじっと耐えれば大抵の場合、目標を成就できる。
  さて、諸君たちが持てるデータベースと思考力を働かせるなら、私の考えに反発するか、共感するか?か?                (完)        

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2018年8月21日火曜日

#201 学生スポーツとNCAA――アメリカに追随するな

 前回でスポーツ団体の不祥事はまだあると書きました通り、日本剣道連盟でも教士になるための資格審査の前に、候補者が審査員に金を払っていたことが露見しました。
 日大アメフト部、日本ボクシンク連盟の不祥事から続いたことです。
 日大アメフト部事件の前に、テレビ番組でジャーナリストが、大学運動部の改革のためにアメリカにならってNCAA日本版の組織をつくる必要があると説いていましたが、これは問題があると思います。指摘してみましょう。

  NCAAとは何か?
1990年に『College Sports Inc.』がNew YorkHenry Holtという著名な出版社から刊行された。直訳すると『大学スポーツ株式会社』だ。
NCAAというのは全米大学体育協会のことで、全米の大学運動部を支配、運動部長は大学の一つの要職であるが、任命はNCAAが行う。米国で学生の四大スポーツと言われるフットボール、バスケットボール、アイスホッケー、レスリングなどの競技会を主催し、その興行収入から潤沢な資金を得ている。分配はNCAAが決める。
運動部長の任命権も罷免権も学長は持っていない。言い換えれば、大学の中の運動部を学外から水平組織として支配している。
有望な選手を大学に推薦入学させるが、その中で競技を辞める選手は同時に大学から退学させる。
高校野球部のコーチをしていた時に教え子の一人が、テキサスの野球強豪大学に推薦入学したが、半年後にコーチと口論したことで退学処分にされた。低所得の母と子一人の家庭で前途多難だ。
私は過去に本の出版で世話になった編集者に声をかけたが、当時NCAAは日本ではまったく知られていなかったので見送りになった。
前述の本が出た頃、NCAAを批判する意見があった。今もある。

  アメリカの学生レスリングの人気
隣町にアメリカでレスリングの英雄として知られるブルース・バウムガートナート懇意になった。彼はオリンピックで二つの金メダルと一つの銀メダルを取り、アトランタ・オリンピックではアメリカ選手団の旗手に選ばれた。彼がコーチ(監督)をする大学レスリング部を二度訪ねてNCAAの話を聞いた。自宅に夕食を招いたこともある。
翻訳が実現しなかったので、スクールバスに同乗して全米レスリング大会にも出かけ、
大相撲本場所に匹敵する会場の雰囲気に驚いた。
 その後で、月刊誌『オリンピアン』(11月号から5回連載、1996年、ベースボールマガジン社)に「三人の金メダリスト」を寄稿した。他の二人の金メダリストは日本の佐藤満と韓国のキムヨンナム、直接取材して話を聞いた。ここで三国のスポーツ環境の違いを書いた。
 興味を引いたことは、ブルースを除いて他の二人は息子にはやらせたくないと言ったことだった。

  「NCAAから学べ?」、論理がおかしい
一連のスポーツ団体の不祥事が起きる前に、テレビ番組でスポーツジャーナリストが
NCAA日本版をつくる必要があると提唱していた。私は驚いた。
「NCAAのどこが良いのだ?」、「もっと勉強してからものを言え」と思った。
 もっと大事なことで、論理の誤りがある。会社でも政治でもよくあることだ。
 それは、Aが悪い→Bが良い、という直結思考だ。危険なことは、Bも悪いかもしれないことだ。また、Aを改革するという選択もある。
 現在ある各競技団体の上に屋上屋を建てるようなもので、人材と金をどうするのか?
 何事を改革するにしても、こういう未消化の提案は危ない。

 私はNCAA日本版には反対する。起きている不祥事の改革にはつながらない。今は大学の理事会に運動部専門の理事を選んで、大学が改革すべき時だ。
(完)


  


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2018年8月9日木曜日

#199 消えた台湾主催の国際スポーツ大会―なぜIOCは中国の言いなりか

日本のメディアは報道しなかったが、来年8月に台湾の台中市で開催予定だった「東アジアユースゲームズ」が中国の横槍で中止になりました。
 背景には中国政府の「中国台北」の表記を要求し、台湾政府が「台湾」表記にこだわったからです。
 私は台湾表記問題について詳しい論文を用意していますが、いずれ月刊誌に出たらお知らせします。

「一つの中国」にトランプ大統領がアドバルーン
 トランプ大統領が就任して間もなく、「アメリカは一つの中国にこだわらない」と声明して中国政府を刺激した。しかし、その後はだんまりで実行は何もされていない。
 そう、この大統領の得意技はアドバルーンを揚げることと、自画自賛の二つで、実際には、くすぶっている世界の問題を表面化しても実行力に乏しい。
 私は世界の世論が盛り上がり、台湾問題が認識されることを期待したので、大統領の空振りに失望した。
 しかし、米議会が米台両国の政府高官が自由に行き来できるように台湾関係法を成立させたことは一歩前進だ。

民間は支援できる
 日本政府が中国政府の政策に反対できない立場はやむを得ないとしても、日本の世論も台湾問題に無関心で、メディアも逃げていることは情けない。少なくとも我々民間人は立ち上がることはできる。
 中国政府にとって台湾は南シナ海を領海化するのに重要な立地だから、台湾の独立は絶対認めることはできない。しかし、中国の国民はどう考えているのか?

読売新聞が報道
 読売新聞が8月5日のコラム「ワールド ビュー」で台湾の国際大会中止について詳しく書いている。見出しに政治干渉と書いた。北京支局の中国報道に制約をかけられるかもしれないのに、日本のメディアとしては思いきったことだ。
 8ヵ国で構成される東アジアオリンピック委員会の会合では、「チャイニーズ・台北」の表記に台湾が反対、日本は棄権した。中国に金縛りされている韓国、北朝鮮、モンゴル、香港、マカオは賛成した。

なぜ「チャイニーズ・タイペイ」なのか?
 1981年、IOCが台湾に対し、「チャイニーズ・タイペイ」で参加することを認めたことで、37年も経っているのに、IOCは中国政府の言いなりのままだ。せめて「チャイニーズ・タイワン」で妥協できないものか。

「一つの中国」がスポーツも支配
 中国との経済関係に配慮して台湾でも独立を主張する勢力は弱い。まだ多くが現状維持を求めている。
 それでも呼称変更については台湾の多くの人が望んでいることだから、日本は民間から支援すべきだ。私はいつの日かトランプ大統領が「一つの台湾、一つの中国」を唱えてほしいと願っている。
 
日本ボクシング連盟の山根前会長
 企業、省庁、大学からスポーツ団体まで不祥事が相次いでいる。
 私は週刊誌やテレビのワイドショウが取り上げるホットな話題を本稿で書かないようにしているが、今回は山根組長の件に悪乗りしてみたい。
 先ず、あんな独裁者をよく出したものだ。子分理事たちは世論の批判を浴びていても、理事会で彼の退任を決議できなかった。企業なら取締役会で会長の解任を決めるだろう。
新聞もテレビも報道だけでなく、解任する論評を出してほしかった。独裁者を生む素地はどこにでもある。これが恐い。
 ほかにも、例えば、省庁の外郭団体や公益法人でも独裁者がいるはずだ。
 第二に、彼には違法行為がいくつかあるのに、なぜ警視庁か東京地検が捜査によって彼の逮捕に動かなかったのか?
 第三に、理事たちにも責任があるのだから、なぜ総辞職の声が出なかったのか?新会長が誰になったところで、現理事たちではもともな改革はできない。新会長の英断に期待したい。

