2014年1月23日木曜日

#107 中国人移民が世界に進出ーー日本人には他人事か

 前回、私の執筆目的を生きている間に遺書として出版することだと書きました。  諸君の中には気づかれる人もいるかもしれませんが、本当は目的というのはおかしいので、目標か計画と言うべきなのです。  私の目的は、若者諸君に自由な発想の広がりをつくり、論理的思考力を高めてもらうことです。発想と思考力は私自身の変わらぬ目的でもあります。
 さて、年末にプリンターのトナーの寿命がきてアウト、日によってパソコンも調子が悪い。結局、残りの年賀状は出せなくて失礼しました。気力喪失なのです。  この時、ふと思ったことですが、来年からの年賀状を止めようかと。70歳から年賀状中止宣言を出した友達もいます。年賀状はふだんメール交信をしない知友人には、生存確認の意味があると思うのですが。まあ、今から考えることは早い。
 諸君は年賀状をどう思いますか?

 前回では移民労働者と雇用の問題について書きましたが、今回は世界の移民を具体的な事例を挙げて取り上げてみましょう。移民については本稿で前に書いています。

世界に出ている中国人移民  

 中国人移民には今でもいくつか特徴がある。 1)大量に移民する。2)チャイナタウンをつくる。3)現地で同化しない(移民先の言葉を話せない)。4)貧困層が主体(当然のことであるが)。6)世界のどこへでも行く。7)不法移民が多い。  
 実例を挙げてみよう。  
 
 私は飲茶が大好物で、滞米中でも帰国後に渡米した時でも、マンハッタンのチャイナタウンにある大きな中国レストランに行く。飲茶というのは、何人ものシェフがつくる自慢の小皿料理(点心)をお茶で楽しむ広東省の習慣だ。
 ウエイトレスがワゴンに載せて食卓を回ってくる。  ある日、北京語(標準話)を話せるアメリカ人と会食した時、彼が北京語で話しかけると、中年の彼女は「分からない。広東語しか話せない」と言った。また別のウエイトレスに私が英語で、友達が北京語で話しかけた。彼女はどちらの言葉も分からなかった。  何十人もいる従業員はホンコン出身だった。チャイナタウンでは雑貨店がそろっており、英語なしで不自由なく暮らせるのだ。
 私は「彼らはどうやって労働ビザを取ったのだろうか?不法移民はどれくらいなのだろうか?」と思った。

  ホンコンが中国に返還される時、多くのホンコン人がカナダに移住した。カナダ政府の受け入れ条件は、専門職か資産(預金)を持っていることだった。政府は中国人移民が社会の底辺の存在になって、国の社会福祉コストの負担にならないようにしている。 このように職を持たない労働目的の移民を規制していることは、おおむね各国の標準的な移民政策だ。アメリカもオーストラリアも、ヨーロッパ各国も同じ政策を取っている。
 オリンピックの前年にバンクーバーを訪れた。アメリカの週刊誌が市民の1/4になるという中国人移民の多さについてホンクーバーと揶揄していたが、見るは聞きしにまさるとはこのことで、街路には予期以上に中国人があふれていた。

 移民政策の極端な例にシンガポールがある。シンガポールでは、建設や医療の補助的な労働者には外国人を使っている。ただし、彼らの移民は絶対に認めないと政府高官が発言していた。こうして高級官僚→専門職→官僚・一般職→外国人労働者という4層の階級を維持している。アラブの産油国でも労働者の移民を認めていない。
 人口千人当たりの警察官数は日本の2人に比べてシンガポールは6人(正規、非正規)であり、強固な警察組織が社会秩序を支えている。それでも最近南アジア系の労働者が暴動を起こした。珍しいことだ。私がシンガポールを最後に訪問したのは1977年のことであるが、当時でも警察国家という印象を持った。  

 中国人の労働者が移民化することがアフリカでもヨーロッパで問題になっている。  その一つ、アメリカの週刊誌が詳しく書いたイタリアでの話。  
 中部の繊維産業の町プラトは人口18万人、このうち合法非合法の中国人移民が増えて現在3万人に達し、町で最大のコミュニティをつくっている。中国人の犯罪も増えているという。
 ほかにローマとナポリにもチャイナタウンがあり、イタリア全体では中国人移民が10万人を超えた。  彼らは私が前述した7つの特徴をすべて備えている。こうなると、最近ではイタリア市民の間で中国人排斥の声が高まっている。
 
日本政府のビザ緩和  

 今度政府は永住ビザ(労働権も与えられる)の条件を緩和し、これまで10年住めば与えられる永住ビザを5年に短縮するという。予測される労働者不足に対応するためだろう。  シンガポールと違って、日本では入国管理や警察の取り締まり戦力は不充分だから、緩和に伴って不法滞在者も増える。  
 難民や移民の受け入れには、先ず法律によって政策をしっかり確立しなければならない。 法律は饅頭のあんこであり、あんこをしっかり練らなければ、取り締まりがちゃらんぽらんになってしまう。計画的戦略的移民政策が求められる。目前の労働者不足に対する場当たりの対応では次世代に悔恨を残す。
 若者諸君よ、移民規制に対しては、少子化対策になる、人道的ではないなど見かけの正論(?)が出てくるから警戒した方がよい。  最後に念のため確認しておきたい。前述した私の考えは一国に偏る大量移民あるいは難民についてであり、すでに日本に住む外国人のことではない。彼らも同国人が大量に日本に来ることは望まないだろう。  日本でも少数が外国人排斥を唱えているが、私は排斥には組みしない。                   (完)    

