2017年3月28日火曜日

#170 私の英語勉強法を振り返る(2)――今からでも遅くない

 まだ書きたいことがあるので、気力を出してもう一回書きました。
 英語の勉強は、数学のように基礎の上に次の理論を学ぶ必要がなく、どこからでも、いつからでも始めることができます。例えば、仮定法がうろ憶えで、よく分からなければ学校時代の文法教科書を取りだして確認すればよいのです。それが今ではネットで「英語仮定法」を検索すると易しい解説を見ることができます。本当に便利です。
 文法をまとめて勉強する必要はありません。必要に応じて確かめればよいのです。

   中国語に挑戦

もう10年も前のこと、台湾に何度行っても台湾の標準語である中国語(北京語)を片言しか話せないので、一念発起してNHKラジオの中国語講座を聴き始めた。
 悲しいかな、3ヶ月で挫折した。蓄積がある英語のようにはいかなかった。分かったことは、授業も試験も無しでは集中力も出ず、文法の助け無しではすべて暗記に頼らなければならないことだった。文の応用も利かない。
 ある学者によると、日本語や中国語などアジアの言語には英語やドイツ語のような文法がないという。非論理の日本語を学ぶ欧米人は苦労しているだろう。

 
  フランス人の英会話

  90年に出張でフランスを訪ねた時、家内を同伴した。日曜日の早朝、スペイン国境に近い地中海の町セッテに住む高校の同級生に電話すると、運良くつながった。そこでTGVとローカル列車を乗り継いで駅に降りると友達が出迎えていた。半日、積もる話をした。
 別れ際に彼がファーストクラスのディナーを勧めた。アメリカでユーロレイルパスは割安だったので、ファーストクラスを買っていた。夕方の列車は混んでいた。
 女性の係員が来てフルコースのディナーを注文した。一人約70米ドルは高かったが、食事はその価値があった。やがて席に大きなプレートに食事が運ばれてくると、家内がクレームをつけ、「注文したのはこのように冷たいのではなく、熱い料理です」と言った。通路をはさんだ席から私が言った、「それはオードブルだよ」と。アメリカのレストランでは、こんな立派なオードブルを知らなかった家内はメイン料理だと思ったのだ。係員に英語がつうじなかったのは幸いだった。

 別の日、メイン通りから一つ離れた筋に古風なレストランに入った。メニューを広げて料理を決めて待っていてもウエイトレスがなかなか来ない。すると隣のテーブルのボストンから来たというアメリカ人夫妻が話しかけてきた。「フランスの一流レストランでは、メニューを閉じないとウエイトレスが来ないのですよ」と。
 ここでも英語が通じなかった。

 
  読み書きが見直される

最近では海外ビジネス、特に地方の中小企業の間でも自ら直接輸出する動きが広まって
いる。国際便が飛ぶ地方空港も増えた。私の著書『米国ビジネスマンの思考法』(講談社)が刊行された30年前には考えられなかったことだ。
 この時、私は「国際地方化」という新語を作って予見していた。当時はよく理解されず、ある学者から内向きの地方化と外向きの国際化を一つにくくることはおかしいと批判された。しかし、地方のメーカーが直接輸出している多くの例があり、90年代にはアメリカでgloballocalを一語にしたglocalizationという新語が出てきた。

 さて、中小企業が英文ホームページによって海外から製品の引き合いを受けた場合、ほとんど英語が使われる。先ず英文を読み、英語で説明してメールで返事を書かなければならない。しかも、文法に正確さが必要。ええ加減な文章では見込み客に会社の信用が得られない。
 そう、今や英語を話せるだけの英語より読み書きが求められるインターネットの時代になっている。私が接触した経営者も学生もこの変化に気付いていないようだ。

  異色の英語教室、楽しむ英語

  私が住む富山市に異色の英語教室がある。民間の経営で、週に一回20人の中高年の女性が受講者の中心で、別のクラスと合わせると50人くらいか。家内が通っている。
 異色であることは、クラスで英語の本を各自が読むだけで講義がないことだ。帰りには能力に合わせた4,5冊の本を借りて持ち帰る。受講者はただ英語が好きで楽しんでいる。
 先生は質問には答えるが、指導はしない。受講者の読書量を管理し、100万語に達すると表彰がある。受講者は3000円の月謝でここに所蔵される本をいくらでも読める。
 ここの受講者たちは英会話に興味がない。目標も持たない。ただ英語を読むことが好きなのだ。私が英語力の向上を目指してきたのとは大きく違う。このように本当に英語を楽しむグループには新鮮な驚きを持った。
 もし彼らがいつか会話に興味を持つなら読解力は大きな助けになるだろう。
 この教室を知って私も手元にある読みさしの英語本を、勉強ではなく、楽しみで読むようになった。