アメリカでボクシング禁止
 話は古いが、1980年代末にアメリカ人の世界チャンピオンからパンチを受けた韓国人選手が死亡する事故が起きた。これを契機にテレビのスポーツキャスター、ハワード・コーセルがボクシングの廃止を唱え始めた。彼は著名なキャスターだったから、影響力があり下院で公聴会が開かれるまでになった。議員が危険なスポーツは他にもあるが、なぜボクシングだけなのか?と問われて次のように答えた。
  「もちろん、危険なスポーツは他にもあります。しかし、ボクシンクを除く他のスポーツで、死傷者が出るケースはすべて百パーセント事故によるものです。ところが、ボクシングでも死ぬのは事故であるかもしれませんが、実際には選手は初めから相手にダメジを直接与えるために闘っているのです。ダメジを与えることそれ自体が目的なのです。しかも自分の放つパンチが相手を死に到らしめる危険があることを、選手は承知しているのですよ。もはや今日の形のままでボクシングを続けさせるべきではないと思います」
 (以上は拙著『蘇れ日本のスポーツ』1986、大修館書店からの引用。本は図書館にある)
 残念ながらボクシング大国アメリカでは彼に同調する世論は少なかった。
 かつてアマチュアボクシングでは選手はヘッドギァを着けていたが、今は着けない。なぜなのか?                  (完)


追記、8/12。一つ書き忘れたことを追加します。
中国政府の中国民用航空局が4/25に世界の航空会社に対し、「台湾」を「中国台湾」に表記を変え、地図上で台湾を中国大陸と同じ色で塗るように強要した。日航と全日空のほかアメリカの航空会社は台北など都市名に変えることにした。

 大きな国が小さく見える。


  


 

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2018年7月31日火曜日

#198 事実上、政党政治が崩壊――移民と難民の問題が加速

 諸君たちは日本政府が難民の受け入れに消極的であることを残念に思っているでしょう。しかし、感情に流されてはいけません。  最近のことで、イタリア政府は地中海を北アフリカから渡ってきた難民船を追い返し、やむなく隣国スペイン政府が港に入ることを認めました。イタリアは私がアメリカ生活中にもアドリア海を渡ってきたアルバニアからの4万人の難民をサッカー場に閉じ込めた後、 全員を送り返しました。彼らは国際法で定められた難民ではなく、経済難民とされたのです。
  難民というのは政治権力に命を脅かされたり、内戦から逃れる理由が求められます。  当時、人道主義の見地からイタリア政府を批難する声がありましたが、日本にはもっと人道主義者が多いように思います。ここが危ないのですよ。

 ◇ 石破元幹事長が総裁選挙に出馬  
 よくあることであるが、総裁選挙の前に候補が本を出す。彼も『政策至上主義』という本を出版した。新聞広告に謳われていることをそのまま書くと、 

  政局よりも政策を。対立よりも対話を。  
  この国には解決策が必要だ。 
  自立精神旺盛で、かつ持続的な発展を遂げられる国をつくるためにどうすべきか。  
  ひたすら政策を磨き続けてきた政治家からの熱きメッセージ。 
  自民党は誠実さ、謙虚さ、正直さを忘れるな。 
  防災省を設置せよ。 
  社会保障をもっと多様に。  
  与党はすきを見せてはいけない。 

 私は本を読まないで批判することは無責任であるかもしれないが、ここでは上記の謳い項目に限って言いたい。
 野党を含めて誰も異議を唱えないだろうが、私も防災省を除いて反対しない。言い換えれば、政治家たる者がみんな目指していることなのだから。
  そこで、防災省の設置は反対だ。防災や災害後の対応に関しては関係省庁が集まって緊急連絡会議を持つ現状でまあまあ機能しているし、防災省の新設によって大きな効果が得られるとは思わない。むしろ官僚機構の増大はマイナス面が大きい。
  感情に左右されているかもしれないが、敢えて言うと、石破候補の目つきとねちっこい話ぶりは受けない。海外に国の代表として出したくない。次の総裁選挙まで3年あるから、 コンサルタントに付いてイメージを変えれば、有力候補になれるはずだ。
 顔は本人の責任ではないにしても、顔の表情とイメージは本人がつくったものだ。

 ◇ カンボジアの総選挙  
 今週行われたカンボジア総選挙では、専制支配する与党が唯一互角の野党をつぶして20もの群小野党が乱立する中では全議席を取って圧勝したのは当然の結果だった。 欧米と日本は不正選挙を強く批判した。しかし、これでフンセン首相の独裁が強められる。 
 さて、ひるがえって日本の政治を見ると、内情はあまり変わらない。一党支配と群小の野党との対立という点だ。安倍政権の悪しきを問題としながら野党は支持されていない。
  私は労働者が労組員であってもなかっても、有権者が個人単位で支持する労働党を提唱しているが、あまりに道は遠い。 
 そして今、自民党は人手不足に乗じて、移民の資格を緩和して外国人労働者を招き入れようとしている。シンガポールやサウジと違い、不法滞在者の取り締まりが不充分な日本では労働期間の5年が過ぎても日本に滞在する彼らは不法移住者になるだろう。 
 どう見ても、町によっては増える不法移住者に対する対応に困ることになる。移民を受け入れるなら、先ず社会体制の整備が先に求められる。ずるずるのままではいよいよ社会問題を招く。日本では野党も移民問題を取り上げていない。 

  ◇ 極右政党が台頭する 
 ヨーロッパ各国もアメリカも移民問題に揺れている。そしてどの国でも移民に反対する右派政党が、中には多くの国で極右政党が台頭している。 
 仮の話であるが、私が新政党を立ち上げるなら極右政党にするだろう。なぜなら労働党より易しいからだ。どの国でも極右政党が掲げる政策は単純で不満を持つ大衆に受け入れられやすい。例えば、 
    日本は天皇をいただく大和民族の国、移民には反対。 
    中国の軍備増強と競争せず、やらせておく。 
     アメリカからの武器購入を減らし、独自に専守防衛の戦力向上。
     憲法9条2項を廃止、自衛隊を陸・海・空軍に再編。 
     中央省庁の官僚と外郭団体を減らすなど財政を再建。 
      韓国、中国の言いなりにならず、台湾との外交を深める。

 ◇ 諸君、日本の政治を注視せよ 極右政党に組するなかれ。日本の将来は諸君たちが決めるのだよ。                 (完)    

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2018年6月28日木曜日

#197 相撲協会の伝統がおかしい――NHKもおかしい

 
  ニュージーランドの女性首相が産休を取ることが話題になっています。そして、国会議員の40%が女性であることも報道されました。日本では10%であるとか。  諸君たちはどう受けとめましたか? 多分、「日本は遅れている」だったか。私は「それがどうした!」でした。 
 
  ◇ 土俵に女人禁制  
 大相撲の土俵には伝統に従って女性を入らせないというのは、本当に伝統なのか? 
 諸君は女性が大相撲の観戦すら禁止されていた時代があったことを知っているか。 江戸時代のことだ。 
 先般の大阪場所で急病の力士に女性の医師や看護師が観客席から土俵に上がって救急措置をしていたら、相撲協会が退去を要求した。ひどいものだ。 
 伝統というものは変わる。私は「守る伝統、変える伝統、つくる伝統」があると提唱している。「しがみつく伝統」は伝統のうちに入らない。 
 女性とは関係ないが、「変える伝統」の一つを挙げれば、外国人力士の入門がそうだ。1960年代に反対意見がある中、相撲協会はハワイ人に門戸を開いた。今では世界の数ヶ国に広がった。何か問題があるか? 
 この伝統も変わった。修験道の修行でも女性が参加できる山がある。当地富山の立山に江戸時代まで女性の登山が許されなかったが、今では万人に解放された。「しがみつく伝統」から「変える伝統」に変わった。 
 相撲協会が言うように相撲が日本の伝統の国技であるなら、表彰式は伝統から外れている。例えば、優勝者を表彰する時の音楽は「勝利の賛歌」の洋楽であるし、トロフィは日本古来の品ではない。授与者の服装も洋装で羽織袴ではない。伝統も時代に合わせて変わるものだ。 
 要するに、伝統とはしがみつくものではなく、精神を守ることなのだ。

 ◇ NHKの伝統とは 
 NHKの現在ある全国組織は戦前のラジオ局が、都道府県の県庁所在地ごとに支局が置かれたことを継承している。今も多くの支局は城か城址の一帯に立地している。かつてこのような支局体制について批判があった。「なぜNHKは娯楽番組か多いのか?」という批判もあった。 これに対し、NHKはまだ日本国内にはNHKの電波しか届かない地域があり、民放の娯楽番組を観られない人たちがいるからだと答えていた。時代が変わって今では台湾ですらNHKテレビを観られる。  今日、民放テレビはどこの地方都市でも地元のテレビ局があり、誰でも観られる。離島でもNHKも民放も観られる。それでもNHKの娯楽番組は多い。NHKのテレビには地上波では総合、教育の二つに加え、BSでも2局がある。その上、出版、番組制作の子会社に外注の会社も傘下にある。
 とてつもなく、NHKは巨大化している。さしあたり、娯楽番組を減らして組織の縮小が必要だろう。これは伝統を守ることではなく、組織改革だ。

