2010年10月3日日曜日

#39 とうとう露見した中国政府の本性ーー諸君は将来をどうするかーー

 ブログとは何なのか?これからはブログよりツイッターの時代なのか?
 こういう疑問に応える意見が知友人から寄せられます。私も自問しています。しかし、私のブログには目的があるので、ブログを変えるつもりはありません。ただし、なんとかもっと面白くしたいと念じています。
 私の目的とは?それは今から10年後に『友よさらば、若者よさらば』というタイトルで本として出版するために、書いているのです。多分、有力出版社は取り上げてくれないから、自費出版の予定でプロかセミプロに原稿の選別と編集をやってもらいます。私は家族葬にする代わり、500部を世話になった知友人と交信がある若者に遺作として送ります。
 20数年前、もの書きを始めた時、生涯に10冊の本を世に出すことを決意してから、これまで6冊が刊行されました。遺作は最後の10冊目になり、残る3冊をやり遂げたいと思っています。
 私のブログは、喩えれば、大手の系列映画館が作品を上映してくれないので、小さなミニシアターで自主上映しているようなものです。

 さて、今回は今ホットな中国問題について私の発想を諸君の参考に供します。いつも長過ぎという不評を知りつつ、今回はいつもより長くなりました。まとめて書いておかないと発想が逃げてしまうので。悪しからず。

 中国政府が戦略を一段と進めた

◇ 中国政府は機会を狙っていた
 中国政府はこれまでずっと尖閣島周辺に漁業監視船と何十隻もの漁船を送り続け、日本政府がどんな対応をするかを伺っていた。中には漁船が日本領海内まで侵入し、海上保安庁の巡視艇が警告を超えて違法操業していた中国漁船の一隻をつかまえたことで、一気に外交問題化した。挑発していた中国政府と、どこかで国家としてけじめをつけなければならない日本政府との対立だ。

◇ 対中強硬派と目される前原外相への先制パンチ
 代表選挙で親中派の小沢候補が敗れた結果、新内閣で前原前国交相が外相に就任した。 中国政府は対中強硬派と見られる新外相と、新任の丹羽大使に対し、中国の外交権益を通すために先制パンチを放ったのだ。
 ニューヨークでの温家宝首相と前原外相の演説には大きな違いがあった。国際的に温厚なイメージを与えている温首相は、尖閣が中国固有の領土であることを人差し指を振り上げて行った演説は強力だった。アメリカでは、おそらく国際的にも、人差し指を振り上げることはけんか腰と見られ、マナーに反する。私もスピーチセミナーでこのように教えられた。温首相は知っていてけんか腰のジェスチャーを取ったのだろう。これに対し、前原外相のコメントはいかにも弱かった。「尖閣には領土問題は存在しない」ではまったくアピールしない。彼には「中国は70年代から急に尖閣の領土化を主張し始めた」ことを中心にして歴史的経緯を明らかにする論文をアメリカの有力紙に寄稿してほしい。

他のアジア諸国への警告
 中国政府の戦略には対日攻勢を超えて他のアジア諸国への警告がある。中国は南沙諸島と西沙諸島に関してベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾の諸国と領有権を争っている。今回の日本との紛争を見せしめにしてこれらの国を力づくで抑え込むことになるだろう。中国とはうかつに争えないということになり、手足を出せないことになりそう。
 ごく最近、尖閣よりはるか遠い南沙諸島に最新型の武装漁業監視船を配置するなど、支配海域を拡大する中国、どこまで軍事予算をつぎ込めるのだろうか?

