2014年3月31日月曜日

#111 世界の警察になるのかーー積極的平和主義は危ない

 ハーグで行われた日米韓首脳会談の冒頭、安倍首相はパク大統領に韓国語で話しかけました。あれは余計なオベンチャラ行為であり、私は不快感を持ちました。日本語か英語を使うべきだったでしょう。  諸君の感性はどうだったか?  さて、私は安倍首相の「積極的平和主義」外交に市民の一人として不安を感じています。この言葉が国際的には、「日本は軍備の増強によって国際紛争に武力介入に積極的になるのか」というシグナルを送りかねない。世界の警察国家の一員になるのか、と。単に「武力によらない平和貢献」の日本というブランドを確立すべきだと願います。

日米韓の首脳会談はアメリカの圧力  

 今回の三国会談はアメリカの仲介で実現したことは誰にも明らか。安倍首相は即座に受け入れを表明したのに対し、韓国は2日遅れでしぶしぶ同意した。日韓関係の改善をしぶっていたのは韓国だったことが国際的に知られてプラスだった。  
  マスコミは「アメリカの圧力」とか「対米追随」の言葉をよく使う。これには危ない一面がある。というのは、アメリカのマスコミが「安倍首相は国家主義者」というレッテルを張っているが、危ないのは反米保守主義者が愛国国家主義の勢いをつけることで、対するに親米保守主義者とは区別して考えなければならない。安倍首相は、ちゃらんぽらんにしてきた国家のあるべき形を求めているのだろう。
 諸君は、「日本は天皇を中心にする神の国」が唱えられる時には警戒が必要だ。安倍首相が自民党内外の国家主義派に流されるなら、私のような若い頃「進歩派」(当時こういう言葉があり、左翼中道派)だった私も反自民党に立ちあがる。

「アフリカで戦争が無くなれば人類が滅ぶ」

 この発言は、もう30年も前のことか、当時上智大学の渡辺昇教授と東大の糸川英夫教授が雑誌の対談で言っていたことである。テーマは世界の人口問題だったと思う。 この時代にもアフリカ各地で内乱や虐殺が起きていたが、今も変わらない。それでも世界の人口は当時の60億人から今は70億人に増えた。中国政府が一人っ子政策で13億人に人口抑制をしてきたにも関わらずだ。   
 アフリカでは今も内乱が起きている。一つ沈静すれば別の国で起きる。スーダンがその最悪の典型だろう。スーダンがイスラム国とキリスト教国の南スーダンに分離されると、今度は南スーダンで政府軍と反政府勢力が武力闘争を始めた。自衛隊100人余が平和協力の目的で派遣されている。 アフリカは変わるのだろうか?

アフリカ支援の新しいモデル

 アフリカは宗教対立、民族闘争、部族闘争の縮図だ。旧植民地宗主国であるヨーロッパ諸国の支援も効を奏さない。他方、安倍首相は外遊の度にアフリカ紛争国に何百億円の無償・有償のバラマキ資金援助を重ねている。一体、外務省の予算はどうなっているのか?別枠なのか? 有償支援と言え、返済される保障はない。尻拭いは、結局、諸君の時代に委ねられる。
  そこで、日本のバラマキ支援を減らす一方で、新しいアフリカ支援のモデルをつくろう。それは日本の官民学が行政、法律、ビジネス、環境の分野を総合する10年計画のプロジェクトだ。支援対象として①権力を私物化する独裁者がいない、②宗教対立がない、③民族・部族闘争がましなこと、④資源が少なく中国が関心を持たない、の4条件にかなう中小国一つを選ぶ。
  最近の若者は、私なら若くても身分保証なしでは行く気になれない国にでも、志を持って単身で出かける。大したものだと思う。日本には人材が豊富にいるではないか。

  私が米国企業に勤め始めて間もなく、週に2回、車を1時間飛ばして州立の夜間大学院に通った。15人のクラスで外国人のよしみから親しくなったアフリカからの役人留学生がいた。
 ある日、「こんな大国のアメリカで勉強して国にとって役に立つことがあるかい?なぜニュージーランドか台湾に行かないの?」と問うと、「政府給費ではアメリカの指定なんだよ。他の国では帰国後に昇進もないのだから」と彼は答えた。 日本政府はこんな愚をしてはならない。
 留学生を公費で招くなら、思い切って中米の小国でありながら民主国として独立独歩のコスタリカに派遣してはどうか。

政府は血税を無駄使いするな  

 かつてジョン・レノンは名曲「イマジン」の中で「世界に宗教がなければ~」、「世界に国境がなければ~」と歌った。私もよくそう思うことがある。しかし、現実は厳しい。国境どころか国の中で争っている国は絶えない。
 日本は先進国の義務として国際貢献をしなければならない。次世代に借金の山を築きながらもである。政府は先ずアジアの貧困国に支援を絞り、そのほかの国々には人道的支援にとどめるべきだ。
 政府は外務省の言いなりになるな、外務省は首相の言いなりになるな。       (完)

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2014年3月20日木曜日

#110 ああ、オリンピック!――その陰の面を年寄りが語る

 ソチで開催されたオリンピックもパラリンピックも過去のことになり、やっとメディアで報道されることがなくなりました。 みんながオリンピック、オリンピックとはやし立てると、その陰になる面が見落とされるものです。
 私はこれを書きたいと思っていましたが、今回、年寄り数人の意見をまとめてみました。時流に逆らうのでもなく、年寄りの臍が曲がっているわけでもありません。 若者諸君は反感を持つかもしれません。