 ◇ なぜNHKは台湾を報道しないのか? 
 台湾の知友人はNHKテレビをよく観ている。だから日本の日常を知ることができる。日本語を勉強する若い世代も観ている。 
 ところが、NHKのBSニュースでは世界23局を選んで各国のニュースを毎日放映しているが、なぜか台湾は含まれない。ヨーロッパでは英独仏に加えてスペインを選んでいても、EUで一体感があるせいか、ニュースの話題がよく重複している。
  他方、アジアでは香港、中国、タイ、ベトナム、シンガポール、フィリピンが選ばれ、台湾が入っていないのに、香港が中国とは別に選ばれているのは、最近よく言われるNHKの偏向だろう。
  先般日本に来た台風6号は、台湾南部に上陸したが、被害について日本のメディアはまったく報道しなかった。台湾は日本の東日本災害に200億円もの支援金を送り、ベトナム豪雨にも支援したのにである。 NHKは中国政府の顔色を伺い、台湾を無視している。

 ◇ NHKの日本語の乱れが止まらない 
 NHKの番組の出演者はアナウンサーからタレントまでカタカナ外来語を使い、日本放送協会から「日本語破壊協会」になっている。例は本稿に以前指摘した。 
 最近では「サブスク」という新語をつくった。本来英語のsubscription(購読)から来ているのだろうが、これを「常連さん」と読んでいた。  
 特筆しておかなければならないことがある。それはNHK職員の中におかしいカタカナ語を使わず、流行り言葉を出さない模範的な一群の話し手がいることだ。彼らは日曜6時の「世界はいま」に毎回出演する国際部のディレクターや解説委員だ。彼らに共通することは海外駐在のキャリアがあることだ。何か海外駐在と関係があるのだろうか。 私もアメリカで長年生活したが,アメリカ社会では国語を大切にする風土があった。帰国してから日本語に関心が深まっている。   諸君たちは「サブスク」が何かわかるか?     (完)    

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2018年5月24日木曜日

#196 野党は国政に戻れ――ばらばらの政治

 野党は森友加計問題について与党の対応が悪いという理由で国会を19日間も空転させました。閉会まで一ヶ月になろうとしているのに、いくつもの重要法案の審議が止まりました。 
 野党と与党の議員は19日分の議員報酬を返してもらいたい。諸君はどう思いますか?

 ◇ 男女共同参画推進法の全会一致  
 推進法は女性の社会進出を促進するために法律化したものであるが、いろいろ問題があることをメディアが報道していない。中でも国政選挙に男女同数の候補者を立てることを法律で定めようというのはひどい。もっと問題であると思うことは、国会両院での採決が全会一致であることだ。つまり一人の議員も反対しなかった。これは異常だ。言うならば、法案がおかしい。世間では女性の中にも反対者がいる。 
 諸君たちはアメリカの後追いと思っているかもしれないが、この法案は日本独自のものでアメリカには無い。 
 アメリカにはaffirmative actionと呼ばれて女性、黒人を始め少数派を支援する動きがあるが、10年も前か、有力大学が少数派に対して共通試験SATの点数を底上げすることを始めた。しかし、少数派の比率に応じて定員を割り振りするquota 制は実施していない。また、逆差別になるとして反対意見は根強い。
  なぜこんな法案が民意を必ずしも反映しない全会一致なのだろうか? 

議会制民主主義にも危うさ 
 この法案に対して反対する議員は一人や二人ではないと思う。本心では反対でも選挙を考えれば反対できないのだろう。私は世論を汲むことと有権者の顔色を伺うことは違うのだと思う。 まだこの法案に救いがあることは、男女同数の候補者であって、男女同数の議員ではないことだ。この法案は現実に効果がない結果になった時、今度は世論に押されて男女同数の新法が国会に出される可能性がある。これはquota制つまり割り当て制であり、希望的観測であるが、全会一致にならないだろう。
  敢えて言うなら、女性の多くは一点にこだわり過ぎ、全体を見ることに欠けるようだから国政の政策責任者には向かない。現に目前の一点に集中する利点を生かせる研究者、弁護士、会計士や官僚に能力を発揮している女性は少なくない。
  我々が信じる民主主義の根幹である選挙に基づく議会制民主主義にも危うさがあることを認識したい。

 ◇ 改憲と住民投票  
 今の憲法ができて80年、一行一句すら改訂されていないことは、世界でも珍しい。 
 この間に世界は激変した。日本は改憲の壁が高いので、国の安全保障についてはやむなく現実的に法律の範囲で対応してきた。相変わらず改憲は戦争につながるという平和一点主義の世論が根強い。 
 これまで自民党政権は中曽根首相以来、改憲を説得してきたが、最近の世論調査では賛成がやっと51%を超えた。しかし、住民投票の段階になると、反対のメディアが煽って住民の中には反対者が増えるだろう。まだ住民投票には早い。世論は改憲反対に流れる。
  わかりやすく説得を続けると首相は言うが、国民の理解を増やすことは、現実にはなかなか困難なことなのだ。例を挙げてみよう。  
 私がよく使う喩え話で、政治から同窓会まで会を組織しようとすると、「据え膳をつくる人は10%以下、据え膳を食べてくれる人は多くて40%、残る半分以上の人は出された据え膳を食べようとしない」、つまり半分は関心を持たない。
  どの世論調査においても、約半分は「どちらとも言えない」だ。これからは「どちらとも言えない」を「どうでもいい」か「わからない」に変えたらどうか。要するに無関心なのだから。

 ◇ 野党はほかにやることがないのか? 
 国会が再開されても、相変わらず審議の時間は森友・加計に費やされている。野党はほかにやることがないのか?
  野党がどれくらい気づいているか怪しいが、世間の目は冷たい。森友・加計問題の追及について、「もうええ加減にしろ」、「追求はもうどうでもいい」と言われている。現に政党支持率の世論調査では野党はどれも上がっていない。
  私は、森友問題の追及は大阪地検の捜査結果が出るまで中止すること、加計問題については当面休戦することを提案したい。「言った、言わない」、「あった、なかった」、「隠した、隠さない」などと水掛け論がいつまでも続くからだ。 この間に重要法案をしっかり吟味し、野党の考えで修正することに集中してほしい。
 これまでと今の法案について、私の疑問は、例えば

 ① なぜ国家の最重要課題である財政健全化に合わない年度予算をあっさり通したのか?
 ② 当時の民主党が実施した事業仕分けと天下り規制はどうなったのか? (私の推測では自民党政権になってから緩んでいるはず)
 ③ 地方創生など各地方でやれること。首都圏集中対策に予算を使ったらどうか?                               (完)

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2018年5月11日金曜日

#195 トヨタの内部留保――トヨタは下請けに為替差益を返せ

 最近の新聞でトヨタが18兆円の内部留保を貯め込んでいると報道されました。また、今期の利益は最高で2.8兆円と今週の新聞に出ました。他の産業ではとてもこんな利益を出すことはできません。その中には下請けからの搾取によるものがあるでしょう。  私が末端の下請け企業で社長として経営再建に当たったことから、一つの例として実態を書いてみましょう。

