2009年12月28日月曜日

#21 民主党政権の100日

 民主党政権が発足して100日が過ぎました。私はじっと我慢してハネムーン期間を見守ってきたのですが、民主党、特に鳩山首相が抱える問題について初めて書くことにしました。《周囲の声》は私が聞いたことをメモした中から古い順に並べています。
 自民党政権を置き換えた民主党政権が、皆さんの将来に吉と出るか、凶と出るか?


《周囲の声――鳩山首相》

 「友愛なんて言い出したな。あれは彼の政治理念を言っているのか?」
 「英語ではfriendship つまり友情だから海外ではなんのことか理解されないだろう」(岡本)
 「あの人はどう見てもリーダーというより、調整型だから難局には向いていない」
 「見かけでは情の人で、論理に弱いな」、「いや、彼は工学の学位を取っているからそんなはずがない。工学は論理の世界だよ」(岡本)
 「今は論理に基づいた戦略を立てる戦国武将型が必要だよ」
 「そうかと言って、味方も敵も蹴散らす暴君武将の小沢ではだめだろう」
 「鳩山は武将ではなく、公卿タイプやね」(岡本)
――民主党が選挙で大勝して鳩山首相が選ばれた――
 「彼の日本語はおかしいね。なんでも『参る』、『というもの』、『思い』の言葉を連発する。『参る』は下から上に使う謙譲語だし、『というものは』は自信の無さから来る飾り、『思い』にいたっては情緒過多で政治家まして首相が常用する言葉じゃない」
 「ほんと、経営でも政治でも難局においては、論理を基本に置かなければならないのに、彼は論理のあんこがええ加減で、皮の情緒に流されとるね」(岡本)
 「オレはいつも薄笑いをしているような彼の顔が気にくわん。緊張感がない」
 「まあ半分は顔つきは本人のせいじゃない」(岡本)
 「彼は社会主義者か、うわべの人道主義者で政治のリーダーではないだろう」
 「六月に渡米した時、いつも集まる経営者の友達と会食した席で、日本に社会主義政党が政権を取りそうなのか、と訊かれた。そんな報道をしたメディアがあったらしい。
 これに対して、社会主義政党を含む連立になる可能性はあるが、社会主義政党が政権を取ることはないと答えた。彼らはこれで納得したが、その後鳩山首相の対米突っ張り外交を知るなら、はたしてどう考えているか」(岡本)
「二頭政治と言われているが、それどころか、小沢大統領、鳩山首相という実態になっている」
 「彼は外遊にはいそいそと夫婦で喜んで出かける。一回専用機を使うと数百万円もかかるらしいから、あんな資産家なら個人経費で行ってほしいな」

 さて、政権100日で私の仲間うちでは鳩山首相は信頼を失った。最近ではテレビや週刊誌で鳩山降ろしの意見が出始めている。


鳩山首相は降りるな


 最も不信感を買っていることは、彼の外交に絡む国家感の問題であるようだ。
実際、選挙運動の最中に彼が沖縄で行った演説の中で、「日本政府はーーーー」と言っているのを聞いて、わが耳を疑った。これはなんぼなんでもおかしい。日本政府という言葉はこれから政権を取ろうという当事者の日本人が言うべきではない。ここは自民党政府と言うべきだ。ほかにも例はあるが、彼はどこか国家感がずれている。
 リーダーとしての資質も問題にされている。
 いろいろ指摘されているが、先日の政治資金に関する記者会見の中で、「私はもともとしがみついてまで首相を続ける気はない」と言ったことが新聞で伝えられた。これはひどい。会社で社長がこう言えば、たちまち権威を失って辞任に追い込まれるところだ。
 「私は公約を実現するまで絶対に首相を辞任しない」と言ってほしかった。
  
  鳩山首相は変身できる。大統領のつもりで論理に従って内閣をリードしてほしい。衆議院選挙まで3年半あるし、来年の参議院選挙では民主党は現状維持か、少し議席が減るだろう。それでも辞任することはない。参議院においては、内政に関しては共産党の賛成を取る、そして外交や安全保障に関しては自民党の賛成を求めることによって、社民党や国民新党なしで法案を通せる。アメリカの国会議員のように、党議を外して党員の自主投票に任せれば、むしろ自民党は世論に評価されるだろう。今のキーワードは「次世代のために国家の総力を出す」ことではないか。

 知事も市長も4年間の任期で取り組める。首相もよほどのことがない限り、4年間の任期を前提に取り組むことが慣例になってよい。
 有権者は鳩山首相を想定して民主党を支持した。100日で首相を降ろすなどとは無責任だ。反自民党で民主党に投じた有権者も同じこと。覚悟があって投票したのではなかったか。
 鳩山首相は困難ではあるが、新しい政治に挑戦する機会を与えられた。奮起してどんな政治を歴史に残すか? 

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2009年12月9日水曜日

#20 トヨタとGMの経営

 「若者塾」の閲覧者数が少しずつながら増えています。人気ブログと比べればはるかに少ないかもしれませんが、新製品の売り上げが増えるまでの潜伏期間みたいなものです。先月まで全国の読者動向を知るために、意図して地元の友達には紹介しませんでしたが、ぼつぼつ地元読者にも広報を始めました。
 顧みれば、1999年に主宰する会でホームページを立ち上げた時には、しばらくの間月に30人という期間がありました。それが数年後に3000を超えましたものの、間もなく300余りに減ってしまいました。私の再挑戦がどうなりますか。
 友達からは「まだ穏やか過ぎるから、もっとどぎついことを書け」、「長過ぎる」、「内容が硬い」、「週に一回は書け」と言われていますが、今は迷っています。テレビで時々観るバラエティ番組で極言を売り物にしている出演者に抵抗を感じているのです。はて、本当に大事なことをバラエティ番組流に面白くできるのか、岡本博志は殻を破れるか?
 一つお願いがあります。それはご意見をメールではなく、ブログのCOMMENTとして出してほしいことです。反発と反対のご意見もあるはずです。

 今回は、#18に関連して雇用条件について事例比較を書きます。

   トヨタとGMの経営比較について

両社の労使条件の違い
 皆さんがご存じのように、サブプライムローンに端を発した世界的な金融危機によって、車メーカーの雄であるトヨタもGMも経営危機に見舞われた。日米両国政府による直接的間接的な救援政策によって両社とも回復の兆しを見せている。
  両社の危機は、共通しているように見えても、経営環境から見ると大きな違いがある。
  先ず、GMを含めてビッグスリーには最強労働組合があり、正規社員以外を雇用できない。高収益経営の時代が長年続いたため、この間に労組の要求を入れて賃金を上げてきた。管理者は労働者の賃金上昇以上に昇給を手にし、経営者はさらに上回る給料と高額のボーナスを得てきた。世界市場で競争が高まる時代において人事コストが重荷になったのだ。
  これに対し、労組とうまくやってきたトヨタは、実はその陰で派遣労働者と期間工の非正規社員を存分に使ってきた。この違いは今後も経営再建に大きな違いが出るだろう。

