2013年5月11日土曜日

#92 韓国政府の対日非難ーー歴史認識は若者に通じない

 高校の同級生S氏から示唆を受けました。彼は言う、「我々が20歳の時、日露戦争は55年前のことだった。当時日露戦争について思い出すことはなかった。2000年に20歳の若者には終戦は55年前のことだった」と。
 さて、彼の真意は何だったのか?  諸君と考えてみましょう。私自身もよく分からないことがあり、私の考えに異議があれば知らせてください。 

韓国パク大統領の外交は危ない  

 国会議員が靖国神社を参拝する度に中国と韓国の政府が毎年非難する。今年もそうだった。両国政府とも正しい歴史認識と反省を求める。今年は訪米中の韓国パク大統領がオバマ大統領との首脳会談において日本の歴史認識について問題にしている。 「先生、あの子が悪いことをしたよー」と訴えるようなもので、小学校では決まって女の子だった。我ら男はこういうことをしなかった。 
 よく引用されるように、日本政府の公式見解は「村山談話」と言われ、当時の村山首相 が18年前の1995年、戦後50周年の終戦記念日に「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明する」(一部)ということだ。
 要するに、韓国と中国の政府はいつまでも日本政府が謝罪し、彼らの歴史認識を受け入れさせたいことに尽きる。両国とも国民がどこまで歴史を知っているか分からない上に、韓国国民は彼ら流の歴史で教育されているから、政府は世論に支持されている。
 韓国は、中国に比べればましであるが、外交、経済、社会の分野で大きな困難に直面している。  
 例えば、北朝鮮との対峙、財閥支配による産業構造のいびつさ、ウオン高による輸出減、教育の過剰競争、それに格差の広がりなどだ。どれも直ぐには解決できない。だから政府は内政統治の手段として北朝鮮より日本を敵役に使っているのだろう。
 パク大統領は当初アメリカ、中国、日本の順に外遊し、首脳会談を持つことになっていたが、訪日を取りやめた。日本と距離を置く一方で中国に接近し、中韓連携の外交戦略を進める構え。パクさん、これは危ないよ。しょせん中国政府の中華外交に利用されるだけでかなう相手じゃない。

一体正しい歴史認識とは何か?

 韓国政府が求める歴史認識とは、日本政府が韓国に対する過去の過ちを認め、反省の意を繰り返し発言し、行動として閣僚と国会議員の靖国神社参拝を止めることだ。 かつて日韓の学者による歴史と教科書に関する協議が行われたことがあった。両国が受け入れられる歴史観を話合った。当時、私はこれほどナンセンスなことはないと思った。 なぜなら、歴史は各国、各学者の主観によって書かれるものであり、一本にまとめられるはずがないからだ。
 韓国は一本かもしれないが、日本では多種多様な歴史観がある。教科書に限れば、その中では戦後このかた左派史観の日教組が影響力を持ち、教科書選択を支配してきたと言われる。文部省もこれを容認してきた。
  私に言わせれば、正しい歴史認識などあり得ない。特に、歴史は時の政治に影響を受けることを避けられない。
 最近、アメリカの議会が日本政府の歴史認識と慰安婦問題に危惧を表したとか。私はアメリカの高校の歴史教科書を読んだことがあるが、手前勝手な論理が書かれていた。アメリカの有力紙も同様のことを書いた。戦争直前のアメリカの新聞報道を著書(『米国ビジネスマンの思考法――シナリオ国家アメリカ』(講談社、1987)執筆のために調べたことがあるが、それはひどいものだった。日本人に対する人種偏見と戦争を仕掛ける世論を煽っていた。
  私はこと歴史認識についてアメリカの議会と新聞からはとやかく言われたくないと思う。

なぜ中国と韓国だけがこだわるのか?  

