2010年5月17日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』5月創刊号、2010

    大阪は地元メディアの空白地域 
                  経営評論家・岡本 博志
 

 95年にアメリカから帰国、茨木に住み始めて間もなく、大阪が地元メディアの空白地域であることに気付きました。それまでアメリカで17年余り地方都市に住んで慣れ親しんできたような地元メディアが茨木にも大阪にもないのです。何しろ人口2万人の小都市には地元のテレビ局、ラジオ局、それに100年以上の歴史がある地元新聞のメディア三器があったことに比べて、人口27万人の茨木には三器が一つもないという違いに驚きました。

 町の事情を知るよすがと言えば、市役所の広報冊子と北摂地方のリビング情報紙しかありません。もし地元新聞があれば、地元の商店やビジネスの情報や広告に役立ち、膠着した市政も変わります。そこで同志とともに事業計画をつくり、電力・ガス会社の赤字を出さない公益事業として支援を求めましたが、残念ながら共感を得られませんでした。

 本題に入ります。

 人口800万人の大阪府、260万人の大阪市においても、全国では珍しいことですが、三器のうちラジオ局しかありません。
 なぜなのか?この疑問が一つの動機になって大阪研究を始め、97年に私の著書として4冊目になる『大阪がかわる 地方がかわる』を書きました。(注記)
 大阪には地元メディアがない?その実態を説明しましょう。

 ≪新聞≫
 

 日経を含めて全国紙5紙があるが、大阪版の紙面は限られていて大阪に関する情報は少ない。月刊誌のような評論に対する反論や意見を掲載するスペースはない。さらに、各紙間で厳しい販売競争があり、大阪にとって本当に必要な問題を正面から取り上げることは、購読者に受けないので自ずと限界がある。

 唯一の地元紙として大阪市を中心に販売されている『大阪日日新聞』があるが、発行部数か1万部足らずであり、影響力が小さい。違いは『神戸新聞』、『京都新聞』、『奈良新聞』と比較すればよく分かる。
 『大阪日日新聞』には組織があり、記者も居る。大阪には東京の月刊誌にも出せる人材も少なくない。ゼロからスタートするより、この新聞を発展させられない?経営の問題というより、大阪人の支持が問題だろう。当時、「しょせん大阪は民度が低いのだ」、「大阪は全国紙とスポーツ紙が支配しているから地元新聞が育つ余地はない」と支援を求めた会社から言われたが、本当にそうなのか?
 他の県民ができることを、なぜ大阪人はできないのか?

 ≪テレビ≫

 新聞と同じく、大阪のテレビ各局もNHKも、地元番組を持っている。それでも実態では東京局の支配下にある。
 地元番組の一つ、午後のバラエティ番組では、漫才や落語のタレントが民意を代表しているかのようにふるまっている。私はスポーツクラブのサウナ室に置かれたテレビでこれらの番組を観せられている。いつも、ええ加減にせんか、と思う。名実ともに地元テレビである京都テレビやサンテレビ(神戸)は全国番組も大阪民放の番組も放映していない。アメリカの地元テレビとそっくりで、自主独立のテレビ局だ。
 「若者塾#17」で書いたように、民放テレビ局の再編を待つしかないか。その時には、新大阪テレビ(現在の大阪テレビは日経系)を地元資本で設立する日が来るかもしれない。
 
  ≪ラジオ≫

 大阪のラジオにはまぎれもなく地元局が多い。大阪市や周辺都市にはいくつもFMのラジオ局がある。ここでは二つを紹介しよう。
 「大阪ラジオ」と「FMCOCOLO}は系列とは無関係の独立ラジオ局だ。
 「FMCOCOLO」76.5MHzは、主に関西在住の外国人に地元情報を提供するために、大阪経済界が出資して設立されたラジオ局。日本語も使われるが、英語のほかに中国語などの外国語が使われている。音楽番組と地元情報をふんだんに聴ける。ここで話される英語国人以外の外国人による英語がわかりやすい。若者諸君、テレビを観ているより、このラジオを聴いた方がためになるよ。

 ≪月刊誌≫

 大阪には言論月刊誌がない。『大阪人』という月刊誌があるが、文化・観光情報誌だ。東京の有力月刊誌が相次いで廃刊に追い込まれる時節、活字離れの時代に大阪に言論月刊誌を期待することは無理というもの。そこで、私がネット月刊誌『言論大阪』をここに立ち上げることにした。ささやかなチャレンジだ。> また。絶望的なことを始めよった、と友達から言われそうだ。全国の読者には、大阪の問題は全国どこにもある問題の縮図であることがわかるだろう。自分の地域を見つめなおしてほしい。

 (注記)『大阪がかわる 地方がかわるーー国際地方人の大阪逆移住記』、三一書房刊、1997。刊行後13年、その間に予測や提唱通りに実現したことも、まだ変わらないこともある。 当初、梅田の紀伊国屋書店のショウウインドウに展示される、月刊誌の書評に取り上げられる、朝日新聞のインタビュー記事が大きく出る、など幸運に恵まれた。しかし、間もなく出版社の労使争議がこじれ、7年も倉庫をロックアウトされて本の出荷を止められた。今も悔しい。現在、出版社に在庫があるが、インターネット通販では定価の半値くらいで売られていることがある。

    

 

 


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