  さらに、ビッグスリーは退職者の年金や健康保険の福祉制度が手厚いことで知られる。
 私がアメリカ企業に勤務していた時、訪問していたビッグスリーの技術者が入社理由として厚遇の福祉制度を挙げていた。私の思い込みに反して、ビッグスリーには定年まで勤める社員の割合が高い。ビッグスリーは同業との競争より、新興の産業との競争の中で、優秀な社員を採用するために福祉制度で勝負してきた一面がある。これからも重荷になるが、どう対応するのだろうか。

GMの金融子会社
 GMの経営破綻は小型車軽視の経営にあるが、直接の原因は金融子会社がもともと支払い能力がない買い手に無理矢理に融資して車を売ってきたことにある。
 これに対し、トヨタはこんな無茶をやらなかった。戦前に日本で初めて車の月賦販売を始めて以来、金融でも財力をつけてきた。年度決算では巨額の赤字を出したが、まだ全社として資金力がある。
 このトヨタが再び派遣労働者と期間工の採用を増やし始めた。今は非常時であり、少しでも雇用を増やすために大きな改革は両刃の剣になる恐れがある。しかし、長期的にこのままでよいのか? 
  一つの案として、派遣人材の雇用期間を6ヶ月に限定し、この期間を超えて雇用する場合は正社員にしなければならないという規制を法改正によって実施することがある。雇用する側には試用期間でもあり、一方的に不利にならない。アメリカでは派遣会社から採る人材に対しては期間が90日以内に規制されており、期間内に人材が不適格なら代わりの人材を求めるか、正社員として雇わなければならない。

 労働者の権利を守るべき労働組合はどう対応するのか?
 諸君の時代には今のままでよいはずがない。

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2009年11月30日月曜日

#19 大阪市開発と二重ブランド

 先日、家内と長谷寺にお参りも兼ねて紅葉見物に行ってきました。
 私は大阪南部の鉄道をよく知らないので、往きは近鉄大阪線、帰りは橿原神宮駅から南大阪線で阿倍野橋駅に出て一周してきました。南大阪線は初めて乗ります。JR天王寺駅は天王寺区、道路一つを隔てて阿倍野橋駅は阿倍野区に属しています。
 今回はここから発想を得て、二重ブランドについて書きます。大阪の地方問題でありますが、全国の読者にも大阪について知ってもらう機会になるとよろしいですね。


天王寺と阿倍野
◇ 大阪市には現在梅田北ヤード、南港・咲島・夢島など巨大開発プロジェクトが計画されている。阿倍野地区開発も建設中の近鉄百貨店の高層ビルを中心に再開発が進められる。
  さて、天王寺と阿倍野とはどこなのか?東京でもどこでも府外の人たちにはどっちがどっちなのかまったく知られていない。それどころか、私も含めて大阪の住人にも区別がつかない人は少なくないだろう。
  

 歴史を紐解いてみると、1889(明治22)年に天王寺村と阿倍野村が合併 されている。現在は天王寺区の南隣が阿倍野区で、このためJRと近鉄の駅名が別になっている。天王寺と阿倍野、これは天王寺地区とも阿倍野地区とも総称して呼ばれないことが現実にある。ビジネスで言えば、二重ブランドになっているのだ。

  地元経済界は知名度を上げるキャンペーンを進めると言っているが、現状の二重ブランドではどうにもならない。市外では天王寺の方が知名度が高い。もう一度天王寺区と阿倍野区が合併して天王寺区に統一すると良いが、改革を論理で考えない阿倍野区住民が感情的に反発するだろう。もう一つの問題は、天王寺区も阿倍野区も南北に長い行政区になっており、このまま合併するより、隣接する浪速区も含めて行政区域の線引き変更が良いと思う。従来のしがらみを超えて、次世代のため、大阪市100年の計のために統一ブランドをつくってほしい。

  松下電器が歴史ある社名を捨てて、ブランドのパナソニックに社名変更したことに驚いた。社名をブランドに統一することは時代の流れであるにせよ、本当に大胆な決断だった。天王寺を名実ともに「東京の新宿」に匹敵する地位を確立するために、大阪市も決断できないはずがない。

そもそも天王寺の地名は四天王寺から由来している。
  四天王寺は聖徳太子により593年に創建され、日本最古の寺の一つで立派な伽藍配置は他のモデルになってきた。後に天台宗派になったが、現在は和宗と称して独立している。

  寺町になっている周辺を緑化などで一体化すれば魅力が増すだろう。寺と言 えば京都とされるが、大阪駅から地下鉄谷町線か環状線で便利に行けるから、四天王寺にも全国の皆さんが訪ねてほしい。

 因みに、比叡山延暦寺は789年、高野山金剛峯寺は816年に創建された。

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2009年11月18日水曜日

#18 3K、嫌な上司、低賃金からも教訓

 失業率の上昇がまだ止まらない。自民党政権の時から雇用創出の政策を打ち出し、民主党政権も重要施策として取り組んでいます。しかし、施策の効果が出てくるまでは時間がかかります。そこで、もし皆さんの中で失業されている人がいる、あるいは友達にいるのであれば、「今は何が何でも生き残る」ためにアドバイスしてみたいと思います。
 滞米中の話でありますが、大不況だった80年代に困窮した男女二人の若者が身近にいました。彼らは親、かつての先生、牧師の誰にも相談に行かず、友達に相談していました。彼らには友達以外は他人と思っていますから、私は相談を受けた友達に間接的にアドバイスしたことがあります。
 友達は重要な存在なのです。その友達というのは、優等生タイプであるより、困難を分かち合える仲間の方がよいのです。


3K、嫌な上司、低賃金から教訓を学ぶ
人材派遣法。世の中には不公平と不公正が満ち満ちている。諸君は腹を立てているだろう。しかし、腹を立てていても始まらない。
 例えば、人材派遣からの仕事は低賃金の上に、いつ首を切られるか分からないという不安定さがある労働条件の悪化を招いている。急に世間が批判する対象になり、メディアも大きく取り上げたことから、民主党が選挙に勝った一つの要因になった。しかし、人材派遣業法の制定は1985年のことで古い。それがあたかも小泉政権の構造改革のせいにされるのは、小泉政権が2004年に法改正を行い、期間を1年から3年に延長し、対象業種を製造業に広げたことによる。
 民主党は製造業を外す法改正を提案しているが、これには功罪両面がある。
 なぜなら、将来は改めるべきであるが、今の時期には雇う側の雇用にブレーキがかかって失業を増やすことになるからだ。海外では失業を増やさないことと国際競争力を維持するためにドイツが人材派遣を認め、フランスは学生を中心として労働条件の悪化に反対して大デモによって中止に追い込んだ。当然フランスでは若者の失業率が20%を超えると伝えられた。日本はドイツ型を選んだのである。
 
