2016年12月8日木曜日

#166 「若者塾」復活--どっこい生きている


  8月に本稿の執筆を中止してから4ヶ月半、新作を出さないのにまだ毎月100人くらいの読者に読んでもらっていることは予想外でした。
 知友人からきつい意見をもらい、また励ましもありました。こんなように。
 「ダウンしたのか?」  
  「不定期でよい。書き続けろ」
 「私的なブログを天下の公器と思うな。品がなくてもええ。もっと辛口で書け」
 「いくつかのテーマを短く書け」  
 「専門のアメリカについてもっと書け。アメリカについては4回しか書いていないぞ」   
 「もっと自分のことを書け。講釈より体験に興味があるのだ」  
 本当にありがたく思いました。地元の同人誌に締め切りぎりぎりで小説を応募したし、心筋梗塞の手術から受けた身体障害者の指定もなくなりました。 これを機に「若者塾」を復活しました。不定期ですが、書き続けることにしました。
 
◇ トランプがアメリカ大統領に
 
 トランプは典型的なマッチョmacho(親分型)で、押しが強い、力づく、攻撃的なリーダーのタイプであり、アメリカ社会ではよく見られるが、最近の大統領にはこのタイプは一人もいない。
 彼は、長年所得税を払っていない、会社を倒産させている、彼が設立した大学も倒産させて詐欺罪で28億円もの支払を命ぜられた、女性蔑視と移民差別など悪行がある。政治経験もない上にマクロ経済にはほとんど無知で、海外事情には無関心だった。
 どこから見ても大統領にふさわしくない。 それでいて、有権者の半分の票を取った。なぜなのだろうか?

◇ 中流層の反乱  

  選挙前、アメリカと日本のメディアはトランプの支持層は、白人の労働者と低所得者の弱者を票田とすることを伝えていた。 まともに考えれば、黒人、ヒスパニック、女性の票に頼れない彼は選挙で勝てるはずがなかったのだ。なぜ勝ったのか?
 選挙後、長く住んでいたペンシルベニア州の小さな町の事情を友達に訊いてみた。 保守的社会ではあるが、民主党支持者の勢力もある。今回は私が知る中流層の弁護士、経営者、医者、高校の先生もトランプに投票したという。友達は言った―「共和党に投票したのではない。トランプに投票した」。理性が感情に支配されたのだ。
 おそらく、トランプ派は必ずしも共和党を支持せず、ましてクリントンの民主党の改革には飽き飽きしていた。トランプが勝っても4年間だけ。その間に社会も政治もどう変わるのか、やらしてみたろか。おそらくこんな気持ちで中流層が反乱を起こしたのだ。
  何を隠そう。今は、私も「トランプがどうするか、面白いな」と思っている。

◇ メディアが無視した社会主義

 本稿#153で大統領選挙前の情勢について書いた。その中で私が最も注目したことは、今までとは違って、堂々と社会主義者を名乗るサンダース民主党候補(上院議員)が、相当の支持者を集めたことだ。
 私が住んでいたアメリカでは考えられなかったことで、社会主義的リベラルは嫌われた。 しかし、アメリカの社会主義はマルクスのイデオロギーに関わらないから、中流層に受け入れられやすい。  このことをアメリカのメディアは無視した。私は時に保守的でさえある民主党が内部改革をしないのであれば、労働党か社会党を党名とする第三政党ができるかもしれないと思う。つまり、ヨーロッパ各国のように二大政党時代が終わるだろう。
 日本のメディアはアメリカのメディアに追随しただけだった。テレビにはアメリカ研究者であっても二流の人材しか出てこない。ましてテレビ関係者もタレントもどれほどアメリカを知っているのか?

◇ 日本の駐留米軍経費の負担

 トランプは遊説中に、日本に対して駐留米軍の全経費を負担することを求めた。これは 彼が「日本を守ってやっている」と思い込みをしているからだ。私の論理で言えば、駐留米軍は、第一にアメリカのため、第二に日本のため、第三に沖縄を含めて東シナ海の安全のために駐留している。だから、日本が全額負担するいわれがない。
  若い諸君のために説明すると、アメリカの戦後体制の地政学的戦略は、アメリカ本土を遠く離れた地域に防衛線を敷くことにあるからだ。東アジアでは、北は北海道から南は台湾までの日本海に防衛線を置くことだ。これをアチソンラインと言う。今、これが中国の九段線と重なり、せめぎ合いになっている。日本はアメリカの生命線であると言ってよい。
  日本政府は外交上正面切って言えないから、日本のメディアがこの論理を主張すべきだ。 私は米軍駐留経費の負担をもっと減額してよいと思う。 諸君、日本のメディア(特にテレビ)も世論も頼りにならないのだよ。諸君の時代に変えられるのか?

◇ トランプは変わる

 トランプはビジネス馬鹿と言われる。これまでビジネスだけに頭を使ってきたから、ほかには脳が働かない。ヨーロッパやアジアの複雑な情勢が分かっていない。しかし、これまでのように、大衆受けするような思いつきでは大国の大統領が務まらないことを知るだろう。議会もある、彼がつくる政府もある。彼は変わるだろう。

◇ 私は変わらなかった

  ここまで書いてきて読み返すと、友達の上記アドバイスを少しも汲んでいないと思う。 次回からは変えるつもりだ。このままでは読者を増やせないだろう。          (完)                             

Read more...

Back to TOP  

編集

Back to TOP