 ◇ 下請け企業の実態 
 自動車メーカーの下請けには四重構造がある。それは自動車メーカーに直接納入をする 大手部品メーカーは下請けから部品をセットとして供給され、その下に小部品をセットとして組み立てる中堅メーカーがある。さらに部品を単品として納入する下請けがある。この部品メーカーも一部の加工をさせる末端の下請けを持っている。これは四次下請けだ。 
 二次下請けまでは利益を出しているが、以下の経営は赤字か最小の利益しか出せない。
  私がU社の社長に就任した時、月末になると運転資金が底をつき、毎月地元の信金から緊急融資を受けていた。すでに累積赤字(借金)は資本金の10倍を超えていた。 
 私の最終目標は月末の緊急融資を無くし、新しく経営陣の体制をつくることであった。最初の目標として「持てる技術を生かしていないものと、赤字を変えられないものは新規受注に置き換えて生産を止める」と社員に表明した。営業に自動車部品以外の新規開拓をするようにプレッシャーをかけた。「これ以外に赤字を削減し、給料を上げる手はない」と言った。 
 半年の間、私自ら値下げを要求してきた大手に出向いて、「我が社は要請された値下げについていけない。二ヶ月は現行価格で納入するから、代わりのメーカーを見つけてほしい」と条件を出して認められた。 
 ある日、検査を担当する女性社員が産休を取った。後に成果が出て、月末の緊急融資はなくなった。しかし、まだ月度決算の赤字は続いた。 
 製造部門から代わりの検査工を採用するように要望が出てきたが、電気メーカーに納入してきた単純な加工品で全数検査のコストがかかり、赤字であるこの製品を止めることにした。産休で直ぐには熟練工を雇えないことを理由にし、これから二ヶ月は納入するが、検査なしを条件にした。 営業に対し、代わりの受注を取ってくるように圧力をかけた。

 ◇ 自動車メーカーの御用商人  
 ある日、トヨタ系列の大部品メーカーと取り引きしている専門商社に連れられて二次部品メーカーを訪れた。簡単な電極が埋め込まれた納入部品の中に磁性を帯びている部品が一点見つかったので全品クレームとして返品するというのだ。私は一点だけ代品を納めることで折り合いをつけようとした。ところが、このロットには他にも磁性を帯びているものが含まれる恐れがあるとして全品の代納にこだわった。 
 そこで、不良品と言われる一品を持ち帰って再検査したいと申し出ると、商社担当者は、もう結論だと引き下がらない。私は多少むかついて、「我が社には磁性を出す環境はないので、全品を持ち帰って全品検査をすることではどうですか」と反論した。
  結局、泣く子と買い手には逆らえないと観念した。作り直しで赤字になった。 
 この時、一つの発想を得た。それはこの商社は尾張藩お抱えの御用商人なのだ、と。  
 打ち合わせ前に会議室のテーブルで待機しているところへ部品メーカーの担当者3人が入ってきた。驚いたことに、商社マンはすかさず席を立つと、入り口まで行き、3人の前で上体を45度以上に下げて最敬礼して出迎えた。部下と私はあっけにとられてそのまま座り、テーブルを挟んで名詞交換した。私は営業経験が長いが、ここまで最敬礼する場に出合ったことはなかった。アメリカではたとえクレーム処理の打ち合わせでも両者が軽く握手して挨拶することが普通だから、前述のような最敬礼の場を見たらびっくりするだろう。 
 後日、この商社から営業部長に電話で私が反論したことに対し、文句を言ってきた。営業部長は私に謝罪に行けと言うから、「出張費しかかからないからいくらでも行ってやる。ところで、何か私が間違ったことを言ったと思うか?商売の気遣いとして相手の言い分に沿っても饅頭のあんこである論理はしっかりと理解しろよ」と話した。 
 結局、これ以上謝罪の要求はなかった。取り引きを切られることもなかった。多分彼を諌める上司がいたのかもしれない。 
 しかし、今回は相手の言いなりになるより仕方なかった。

 ◇ 一寸の虫にも五分の魂 
 利益率が薄い製品を新規に取り引きする下請けに外注することにした。自ら出向き社長と交渉して価格では受け入れられた。
  ところが、トヨタから順に降りてきた例の「不良品が出た時には買い手と売り手の間で全損害の賠償について両者で交渉の上で決める」という条文を受け入れられないと言った。私は困ったが、この社員15人くらいの中小企業の社長の気概に感心した。この中小企業は大口の注文を取らない方針だという。 
 結局、発注しなかった。  この会社の社長は、言うなれば「一寸の虫にも五分の魂」の持ち主だった。  

 ◇ 『自動車絶望工場』 
 アメリカでニューヨークに出かけた時、本屋で偶然英語版の『自動車絶望工場』(鎌田慧著、講談社)を見つけて買った。日本メーカーが相次いで現地生産を始めた頃であった。 
 その後、一時帰国した時に日本語の原書を買ってすぐに読んだ。すると、原書ではマルクス主義について書かれているのに、英語版ではすべて省かれていることに気がついた。 
 強い関心が湧いて早速著者に連絡したところ、快く会っていただけた。彼の話によると、すべてアメリカの出版社まかせで英語版の編集稿を読む機会はなかったという。憶測でいろいろと話し合った。要するに、アメリカではマルクスも社会主義も嫌われていて販売阻害になるからだろう。もう一つ挙げれば、アメリカ市場で勢いを増してきたトヨタ社に対して、トヨタのすさまじい日本での生産の実情を暴く悪意もあったかもしれない。  

 ◇ 為替差益の一部を下請けに返せ 
 2008年9月のリーマンショックの後12月から円高が進み、12月には87円/ドルになった。さらに80円を切った。 
 この時、トヨタは全下請けに社内レート85円に対処するために猛烈な値下げ要求をした。一度下げられた価格は元にもどしてもらえず。現在もトヨタ以下の下請けに対する「生かさず殺さず」の政策は続いている。天守閣に居る藩主はどれだけ実態を知っているのだろうか。 
 今、藩主の英断でトヨタの繁栄を賃上げもままならない下請けにも分かち与えることを要望したい。他社も続くだろう。そうすれば景気にプラスになる。 
 レースカー専用のテストコースに18億円もつぎこむ藩主の道楽をやめて名君になってほしい。                (完)    

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2018年4月1日日曜日

#194 幻想の南北朝鮮の融和

  意外な展開で金委員長が中国を訪問しました。私は外交上の支援を求め、また物乞いをするために妹の代理訪問はないと思っていました。メディアの関係者の中にはそう思っていたでしょうが、事実の検証なしでは報道できなかったのです。 
 さて、諸君たちはどうとらえているか? 

金委員長がロシアを訪問  
 今月、金委員長が中国訪問と同じく、支援を求め、物乞いのためにロシア訪問を決めた。ロシアはスパイ問題でヨーロッパ各国に攻撃されているから、ここぞとばかり北朝鮮の支援に動く好機だろう。 
 「北朝鮮はいよいよ経済制裁により物資が底をついた」とか、「米朝会談に備えるため」だとか、諸説が言われている。 
 さて、北朝鮮がミサイルと核を放棄することはあり得ないと思うので、米朝会談の成果には多くを望めない。なぜなら、ミサイルと核を放棄すればアメリカを敵国として煽りたてて統治の材料にしてきた根幹の政策が崩れてしまうからだ。国民も遅かれ早かれ「軍事と経済の併進」が嘘であることを気づくだろう。 
 おそらくプーチン大統領がロシアへの亡命を勧めると見られる。

 ◇ 北朝鮮の万景峰号と列車  
 オリンピックが終わって帰路についた万景峰号には燃料が満タンにされ、密かに石油、食料、医薬品が積み込まれた。これには厳戒体制が敷かれている港で積み込みを韓国陸海軍が行った。夜間であり、警戒が厳重で衛星による監視を逃れた。 
 北京から帰る列車にも中国政府からのみやげとして当面必要な物資と札束が積み込まれた。長い列車の半分は内部が貨物車に改造されていた。 
 モスクワからの帰りの列車にも物資が満載される。 

文大統領にノーベル平和賞  
 ノーベル賞委員会は今年の平和賞に文大統領を選んだ。人道支援を訴え、南北融和の外交努力が評価されたのだ。 

  ――以上はすべてフェークニュースです――

 ◇ 韓国民は北朝鮮の統合を望んでいるのか? 
 東ドイツが西ドイツに統合された時、あの経済大国だった西ドイツは大きな重荷を背負った。主に経済格差と教育格差が問題だった。当時アメリカで生活していた私は、「東ドイツ人の多くは利益という概念が分からなかった」という報道をテレビで観たことがある。また、統合後に東ドイツ訛りのドイツ語が差別されたと言われた。 
 金委員長の統治が少しでも緩めば、たちまち北朝鮮から中国と韓国に難民が押し寄せる。日本にも一部が来るだろう。 文大統領の統治下で経済や社会の構造改革を進められないのであれば、国力の弱体化を避けられない。南北融和と反日の外交で国民の支持を得ている文政権は危うい。
 韓国民は本当に統合を望んでいるのだろうか?