バカに徹せよ。今は我慢の時だ。何が何でも生き残るために、汚い、きつい、危険の3Kであれ、仕事を取る。職場でバカになって守ってほしい心がけをいくつか挙げてみよう。

1)守備範囲に徹して黙々とベストを尽くし、他人のことに口出ししないこと。
2)自分ならこうする、という改革案はメモに取り、周囲に話しないこと。
3)嫌な上司からは反面教師として学ぶこと。
4)辛い仕事を取らざるを得なかったことは実力が及ばないからではなく、不運と考えること。
5)苦手と思っていても、仲間をつくり世間話を交わすこと。

 バカになるとは、たとえ嫌な仕事であれ、くそ真面目にベストを尽くすことを意味する。他人と比較して短期の損得の考えを捨てることでもある。私は嫌な仕事としてやっているわけではないにしても、この「若者塾」を書くのもしんどいが、いつかは若者にメッセージが届くと信じてバカに徹している。


体力を鍛えよ。将来に備えて何か一つ希望する業種について専門の勉強をひそかにすることも大切であるが、その前に先ず体力を強化してほしい。
 台湾や韓国と違い、日本には徴兵制がない。これらの国では、若者が等しく早起き、バランスが取れた食事、規律が厳しい生活を体験できる。健康意識も高められる。
 私は徴兵制を提案する考えは持たないが、自衛隊、消防、警察、海上保安庁など訓練施設を持つ公的機関が半年くらいの若者訓練コースを設けることを提案している。国民の安全を守るために、厳しい訓練を受けている隊員を身近に見れば、共感を持つことになるだろう。私の友達は、ここでも挫折したらさらに自信を失わせる恐れがあると言う。そのために訓練内容はいくらか緩和してほしい。わけがわからない特殊法人が能力開発の職業訓練をしているが、こんなものに予算を使うより、上記の訓練コースに予算を使う方が生き金になる。

 最近、テレビのドキュメンタリー番組で、若い男の精液が少なくなり、若い女の血液が薄くなっていることを伝えた。どのくらい広がりがあるのかわからないが、こういう男女が親になることは危ないことだ。仕事どころではない。

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2009年11月1日日曜日

#17 全国紙、最後の護送船団か

 10月15日からは「新聞週間」、27日は「活字の日」でした。
 今回は、新聞をめぐる話を書きます。私のような古い世代には、朝起きて新聞を広げる楽しみは生活に欠かせないのですが、若い世代は新聞を読まなくなったと言われます。購読数が減ると広告収入も減るので全国紙はどれもが赤字経営に陥っています。中には累積赤字をかかえている新聞社もあります。経営危機になっているのです。
  
 さらに最近相次いで有力な月刊誌も休廃刊になりました。オビニオン誌とか評論誌と呼ばれる『諸君!』(文芸春秋)、『月刊現代』(講談社)、『論座』(朝日新聞)がそれです。購読者が減る、広告収入も下がることによって雑誌事業の採算が取れなくなり、全体の経営見直しからリストラされてしまいました。
 
 全国紙も月刊誌も若い世代が読まなくなったことが衰退を招いた一つの要因でしょう。諸君たちはこのままでよいと思うのか?
 考えてみましょう。
 
  
   なぜ5社体制は変わらないか


☆ 日本には朝日、産経、毎日、読売の全国紙が四つあり、日経を加えると全国紙5社体制になっている。アメリカ、台湾、韓国の各国では全国紙が五つも共存していることはない。戦後このかた変わりなく5社体制が続いてきたのは、各社のカルテルまがいの協調に支えられてきたからだ。政府も競争制限を許してきた。全国紙は最後の護送船団だ。
 この新聞5社体制は、さらに悪いことに、民報キー局によるテレビの5社体制を維持してきた。もともと5社はテレビの創生期に全国紙新聞社が資本と人材を出して設立したか、1社は独立系テレビ局を新聞社が買収したからだ。今は新聞社の持つテレビ局の持ち株は少数になっているが、各局ともがっちりと各新聞の系列であることには変わりがない。
 見かけの競争があるようで、競争がない実態は温存されてきた。芸人、タレント、識者が出演するバラエティショウがどのテレビにもあふれ、どの時間帯にも料理番組が幅を利かせている現状はいつまでも続かない。その上、テレビ局の平均給料は大企業のそれよりも5割も高い。テレビはインターネットのコンテンツが増えている今、早晩経営危機に陥るだろう。

 私は諸君たちの時代には全国紙5社体制が合併により3社くらいに再編されると予測している。奇妙な組み合わせであるが、読売、朝日、日経が業務提 掲を進めている。
 諸君の参考のために、業界が護送船団であるかどうかを識別するには三つの共通項を挙げよう。①合併がない、②倒産企業がない、③外資が入っていない


若者諸君、どうか活字を読んでほしい
 テレビや携帯コンテンツを見るだけでは、論理的思考力をつけられない。 私がかつて講師をしていた大学の学生たちの多くは新聞を購読していないが、それでも大学に来て新聞を読む。床屋や医院では、全国紙を置かず、スポーツ紙だけのところがある。また、週刊誌だけで月刊誌が消えた。
 よく指摘されているように、テレビの日本語の乱れはひどい。これに対して、日本文化の基礎である正しい日本語を活字メディアが守っている。
 次世代のために、諸君が新聞と月刊誌を支えてもらいたい。

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2009年10月20日火曜日

#16 外国語学習に試験の効果が大きい

出ました、出ました!
 #14の「東京オリンピックはもう要らない」を書いたのは10月3日、この中で広島オリンピックを提唱しました。それから一週間後の11日、広島市長が2020年のオリンピックに広島・長崎で開催することを記者会見で表明したのです。メディアはオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞したことと関連付ける報道をしていましたが、まったく見当違いであり、秋葉市長は年来構想をあたため満を持してこの日に備えていたのだと思います。
 さらに、私はインドが出てくることを書きました。それが14日の新聞に報道されました。まだインド五輪協会の副会長が発言したもので、正式表明ではありませんが、必ず名乗りを挙げるでしょう。20年にはアジア開催の可能性があるので、インドが全力を尽くしてくるはずです。そのためには、インドの「国家オリンピック」に対し、広島は「市民オリンピック」に仕立てることが重要です。広島オリピックについてはいくつか提案を持っていますので、詳しくはいつか稿を改めて書くことにします。

 
 さて、前回、小学校英語と英会話について書いたことで、出張中の面談やメールでリクエストがありました。ここでもう一回書くことにしましょう。

  
  外国語学習に試験の効果が大きい


☆ 台湾には年に1,2回出張しているので、多少は北京語をしゃべらないと失礼(?)になると思い、時々勉強を始めてから2年になる。基本の4声の発音だけはNHKのラジオ番組を聴いて習得したから、レストランや駅で簡単なことを話すと相手に通じるが、長く話されるとさっぱり分からない。
 ええ加減な勉強なので、新聞も読めないし、短い文だけしか暗記できない。あきらめたというか、これ以上の進歩を望めない。台湾で北京語を使える機会があるというのに。
 なぜ私の北京語は上達しないか? 歳のせいではない。
 それは試験の集中力を得られないからだ。なんと言っても試験による効果は大きい。受験でも学校の定期試験でもいい、試験勉強をしっかりやることが大切。試験に一点でも多く取るために集中するが、結果の点数は良くなくてもいい。
 諸君が子供さんのためにボクシング選手の生活態度に喩えてアドバイスしたい。
 ほら、ボクシング選手は多くが仕事を持ち、毎日猛練習できない。彼らは普段は早朝のロードワークと基礎的な練習をし、試合が近づくと集中してリングで実戦練習に移る。これが英語学習のコツ。
 諸君自身が英語に取り組むなら、英検のほかにTOEFLという世界共通の英語試験がある。日本の各地で受けられるので、これを励みにすればいい。回を重ねるごとに点数が上がれば意欲も高まるだろう。ビジネスマン向きのTOEICという試験もある。
相乗効果として、親が英語を勉強する姿勢から子供が刺激を受けるに違いない。