中国政府は中国海軍に突き上げされている
 人民解放軍は今も正確には国軍ではなく、共産党の軍隊である。あくまで共産党政府の文人支配下にあるが、いつまで軍を抑えられるかは分からない。今でも政府は海軍から突き上げされているかもしれない。
 陸軍はチベットやウイグルなど少数民族による暴動を弾圧して存在感を出せるし、空軍は有人衛星の打ち上げや宇宙の軍事目的開発によって存在を誇示できる。しかし、これまで海軍は戦果がなく、存在感が薄い。
 軍人のトップというものは野心の呪縛から離れられないものだ。彼らは「ハワイの東はアメリカ、西は中国で支配しよう」、「中国はいくらでも兵士の充足をできる」とか豪語したとか。

空母の保有も彼らの宿願
 中国海軍は中古の空母をロシアから購入して技術習得をしてきた。ソ連時代、巨大な空母をアジア各国に派遣し、その威容で圧力をかけた。しかし、実際には艦載機を飛ばせなかった。戦闘機が艦から発進する時に必要なカタパルト(火薬か高圧蒸気によって加速度をつける)の技術が不足だったという。
 世界最大の空母保有国アメリカは10艦が就航している。トム・クルーズ主演の映画「トップガン」では空母を詳しく描いていたが、カタパルトは見せなかった。絶え間ない戦闘機の発着訓練を要する空母の維持には巨額のコストがかかる。最新型のロナルド・リーガンは本体のほか通信設備、戦闘機を始めとする艦載飛行機、ミサイルなど兵器を含める総建造費は2兆円以上になるそうだ。なんと日本の年間防衛予算の半分だ!
 あまりに銭食いの空母は、かつて2艦保有していたフランスは退役した後の新空母の建造は止まっているという。軽空母を保有していたイギリスは現在新艦の建造を計画中というが、どうなるか。
 中国は建造と訓練に巨額のコストがかかる空母を、それでも建造しようとしている。将軍たちの野望を止める術はなさそうだ。

ガス田開発は隠れ蓑
 私の八卦見では、中国が領海域のぎりぎりに建設したガス田設備は、資源開発を隠れ蓑にしている。本土からあれほど離れ、しかも商業ベースに合うほど埋蔵量があるのか疑問がある。実は、尖閣取りの目的のために、領海域に実効支配の楔を打ち込んだのではないか。日本との共同開発は彼らのポーズだけかもしれないと警戒が必要。
 もし海軍が太平洋進出する意を受けて、目の上のたんこぶである尖閣海域に、日本の出方を封じるために、戦闘艦を配備すると装甲も火器も弱い日本の巡視艇では抗することができない。海上自衛隊の護衛艦(駆逐艦)が出たところで、中国海軍は攻撃してこないことを知っている。
 まして、中国にはドンパチは朝飯前であり、海上自衛艦は武力衝突を避けなければならない。中国はこれまで国境紛争においてインド、ベトナム、ソ連と交戦してきた。

毛沢東と文化大革命の悪夢
 かつて1966年から3年間、毛沢東派と紅衛兵による文化大革命の騒乱が吹き荒れ、中央政府が内政の統治を失った時代があった。滞米時に中国人の女性作家が書いた中国東北部の家族史である小説”WILD SWAN”がベストセラーになった。大部の本を英語で読むことに苦を感じさせないほど、文化大革命のすさまじさが描かれていた。
 中国政府は紅衛兵の悪夢をよく知っているのだろう。今はインターネット紅衛兵が暴れて政府の統治を脅かせている。中国政府は時にネット紅衛兵を泳がせ、時に抑制するという戦術を使い分ける。内政に多くの問題を抱える政府にとって、対日外交で 一歩でも退くことは権力内での地位保全を揺るがすことにつながりかねない。守勢の日本政府と攻勢の中国政府では緊張感が違うので、日本政府の対応はどの政党の政府にも苦しい。

 鬱積した感情を日本人はどう処理するか 

中国の外交戦略
 中国海軍が太平洋に自由に進出し、大陸沿岸の広い海域を支配することが現下の外交戦略の基本であるだろう。対外的には、日米と時に対立をしながら、ヨーロッパ大国とロシアとの間で協調関係を保つことだ。
 中国市場に出遅れたロシアは急に中国に接近し、中国政府の領土支配を支持することで、北方領土問題を牽制することを意図している。彼らには小手先であろうが、何であろうが、ことに付け込むことにためらいがないことだ。さらに、両国に共通する点は、領土問題の歴史について自国民にまともな教育をしていないことだ。