 ◇ 米朝首脳会談の行方  
 私の知識では、金委員長の対米要求は、朝鮮戦争以来の休戦協定に代えて平和協定を結ぶこと、北朝鮮を核保有国として認めることであり、アメリカの要求は北朝鮮が核・ミサイルを放棄することだと思う。そうならば、両国が譲歩して相いれることはあり得ない。
  専門家の中には北朝鮮が核・ミサイルを放棄すればただの貧乏小国になってしまうから、米朝首脳会談は、結局、実現しないという意見があるが、私も同じ意見だ。 
 いすれ経済制裁により北朝鮮の内部崩壊を待つしかないのか。もしこの事態になれば、韓国に及ぼす影響は計りしれない。韓国政府はなんとかこの事態を避けたいのだろう。
 諸君たちは日本にとっても対岸の火事でないことについてどう考えるか?           (完)

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2018年3月20日火曜日

#193 ああ、オリンピックーー頑固老人のぼやき

  ピョンチャン・オリンピック期間、その前後でも新聞とテレビのメディアがはしゃぎました。諸君たちも乗せられたでしょう。  しかし、一つの疑問は、メディアが報道したように日本のメダル13個は長野オリンピックを上回ったのでしょうか。  私は頑張った選手とメダル獲得者にケチをつける意図はありません。  物事を客観的に見る、そして違う視点を持つことは、諸君たちの人生で本当に大切なのです。 

客観的事実とは 
 長野オリンピックでは68種目の競技が行われ、日本選手は12個のメダルを取った。ピョンチャンでは102種目に増えた中でメダル数は13個だった。種目数を比較すればメダル数は増えたのではなく、実際は減ったのだ。
  諸君たちの多くはメディアの報道を鵜呑みにしただろう。メディアの報道とはすべからくこんなものだから惑わされてはならないのだ。ましてスマフォの断片的な情報はもっと危ない。

 ◇ オリンピックの肥大
 オリンピックの肥大化は1984年のロスオリンピックから始まった。 ここからオリンピックは大きく変質した。この大会には開催地に名乗りをあげる国 (都市)がなく、アメリカのやり手のビジネスマン、ユベロスが組織委員会の会長になり、無競争でロスが開催地になった。オリンピック開催の危機に直面したIOCは彼の言いなり、オリンピックを大きく変えた。 

 一つ目は、プロ選手の参加を認めこと。 
 アマチュアにこだわったブランデーシ元IOC会長の時代が終わり、プロ選手の活躍が人気を高めるようになった。 
 二つ目は、商業化により、選手が胸のゼッケンに企業名をつけるようになり、見返りに組織委員会に金を払うようになったこと。  さらに、競技場に広告を出せるようになった。これも組織委員会に巨額の収入をもたらした。 
 三つ目は、テレビの放映権を入札で選び、アメリカのテレビ局を始め、世界から金を集めたこと。  放映権料に加えて、大企業からスポンサーとして巨額の寄付を集めた。 
 大会後、運営が相当の黒字になり、委員会役員にボーナスが支払われた。オリンピックが黒字になることが分かると、一転して開催地に数ヶ国が立候補するほどになった。 

IOCの政治への介入 
 1980年のモスクワオリンピックでは、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して西側諸国がボイコットした。日本も加わった。アメリカ政府主導の呼びかけに政治に中立であるはずのIOCが屈したのだ。 今回のピョンチャン・オリンピックでも、IOCは韓国政府の説得を受け入れて、参加資格の記録を持たない北朝鮮の選手の参加を認めた。さらにロシアのオリンピック委員会がドーピングに関与したということでロシアが国として参加することを禁止した。ここでもIOCは政治に介入した。
  この大会には4人の台湾選手が参加したが、「Chinese Taipei」の表記を求め、「台湾」の表記を許さなかった。IOCは中国政府の方針に逆らうことができず、何十年もの間Chinese Taipeiの表記しか認めてこなかった。 IOCは政治的中立の立場を守るべきである。
 (台湾表記問題については長文の評論を月刊誌に送った) 

 ◇ ああ、オリンピック!
  オリンピックの肥大化は止まらない。オリンピックはどこまでいくのか?  
  東京オリンピックの追加種目として応募された種目には、航空スポーツ、アメリカンフットボール、ビリヤード、ペタンク、ボウリング、ブリッジ、チェス、ダンススポーツ、フロアボール、フライングディスク、空手、オリエンテーリング、ポロ、ラケットボール、ローラースポーツ、スポーツクライミング、スカッシュ、相撲、サーフィン、綱引き、ウエークボード、武術などがある。復活した野球・ソフトボールなど数種目が東京オリンピックで採用される。 
 ここに掲げたその他の新種目はいずれオリンピックで採用されるだろう。もうクレージーと言うほかない。 
 頑固老人には支持できない新種目がいくつもある。 
 一つ挙げると、東京オリンピックで追加種目になったスポーツクライミング。この人工の壁を登る遊びを初めて見たのは、クルーズ船で子供向けに人工壁をつくっていたことだった。退屈を何よりも嫌がるアメリカ人の大人も登っていた。

 ◇ ワールドカップの発展とオリンピック
  ピョンチャン・オリンピックが終わるや否や、世界各地でスキー、スケート、カーリングなどのワールドカップが開かれた。ワールドカップが発展すると、これがオリンピックの種目を増やしていくことになる。どこまでオリンピックは肥大化するのか? 
 東京オリンピックではさらに種目が増える。今から改革するには遅いが、せめて開会式を簡素にやってほしい。日本は国威発揚は要らない。前菜からデザートまで、すべてメイン料理であるような今の開会式は要らない。  
 先進国しか開催できなった今のオリンピックを中堅の国でも開けるように、種目を絞ったオリンピックに改革してほしいと思う。             (完)   

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2018年3月4日日曜日

#192 富山においでよ(2)――仕事と生活が第一

  前回の東京集中で友達から意見がありました。以前に月刊誌に書いたことで、スポーツ団体と選手が東京に集中していることです。地方から立ち上がり、選手を辞めても 東京に住み続けて解説者やコーチのチャンスを求めます。他方、アメリカの引退選手が一極に集中することはありません。
 政府が地方創生の政策を進めています。これはこれで地方自治体が政策を活用することはよろしい。しかし、本当は諸君たちが動かなければ実を結ばないのです。
  つまり地方を変えることは諸君たち次第です。

 ◇ なぜ就職してから富山を去るか
 会社で私が付き合っていた二人の技術者の友達は退職して東京と静岡に去った。聞くところによると、奥さんが富山の気候に馴染めなかったそうだ。 富山では冬は寒さと雪、梅雨も年によっては長い。私のように暑さが苦手で、冬が苦にならないタイプと、寒さが嫌いなタイプがある。 当時は奥さんが働いていなかったから、苦痛だったかもしれないし、子供の送り迎えも大変だっただろう。車も今日のようには持てなかった。 しかし、今では奥さんが仕事を持てるから、地元の人たちと交流を深められ、生活を充実することができる。外に出ることが必要。
 今、富山県の求人倍率は東京並みの1.8倍だからパートでもアルバイトでも仕事を取れる。フルタイムの仕事も取れるが、奥さんは望まないかもしれない。

 ◇ 便利になった交通機関 
 50年前と比べると、富山市内の交通機関は充実した。路面電車のほかに市外要所を回るライトレールの環状線、張りめぐらされた路線バスがある。私は市街に出る時には車を利用せず、歩きと交通機関を利用することにしている。
  市役所はコンパクトシティと言って行政施設やマンションを市街地に集中する政策を推進している。郊外に広げ過ぎた市街地を集約することであるが、アメリカの都市では当たり前のことだ。郊外に住む市民からは自分たちには何もメリットがないと批判の声もあるが、将来のことを考えれば行政コストを下げ、税負担が軽減される大きなメリットを見ていない。
  最近では逼迫した予算の問題から、富山県の2市が市中でも郊外でも公共施設を統合廃止することに着手した。郊外の公民館など住民の集会施設も対象になっているが、持ちこたえられないものは仕方がない。どんな村落にも寺があり、寺が集会所を提供できるくずだ。アメリカの小さな町では教会が場所を提供している。 