 私が知る限り、アジア各国で会った人たちは日本の占領や歴史認識についておおむね反感を持っていない。中でも台湾は別格だ。日本統治時代の開拓投資が評価されているし、地方では神社の鳥居も残されている。かつての植民地総督府は今も総統府として使われている。台湾は戦後海外からの資金支援を受けず、独力で今日オランダに匹敵する国力を築いてきた。
 戦後、日本軍が撤収すると、フランスはかつての仏領インドシナ(ベトナム、ラオス、カンボジア)に、オランダはインドネシアに帰ってきて植民地として支配した。例えば、ベトナムはフランス軍と熾烈な独立戦争を強いられた。民主主義を標榜して日本と戦った宗主国は、再び植民地支配をしたことの矛盾をどう正当化するのか。これら支配された国々、ベトナムやインドネシアでは反フランスや反オランダの歴史認識を求めているのだろうか。  
 中国と韓国が靖国参拝を問題にするのは、A級戦犯14人が祀られていることにある。

若者世代の歴史認識――最も重要なこと  

 戦後68年の今、私が聞いてきた若者世代の意見では歴史認識に関心がない。多くは、「韓国政府が歴史認識だの、反省だのと言ったってオレらには関係がない」、「過去の戦争にも関係がない」と言う。彼らは戦争をもう知らないのだ。  
 今、歴史認識と反省を求めているのは、若者と接触もない私の世代前後だろう。それも少数だ。中高年世代はしらけている。これが現実だから、仕方がない。
 冒頭に書いたS氏の示唆はこういうことだろう。 ならば、どうするか?
 終戦記念日にはメディアが強調するにしても、現実を直視して若者世代にこれからどうやって平和国家日本を維持してゆくのか、考えてもらうことだ。
 他方、戦後この方、反日の偏向教育を受けてきた韓国の若者、時に激しい怒りを露わにする「ハングル紅衛兵」(私の造語、韓国の若者インターネット利用者)は、中国の「ネット紅衛兵」と同様、自国の歴史も日本の歴史もわかっちゃいないだろう。
 最近日本のNPOと韓国のシンクタンクが共同で行った世論調査によると、日本に対する悪い印象を持つ韓国人は76%、逆に韓国に悪い印象を持つ日本人は37%で倍の違いがあった。念のために、これは国に対する印象であり、日本人が嫌い韓国人が嫌いというデータではない。
 諸君たちは韓国政府、韓国、韓国人をごっちゃまぜにするような愚に引っかかってはいけないよ。             (完)

Read more...

Back to TOP  

2013年5月3日金曜日

Long and Winding Road to China Democracy


#91 「ちょっと見」と「中国プロ」――事実に表と裏がある

 
 
 「百聞は一見に如かず」と言われます。確かに聞く情報の危うさに比べると自分の目で見ることは確かな面があります。それでも一見にも誤認が伴います。
 さて、前回一見に基づいて上海について書きました。偏見や誤認があるかもしれないと思い、I氏に確認を求めたところ、下記のようなアドバイスをもらいました。敢えて前回に訂正をしないで、そのまま転載することにしました。

 諸君は私の「ちょっと見」と、上海に長年生活する「中国プロ」の違いを知る上で参考に供します。昔、アメリカにちょっと行ってアメリカを語ることを「アメション」と言いました。この言葉と語源を知っていますか?

 
   I氏からのアドバイス 

    「英語ができる人も居る」「日本語ができる人は滅多にいない」のが実態で、外国語資格を持っている人たちは、ホワイトカラー(白襟族)として外国関係の業務に従事していることが多いようです。
  自己顕示欲の強い人が多いので「日本人に英語を分からないフリをする」ことは少ないと思います

    領事館前のレストラン;中国人オーナー経営の日本料理店がはやらなかったので、別のオーナーが四川料理店を開業。単純な淘汰だと思います。

    領土とアヘンは中国人にとって150年の悪夢に繋がるもので、とりわけ中華が東方の



倭人(小日本人)にやられたことは、中国人全般にマグマのように長く残るだろう、と昨日の大手メーカー総経理+コンサルタント会社の有名人との会合で意見が合致しました。
表面化がヌルイ温泉程度で済む処、火山のように爆発する処・・・現象は様々でしょうが心の底のマグマには常に注意しています。
親日と見られる人も島の問題では一歩も譲りません。