日本の対中外交
 一つは、中国と国境を接する諸国、モンゴール、カザフスタン、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、インドと友好関係を深め、中国包囲網をつくること。中国はベトナムに鉄道建設の援助を計画しているが、これで経済関係を進展させて中国の影響下に置く目的が見え見えだ。最悪の場合、中国と直結する鉄道が兵員と兵器を運ぶ軍用列車に使われる。
 二つ目は、南方海域の護衛のために、海上保安庁と海上自衛隊の艦船を大型化し、装甲の武装を強化すること。中国海軍はこれを上回る艦船をつくるのに、さらに金を使わなければならない。外交は武器を使わない戦争であるが、武力で守ることも外交なのだ。
 三つ目は、最近よく言われるように、日米安保条約に従い、集団的自衛権を実行できるように解釈を変えること。中国政府に外交的圧力を高められる。

政経分離は至難の業
 かつて日中国交回復以前には政経分離という言葉が使われた。最近の日中関係ではそうは行かない。経済においては、日本が中国に依存する度合いと、中国が日本に依存する度合いに大きな違いがあるからだ。悔しいが、日本経済は中国市場なしでは成り立たないほどの関係が現実だ。
 もう一つ、最近使われなくなった言葉がカントリーリスクだ。これは投資先国にある政情不安、法整備、労使関係などの要素について投資の危険を分析することだ。私が専門にする中小企業の中には、中国に対しては「それ行けどんどん」で走ってきた例が少なくない。緊張感に乏しい印象を受ける。       

 フジタの社員が逮捕された時、なんと緊張感に欠けることよ、と思った。この外交トラブル下に、4人がカメラであちこち撮影していたというのだ。帰国した3人が記者会見で「軍事施設区域に入ったことを知らなかった」と言ったことは、まだ一人が人質になっているから、信用性を疑っているが、彼らが政治に無頓着なビジネス馬鹿と言われても仕方がない。
 報復は中国政府の体質であることをしかと認識すべきだ。

メディアに出る声、周囲の声
 なかなかすごい意見がある。
 「日本人は中国に旅行に行くな」
 「中国人旅行者の訪日を受け入れるな」
 「東京の中国大使を深夜に呼び出せ」
 「中国政府は、なんでも日本が悪い、と言うのはけしからん。毒ぎょうざ事件でも日本が悪いで、まだ謝罪もしていない」
 「漁船の破損に対して謝罪と賠償だと。ふざけるな」
 「日本にいるパンダを追い返せ」
 日本人が腹を立てていることは中国大使館が情報収集しているから本国に伝わっているだろう。それにしても、パンダに八つ当たりはやめよう。パンダに罪はないのだから。

 結び

 東アジア情勢は諸君の時代にはどうなっているでしょうか?
 諸君は中国に対してどう思っているのでしょうか?
 おそらく私の世代とは違うでしょう。私の世代には中国に親しみを持つ人たちが少なくないのです。というのは、私たちは小川環樹や吉川幸次郎(二人とも故人)の中国学者が書いた岩波新書を読み、漢文で習った論語に馴染んだ世代で、昔の中国に親しみと尊敬の念を持っているからです。今の中国人に対しては中国政府と中国人、中国人の善し悪しを区別します。
 諸君も中国政府と中国人を区別して感情を抑制してほしいと願います。今の中国政府は小さい、小さい。だから諸君には、日本人には大人(たいじん)になってほしい。ゆめ中国人観光客や留学生に不快な思いをさせるなかれ。ネット紅衛兵の来日も歓迎しよう。
 すでに、日本も核兵器を開発すべきだ、という意見がくすぶっています。小国の北朝鮮が各兵器とミサイルで大国中国を振り回していることから、将来にはもっと高まるかもしれません。
 核兵器とミサイルを持つのに、日本は基幹の技術をほとんど保有しています。しかし、先進国で技術大国の日本であっても、諸君たちは核兵器の開発には反対してほしい。核兵器を持たないことは、日本が世界で立つための平和哲学なのです。
                                   (完)


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