☆ ヒアリングの問題。私の経験では、機会が減るとヒアリングの力をいちばん失いやすい。しかし、一度身につけた能力は、また回復も早い。
 普通の環境に置かれている人にはヒアリングを上達する機会がない。ただし、岡本流はラジオの英語講座を聴き流しにすることだ。毎日でなくともいい。これはランニングやラジオ体操でも同じことで、継続の意志を試される。
 単語を増やすにはどうすればよいのか?この質問を受けたことは数えきれない。私の答えは、ヒアリングと同じで、ラジオの英語番組やテレビの英語ニュースを聴き流しして憶える。高校卒業以来、単語帳もメモの類をつくったことがない私は、その代わり、薄い英和辞典を10冊くらい持ち、家のどこにでも出張の鞄にも入れて、知らない、あるいは忘れた単語を即座に引くことにしている。
 ところで、大学受験の共通一次試験に英語のヒアリングを入れていることは、私に言わせれば、クレージーかアホじゃないか。さらに、私立大学の理科系学科が受験科目に国語を課さないで英語を入れていることもおかしい。
 さらに、本試験の合否が決まる総合点数に英語を入れていることもナンセンスだ、と長年主張してきた。これは各々の学科が必要とする英語力を見るために、最低点数を設定して受験者を足切りすることで参考科目にするべきだ。理科系学部では入試において問うべきは、基礎的な学力と論理的思考力なのだ。

 また、得意の堅い話になってしまった。
 結びは、「継続と集中力は力なり」 どんな仕事をするにもこれで実力の差がつく。親なら、子供さんによく知らしめてほしい。


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2009年10月8日木曜日

#15 英会話くそくらえの気概

 台風18号は珍しく陸を北上する進路を取り、予測された水害より大きな風害が出ました。死者4人であったことは不幸中の幸いです。台風のため私の出張が中止になり、予定が混乱しました。このため時間ができて本稿をものにすることができました。こんな短い間隔で続けて書けることはめったにないでしょう。

 さて、本題に入るとして、今年1月に小学校5年から英語教育が必修になりました。全国的で実施されるのは2021年からということです。 これまで16年間は英語教育が総合学習の中で「国際理解」の名目で行われてきましたから、必修に格上げされたことになります。
 文部科学省と英語教育の早期化を唱える推進派は、「これで日本の国際化が進む」とか「英語に親しむ子供が増える」とか言っています。しかし、新聞、月刊誌、テレビなどメディアで彼らの意見を知ると、彼らの目的は英語教育ではなく、英会話教育なのです。これは危ない。その上、年間35時間の授業によりたかが英会話の出来不出来で子供たちが差別化され、英語に親しむどころか、早くから英語嫌いの子供をつくる反面を見落としています。
 若い世代の皆さんが子供さんの教育に惑わされないように、小学校英語の与える影響を考えてみましょう。


  ☆ アメリカの話

  日本の在米子会社で経理責任者をしていた友達が、ある日、私に電話の中でこんな悩みを話してくれた。彼が工場のある田舎町に家族とともに赴任して3ヶ月が経った頃、幼稚園に通う次男がこんなことを言い出した。
 「ボクは英語が嫌い。アメリカの生活もいやだ」
 最初、私は環境が大きく変わったことによる順応の初期トラブルだと思った。よくある話。しかし、親父が言った次の言葉で私はぐっと慎重になった。
 「この坊主は変わり者でね、浪花節が大好きで、子供にしては感心するほどうまい。意見をはっきり言いよる」
 うーん、と間を置いて私は言った。
 「そりゃ、面白い子だね。見どころがあると思うよ。親が初期トラブルとして様子を見るか、それとも子供の意向を汲むか、難しいところだね」
 他人はこれ以上入っていけない。雑談をして電話を切った。

 一年も経った頃、彼と話す機会があった。次男坊のことを尋ねた。
 「実家を守っているばあさんと住むと言って、さっさと九州に帰りよった。ワイフと長男も帰国するから、オレは単身赴任になりそうや」
 次男は浪花節をのひのびと唸っている様を思い浮かべた。

☆ 台湾と韓国の早期英語教育

 
 韓国では1997年に小学3年から公立学校で英語教育が始まった。韓国の英語熱はすさまじく小学生対象の英語塾が多数あり、最も極端な例は、韓国の教育では英語がうまくならないという理由で、母親が伴って子供をシンガポールやオーストラリアに留学させるそうだ。韓国の友達によると、ホンコン人やシンガポール人が英語によって国際化に有利に立っているということから、政府が影響を受けたのだという。彼は韓国にとってそんなに英語が大事なのか、と疑問を持っていた。

 台湾では2001年に小学5年から英語教育が導入され、2005年に小学1年からに変えられた。
 私は台湾には会社の仕事と執筆で毎年1~2回行っているので、現場の事情に直接出会っている。是非を語るには事例が少ないが、事実だけをを紹介してみよう。 日本企業時代に初めて台湾に出張した1975年、民間企業とは日本語、官営大企業の幹部とは片言の英語で打合せした。いずれも技術内容であったので、特に不自由はなかった。それから34年後、国立研究所で数人の打合せでは出席者全員がアメリカ留学経験者で、多少の訛りはあっても英会話に堪能であり、私も自由に英語を話せるようになっていたので、打合せは実にスムースだった。ところが、民間企業の技術者たちとの打合せでは、彼らの英語も日本語も中途半端なため、通訳の助けが必要だった。昔のように、日本語に堪能な台湾人は70歳以上の世代に限られてきている。
 本省人と呼ばれる台湾の多数派は、北京語と台湾語の二つを話し、さらに英語と日本語に堪能であることは実に困難なことだ。

☆ 小学校の英語教育推進派の貧しい意見


 数年前、NHKテレビ番組で小学校の英語教育について賛成派と反対派の4人の論者が意見を述べていた。要点を絞ると、教授はひたすら「英語は日本の国際化にとって重要であり、これで小学生も世界に目を開ける」の一点張り。もう一人の高名というジャーナリストは「記者としてアメリカに一年滞在した時、パーティにおいてさえアメリカ人とまともに会話できず、恥ずかしく悔しい思いをしたので、これからの子供たちにはこんな思いをさせたくない」と言う。二人とも反対派のように論理的説明をできず、賛成の根拠は国際化の御旗と恥ずかしい思いだけだった。> 英語教育について私が知らない根拠があるのかもしれないが、二人の意見は私が周囲で聞く母親たちのあせりみたいなものだ。

