2010年10月30日土曜日

#40 続編・中国問題ーー中国の将来はどうなるのか?ーー

 前回に続いてもう一回中国問題について書きます。お断りするまでもなく、私は中国問題の専門家ではありませんが、自由な発想を書いて皆さんの参考に供します。
 私の中国情報源を言いますと、北京に引退した農業学者の中国人と、上海に日本企業の商社経営者(何十年もの中国専門家)の二人がいます。しかし、中国政府の情報「制御」によってホームページもブログも開けないので、私から控えめにメールを送るという片側通行ですから、ホンネを聴けるのは会った時だけに限られます。それに台湾の友人との自由な交信です。ホンコン駐在のアメリカ系テレビの経済専門家がいますが、あまり交信していません。
 今回のように大きな問題が起きた時には、インターネット検索でタイ、ベトナムなどアジア各国の英字新聞を集中的に読みます。日本では主として全国紙を参考にしています。
 さて、若者諸君の時代には中国はどうなっているでしょうか?

中国はいずれ財政危機に陥る
 私の考えでは大国経済の高度成長はいつか止まる。中国も例外ではないだろう。
 これまで沿岸部を優先開発して1億人と言われる富裕層をつくり、彼らが払う税金によって潤沢な国家の歳入を得てきた。しょせん金持ちは貧者の上に成り立つ少数派であり、彼らからの税収にはいつか限界が来る。もう一つ、安い人民元のお陰で巨額の貿易黒字が政府の資金になっている。
 しかし、歳入の伸びが鈍っても歳出の増大はもう抑えられない。思いつくだけ政府の歳出を挙げてみよう。

   *人民解放軍220万人、予備役50万人、武装警察70万人の維持。
   *巨大な中央政府と地方政府の重荷。
   *急速な建艦、宇宙開発、海洋進出。

     (前回で海上保安庁の尖閣に新巡視艇配置を提案した が、最近の
報道では中国は漁業 監視 船だけでも30隻を建造するという。
とてもかなわない)
   *世界中でエネルギー資源と国策による企業買収に投資。
   *途上国へのばらまき支援。
   *全土に広がる高速鉄道、高速道路、僻地の自動車道路建設と維持保守
   *水路整備など農業振興。
   *未整備の医療福祉制度。

     (健康保険や年金の制度にいかに金がかかるか。日本の現状をればわかる)
   *北朝鮮への経済支援

中国の人口対策としての移民政策
 私の憶測では中国政府は、1子制限政策に加えて13億人の人口を減らすために国外移民政策を取っている。政府は食料も農地も仕事口も人民を国内では賄えないと判断しているのではないか。
 なぜか?例を三つ挙げてみよう。
 一つ目は、中国のアフリカ援助で、インフラ整備でも鉱山開発でも彼らは技術者のほかに数百人の中国人労働者を送り込むことだ。それに伴って、中国レストランや雑貨屋の商売をするためにさらに中国人が移住する。その後親類縁者を呼びよせる。当然、現地人の雇用をほとんどしないので、批判を受ける。それでも今後も世界中にチャイナタウンが増えていくだろう。この移民式支援は他国の支援に例を見ない。
 二つ目は、話は古いが、移民式支援の原点と言える例だ。1970年代にタンザニア鉄道の建設に10万人もの中国人労働者を送ったことだ。彼らは現地に穀物や野菜の畑をつくり、現地で自給自足体制をつくったというスケールの大きさ。なんと中国人の逞しいことか。それ以後も中国人は酷暑のアフリカに出かけて行くことをいとわない。それだけ国内事情が厳しいということだろう。今、職がない日本の若者はとてもアフリカには行かないだろう。
 三つ目は、チベットやウイグルの辺境の地に多数の漢族人が送り込まれていることだ。ロシアも事実上植民地支配をしていた周辺国にロシア人を送ってきた。かつて帝国主義時代には、ヨーロッパ諸国も日本も同じことをやってきた。私は本国人を送り込み、言語と文化を変えるという植民地支配の常套政策を中国も取っているのだと思っていたが、かつての帝国主義諸国が送った本国人の割合は10%くらいであったのに対し、中国のそれは50%を超えていることから、これは本国の人減らしだと思うようになった。