 ≪参考≫

 『意欲派のビジネス英語』(産能大学出版部、1986)

 今のように当時は英会話上達には、「英語を勉強しなくてもいい」、「文法は要らない」、「聴くだけでうまくなれる」という本が氾濫する時代、文法を強調する内容について、編集長は売れるかどうかと心配したが、企業や教育界の支援でよく売れた。
 絶版になっているが、各地の図書館にある。前段の発音について「日本人の発音でいい」と書いた。英米人の発音を教えられ、英語らしく発音すると、無理に唇や巻き舌を使うと癖がついてなかなか取れない。

 ≪大学研究誌に出した論文』

 大学非常勤講師として「英語で学ぶ経営学概論」の科目を担当していた時に、教育研究所の論文誌に出したもので、世界の英語の実態と日本の英語教育改革について書いている。
 英会話にうまくなっても自分の意見を述べられない問題を、諸君に伝えたい。
「岡本博志の若者塾」でネット検索し、左にリストされている小項目から「日本語英語」をクリックすると三つ目か四つ目に出てくる。
(完)

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Read more...

Back to TOP  

2017年3月24日金曜日

#169 私の英語勉強を振り返る――継続と集中は力なり

 私のキャリアが知られると、どこでも個人から英会話を教えてほしいと頼まれました。しかし、私はこれまで引き受けたことがありません。私が目指してきたと同じように、仕事の実務に使うレベルの高い目標を持つ人たちに教えたかったからです。
 実際、大学や外語学校では教えてきました。  私は個人に対し、先ずNHKのラジオ英会話を一年間続けることを勧めてきました。4月から一年間継続すれば日常会話以上に巧くなれるし、熱意の物差しになります。
 断られた人たちには傲慢に見えたかもしれません。それでも継続の気力があるかどうかは英会話上達の決め手です。
 今回、高きを目指す人たちのために2回にわたって書いていきます。自慢話になりそうでこれまでためらってきましたが、要望に応えます。

◇ 英語専門外の人たちに

  私は高校時代には理科系進学のクラスで、数学も理科の科目も苦手ではなかったが、秀才のように得意科目ではなく、好きな科目は国語と英語だった。
 大学の工学部に入ると、英語とは縁が切れた。しかし、多読読書をするかたわら、限られた小遣いの中から無理してアメリカの週刊誌を購読していた。
 大学時代、野球部の選手でリーグ戦のほかに社会人野球部(通称、ノンプロ)からの招待試合が年に数回あり、キャンパスの外にほとんど出ることがない生活をしていた私には、鉄道で旅することが楽しみだった。遠征先までの車内では読書したり、囲碁の本を読んだりしている部員の中で私は英文週刊誌を読んでいた。これ以来40年、英文週刊誌を購読し続けた。
 この頃、まだ日本のメーカーが海外に工場を持つことはなかったが、私の論理思考ではいつか海外進出すると予測していた。私の英語の遠い目標はどこでもいい、海外生活をすることだった。

◇ 何を捨てるか

 野球部を引退すると、時間ができた。クラスの勉強のほかに卒論を書くことで忙しかったが、この頃囲碁と楽器に興味を持った。個人レッスンのような形で教えられるうちに、両方とも上達するためには大変な時間と練習を要することが分かった。素質もなさそうで、しばらくの間考えた末に止めることを決心した。英語とは両立しないことを悟った。
 私の父は囲碁が趣味だった。日本棋院の2段で、会社の部長を定年退職、その後も関連会社で70歳まで働いた後、完全引退した。対局を楽しみにしていたが、至近に住みながら私は相手をできなかった。代わりに義弟が相手をしてくれていた。
 私は今も心残りだ。後悔もある。  しかし、アメリカ企業に転職し、後に日系中小企業の社長になったのも、英語と技術経験のお陰だった
 何かを得るためには、何かを捨てなければならない。