☆ インターネット時代の英語

 インターネットで商談を進める場合、相手の顔が見えないので、正しい英文、つまり、文法が正しい英文を書かなければ信用を得られない。先ず、書く前に読めなければならないことは言うまでもない。いちいち他人に翻訳してもらうのでは、金も時間もかかる。
 私は今、日本の従来型の読み・書き・文法中心の英語教育が見直される時期だと思う。早い話、私が英語にうまくなったのは、古いと言われる学校教育のお陰だ。私は30歳から英会話に真剣に取り組むようになった。もう一つ、最近NHKの日本語に批判を強めているが、他方、感謝もしている。私の英会話はもともとNHKラジオ英会話によって上達した。英会話なら30歳でもいつでも始められる。多少日本人訛りがあっても、例えば、アメリカに留学したり、生活したりすれば訛りも取れていく。正確であれば、日本人訛りのどこが悪い!私が知る英語の名手はほとんど30歳を過ぎてから英会話を始めている。
 
 これまでいくつか英語教育について書いてきたが、そのまとめとして立命館大学の教育論文誌『外国語教育におけるFD研究』(立命館大学教育科学研究所刊、1999年)に「実務英語と大学教育の役割」と題して書いた論文がある。論文と言っても難しい内容ではない。諸君が、あるいは子供さんがどんなレベルの英語を目指すかという点で参考になるだろう。
 英会話なんてくそくらえ、と書きたかったが、論文では省略した。希望の方にはコピーを送る。まあ、せめてコピー・郵送代80円切手2枚を同封してほしい。
 住所は、567-0027 大阪府茨木市西田中町8-14-503

 それにしても、躾教育、倫理宗教教育、パソコン指導、安全管理に加えて英語教育の負担が増えるとは小学校の先生には重荷を背負った受難の時代だな。 

 

 

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2009年10月3日土曜日

#14 東京オリンピックはもう要らない

 1016年オリンピックの開催地がリオデジャネイロに決まりました。
 私は見えている結果を事前に書きたかったのですが、東京都の招致活動に水を差すことを敢えて控え、執筆を延ばしてきました。私があちこちで述べてきた予測通りになったことは、少しも自慢にならない。なぜなら、私の周囲では――関西人を中心に少数の関東人――、全員が東京オリンピックに反対していたからです。
 今回は、オリンピックをテーマにしていくつか書いてみましょう。
会話集の中では、書くにはばかるどぎつい極論を排して、穏当な意見だけを紹介しています。

 
☆ 周囲の声。*印は岡本の意見。
   
 「今時、なぜ東京オリンピックなんや。環境とコンパクトが招致のテーマなんて世界に受けるわけないよ」
 「もともと北京オリンピックから2012年のロンドンの次にアジアの都市が選ばれることはないよ」
 「そうそう。次はインドあたりが開催に立候補するだろうな」
 「東京、ソウル、北京がやったように国威発揚をしたいから、当然インド政府もオリンピックをやりたいだろう」

 「私は今のままならオリンピックそのものを支持したくない。これでもスポーツかと思うような種目を増やして大きくなり過ぎたわ」
 「人が採点する種目はやめた方がええな」
 「国対抗で華やかな世界選手権がある団体競技をやめて個人種目だけに したらええと思う。競技というより、なんでも個人種目のお祭りに変えればい い」*
 「ボーリングやチアリーディングも入ってくるで」

 「招致の当事者はタテマエしか言えない立場やから、内心では一回の立候補では選ばれないと思っているはずや。また次もやるのやろな」
 「オレは東京を支持しないよ。日本でオリンピックをやるなら広島がいい。アジア大会を開催した実績があるし、なぜ広島か?なんて問われない。何回でも立
候補すればいい」*

 「今度はリオで決まりだろう」
 「3回目の挑戦というし、『南米に初めてのオリンピック』は説得力がある。リオに決まる」
 「そうなるな」
 

東京は開催資格があるのか? 
 オリンピックの主催は都市であることが条件になってているのに、東京都は都市ではない。他の国では市長が責任者としてプレゼンテーションに出ている中で、東京都知事が出ていることが問題視されるこ とがなかったのか。東京都はIOCが準都市扱いしているのか。
 そう言えば、以前に書いたことがあるが、日本の首府が東京都であることもおか しい。首府を規定する法律がないというが、本当だろうか。

 余談になるが、明治時代の始めには東京市があり、首府であった。廃藩置県の 時に、日本の三大都市圏であった東京、大阪、京都が府と呼ばれ、これが今も大阪府と京府として生きている。他の県の中で、当時最大の人口であったのは新潟県だった。47都道府県というのは話の中でも執筆でも長たらしいから、私は年賀状の住所には大阪県と書いてささやかな改革を提唱している。


あきらめが肝心
大阪が招致した時には、事業計画書の審査で選ばれた5都市の中に入った大阪は一次投票でわずか6票しか取れず落選した。それでも当時の市長と招致団は最終候補の3都市で争われたモスクワに乗り込んだ。まだ巻き返しの可能性があるとして、「ここで止めたら男がすたる」と言ったのだ。
入札の経験があるなら、こんな論理と情緒をごっちゃにすることは絶対しないし、発注者に相手にされない。論理思考の東京はこんなことをしないだろう。
 150億円の招致費用を使ったと言われる騒ぎはこれで終わった。石原知事が唱える「もう一度日本人が一つになり、若者に夢を与える。新しい東京を見てもう」というのは、広島であってもできる。海外から来る観衆のほとんどは東京を問するだろう。

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2009年9月26日土曜日

#13 危機管理の饅頭論と思い込み

私が「まんじゅう論」と称して、ビジネスに関して喩えを初めて書いたのは、97年に刊行された『大阪がかわる 地方がかわる』(三一書房刊)の中で、それ以来、講演でも執筆でも繰り返し提唱してきました。
 饅頭論とは何かと言うと、饅頭の皮は情実あるいは非論理、そしてあんこは論理あるいは道理を意味するものです。ビジネスでは、日頃あんこをしっかり練り、その上に営業センスや情実の皮で味加減や厚さを調整することが必要です。皮を厚くし過ぎたり、皮もあんこもごっちゃにすると、いずれ経営が破綻に追い込まれます。特に経営危機においては、あんこの論理に徹して再建することが基本です


 ビジネスに限らず、皆さんが困難に直面した時にも、情実を捨てて、先ず論理に基づいて考えることが大切です。私は問題の大小にこだわらずA3の白紙に書き出し、問題の要因を皮とあんこに分けて整理することにしています。そして、括弧、矢印、赤丸を付けた紙の全体を眺めるのです。多くの場合、頭で考えているより問題の数が少ないことに気が付きます。
 