豊富な住宅がある 
 コンパクトシティの政策によって市街地のマンション建設も進んでいる。毎年大型マンションが一つずつ建設されている。 郊外にあるニュータウンで一軒家を売って市街のマンションに引越したい住人、特に高齢者が少なくないが、なかなか家を売れない。このことは移住者が望むなら割安でマイホームを手に入れられることだ。
  郊外に限らず、市中でも空き家が何百軒もあるという。リニュウアルのコストを入れても東京より割安でマイホームが手に入る。市町村では手厚い支援を差しのべている。 行政のホームページに詳しく出ている。  

 ◇ 福祉施設と医療 
 子持ちの移住者には保育所や幼稚園が待機ゼロというのは有難いことだろう。
  開業医も多くあり、かかりつけ医を持てるし、いざ病気になれば病院を紹介してもらえる。富山市内だけでも県立、市立、大学の大病院があり、そのほかに民間の病院がいくつもある。高齢者施設も需給のバランスが取れている。安心できる。

 ◇ 教育と文化・スポーツ施設 
 約40年前、アメリカに移住して郊外を含めても人口3万人の小さな町に住み始めた時、スポーツと音楽の底辺が広いことに驚いた。「日本の町と比較してこれではアメリカにかなわない」と思った。  ところが、例えば音楽では、大きく様変わりして小学校から大学、社会人まで吹奏楽団があり、楽しませてくれる。アメリカ並みかそれ以上になった。スポーツクラブ、屋内テニスコート、スケート場がある。博物館、美術館、科学館は多過ぎると思うほど多くある。 子供たちの教育環境として最もふさわしい町の一つだろう。
  以前、大学で3科目を担当する講師(非常勤)をしていた時、クラスに韓国からの留学生がいた。彼とは個人的な会話をよくした。 ある時、彼は「日本の地方都市はすごい。施設が充実し、市民の手でイベントを活発にやる力がある。市民が何もやらない韓国の地方都市は遅れている」と言った。
 アジア各国に出張していた私にはうなづけるが、実際、どの国も首都だけが繁栄していて地方力は弱かった。韓国も今では変わっただろう。
  富山だけではなく、全国どこでも地方都市は力をつけている。

 ◇ 方言と会話 
 東京から富山に移住すると最初は方言に戸惑う。しかし、大阪で台湾人の貿易関係 者が「大阪で商売するなら大阪弁をしゃべれ」と言われたようなことは富山ではない。 誰も富山弁を強要せず、仕事でも生活でも標準語を受け入れてもらえる。
 ある大企業会長が富山は閉鎖的と言ったが、これは間違いであり、排他的ではないから、保守的と言うべきだろう。移住者はそのうち富山弁に慣れる。
 50年前、私が会社で富山工場に勤務するようになった時、戸惑ったのは地元人の独特の会話だ。私が三つ挙げると「あまのじゃく、揚げ足取り、否定(反射的に)」は相手に悪意がないことを知り、理解することだ。            (完) 

追記。本稿を開くと左側に小項目群があり、その中に地元の人のために書いた「富山篇」があります。関心があれば読んでください。

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2018年2月24日土曜日

#191 東京の人口集中は止まらない――富山においでよ

  今年も東京の人口が増えました。この傾向は止まらないようだ。
  なぜ東京の人口が増え続けるのか?考えてみましょう。

 ◇ 東京を離れられない構造の問題 
  一部の省庁が地方に移されたが、世論に応える言い訳みたいなもので、行政府の全省庁が東京にあることは変わらない。何十年も前に、行政府を東京から移転することが国会で決議され、三つの候補地が決められた。今は忘れられた。オリンピックではさらに人口が増える。
  韓国でも行政府をソウルから地方に移転することが法律で決められたが、ほんの一部が実行されただけ。ソウルは北朝鮮から砲撃の射程距離にあることが移転の理由であったのに対し、東京は人口の一極集中で大地震の被害が大き過ぎると懸念されることが理由だ。
  大企業本社の東京集中も問題だ。通信技術のめざましい今日でもメーカーの本社を東京に置いていることに、私はかねてから疑問を感じていた。
  東京集中の裏には、東京に住んでいればうま味があることがある。 例えば、退職した官僚幹部は会合やパーティに出てうろちょろしていれば、政府の委員会に選ばれたり、公的機関や企業の職にありつける機会がある。退職した知事と省庁幹部も学位なし、研究業績(論文)なしで首都圏の私立大学で教授になれる。アメリカでも省庁高官が大学教授になるが、彼らは学位保持者だ。    彼らはチャンスがあると信じているから東京を離れられない。 会社員も「東京にはチャンスがある」と言う。
 本当にそうなのか?東京でなければならないのか?

 ◇ 掛け声ばかりで進まない改革 
  東京に大学が多すぎることは前に書いた。東京集中が改善されない中で文科省は手を打った。東京に新規に大学を設立することと、学部の増設を禁止することを法律化したことだ。大学には自主規制する能力がないのだからやむを得ない。
  それにしても私立大学の経営者は甘い。企業なら先を見越して合併や廃業を考えるところであるが、私立大学ではまだ聞いたことがない。最近、定員に満たない大学を公立化する例が出てきたが、これは経営改革とは言えない。市場環境は変わらないままだからいずれ自治体の重荷になるだろう。ただ公立化したら受験生が増えたというが、学生の側も「お上ならつぶれないだろう」と考えることは甘い。私立の公立化は一時しのぎに過ぎない。
  諸君よ、はっきりしよう。 高い学費を払って大学に行くのは、多くが学問のためではなく、就職が目的だろう。そうなら、就職に有利な専門学部を選び、地方の大学や専門学校を選ぶべきだ。 
 
 ◇ 富山においでよ
 富山に限らず、どの地方でも人材を求めている。ここでは私が生活し、よく知る富 山県を例にとって地方の企業について書いてみよう。
  富山県は先進国型で農業、漁業、工業一体の経済だ。それにどこでも推進している観光産業もある。 
 そもそも東京で仕事をする目的は何か?会社で昇進し、栄達を求めることならそれでよいが、技術者なら仕事で腕を磨くことだろう。つまり、会社に貢献して、自らも技術者として実力を高めることにある。同時に家族のために生活の質を求めることだ。
  富山県で求められている人材を述べてみよう。

  ① 富山は医薬品メーカーだけではない。大企業のほかに材料、機械、建設、化学の分野で技術開発力がある中小企業の基盤がある。IT産業もある。行政も大学も支援している。
  ② 海外に進出しようとする中小企業がいくつもあるが、ヒト、モノ(保守点検が容 易なように設計変更が要る)、カネ(先行投資)の三つがそろわない。ここに外部から人材が求められている。 
中でもヒトを得ることが緊急の課題だ。地元ではなかなか得にくい。
  一つは、貿易の人材だ。私はいくつか中小企業の相談に乗ってきたが、求める人材を絞りきれていない。英語にこだわり過ぎている。 市立の外語学校て臨時講師をしていた時、「英語プラスワン」を学生に提唱してきた。英語のほかに、総務や経理などでコンピュターに習熟するもう一つの専門を持つことだ。 中小企業では最初から英語専門の人材を採用することは重荷なのだ。 
  二つ目は、製造部門や機械と結びつけられるIT技術者。  
 要するに、製品と関連したコンピューター技術者が求められているので、大きなソフトを専門にしてきた技術者は向かない。 

 中小企業では外部からの人材採用には前向きではないが、諸君が経営者の意識を変え られるだろう。 
 
郷土人の郷土愛とは関係がない
  私は以前会社員時代に富山に住んだことがあり、終生の住みかとして富山を選んだのは郷土愛からではなく、生活の質を考えたからだ。県外からの移住者だ。私の周囲にも県外出身者が少なくない。生活の質については次回で書きたい。             (完) 


