2010年9月16日木曜日

#38 諸君は民主党代表選挙をどう見たか?――ヘボ八卦見の始末記

 14日に民主党の代表選挙がありました。小沢候補がまるで野党党首のように現政権を批判し続けてきました。「よくもまあ、ぬけぬけと代表選に出馬したもんだ」という巷の声に私も同感でした。
 小沢が嫌い、という声に囲まれる中で、しかも小沢自身が嫌われ者と言う中で、私は「政治は好き嫌いじゃない」と反発してきました。なぜ小沢を首相にしてはならなかったか? ここでいっしょに考えましょう。 

◇ なぜ小沢首相に反対するか?

1)小沢は政治も行政も知らない。グループ議員の一人が「小沢先生は最もよく政治知っておられる」と言っていた。異議あり。彼が知っているのは政治ではなく、政治の裏だ。彼は行政リーダーの経験も少ない。彼の長い政治キャリアの中でたった一度、25年前に自治大臣を務めただけ。当時の自治省は「小さな大官庁」と呼ばれた。わずか400人ほどの所帯でありながら各県に副知事を送り込み、後に選挙で知事に仕立てた。 戦前の内務省のように日本の地方行政を支配していた。今でも自治省出身の役人知事は多い。

2)彼は変われなかった。2006年の民主党代表選挙の演説では「まず私が変わらなければならない」と言って説得力を利かせ、菅候補を破って代表になった。その後彼は変わったか。いや、金丸師匠譲りの金権体質は変わらなかった。今の政治資金問題に関しても、彼のものさしは法律に触れさえしなければよい、という認識のままであり、政治家としてのモラルには気を留めない。

3)本当は自分の政策を持たない。彼の頭は選挙と権謀術策にしか働かないようで、政策に関しては2兆円の予算予備費のうち菅首相がとりあえず1兆円を使うと言えば、全額景気対策に使え、という挙げ足取り。菅首相が雇用創出に全力を尽くすと言えば、景気を良くしなければ雇用は生まれない、というケチ付け。菅首相の財政規律重視に対して、思い切って国債を発行する財政出動によるバラマキで選挙目当てにころころ変わるご都合主義。彼独自の政策は出てこない。

4)対中・対米外交の危うさ。小沢が600人ものグループを引き連れた対中朝貢外交は記憶に新しい。他方、アメリカに対しては普天間基地移転について党決定を覆してさらに新たに交渉すると言う。彼は東アジアにおいて脅威はないと信じている。

5)小沢派は挙党態勢をとらざるを得ない。小沢グループには少数の幹部を除いて人材がいない。だから、政治生命が尽きた鳩山や、騒動屋の西の横綱と私が呼ぶ田中眞紀子まで担ぎ出さなければならない。挙党態勢は虚名だけだった。

6)ニキタ小沢・党第一書記兼首相の資質。陳情の窓口を幹事長に一元化した小沢は独裁者そのものだった。幹事長室で知事にかしずかせて謁見した様を想像すると、昔の役人もここまで威張らなかったと思う。

◇ さて、この選挙はなんだったのか? メディアが小沢敗北の原因として喧しく報じた資金疑惑の問題は小さくはないが、それより核心の原因は小沢グループが菅首相に1イニングも投げさせないで降板させようとしたことだ。立ち上がりに不安定さがあったかもしれないが、まだ失点を取られていない時点で投手を代える監督はいない。また、アメリカでは新大統領に100日はハネムーンと言って議会が攻撃を手控える慣行がある。
 今回の選挙は、言うなれば、小沢の反乱行為であった。民主主義の名のもとになんでも許されるわけではない。従って、反乱首謀者幹部は責任を取らなければならない。小沢のみならず、自分の選挙区で小沢を支持して党員・サポーターで菅候補に敗れた鳩山、原口(総務相)、細野(元幹事長代理)は自ら民主党を離党すべきだろう。これが武士の処し方だ。
 他方、菅首相は挙党態勢の虚名にとらわれず、権力闘争に勝ったのだから、国のために最も強力な内閣と党の人事をやってもらいたい。小沢支持者は当然選挙前から負ければ冷や飯を食わされることを覚悟していたはずだ。
 小沢がやれば政界も官庁もがらっと変わると過剰期待してきた支持者たちには、巨大組織の改革がいかに難しいかが分かっていない。終戦直後に政府がガラポンされた時は破産会社で再建を早く進められたが、今は大国日本の日々の経営を維持しながら改革しなければならない。早い話、倒産した日航の再建さえ3年以上かかる。菅首相は次の総選挙まで2年あると考えて取り組してほしい。
 「やっばり頼れるのは自民党か」という声が出てきた。しかし、これはまだ早い

 私は小沢が騒動を大きくしてから出馬を止めると予測したが、外れ。選挙では菅の議員支持者が230人を超えると読んだが、これも外れ。やはり小沢グループ新人の自立はほとんどなかったようだ。締め付けがすごかったのだろう。
 ヘボ八卦見の見立てが外れた。当たるも八卦、当たらぬも八卦とはこのことか。
 
 


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