 堅い話はさておいて、しがらみの皮に囚われることのほかに、もう一つ決断の障害である「思い込み」について書くことにします。
私は生涯で思い込みの呪縛のために判断を誤ったことが何度もあります。きわどかった経験はもっと多い。皆さん、一度立ち止まって見直してみましょう。

  
 恐い思い込みの呪縛

  • ずっと昔、日本企業から海外出張を始めた頃、バンコックでもう一人の技術者と泊った時のこと。私の部屋で飲んでいる途中、トイレに行った彼がなかなか出てこないので、様子を見に行くとトイレのドアが半開きになっていた。驚いたことに、逆向きに、つまり水槽に向かって座っていた。用足しが終わった彼に言った。「向きが反対だよ。便器には水槽を背にして座るもんだよ」と。ところが、彼は「安定感があるし、水もすぐ流せるから、オレの向きが正しいのだ」と言い張って自説を曲げない。彼の確信に対し、私が良しとする向きが間違っているのかと思ったほどだった。 あの頑固者は、38年経った今でもそうしているのだろうか。
  • アメリカの日系企業で役員をしていた時、技術者を連れてアムステルダムの近くにある会社に出張した。打合せが小休止した時に、彼とともに事務所のトイレに行った。ここで意見が分かれた。DAMEとHEERとドアにオランダ語で表記されているが、例の男女の絵がない。そこで、私が誰かに確かめてみると言うと、緊急度が高い彼は、「なにHEERは英語のHERに近いから女ですよ」と自信を持ってDAMEのドアに入って行った。2,3秒も経ったか、彼があわてふためいて飛び出してきた。DAMEが女だったのである。
  • 文楽人形劇をテレビで初めて見たのは、もう18年も前のことだった。数年前に劇場に出かけた。席のすぐ右側で三味線が演奏されていた。はたと驚いた。あの力強い響きの文楽独特の三味線を、長い間、琵琶だと思い込みしていたからだ。テレビには三味線が映っていたはずなのに。琵琶と一旦思い込みしたら、もう気づくことはなかった。今でも年に2回くらい文楽を観に行く。文楽の題目はすべて「情」の世界であり、日頃「理」の世界で仕事する私には精神安定剤のようなものだ。それに、いつも琵琶の思い込みを想い出させてくれる。

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2009年9月14日月曜日

#12 オリックスが危ない!

 16日に鳩山内閣が発足します。社民党との連立で外交と安全保障について民主党は縛りを受けますが、来年の参議院選挙で民主党が過半数を確保するまでは、なだめすかして無理をしないことです。

 鳩山代表が日本の月刊誌に発表した論文が、アメリカの新聞に抜粋掲載されて波紋を広げ、アメリカ政府の報道官が対米政策について警告のコメントを出しました。私が6月に渡米した時、長い付き合いがある経営者グループと会食した席で日本の総選挙が話題になりました。彼らから民主党が勝った場合、対米政策の変化について質問を受けました。私は参議院の勢力構造から社会主義系政党を連立政府に入れなければならない背景を説明し、表向きは反米に見られるような政策を打ち出すかもしれないが、政権を実際に担当することになれば現実的に対応するだろうと話しました。その彼らは日本がインド洋で各国艦船にタダの燃料を給油するガソリンスタンドを開いていることも、アフガニスタンの警察官に半分の給料を出していることも知りませんでした。アメリカのメディアが報道していないのです。

 鳩山政権が発足する前に、その対米政策についてアメリカのメディアで話題になったことには、反面、プラスの意義もあると思います。
 アメリカ政府は鳩山新政府が反米政策を出してくることは読んでいるでしょう。問題は、来年の参議院選挙で民主党が過半数を取った時に、どのような対米政策を出すのか、これが問われることです。なぜなら、もう社民党の影響力を使えなくなるからです。

 アメリカ大統領が就任すると、議会も外野もハネムーンと言って100日間は大統領いじめを控える慣行があります。我々も鳩山首相にハネムーンを与え、私も国政に関する執筆を休みます。
 
 今回は、プロ野球問題を書きます。「オリックスが危ない!」という表現は、人の目を引く手で、週刊誌の記事のタイトルみたいなものです。
 過激なタイトルは今さて置いて、プロ野球事業改革の一端としてオリックスを取り上げてみます。ここではオリックスを球団名、オリックスグループを親会社と呼んで使い分けることにします。
 例によって、長い文になってしまいましたが、我慢して読んでください。

  
オリックスが危ない!

 昨日、前日の雨が去って快晴。突然思い立って神戸のあじさい球場に出かけ、オリックス二軍の対中日戦を観てきた。二軍から一軍へは毎年一人か二人しか上がれないのに、すべての選手が全力でプレーする姿に心打たれる。
 あじさい球場は正式名称をあじさいスタジアム北神戸と言い、一帯のスポーツ公園を神戸市が運営している。ここに行くには、神戸の中心部新開地から神戸電鉄の三田行きに乗る。ほんの少し先は三田市になる。市街を抜けると電車は登山鉄道のように裏六甲と呼ばれる山中を上っていく。途中にはいくつか開発された新興住宅地がある。これでも神戸市北区とは?調べてみると、神戸市面積は大阪市の2倍以上ほど広い。
 電車賃700円、最寄りの駅道場南口まで50分、駅から200分の徒歩でやっと山の上にある球場に着く。入場料500円を払って通路を出ると、美しいグラウンドが目に飛び込んでくる。この日、ネット裏と両側の内野の席に約700人の観客が入っていた。

 私は夏から秋にかけてオリックスの本拠地京セラドーム大阪と準本拠地スカイマーク神戸における観客数を新聞で見てきた。今シーズンは最下位で例年より悪いかもしれないが、オリックスの試合には本当に観客が入らない。観客が入らない球団はほかにヤクルトと横浜があるが、オリックスはそれを下回り、全12球団の中で通年では最も少ない観客しか集められない。
 例えば、夏休み中の8月3日、高校野球の始まる前から甲子園を明け渡した阪神が広島に遠征して地元にいない日の日曜日に、オリックス本拠地京セラドームの対ロッテ戦にはこれまで最高の25,495人が入った。ところが、学校の夏休みが終わり、阪神が帰ってきた27日の準本拠地・神戸スカイマークスタジアムにはたった9,412人しか入らなかった。9月10日、京セラドームの対楽天戦では9,657人。この木曜日、阪神は甲子園での試合には38,400人が入った。

 8月4日に、親会社の会長であるオリックスの宮内オーナーが京セラトド―ムで楽天との試合を観戦した。この試合は最悪で、オリックスは打者27人、ヒット一本に抑えられる準完全試合をくらった。しかも巨大なドーム球場の11.323人はがらがらの状態に見える。宮内オーナーは腹を立てただろう。彼の球団経営に対する心境はどんなものだっただろうか?