 「雪だるまの芯」を求めよう、つくろう。#189に詳細。 

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2018年2月15日木曜日

#190 アメリカでセクハラの高まり――男の立場は弱い

  いつも本稿は友達から「堅い」、「長い」とよく言われます。 私は若者のために真剣に書いているから仕方ないと思っていますが、今回は深刻な話題を軽く書いてみることに努めます。

 ◇ 渡米した頃は自由だった 
 1978年から小さな町にあるアメリカ企業に勤め始めた。田舎町にあるとは言え、 大企業グループであるせいか、社員は垢抜けしていた。この頃はセクハラで騒がれることがなかった。女社員の中には胸を大きく広げた服を着ていて、他と共有する秘書が 私の個室で座って打ち合わせする時には、間近で胸の半分が見えて悩ましかった。
  男の社員が「オッオー」と言うことがよくあった。今はこれはセクハラになる。  
 ある日、会議の前の雑談でジョーク好きの社員が、「夕べはオレと楽しんだかい?」と言ったが、その女性は顔を赤らめて笑った。これもセクハラ。  あの頃は気楽で楽しかった。 

  ◇ 中国共産党の人民服を着せろ 
 私が社長をしていた会社でも胸をはだけた服装の女性社員が何人もいた。ある時、会議でセクハラ対策が議題の一つになった。服装規制をする意見が出た。しかし、服装の自由を理由に反対意見が多かった。 議論が長時間になると多少苛立っていた私は、「もうこのくらいにしよう。中国の人民服を着せたらいい」と言った。みんな笑った
  後で社長室に来た右腕のアメリカ人マネジャーが私に、「社長のジョークは危ない」と忠告された。

 ◇ 大阪時代の偽セクハラ事件
 セクハラ訴訟がメディアで取り上げられるようになった時、友達との雑談で話題になった。この時の会話。

 「私は電車で若い女性の隣には座らないようにしている」 
 「それじゃ後から隣りに若い女性が座ったらどうするんや?」 
 「その時は手を前に組んでじっとしている」 
 「オレは席を立って逃げる」

  懸念していたことが大阪の地下鉄車内で起きた。会社員が女の身体にさわったと騒ぎ、近くにいた男に取り押えられた。誰もが信じただろう。しかし、男女が仲間であることが警察の取調べで分かった。会社員も無実であることを訴え続けた。
  取調べの結果、男女は虚偽の演技であることを自白した。会社員はメディアの報道により、会社の中でも疑われて大きな被害を受けた。警察はよくやった。
  世間ではセクハラに関しては男が疑われ、女の主張が有利だ。男は弱い。

 ◇ アメリカ最高裁判事にセクハラ訴訟 
 1990年初めクラレンス・トーマス判事の最高栽判事の任命をめぐって大きなセクハラ事件が起きた。部下であった女弁護士からセクハラの訴えを起こされたのだ。
  奇妙なことは、セクハラがあったと言いながら、長年ボスのトーマス弁護士に仕え、退職をしなかった。議会委員会に出席し長年受けたセクハラを証言した。私は、「弁護士ならどこでも仕事を取れる。なぜ彼から逃げないのか?」と思った。 
 メディアが一方的に女の味方をして騒ぎ立てた。トーマスに不利な状況で議会は僅差で任命に同意した。時に共和党政権下、保守派のトーマスを支持した。両者とも黒人だった。 今もトーマスは最高栽判事を務めている。
  因みにアメリカの最高栽は、日本の最高栽とは違い、主に憲法に反するかどうかを審査する。

 ◇ アメリカと大阪のハグ 
 帰国後アメリカの町を訪ねると、親しかった人たちが会合を持ってくれる。その中の中高年の女性がハグ(抱きつくこと)で歓迎してくれる。少ないが男もそうする。
  場所が変わって、大阪駅前で勤め帰りの会社員を誰でも掴まえてハグするおばさんが現れた。しかし、多くは逃げる。おばさんは「見知らぬ同志が親密になれる」と言って運動しているのだという。長くは続かなかっただろう。男がやればセクハラで訴えられることになりかねない。
  住んでいた町で、ホテルでパーテイがあり、終わってからいつも世話してもらった中年女性に私が感謝の意味をこめてハグした。少し酔っていた。証人はわんさといてみんな笑っていた。これもセクハラになるかもしれない。

 ◇ 最近のアメリカでのセクハラ暴露 
 最近、アメリカでセクハラの訴えが相次ぎ、映画の大物プロデュウサーや政府関係者が訴えられた。例によって、アメリカでよく見られるヒステリー現象のように、女性運動家たちが、年頭教書演説の議会にそろって黒服で出席して抗議を示した。
  事件は30年も昔のことだ。どうやって検証するのだろうか?

 ◇ 女性にひと言
 私は男の立場で書いてきた。 アメリカでも日本でも女性がセクハラの被害者であることを認識している。加害者の男を支援しているわけではない。分かっていただけるか。      (完)


雪だるまの芯」を求めよう、つくろう。#189に詳細


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2018年1月31日水曜日

#189 全労の皆さんへ――逆転の発想で労働党結成

 #181で若者世代に対し、労働党の推進を呼びかけましたが、手ごたえがありません。政治に関心が薄く、将来のことより今の生活に精一杯の若者に運動を期待することは現実的ではないかもしれません。しかし、政治改革は諸君の世代が自分たちのためにやるしかないのです。 
 今回はなぜ労働党が必要なのか、詳しく書いてみます。

 ◇ 既存の野党では政権を取れない 
 立憲党と共産党を除く最近の野党の混乱は目に余る。立憲党はかつての社会党の再来で、左派の固定客に支えられて与党の政策反対党として現状を維持するだろう。また、共産党は地方議会における勢力を基盤として組織が強い。
  立憲党の枝野代表は「立憲主義を守る。民主主義を守る」、「下からの政治をする」と言っているが政党としての政策が分からない。そして政権政党になるためには「下からの政治」は間違っている。
  私の考えでは、政治家は市民と交流し、世論を参考にするにしても、全体から政策を取り上げることで「上から決める」のだ。そう、政治は「上から」でなければならない。 国政に関わる政治家は、たとえ嫌われてもこの覚悟を持つべきなのだ。さもなければ大衆迎合になり、国政の方向を誤ることになりかねない。「お客さまの声を聴く」は商売の基本であるが、これは必ずしも政党の基本ではないことを認識してほしい。
  私事になるが、私は本稿の執筆者として「上からものを言っている」と言われたことがある。ちょっと待ってほしい。私は政治家よりは市民と深く交流しており、そこから発想してネタを得ている。しかし、書く時には上から見ている。さもなければ、若者にものを言う意味がない。甘んじて批判を受ける。

 ◇ 逆転の発想から労働党を起こす 
 今の政党では将来がないから、打開するには新党を起こすしかないと思う。 全労は選挙のたびに、これまではどの政党を支持するかを決めてきたが、今は一政党に絞れない。つまり労働者のためになる政策を運んでくれる政党がないのだ。 次の参院選挙ではまた野党が烏合離散を繰り返すだろうから、与党体制を変えられない。しかし、次の総選挙までには時間があるから、労働党の立ち上げを下記の順に手を打っていく。うまくやれば、野党第一党になれる。政権を担うのは次次総選挙を目標に置く。
  全労は支持政党を選ぶ発想から、逆に労働党をつくる側に立場を変えるのだ。時期が来れば陰の支援に回ればよい。雪だるまをつくるには芯をつくらなければならない。全労にはこの役割を担ってほしい。そうすれば芯を転がしていけば雪だるまが大きくなっていく。

  1.全労の組合人に党員登録してもらう。要求してはいけない。勧めるだけ。 
  2.中小企業の労働者に登録を広げる。   
   3.地方議会で党員を当選させる。  
  4.党本部と地方支部をつくる。   
  5.党員大会で代表と執行部を選ぶ。  
  6.実体ができたら若者世代に支持を求める。党員登録にこだわらない。  
  7.総選挙で候補者を立てる。  おそらく選挙になれば自民党や野党の議員が一部転党してくるだろう。しかし、彼らを受け入れても政治経験を生かすだけで党の運営の主流にはしない。 