◇ ボクサーのロードワークとキャンプ

 東京で社宅に住む間、3千円くらいの安い携帯ラジオをデスク、食堂、フロに置き、スイッチを入れればFEN(米軍基地放送)が出るようにしていた。ニュースは聴けるようになったが、なかなか分からなかったのは大リーグの実況放送だった。我慢した。
 幸い、海外部門に配属され、月に一度アジアとアメリカに出張する機会を得た。出張が決まると、この時だけは事前に予想される話題を想定して、英文を書き、声を出して集中勉強した。出張時だけが英語を話す機会なので、うまくは話せなかったが、まあまあ用は足りた。
 喩えれば、私の英語取り組みはボクサーのトレーニングみたいなもので、毎朝のロードワークと平常の練習を続け、試合が決まるとキャンプして強化練習をする。この方式だ。

◇ 英語と柔道の授業

 高校時代、一学期に週二度体育正課で柔道があり、必修だった。もちろんこれで有段者になれない。有段者を目指すなら柔道部に入るか、町の道場に通わなければならない。
 また、英語の授業だけでは英会話にうまくなれない。今は話す英語が重視されるようになったが、それで英会話が実用レベルまで巧くなれることはない。巧くなるには英会話部に入るか、塾に通わなければならないだろう。  
 にも関わらず、柔道の先生は非難されることがないのに、英語の先生は「英語をしゃべれない。生徒もしゃべれない」と非難される。おかしなことだ。  私は文法と読み・書きは英会話の基本であるという趣旨の著書が50年以上前に刊行され、これがきっかけで英語教育専門誌に寄稿した。柔道との比較もここで書いた。
 帰国語、NHKテレビなどで英語教育改革に関する対談番組を観たが、文科省の改革を支持する論者は国際化の時代を論拠にしていた。英語を話せないのは読み書き中心の学校教育のせいと言うのだ。
 私はおかしいと思った。「英会話を必要と感じない生徒が多いことは変わらない」、「なぜ言語大国の日本で万人が英語を話す必要があるのか」と疑問を持った。今も考えに変わらない。
 その中の一人、ジャーナリストは「一年間の対米中にパーティでは出席者とろくに会話できなかった。今の子供にこんな惨めな目に遭わせたくない」と言った。要するに、英語・会話ができなかったのは本人が「継続と集中」の努力をしなかったことで、教育制度のせいではない。恰好悪い。
 諸君、高きを目指すなら、授業で真剣に学び、その上に個人努力をすることが英会話の上達になることを分かってもらえただろうか。                                  (完)  

Read more...

Back to TOP  

2017年3月8日水曜日

#168 困難な日本の外交――韓国とロシアへの対応

 以前に本稿で私は「日本はなんとむさくるしい隣国に囲まれているのか。国際化で島国の不利を批判されてきたのに対し、島国でよかったものよ」と書きました。どの国とも日本は陸地の国境を接していないことは、恵まれています。
 若者諸君、今、日本は死活的に冷徹な外交が重要なのです。

◇ 反撃できない韓国人のやるせなさ  

 前回で韓国について厳しく書いた。私は本国韓国人、在米韓国人、通信社に勤める韓国人ジャーナリストなど人脈があり、彼らが本稿を読めば私に失望するだろう。
 私が挙げた13項目は一部を除いて私の意見ではないが、人はそういう風に受け取らないだろう。すべて私の意見だと思うに違いない。世間とはそんなものだ。
 さて、日本にはない韓国が抱える問題を述べてみよう。韓国のやるせなさについてだ。  

    1983年、アメリカからソウルに向かっていた無防備の大韓航空機がソ連の戦闘機に撃墜された。死者269人。
    1983年、ビルマ、ラングーン(今はミャンマー、ヤンゴン)で戦没殉難者廟に参列していた韓国副首相ら政府関係者らが爆破事件で21名の死者。全斗煥大統領は式に遅れて難を免れた。北朝鮮によるテロと言われた。
  1987年、北朝鮮工作員(女性)バクダードからソウルに向かっていた大韓航空機が爆破された。死者115人。
   2010年、国境近くの延坪島が北朝鮮から砲撃された。兵士2人、民間人2人の死者。
   2010年、黄海沖で韓国海軍の哨戒艦が北朝鮮艦艇から魚雷攻撃を受けて沈没。

