2013年7月11日木曜日

#95 NHKが個人に訴訟されたーーカタカナ外国語の乱用

 私は日本放送協会の頭文字を取ったNHKを日本語破壊協会と称して日本語の不正確さと、カタカナ外来語の乱用をあちこちで批判してきました。本稿でも前に書いています。  アメリカから大阪に移り住んで間もない17年前、NHK大阪放送局で将来の幹部と目される若手スタッフと会ったことがあります。この時にもNHKアナウンサーが使う日本語が乱れていることを指摘しました。  しかし、私の指摘も改善につながらず、また本稿で書いたところでNHKには届かない。むしろますます悪くなっています。こう感じている視聴者は全国に多いはずです。  そこへ先月、岐阜の「日本語を大切にする会」の世話人がNHKに対し、外国語乱用について訴訟を起こしました。これは新聞でもネットの意見でも注目されています。NHKは受信料支払いと偏向番組で集団訴訟を受けているが、個人による訴訟は珍しい。  さて、諸君はどう思うのか?  

 「外国語乱用」と提訴  
 新聞に出た小さな記事の全文を引用してみよう。   
    ―――――――――――――――――  
 NHKの放送番組で外国語が乱用され、内容を理解できずに精神的苦痛を受けたとして「日本語を大切にする会」の世話人高橋鵬二さん(71)=岐阜県可児市=が26日までに、NHKに141万円の慰謝料を求める訴えを名古屋地裁に起こした。提訴は25日付。  訴状によると、NHKでは報道、娯楽番組を問わず、番組内で「リスク」、「トラブル」、「ケア」などの外国語が多用されているだけでなく「BSコンシェルジュ」などと番組名にも用いられてと指摘。日本語で容易に表現できる場合でも使われているとし、公共性が強いNHKが日本語を軽視するような姿勢に強い疑問があるとしている。   
    ――――――――――――――――――  
 「NHK」でネット検索してみると、この訴訟について若者の意見は批判的だ。慰謝料に抵抗を感じているようだ。彼らは知らないのか、訴訟には必ずと言ってよいほど金銭請求が伴う。これが判決の元になるからだろう。
 もう一つあった批判は提訴者が取り上げた外国語の例について「このくらいは日常語で知っていて当然、勉強しておけ」というような意見があった。確かに「リスク」、「トラブル」、「ケア」の3語はもうどうしようもないほど日本語化している。  私ならもっとひどい例を挙げるだろう。例えば、「カスタマイズ」、「ネグレクト」、「サンクチュアリ」、「アゴラ」、「アーカイブ」、「オノマトペ」、「アップトュゥデート」、「グラデーション」、「ホスピタリティ」などNHKのアナウンサーやキャスターが使う外国語にはきりがない。
 さらに、歴史的に考える批判があった。それは奈良時代に中国から漢字や漢語が流入して日本語を大きく変えたのだから、カタカナ外国語が増えることに目くじらを立てることもない、という内容だった。どうも若者世代では外国語を問題にしていないようだ。私は若者とは違い、個人提訴者を支持するぞ。

◇ かつてNHKの基準は厳しかった  

 松下電器野球部監督(現、パナソニック常務執行役員)だった鍛冶舎巧さんは、高校野球のNHKラジオとテレビの解説者を25年間も務めた。私は滞米生活中に一時帰国した時と最近の二度お会いしている。彼からいただいた「放送席から『ナイスボール!!』」という著書の中に、解説者になる時にNHK大阪放送局の担当部長から受けた事細かな注意が書かれている。そのくだりを紹介してみよう。   
    ―――――――――――――――――――
「見る人の立場になって解説をして下さい」 「ピッチャーがふりかぶったら話をやめて下さい。視聴者は集中したい場面です」①
「NHKですから、正しい日本語を使って下さい。『ゲッツーは日本で作った俗語ですから、『ダブルプレー』と言って下さい」 「野球人はよく『バンド』と言いますが、『バント』です。『バンド』ではありません」 「『バスターバント』の『バスター』は汚い英語ですから、『エバース』と言って下さい」②
「身体的差別用語、例えば、『このバッターは、アウトコースメ○ラ』『デッドボールで○ッコを引いていますが・・・』等々は避けて下さい」③     ――――――――――――――――――――  
 ここで私が注釈をつけてみたい。  
 ① NHKテレビに出ているプロ野球解説者は、ピッチャーがふりかぶってもしゃべり続けている。常態化している。私は大リーグのテレビ中継を英語で聴くことがあるが、日本の解説者との違いがよく分かる。
 ② 私はアメリカでラジオとテレビの大リーグ中継を長年聴いてきたが、バスター(正確にはbastard)という言葉を聞いたことがない。日本の高校野球でよく見るバントの構えから急に強打に切り替える奇策をバスターバントというらしいのだが、大リーグ選手がやったのを見たことがない。   
 エバースはずっと昔の名内野手で、この奇策をよく使ったと言われる。エバースの言葉も聞いたことがない。多分fake buntと言うだろう。 bastardは特に汚い英語ではなく、庶子とか偽物を意味する。
 ③ 日頃、私はメクラもビッコも身体的差別用語であるのかどうか疑問に思っている。もちろん、障害者に向かって使うことは蔑視であり、許されない。
  なんであれ、当時のNHK基準は厳しかったのだ。その心がけは高く評価されてよい。今、せめてNHK大阪放送局だけでもいいから、往年の基準に従ってアナウンサーやキャスターに正しい基準を教育してほしい。

◇ 諸君にも考えてもらおう
 カタカナ外国語を三つに分類してみた。問題は(2)が無節操に使われていることにある。  諸君も偶にはNHKテレビを観てその実態を知ってほしい。念のため、私は諸君の私的な会話の領域に入るのではない。公共放送としてのNHKに改善を求めている。  
  (1)完全に日本語化してどうしようもない外国語  
  (2)ちゃんとした日本語があるのに格好をつけて使う外国語   
  (3)科学や技術の分野の専門用語でそのままカタカナにする外国語                               
                              (完)  

Read more...

Back to TOP  

編集

Back to TOP