  農村戸籍にしばられ、移動の自由が無かった時代に比べて、改革開放政策で、移動が黙認されたのは大きな変化です。その後、安価な労働力として、徐々に都市政府や国家に認知され、遂には法律で定住が認められました。
教育・医療などの差別も残りますが、代を重ねながら「上海人」になっていくのでしょう。今の「上海人」も浙江・江蘇からの出稼ぎ定住者が代替わりして都会人の顔をしているだけとも感じます。
国内の華僑現象と呼んでよいかもしれません。
 
   中国政府との外交がおかしい

 一昨年になるか、当時民主党の小沢一郎議員が子分の国会議員を100人以上も引き連れて北京詣でをした。胡錦濤前主席に一人ずつ握手をし、喜々として記念写真におさまる姿は朝貢訪問のイメージそのものだった。今でもぞっとする。
 自民党政権の今も、日中交流議員団、高村副総裁、防衛局長の訪問が相次ぎ行われようとしたが、中国政府によってすべてキャンセルされた。
 諸君はここで、おかしいと思わないか?

 日中政府間の対立は両国の問題であり、日本側が一方的に責任を負うわけではない。にもかかわらず、中国側からの日本訪問は一つもない。これでは朝貢外交の続きではないか。
 どういうわけか、日本のメディアはこのおかしさを取り上げない。
 日中対立による経済への打撃は両国の痛み分けである。おそらく中国側に痛みが大きい。これからじわじわと利いてくる。当分の間、日本政府は中国への働きかけを止めた方がよい。「押さず、押されず」でじっと耐えるのも外交だろう。

 先日、中国の駐米大使が、「尖閣問題はすべて日本が一方的に起こした問題」と発言したことが伝えられた。うーん、彼らの論理は分からんなあ。
 もとはと言えば、長年問題としてあったが、昨年9月にウラジオストックで開催されたASEAN会議中に、すれ違いになった胡錦濤主席が野田首相に「尖閣を国有化しないように。さもなくば大問題になるぞ」と脅しをかけたことから問題が表面化した。喩えはよろしくないが、中国組の胡組長が日本組の野田組長に対し、「あのシマには手を付けるな」と言ったいうことだ。
 野田首相は胡組長に逆らってシマを自分の組のものにしたから、胡組長は面子をつぶされたから反攻に出た。日本のテレビ番組では、中国は面子を重んじる、と分かったようなことを解説する出演者がいた。どこに面子を重んじない国があるのか?

   中華思想を中国人は信じているのか

 中華思想の弊害を指摘する意見をあちこちで見聞きする。私は中国政府が内政統治の政治目的にしていると思っていたが、どうももっと国民の間で広がりがあるらしい。民族(漢民族)の優越を説く中国政府のキャンペーンは人に説得力があることは分かる。なぜなら民族の優越を説いて国民を躍らせた例は過去にいくつもあるからだ。
 例えば、ドイツのヒットラー政権はアーリア民族の優越を説き、その結果ユダヤ人を排斥した。最近ではセルビアにおいてセルビア人の優越意識からコソボなどの異民族を圧迫し、民族浄化を行った。ほかならぬ日本でも戦前は大和民族の優越を謳った。
 民族の優越意識は自国民に受けるがゆえに危ない

 ひょっとすると、歴代の中国政府要人は小学校時代から中国古典と毛沢東思想の教育を受けて、外国の著作を読まなかったなら、これが中国政府の勝手な論理に通じているのかもしれない。
 かつて日本政府の首相などが訪中した時、中国政府の要人が中国故事を持ちだし、その知識の程度で人物定めをしたという話を聞いたことがある。世界の文化の中心が中国にあると信じる彼らの中華思想の表れだろう。
 ある学者によると、中華思想は2100年も前の華(または夏)王朝時代から「華夏」教育が行われ、これが中華思想の始まりだという。 

  富山と大連の関係について補足

 前稿で富山と大連の関係について何かあるのだろうか?と書いた。
 早速、読者の友人からメールが入った。彼によると、富山県と大連がある遼寧省とは友好提携をしており、もう37年も前からだそうだ。両県省の間では政府要人、民間人、留学生の交流がある。
 私が「国際地方化」の言葉を提唱した10年も前のことだ。

                 (完)

   

Read more...

Back to TOP  

編集

Back to TOP