   韓国はひたすら報復をがまんしてきた。詳しい背景は分からないが、一つ言えることは、ソウルが国境線に近く、北朝鮮が長距離砲の連射をすればソウルが「火の海になる」(韓国人の言)ことだ。  韓国の受難には同情を禁じ得ない。

◇ 戦時賠償と韓国の裁判

 諸君は憶えているかどうか、昨年ソウル駐在の産経新聞記者が逮捕されて何ヶ月も拘留された。容疑は韓国紙がパク大統領を批判した記事を引用したことだ。書いた韓国人記者は逮捕されず、日本人だけが裁判で罪に問われた。  日本でこんな裁判が起きたら、メディアの多くは非難するだろう。  
 三菱重工、不二越などが戦時下に徴用された韓国人グループが未払いという給料の支払いを求めて訴訟を起こしている。すでに朴大統領の時代に、日韓政府間で巨額の経済支援の形を取って賠償問題は解決している。
 ところが、韓国の裁判所は「国家間の賠償は民間の賠償に含まれない」という論理で韓国人の訴訟を支持した。今も日本企業が控訴して係争中であるが、日本企業は、たとえ韓国とのビジネスが被害を受けようが、退いてはいけない。さもなくば、続々と他の日本企業が標的にされるからだ。
 韓国の裁判所は、対馬から盗まれた仏像についても、もともと中世に日本の海賊によって盗まれたものだとして韓国盗人を支持した。韓国の裁判は信用できない。
 友達は言う。「好きなようにやらせておけ。今、在韓の日本大使を帰国させたままだが、 日本は対して困らないさ」と。

◇ 北朝鮮の暴挙を止められない

 マレーシアでの金正男暗殺に続き、日本に届くようなミサイル4発を発射した。日本海で操業していた日本の漁船に当たったとしても反撃もできない、賠償も払われないだろうから、韓国のやるせなさの思いをさせられる。  北朝鮮は今回初めて在日米軍基地を攻撃する目的を表明した。メディアは厚木基地が狙われると報道していたが、私は沖縄の基地を標的にしていると思う。中国政府は裏では反対できないだろう。  それにしても、北朝鮮は暴挙も辞さず、アメリカを二国間協議に引きこんで交渉する際、何を得られるのか?分からない。

◇ ロシアは変わらない

  昨年12月に山口で行われた日露首脳会談の前にはメディアが、少数意見を除いて、いかにもプーチン大統領が北方領土の一部返還で合意するかのような報道を続けた。安部首相もそういう期待を国民に持たせた。
 私も影響されたが、プ大統領が歯舞諸島の返還だけで交渉を交わすのではないかと警戒心を持っていた。なぜなら、国後と択捉の2島はロシア海軍の艦艇が通るオホーツク海に面しており、防衛上の要衝になるからだ。色丹はオホーツク海に面していないが、今は人が住み始めた。だから2島返還のかつての合意は消えた。結果は領土問題には何一つ進展はなかった。
 ロシアの目的は、歯舞を餌にして北方4島の開発に日本の金を使わせることだ。財政が苦しいロシアには、4島の開発と維持は重荷になっている。だから日本に肩代わりさせようとしている。二国間の外交交渉において、安部首相は突っ込み過ぎている。ビジネスに例えれば、買い手が買い気を見せ過ぎているようなもで、売り手のロシアに有利になることは当然だ。安部首相は父以来の悲願という情緒にとらわれて論理思考を見失っているのではないか。ここは首相も国民も一旦身を引いてロシアの売り気を待つべきだ。
 書きにくいことではあるが、冷静に考えれば、仮に2島返還が実現したとして、誰が、何人の元住民が島に住むのか?漁業権益が増えることしか考えられない。  
 ロシア政府の協定破りは伝統だ。いくらでも例がある。ロシア国民もほとんど知らされてない。ソ連が北方4島を日本が降伏してから占領したことを国民は知らされていないだろう。
 ロシア政府は変わらない。
 また、安部首相が訪露するという。彼のロシア外交はお百度参りのセールスで、今は流行らない。ええ加減にしてほしい。     (完)      

Read more...

Back to TOP  

編集

Back to TOP