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2014年1月8日水曜日

#106 ブラック企業と移民ーー「若者世論ネット」の戦果

 諸君たちがやった! 世の中を変えたのだ。  それは諸君たちが自らの劣悪で不当な労働条件を訴えるために、インターネット上でブラック企業の名称を使い始めて摘発したことです。そして、厚生労働省が動き始めました。 
 私が「若者世論ネット」を提唱するよりもずっと前に、若者たちがインターネットによってお互いに呼応し、緩やかな連帯をつくっていたのですね。 これこそ「若者世論ネット」です。

 
  さて、昨年12月には本稿を一つも書けませんでした。一ヶ月間も穴をあけたことは初めてのことです。 その間、病気ではなかったし、体調も悪くなかった。炬燵でちびちびと酒を飲み、うたた寝。雑誌と本棚の古い本を読む。ただ書けなかったのです。発想はいくらでもあるのに、いざまとめようと思ってパソコンに向かうと気が乗らなかったのです。長く執筆していると、こういうブレーキは時たまあることですが、今回のブレーキは長かった。昔、会社の仕事でも不調の時期がありました。諸君も経験しているかもしれませんね。 正月が明けてようやくトンネルを抜けました。

  ある日、小説のほかにブログの執筆が時に重荷だと漏らすと、友達から「大して読まれていないのやから、止めてもっと老後を楽しめばええ。なんのためにやっとるんや?」と言われました。「それはな、オレの遺書にするからや。こつこつと書き、こつこつと金を貯めて自費出版をする。その時には寄付してくれ」と答えました。これは本気です。
 オレの志はまだまだ、おっとどっこい生きている!

「ブラック企業」とは?  

 新聞の記事によれば、ブラック企業とは「長時間勤務やパワーハラスメントなどで過酷な労働を強い、若者を精神疾患にしたり、退職に追い込んだりする企業。新入社員を大量採用した上で選別し、パワハラを繰り返して多数を辞めさせることや、低賃金で長時間労働をさせ、追い詰められた若者を使い捨てるのが特徴的なやり方」と要約されている。  
 雇用の問題は、たとえ雇用側に不法行為があっても雇われている側には雇用主に直接改善を求めることは難しい。労働基準局や弁護士に相談すると、調査に入ってくる過程で誰が訴えたのかばれてしまう。中小企業も零細店も労働組合とは縁がない。なにしろ、労働組合の組織率はたった17%で頼りにならない。だから退職するしかない。
 今の若い者は我慢が足りないと批判することはお門違い。これからは「若者世論ネット」がものを言う。労働条件があまりにひどい場合には、匿名か仮名でほかの若者に情報を流すことは有効だ。雇用主の名前と立地名を書こう。不運に遭っている諸君も、今しばし仕事で忍耐してほしい。

ブラック経営者は無くならない  

 現実を見れば、不当な労働条件で人を雇用し、やっと生きている中小や零細の企業は少なくない。「まともな条件では人を雇えない」という言い分もあるだろう。  しかし、今、雇用の需給が均衡してきて、その上に法の監視が強まれば彼らブラック経営者には困難な時代になる。おそらく非正規やパートタイムの雇用を増やして生き残ろうとするだろう。
 今また政府は人手不足に対処するために、外国人労働者の受け入れを考え始めた。バブル期に日系ブラジル人を中心に大量の外国人労働者を入れたが、今も35万人もの在住者が残っているという。3Kの過酷な労働に耐えてきた人たちだ。彼らが多く住む町では、自治体は大変な重荷を今も背負っている。彼らの子供たちの教育支援に多くのボランティアが貢献している。
 政府は前回の外国人受け入れから何を学んだのか?  今度は若者労働者に代わって、ブラック経営者は彼らを雇うだろう。すでに研修の目的で来日した外国人を、研修は名目だけで安い労働力として使っている。  諸君の雇用機会を脅かすことになるかもしれない。どう考えるか?

◇ 諸君に何ができるか  

 アメリカ政府はTPP交渉で日本政府を押しまくっているが、アメリカが圧倒的に強い農業も、実は合法非合法移民のメキシコ人労働者を抜きにしては成り立たない。いくら機械化されても補助的な労働者を必要としているのだ。移民労働者はいくら働いても農地を持てない。
 ヨーロッパの先進国でも、外国人労働者を二等市民にして産業が成り立っている。アメリカのメキシコ人の農業労働者に比べれば、自営の機会が多いかもしれない。 日本も例外ではなくなるだろう。
 話は飛ぶが、関西にある女子プロ野球リーグの選手は、将来に備えて試合がない時に職業訓練を受けている。野球はいずれ引退することになり、就職を考えなければならない。そのためにパソコンや経理などを勉強している、
  私が諸君に言いたいことは、不遇が会社のせいなのか、仕事のせいなのか、区別して考えてほしいことだ。上述の三つの例では将来の展望が開けにくい。しかし、ブラック企業でもその道のプロになれるなら、転社(転職ではない)の準備ができるまで簡単にやめない方がよいかもしれない。本稿#18の「嫌な上司」を読んでほしい。     (完)

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