インターネット紅衛兵はどれだけ知っているか?
 その一。尖閣諸島は明治時代の1880年にはすでに琉球の一部として住民が住んでいた。日清戦争はその後の1884年であるから、この戦争で併合したということは事実に反する。中国が突然自国領土であると主張し始めたのは、1971年のことだ。ネット紅衛兵は知っているか?
 その二。日本の中国に対する無償供与と低金利融資ODA援助は、小泉政権時代に打ち切られるまで長く続いた。中国政府は金利とともに返済したと言うが、早い話、30年前と返済時では貨幣価値が桁違いなのだ。中国政府は日本から資金援助を受け、インフラ整備をしてきたことを公表していない。中国政府は日本から支援を受け、その一方でアフリカ支援をしてきたのだ。最近の例では、今回のデモが行われた重慶のモノレールも日本のODA資金で建設された。ネット紅衛兵は知っているか?
 その三。今年GDPで世界2位になる経済大国であり、しかも国連常任理事国である中国は、国連分担金を日本の1/4しか払っていない。これを知っているか?

 まあ、情報を与えられない紅衛兵が知らないのは仕方がない。しかし、日本に来ている中国人留学生は知っているだろうか。

中国政府の政体支持と政策は別
 ネット紅衛兵による反日デモで鎧の下にちらちら見えていた自国の政府批判が表に出てきた。彼らの対日理解のレベルを見れば、中国政府の政策をどこまで知っているか怪しい。紅衛兵諸君、こんな程度では国家の歳入に貢献しない、つまり税金を払わない諸君が棄民のように扱われて国外の労働に送られかねないよ。
 最近、本稿で前回の中国論#39を読んだ知人から、「あなたは中国政府支持者ではなかったのですか?」という質問を受けた。私の考えを記憶してもらっていたことが嬉しい。しかし、彼の認識は少し違う。私は中国政府の政体を支持しているのであって、政府の政策をすべて支持しているわけではない。
 説明すると、私は中国政府の政体を会社民主主義CompanyDemocracyと呼び、他の独裁者国家と区別している。それなりに英才が熾烈な競争を経て国のリーダーが選ばれるのは、会社で競争に勝ち抜いた取締役の中から社長が選ばれる体制と同じだからだ。しかも国家主席には1期5年、長くても2期10年の任期がある。私は先進国型民主主義より途上国には会社民主主義の方が建国の基礎を築くのに現実的であると信じている。言うまでもなく、リスクは伴う。
 かつて中国政府による天安門事件の弾圧をやむを得ぬ処置として消極的に支持し、会社民主主義を唱えたことに、アメリカでも日本でも非難を受けた。しかし、この考えは今も変わらない。
 先進国型民主主義を中国が実現するには、国全体の民度が高まらなくてはならない。つまり自由な教育が根付かなくてはならない。まだまだ時間がかかる。

追記。中国が首脳会談中止
 今朝この稿を書き終わってほっとした後、朝刊を手に取ると、一面で「日本側は、中国の主権と領土を侵す言論をまき散らした」として日本を強く非難し、ハノイでの首脳会談をキャンセルしたことを伝えている。中国政府は反中国世論を日本政府が陰で操作していると勘ぐっているのだろう。おそらく日本の世論形成に政府が関与していないことを知っていて彼らが国内対策を行っている。
 日本政府は、弱腰も強腰もないことを認識し、中国政府が近寄ってくるまでじっと耐えて内政に注力すべきだ。戦争を回避するような外交ではないのだから。ここにも中国政府の苦しい内政が出ている。
 私も前回と今回の稿で中国の主権と領土を侵す言論をまき散らしたことになるのか。


 


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