2012年1月30日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#21,1月,2012   新生大阪の時代が始まるーー橋下市長の政策に是々非々ーー

橋下徹大阪市長が就任して一ヶ月余り、例のスピードによって精力的に改革を始めました。個々の政策には反対意見が少なくないが、前市長の再選に比べれば大阪に清新の空気があふれていることは間違いがない。勢いももたらしています。
 選挙を動かした若者諸君のために、年初に当たり、大阪市政の問題を挙げてみましょう。

◇ 武士、橋下徹之介
 彼は大阪で絶えて久しかった武士の市長だ。多くの問題を先ず論理に基づいて不合理を廃し、その上で現実に即して人道やしがらみに対する配慮で味付けをするが、改革に欠かせない論理(私が言う饅頭のあんこ)では妥協しない。
 江戸時代から町人の町と言われ、全国平均に比べればはるかに少ない武士役人による緩やかな統治の下で、町人が大きな自由を許されていた。それ以来最近まで大阪は町人の風土だった。市役所は長年町人職員によって支配され、市長はお飾り同然で町人の不合理、言いかえればエゴを正すことができなかった。
 これまで私は武士・町人論を書き、話もしてきたが、当然批判があるので、その真意を伝えてきた。ここでも書いておく。武士とは義務感、献身、紀律、尊厳、覚悟を持つリーダーを意味する。もともとアメリカ生活中に発想したことで、このブログに掲載している小説『オー、マイボーイ』の中で書き、5Dと称している。これは英語の単語から頭文字を取った。(Duty,Dedication,Discipline,Dignity,Determination)
 従って、5Dを持たない者は町人と呼ぶ。男女を問わない。
 
◇ 大阪都構想を知らない府民
 先日、長年付き合ってきたグループの新年会で大阪都について質問を受けた。なんとこの教養水準が高い連中でさえ、大阪都について正確な内容を知らない。よく他の事例にもあるように、政府や自治体がいくら説明しても、またメディアが繰り返し取り上げても大衆は理解していない。そのくせ「説明が足りない」とか、「説明責任を果たせ」とか文句だけは言う。
 そこで、諸君には要点を説明しておこう。大阪都とは、政令都市の大阪市と堺市を分解して10区くらいの特別区に再編することが骨子で、各区の区長は公選にすることだ。そして、大阪府の呼称を大阪都に変える。大阪市と堺市の名前が無くなり、市長はいなくなる。しかし、府下の茨木市も他市も現状と変わりがない。東京都に三鷹市や町田市があるのと同じ。
 そして、今の全大阪府が一人の大阪都知事によって統治されて二重行政と二重投資が改善されるというわけだ。
 これに対し、私は大阪都構想より、大阪府が奈良県と和歌山県と合併して関西県をつくることを提唱してきた。新県庁所在地は奈良市に置くことで、県政と大阪市政を切り離すことができる。
 橋下市長へ問う私の疑問。京都府でも兵庫県でも政令都市の京都市と神戸市が府県庁所在地であり、大阪府と変わりないが、なぜ大阪府だけを大阪都にするのか?

◇ 教育改革はいただけない
 維新の会は教育に競争原理を持ち込み、公立の小中学校にも広域学区を導入する。教育の市場開放なのか?
 これはいただけない。「子供たちに行きたい学校に行ける機会を与える。ひいては競争を高めて教育水準が上がる」からだと理由付けしている。子供たちに訊いてみるがよい。そうすれば、子供たちの希望ではなく、馬鹿親のエゴだと分かるだろう。
 橋下代表は大阪府の全国学力テストで下位にあることを過剰に意識しているようだ。学力テストのランキングは平均値であるから、大阪のようにピンからキリまで雑多な家庭が多い大都市圏では平均値が実態より低く出るものだ。上位の県はすべて地方であり、世界との比較でも上位はすべて中小国か政府強権国になっている。
 今から27年前に文部科学省が公立高校の広域学区制を導入した。私はこれに反対してアメリカから寄稿して読売新聞の「論点」で意見を述べた。公立高校ではできる限り、住む地域社会で教育されるべきだという主張をした。結びの部分を下記に引用してみよう。

 「幕藩体制下で帰属していた地域社会に対するきずなは、今は会社社会に対するきずなに取って代わられ、その中でわずかに残された地域社会との接触の意味が問われている。公立学校の学区はそれこそ児童、生徒が地域社会ではぐくまれるための最後の砦ではないか」(1985年、3月24日朝刊)
 
 改悪をやめよう。維新の会は国歌斉唱に起立しない左翼突っ張り教師に対して紀律を求めた。これだけでも学校に政治が入ることを防ぎ、紀律が利き、教育に緊張が出るだろう。さしあたり、広域学区化までジャンプすることはない。
 優秀な子供はどの学校でも育つ。
                                    (完)
 
 

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