 現実に、オリックスの経営は危機に置かれている。いくつか問題があるが、ここでは五つだけ指摘してみよう。読んでもらうと理解されるように、この球団経営には目先の戦術があるだけで、末端の感性と経営戦略が欠けている。
 

  1. 使用料が高く、しかも試合数が多い京セラドームに客が入らない。
本拠地でユニフォームの胸の表示がB’sでは、BravesかBlue Waveをまだひきずっているようで、元の近鉄フアンから共感を得られない。Buffaloesに変えるべき。

  1. 他球団でプレーした大砲の外人選手4人は多過ぎ。
昨年3位になったことから、今年は優勝を狙うために短期戦術を取ったのだろうが、これでは日本人選手が伸びる機会を取り上げられている。ファンの共感を得ていないだろう。その4人も故障が多く、常時出ているのは2人だけ。
 
  1. 外人か外人を真似た場内アナウンス
京セラドームではがなりたてるような選手紹介は耳障りに感じる。私だけではなく、元の近鉄ファンにも受けていないのではないか。ソフトな声の女性アナウンスの方が球場にふさわしい。

  1. 神戸市内にある二軍の移転。
あじさい球場はプロ野球が目指すべき地域立地になっていない。神戸市民はどれくらい二軍を知っているのだろうか。例えば、二軍を岡山に移転して「岡山オリックス」に二軍球団名を変え、岡山県や鳥取県のファンを増やすべき。私はかつて球団に二軍を高松に移転して四国 ファンを取り込むことを提案したことがあるが、四国独立リーグに市場を先取りされてしまった。

  1. 広島カープのような基本の経営方針がない。
12球団の中では唯一、特定のスポンサー会社を持たないのに、広島はわずかとは言え黒字経営を維持している。無名の選手を二軍から育ててスター選手をつくり、年俸が2億円を超えると他球団に放出するという。主砲であった江藤(巨人→西部)、金本(阪神)、新井(阪神)がその例。私は長年「広島は日本で唯一のプロ野球球団」と言ってきた。


 最近では、都市対抗野球の強豪でさえ、親会社が野球部に使う数億円の年間経費を削るために廃部が相次いでいる。もとはと言えば、近鉄本社が1兆円余の有利子負債を抱える財務危機から、経営改革の一つとして年間30億円を超える球団の赤字補填を止めざるを得なくなったのである。株主に対し、球団維持の正当化を説明できなくなった。球団合併と呼ばれたが、経営の定義では無償の事業譲渡だった。それどころか、私の記憶が正しければ、当初3年間はオリックスに年間5億円の経営支援金を払うことが契約に盛り込まれた。それでも球団を手放すだけで近鉄本社には年に30億円の経費削減になった。

 月刊誌によると、オリックスグループは一時5兆円の有利子負債を抱えていたと伝えている。これまでグループ傘下の企業を売却して債務を減らそうとしている。ノンバンク金融業の最大手とは言え、オリックスグループにとって赤字球団はお荷物になっているだろう。

 オリックスグループはどう動くか、オリックス球団はどこへ行くのか?
 若者諸君の次代にはどうなっているか、皆さんはどう考えるだろうか?

 この日、内野の芝に座ってコンビニのにぎり弁当を食べて観戦した。青空に立ち上がる真っ白な夏雲の間からさす強い陽光を浴びて観る試合。二軍でも一軍でも野球は面白い。

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2009年9月5日土曜日

#11 鳩山政権は民意を超越できるか

 民主党が勝ち過ぎました。政策で競ったということなら、308議席も取れることはないはずです。誰もが指摘しているように、民主党は反自民党票を集めたのです。本来なら、過半数を少し超える250席くらいが望ましかった。
 まだ社員が500人くらいの中堅企業の組織に、いきなり143人もの新人の正社員が入ったと考えてみてください。民主党は事務局を入れてこれくらいの組織でしょう。組織の運営からして大変な困難を伴います。
 若者諸君が首相の立場になってみれば、その困難さを理解できるはずです。私は永田町で取材源を持たないし、テレビのガチャガチャ番組は頼りにしていないので、情報は新聞や雑誌に限られています。それでも思考はできます。敢えて言えば、活字を読まない種類の若者よりはいくらかましという程度です。ただし、違いは、私は20代から大衆の一人として政治に関心を持ち続けてきたことです。
 もう一度言います。考えてみてください。 
 (以下、敬称を略させていただく)

  新政権は民意を超越できるか

 いろいろと不安が持たれている中、3人の大幹部である鳩山、菅、小沢の中から鳩山首相を現実的に国政を任せられる人材として民主党も有権者も選んだのだ。
 先ず、何より選挙の勝利について小沢選対本部長の貢献を過大評価しないでもらいたい。なぜなら小沢選挙プロが今回の総選挙の指揮を取らなくても、多少当選者の数は減っていたかもしれないが、民主党の勝利は変わらなかっただろうからだ。政権交代の大波が押し寄せていた。
 鳩山代表は組閣の前段として、小沢代表代行を党幹事長に選んだ。
 私が言うまでもなく、党務の実質最高責任者になった小沢幹事長が新人当選者たちの小沢チルドレンを率いて、党内最大派閥として新政権に隠然たる影響力を行使することが懸念される。しかし、逆の見方をすれば、国家の政治を担う内閣から彼を退けたと言える。世間で言われるように、彼自身が首相になる野心を捨てきれないのなら、策謀を捨てて実績によって首相を目指すべきだ。私は彼に総務大臣をやってほしかった。
 長年自民党によって取り組まれてきた霞が関改革は、橋本内閣の98年に「中央省庁改革基本法」が成立、森内閣の2001年1月に施行された。これによって省庁の数は半減したものの、全体の課の数はほとんど減っていないと言われる。何よりも省庁支配の構造はまだ改革されていない。今、巨大官庁の総務省を改革の本丸として着手すれば他の官庁に小沢手法が及ぶと期待していた。
 新政権は、労使関係に喩えて言うなら、経営経験がない労組幹部が急に経営者になったようなものだ。つまり、霞が関改革では官僚権力の改革と各省の大労組を相手にしなければならない。このためにも自治大臣の経験がある小沢は、持ち前のリーダーシップを発揮するのにこれ以上の適材はいない。彼の手腕を見たかった。

 彼の主導で93年につくった社・公・民の細川内閣がスキャンダルでつぶれた後、羽田牧(現民主党最高顧問)政権に置き換え、また悪い虫が出て59日で同志の羽田を退陣に追い込んだ前歴がある。
仮の話として、鳩山首相が堅持しようとする社民党との連立関係が切れるなら、参議院で過半数割れして法案が通らない事態になる。この時、小沢は参議院のリベラル派自民党か公明党に対して切り崩しを試みるかもしれない。彼には朝飯前のことだろう。
隠然たる影響力によって政権の獅子身中の虫になることは、彼の政治家としてのキャリアに花を咲かせることにならないだろう。
 