フランスの新党から大統領 
 マクロンは大統領選挙の直前に既成の二大政党とは別に独立の新党を結成し、大統領になった。落ち目の既成政党に頼らなかったのだ。彼は保守系のキャリアではあるが、日本の政治改革、抜本改革の参考になる。 
 次の総選挙が来る前に仮に自民党が善政をしたところで勢いを失っているだろう。野党も頼りにならない。有権者は新しい時代を求めている。直近の選挙より長期戦略で労働党を育てることが目標だ。

 ◇ 重点政策は財政赤字の縮減と外交の転換 
 今年も年度予算を黒字化することが2年先に見送られた。1兆円を超える国の累積 財政赤字がさらに増えた。#181で述べたように直接経済に影響しないことに配慮しながら、歳出を大胆に減らすことを労働党が推進する。 
 先ず、防衛予算。アメリカの長期計画は日本の基地を自衛隊に委ね、最終的に立川 か岩国のどちらか、横須賀(空母の母港)、岩国、沖縄の基地に集約することだろう。 そのためにミサイル迎撃装置、最新型戦闘機などを日本に買わせようとしている。背景には、米軍が日本に駐留するのはアメリカの対中国戦略である半面をアメリカ人の多くは認識していないことがある。アメリカ政府も世論を巧く利用する。
  日本の防衛予算を抑制して自衛隊の配置転換と保有兵器の改良に重点を置くべきだ。 アメリカ政府が好まない政策であろうと対米関係の改革は新党だからできる。アメリカ政府はついていくより選択がない。
  次に、外交の転換。安倍首相のバラマキ外交はいただけない。まるで予算が無尽蔵にあるかのように金をばらまいている。国連拠出金も減額する。最近では日本が中東和平の仲介役になるしいう。できるはずがない。  
 今日のイスラエル問題は二枚舌のイギリス外交が原点だ。そのイギリスが中東問題には関わらない。範とすべきだろう。

 ◇ 若者諸君よ、もう「政治には関係ない」と言っておれない 
 官僚組織の改革など与党にはできない。今の野党の混乱下では野党にも政治改革はできない。政治は行き詰っている。 新党の労働党によって政治を変えよう。
 道は遠くても諸君の時代の政治は諸君がつくる。インターネットでSNSを駆使し、クチコミで支持者を広げていこう。             (完)

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2018年1月17日水曜日

#188 韓国と北朝鮮ーー文大統領も金委員長も恐怖に脅える

  私はテレビでなんの情報も持たないタレントと変わりないかもしれない。しかし、アメリカのABDテレビやインターネットで新聞を見ている私はいくらかましでしょう。 
 年明けから朝鮮半島がますます緊張感を増しています。平昌オリンピックへの北朝鮮参加により緊張が先送りされましたが、アメリカは北朝鮮が攻撃のきっかけをつくってくれることを待っていのでしょうか。 
 諸君はどう考えていますか?

 ◇ 韓国はいつからおかしくなったのか?
  私が韓国に頻繁に出張していた70年代は朴大統領の治世下で、韓国は官民ともに建国の気運があふれていた。月に一回米を食べない「米無し日」、全国民が屋内に避難する突然のサイレン私はタクシーの中にほおって置かれた)。政府は国民の意識が緩まないようにしていた。
  出張後、ソウル空港に入った時、あふれるばかりの群衆が集まっていた。戦場に息子を見送るような雰囲気で母親はおいおいと泣いていた。これは政府が外貨稼ぎのために、 酷暑のサウジに大量の建設労働者を送っていたのだった。帰国すると政府から住宅を与えられるという。無事帰国できずに死者も出た。 
  こうして先人が故国のために犠牲になったことを韓国の若者の多くは知らないだろう。
  この時代、多くの韓国企業が日本から技術導入するために、訪日した。私も彼らの世話をした。工場を案内すると彼らは事細かにメモを取る熱心さに感心した。みんなまともな人たちであり、しょせん私が付き合ったのは役員や技術者であり、エリートだった。
  彼らが建国に貢献のだ。それでも当時の韓国は貧しかった。 
 その後韓国経済は発展し、国際的な大企業も生んだが、韓国政府は先進国へ急ぐあまり、いびつな経済構造と社会をもたらした。今も独自に技術開発力を持つ中小企業の基盤は弱い。これが日本との大きな違いだ。

 ◇ 韓国人は信用できない 
 もう20年も前のこと、大阪の中小企業経営者が「韓国人は信用できないから韓国とはビジネスをしない」と言った時、私は「社長個人の韓国嫌いをさておいて会社も取引しないのはもったいないでしょう」とアドバイスしたことがある
  私はビジネスには感情を廃して、韓国政府を嫌っても韓国人とは区別してきたが、最近では韓国人嫌いになっている。 韓国政府が反日を煽って韓国の世論を誘導し、統治に利用している。韓国人の中にも反日世論に組しない人たちがいるだろうが、大勢の世論が許さない。 
 それにしても、国家を預かる韓国政府が日韓合意を守らない外交はひど過ぎる。彼らの思考には饅頭の皮があるだけで、論理のあんこを考えない。皮は、内政の失敗を日本に帰し、日本に対する怨念と劣等意識で固められている。

 ◇ 日本政府と日本企業の対応 
  事実上、韓国と日本の政府間関係は国交断絶状態にある。有事の際、在韓法人6万人の引き揚げに自衛隊を受け入れない国なのだ。日本が事を荒立てない背景にはアメリカ政府からのプレッシャーがあるだろう。今、韓米同盟と日米同盟(日本は韓国の同盟ではない)にひびが入ることは北朝鮮を利することになるからだ。
  安倍首相はバルト三国に加えて北朝鮮と友好国であるブルガリアまで訪れて経済制裁への協力を訴えた。目立ち過ぎだ。首相が平昌オリンピックの開会式に出席すれば、北朝鮮代表団にまぎれこんだ工作員から暗殺される危険がある。 
 最近、日本の経済使節団が韓国を訪れて、韓国への投資を呼びかけられた。本気だとは思えない。裁判所も行政の下に置かれ、裁判所も世論に左右される存在だ。 日本の企業が戦時徴用工への賠償を求められていることを取ってみても、現地法人は危うくされている。今は静かに駐在員を減らし、事業から撤退することを考えるべきだ。 経営の観点からは苦しい決断であろうが、それも仕方がない。 
 産経新聞の記者がいわれのないことで長期間拘留され、韓国の学者が慰安婦問題について正論と言うべき論文の本を刊行したら罪に問われる。韓国の裁判はまったく信用できない。

 ◇ 脅える文大統領の対中外交 
  文大統領は恐怖のせいか、北朝鮮に融和外交を呼びかけたり、北朝鮮のオリンピック参加を求めている。一方、中国を訪問してアメリカの北朝鮮攻撃を避けるために中国の支援を求めた。しかし、帰国するやいなや中国政府が中国人の韓国への団体ツアーを禁止するというしっぺ返しをくらった。
  朴前大統領と同じく、同盟国アメリカに反するようなふらふら外交をやっている。彼は北朝鮮の攻撃を、日本人とは比較にならないほど恐れている。 無理もない。現実に韓国は無力なのだ。何もできない。
 ヤンゴンで閣僚数人が暗殺されても、韓国旅客機が爆破されても、軍艦が魚雷で沈没されても、民間人が住む島を砲撃されても韓国は反撃できなかった。 ただただ文大統領は北朝鮮からのソウル砲撃に脅えている。

 ◇ 金正恩もアメリカからの攻撃に脅えている 
  枝葉の情報を廃して全体から見れば、北朝鮮が核・ミサイルを放棄することはあり得ない。金正恩もアメリカを敵にする世論をつくり、国民を欺いている。本来アメリカは戦争を仕掛けてくる敵ではない。北朝鮮とアメリカでは軍事力でも国力でも比較にならず、このことを最もよく知っているのは金正恩だろう。核・ミサイルは体制崩壊を防ぐ手段だからだ。国民こそ哀れだ。
  先代の金正日はめったに笑わなかったが、金正恩はいつも笑い顔をつくっているのは国民向けに自信をアピールするためだろう。本当は恐怖を隠すためではないのか。                   (完)

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#188 韓国と北朝鮮ーー文大統領も金正恩も脅える

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