2010年3月2日火曜日

#28 沖縄の若者へ、意識改革「沖縄は貧乏県ではない」

 1月末に2泊3日のツアーパックを利用して沖縄の中部と南部を旅してきました。 2回目ですが、初めての訪問みたいなものです。というのは、アメリカ企業に転職するため渡米する直前の78年に、当時那覇近郊で水産業をやっていた高校の同級生が、台湾の事情や地理を知る私に台湾視察の案内を請われて1泊したことがあるだけですから。夕方に那覇空港に着き、彼の自宅で泊まって翌朝には台北に飛びました。
 ちょっと見の今回、詳しく知らない私が沖縄について述べることには、誤認も見当はずれもあるでしょうが、敢えて沖縄の若者たちに供します。知識もない、その代わり既成概念にとらわれない「素人の発想は聴いてみる」というのは、新技術を開発するにも貴重なことなのです。
 「そんなアホなこと」、「県外者に何が分かるか」と諸君を刺激してみましょう。
 また、長い文になります。発想が逃げてしまうかもしれないので、一挙に書くことにします。我慢して読んでほしい。我田引水になるが、我慢は人生の宝です。


メディアの沖縄報道を鵜呑みにするな
 全国統計では、例えば、県民所得や平均給料て沖縄県が最下位になっている。常用労働者の平均月給は全国平均35万円に対し、沖縄県25万円だ。一人当たり年間所得でも210万円で最下位だ。だから貧乏県だと言う。
確かに、本土人はそう思っているし、沖縄県知事も県選出の国会議員もそう発言してきた。諸君もそう信じさせられているだろう。本当に貧乏県なのか?
 一つ考えてみよう。福井県や富山県は雪国のハンデがありながら、一人当たり県民所得では10位と18位であり、そして全国の生活の豊かさランキングではトップ3に入る。
 この両県から沖縄の経済振興のヒントを得られる。東京との格差が何倍であろうと、沖縄県民には関係がない。福井と富山の一人当たり年間平均所得が290~300万円であるのに対し、沖縄は210万円で大した違いがない。努力目標として到達可能な範囲だ。
 アメリカでも州別所得には大きな差があるが、所得格差なんてほとんど気にしない。生活の豊かこそが大事なのだ。
 諸君、台湾に行ってみよう。地方でも豊かな生活をしていることが分かる。それでも大学新卒者の初任給は10万円そこそこだ。

基地は沖縄経済の足を引っ張っているか?
 全国にある米軍基地の40%が沖縄にあり、沖縄本島の10%を米軍基地が占めているという。本当に基地が経済発展の障害なのか? いつでも何事でもものの見方をちょっと変えてみるといい。
 沖縄本島には500メートル以上の高い山がない。中北部の10ヶ所に点在しているだけで、南部でも丘陵は自然林のままで保護されている。確かに、米軍基地が占める10%は小さくないが、考えてみると、本州には県土の30%を超える山岳地が占める県はいくつもある。米軍基地も山岳地も経済開発をできない点で変わりがない。私から見れば、沖縄には農地に開発できる土地がいくらでも残されている。
 世界の潮流から言えば、自然は保護されるべきだ、ということになるが、食糧危機がいつでも起きる可能性がある今、沖縄の農業振興のために「秩序ある自然保護」という観点から自然林の丘陵地を農地として開発することに沖縄人が束縛されることはないだろう。
 ちょっと見では、さとうきびや穀物農業では台湾に比べて遅れている。農業はこれから事業として面白い。農業は農業にとどまらず、加工工場や販売会社が増える波及効果があり、新たに雇用をつくることができる。

◇ 沖縄の農業と経済に新芽
 野菜チップス。規格外れで市場に出せない、つまり捨てられる野菜を乾燥し、細切れにしたものを食べる。台湾で普及している食材で、これを沖縄の農産品販売会社が事業化した。琉球新聞が連載「壁破る農水産業」(2月2日)で報道。
 長命草。与那国島で栽培されていた長命草の畑に海水をまくと、草の肉厚が増し、生育が早いことが分かった。栄養価が高い素材として本土の青汁メーカーに販売、さらに全国化を推進する。秋から冬にかけて5回収穫できて生産効率が良い。これは最近テレビで観た。
 県内にエタノール拠点。ブラジル国営エネルギー会社ペトロプラスが、中城湾の特別自由貿易地区にエタノール貯蔵施設やアジアへの原油輸出拠点を建設する。沖縄タイムス(2月1日)が報道。
諸君は地元新聞を読んでいるか?地元新聞は諸君が支え、諸君に刺激を与えるものだ。

沖縄は公共事業経済なのか?
 沖縄は公共事業漬けの経済だと言われる。本当にそうなのか?
 私のような観光客が訪れると、沖縄海洋博と国体によって国の社会資本への投資による施設の充実を印象付けられる。民間による観光投資も素晴らしい。今でも高速道路やスポーツ施設の建設が目立つ。「沖縄は公共事業依存の経済」とよく言われるが、この見方を信じてしまう。
 ところが、統計を調べてみると、他県に比べて建設業就労者数では、地元経済が弱いと言われる鳥取県の9.8%、佐賀県の9.4%に対し、沖縄県は11.0%だ。確かに高いが突出しているわけではない。仮に、沖縄経済が公共事業依存であるとしても、いつまでも公共事業に頼れるわけではない。
 私が17年半住んだアメリカの人口2万人の町は、農村に囲まれている中に中小企業の集積と、小さいながら古い名門の大学(地元学生は10%しかいない)があり、農工教一体の経済だった。全国統計では所得が低くても豊かな生活をおくることができ、去り難い町だった。この町は観光業もなし、公共事業もない経済だ。沖縄でもこんな町をつくっていけるはずだ。

沖縄人はスローか?
 「沖縄人はスローで、仕事にはどこかぼおうっとしている」という声を耳にしてきた。滞米時に顧客会社のオーストラリア出身技術者が、「オーストラリア人はスロー」と言っていたことを思い出す。私は、例えば、「沖縄人」や「オーストラリア人」のように一括して括弧にくくることは好かない。
 沖縄の若者諸君よ、スローが本当かどうかはどうでもよいのだ。ほら、忙しそうに働いていても、仕事が効率的に見えても、表面とは裏腹に無駄が多いことがあるものだ。競争心を失わない範囲でマイペースの仕事をするのも心の豊かさである面を見落とさないでほしい。

第一級の観光資源
 沖縄は全国的に見て大観光県だ。近場のアジアにライバル観光地があるせいか、ツアーパックが余りに安値だから、ホテルなど苦しんでいるだろう。本土旅行会社にせめて10%くらいの値上げをしてもらいたい。
 次にはバスでめまぐるしく名所史跡を回る旅をやめて、リゾートで一週間くらい滞在したいと思う。
 締めくくりとして、今回の旅で気づいたことを二つ挙げてみたい。
 一つ目は、名護湾で海中の魚を見られるグラスボートに乗った時、ボートが移動中にはエンジンの音でガイドの説明が聞こえなかった。なぜハンドマイクを使わないのか?
 二つ目は、漬物を食べたくなって観光客も入るレストランで昼食を取った時、定食に加えて漬物を注文した。すると、店員は「漬物はありません。沖縄では年中野菜があるので、漬物を食べる習慣がないのです」と言われた。客には沖縄人のほかに本土からの観光客もいるのだから、観光客のニーズに応えることは観光業の基本の一つだろう。
 たとえスローと言われても、スローと感性が鈍いこととは違う。諸君には感性を磨いてほしい。


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