オリンピックに対する年寄りの意見集  

 「女子フィギュアスケートでは浅田真央がショートプログラムでミスを重ねたが、あんなのは今まで見たことがないな」
 「オレは毒をもられたか、食べ物に睡眠薬を入れられたのではないかと疑っている」
 「ハッハッハ、なんたるユニークな発想だな。しかし、キムヨナムはオリンピック村から隔離されてホテル住まいさせたのは警戒心からなのか?」  
 「ペアとダンスはどこが違うんかいな。オレにはよう分からん」
 「一体、あんなのがスポーツなのかい?綺麗な衣装を着て音楽に合わせて踊る競技はフィギュアスケートだけだな。ありゃショウだよ」  
 「韓国がメダル取りに集中強化するショートトラックも面白くないな。スピードスケートの魅力がない。オレはフライ級スケートと呼んでいる」
 「小柄な選手が有利だからか?10ヶ国かそこらしか参加しない限定競争や」
 「そう、長野オリンピックで知事が水澄ましみたいと言って非難を浴びた。中国と韓国には格好のメダル取り種目だな」

 「あのバイアスロンで距離スキーと射撃の組み合わせは時代錯誤やな。日本選手は男女とも自衛隊員だが、80位とかみんな最下位。選手も本当は出たくないだろう」
  「バイアスロンは戦争ごっこだな。陸軍兵士が戦場をスキーで駆けながらライフル射撃をする種目。上位はフランス以北の国の選手ばりだ」

 「金が足りない、足りないと言うんだから、シーズン毎に設備を整えなければならないリュージュのそり競技を日本はやめた方がいい。50位とか80位なんてなんで代表に送るの?」
 「ほかにもあるよ。始めから上位に入れる見込みがない種目。ボブスレーとかスケルトン。高価な乗り物に乗って1/1000秒を争うなんて競技じゃないよな」  

 「モーグル、ハーフパイプ、それにオレは知らなかった種目のスロープスタイルなど審査員が点数をつける種目もピンとこないな」
  「アメリカではハーフパイプの競技は、スキー板やボードのほかに自転車を使う種目もあるよ」   
 「オレは人が採点する種目は好かん」 

  「10ヶ国しか参加しないカーリングも退屈やな。長野オリンピックから正式種目になって人気があるらしい」
 「読みや戦略が必要で氷上のチェスなんて呼ばれるそうだが、読みと戦略はどの団体競技にも必要で、カーリングに限ったことじゃない」
  「カーリングがオリンピック種目なら、夏のオリンピックにボーリングやペダンクがあってもおかしくないわな」  
 「ありゃ、スポーツじゃなくて遊びだな」  
 「そんなことを言えばほかにも遊び種目はいっぱいあるよ」  
 「ここで評論家先生の出番か。もともとオリンピックは遊びだったんだ。アメリカで読んだ本によると、それも金と暇がある貴族あるいは上流の紳士たちの間でな。だから彼らは郵便配達人や鉄鋼労働者など労働者階級は肉体プロとして排斥していたんだよ。これがオリンピックの崇高なアマチュア精神だった。我々は学校教育でオリンピックの表だけを教えられた。 その後、オリンピックはまともなアマチュア競技に進歩したが、ロスオリンピックで商業主義に変質して主催者が儲かるショウになった。今は冬季オリンピックに絞ると、17日間の大イベントに仕立てるためにどんどん競技種目を増やさなければならないのさ」

スポーツ選手の認知渇望症  

 滞米生活中に、町の親しい友達と会食した時のこと。ボクシングヘビー級の元王者、ムハメッド・アリが2度目の現役復帰をしたことが話題になった。
 「彼はね、人に忘れられることがたまらないので、またしてもテレビに出してほしいのだろう」
 「みんな元有名人はそんなものだろう」と友達。
 私はしばらくの間、これを「ムハメッド・アリ病」と呼んでいたが、批判的な意見があったので「認知渇望症」に変えた。
 マスコミも世間も「夢を持て」と煽りたてる。それでなくても、オリンピックを目指す若者が増え続ける。表の面を言えば、競技団体は底辺が広がるとして喜ぶ。他方、裏の面に目を向ければ、わずか1%にも満たない勝者を除いて多数の選手たちが夢をあきらめさせられる。そして、スポーツには集中できても勉強や仕事には根気が続かない不幸な人間をわんさかつくっていく。その後には長い人生がある。大事なことは、選手生活は一時の夢だったとさっさと忘れ、本番の人生に向き合うことだ。
 選手諸君、テレビ出演を求めず、認知渇望症にかかるなよ。普通の生活にはエキサイティングもない、大それた成功もないかもしれない。その代わり別の地味な夢を持てるかもしれない。              (完)

追記。大阪市長選。3月23日、投開票の結果、橋下市長が再選された。予想された通り、投票率は史上最低の23.6%で、橋下市長の得票数はたったの38万、この中には大阪都構想も分からない市民の橋下人気票が含まれるから、大阪都に賛成する市民はわずかだろう。
 橋下市長さん、大阪都構想は敗れたり!大阪市、大阪府の改革にはいっぱいやるべきことがある。どうか大阪都構想と心中しないでほしい。
 
 
 

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