次に、野党になった自民党に要望。小泉元首相が遊説で「自民党も一度野党になるといい」と発言しているが、私も共感する。最近の自民党は、企業経営で言えば、株価が低迷しているにもかかわらず、大きく変わる市場に緊急対応もできない、株価が急落してからでは打つ手も限られる倒産寸前の大企業みたいなもの。小泉元首相が唱えた「自民党をぶっ壊す」という公約が彼の引退と同時に現実になったことは皮肉だった。
 企業は倒産すると会社更生法の適用を受けて、経営者がガラポンされる。自民党も倒産したつもりで、党内外の保守派議員を結集することで、本当の保守党として再編してほしい。民主党という政権を担当できる対抗政党が育った今、田中元首相が言っていた「自民党は総合商社。右から左まで、専門分野を持つ人材がそろっている」という国民政党はもう要らない。自民党自体が構造改革を求められているのだ。
 それ、倒産企業が優良企業に生まれ変わった例はいくらでもあるではないか。

 最後は、#9に書いたことで、民主党に再度しつこく要望したい。
 それは高速道路の無料化。もともと民主党が自民党の1000円料金に悪乗りしたことが間違いだった。次世代のためにあるべき総合交通体系については以前に提唱したことがあるので、詳しくは改めて書きたい。要するに、若者世代に残すべき交通体系とは、国情の利点を最大に生かすために、道路・鉄道・飛行機・フェリーをトータルで考えることだ。予算化した上で大型コンピューターを駆使して最適モデルをつくってほしい。
 大勢に惑わされず、高速道路の無料化については社民党の福島党首が異論を唱えている。新聞記事から引用する。
 「交通が渋滞し、(配送品などの)遅配が増えるのではないか。莫大な税金がかかる。二酸化炭素が増えてしまい、環境の問題でいかがか」
 これが良識だ。もっとも、私の次世代のための総合交通体系についてはメディアに出てこない。私は高速道路無料化ではこれが最大の問題だと信じる。早い話、高速道路をタダなら使うという利用者は要らないのだ。
 

 与党も野党も、国が内外で直面している国難には目をつぶり、自分だけの利益に釣られる愚かな類の大衆に対して、無節操な撒き餌をしてきた。新政権は撒き餌を一時さて置いて、果敢に大きな国の課題に取り組んでもらいたい。たとえマニフェストの撒き餌に反することでもよい。4年後に帳尻を合わせればよいのだ。
 いざ政権についてみて、公約と現実が違うことはいくらでもあるだろう。識者が「マニフェストの公約を修正することも変更することも認めない」と意見を述べているが、気にすることはない。
 
 結びとして批判を覚悟の上で言うが、民意の言いなりになるだけなら政治家は要らない。はたして鳩山首相は民意を超越できるか?
今は鳩山首相の政治を見よう。
 

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2009年8月31日月曜日

#10 女子プロ野球が設立

総選挙の各党キャンペーンが高まる最中、8月25日、関西に女子プロ野球の設立が記者会見で発表されました。本当に大丈夫か?と首をかしげました。
 経営と並んで私の専門分野であるプロ野球の改革については、メディアではほとんど取り上げられることがないので、「若者塾」で一つの大テーマとして今後も継続して書いていきます。友達の間でも、「プロ野球の話はおもしろい」と言われます。逆に、他の話はおもしろくないということなのか?どちらであれ、このブログを一人でも多く開いてもらう効果を期待して前向きに考えることにします。
 
 総選挙は予想された通り、民主党が大勝しました。私の考えでは、民主党が勝ったというよりは、自民党が勝たせたのです。つまり、自民党による長期政権が限界に達し、人はより大きな変革を求めた結果が出たのだと思います。
 95年に帰国以来、国難の時代ととらえて自民党に期待し、支持してきた私でさえ、今回の政権交代を新鮮に感じています。メディアの政治報道が静まったら、次回では私の考えをまとめるつもりです。
 選挙の後には、各候補には事務所撤収、経費支払い、収支報告書提出などの後始末の仕事があります。特に、落選した無所属候補にはこの敗戦処理は辛い。心から労をねぎらいたい。

  
  関西に女子プロ野球が設立 

 本稿#7でプロ野球関西独立リーグの大阪か神戸の球団が、いずれ移転を余儀なくされると書いたのは7月11日。それから一ヵ月後、大阪球団のオーナーが経営から撤退することを表明し、新オーナーを求める事態になった。
 これに先立つ6月にはリーグ全体の運営会社が撤退し、その後リーグ代表が新加入の三重球団の経営者に交代した。新代表はリーグの名称を「関西独立リーグ」から「関西・東海リーグ」に変えることを表明。リーグが関西から東海にシフトするという方針は経営者として正しい判断と言えよう。いずれ球団の立地が三重、和歌山のほかに岐阜、大津、奈良のどこかに移転することになるだろう。新リーグ経営者の手腕に期待したい。
 さらに、総選挙キャンペーン最中の8月24日、記者会見で関西に女子プロ野球設立の発表があった。京都の健康食品会社「わかさ生活」が支援し、資本金3億円で「日本女子プロ野球機構」が京都と他の都市に立地する2球団で、来年4月に開幕するという。
 代表は、1球団に1億2~5千万円の運営費がかかると予測しているから、それ相応の覚悟をしているようだ。他方、「チケット収入をあてにしない運営」という方針を示した。しかし、スポンサー会社の寄付頼りで、チケット収入をあてにしないというのでは、自助努力のモティベーションが生まれない、言いかえれば、強い利益志向が伴わない運営が本当に可能なのか?
 リーグ存続を安定化するためには、本当は資本金を基金にできればよいのであるが、それでも年利10%の高率で3億円を運用しても3千万円の年間運営資金ではあまり足しにならないか。資本金は食われるのに対し、基金は温存されることに違いがある。

 ここで、私が在米時代に観たアメリカ映画「プリティ・リーグ」のことを話してみたい。
 この映画は、戦時中の1943年に設立された女子プロ野球を題材にしている。女子プロ野球リーグは当初4チームからスタート、48年には10チームに拡大されて年間に観客90万人を集めるほど人気が出た。
 当時は女性には肌の露出が抑制されていた保守的な社会であったために、女子選手がショートパンツで長い脚の素肌を見せる姿に男の観客が興奮したのだという。その後ビキニが流行するようになると、女子プロ野球が衰退した。というのは、私のジョークで、本当は大リーグ野球が復興するとともに、54年に「プリティ・リーグ」は解散された。因みに、アメリカでは60年代初めまでビーチでビキニが禁止されていた。
 知らなかったことであるが、50年代初めの日本にも女子プロ野球があった。

 本命のプロ野球は約30試合を残し、終盤に入った。プロ野球経営の視点からは、シーズン後にひと波乱起きそうな予感がしている。

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2009年8月9日日曜日

#9 見えてきた総選挙の行方

 前回で高齢者の政治的影響力について書きましたが、それから間もなくして損害保険会社が70歳以上の高齢運転者に対して保険料を値上げする方針を発表しました。
 若者世代の保険料が高く設定されているのですから、私はものの道理から賛成です。なぜかと言うと、保険ビジネスというのは、すべて確率・統計に基づいているので、事故率が高い一定のグループに分けて保険料を算出することは当然であり、若者グループだけを高くすることは片手落ちだからです。
 私は来年70歳になり、値上げされる保険料を適用されます。ゴールド運転者ですからいくらか割安になりますが、運転免許取り立ての高齢者は保険料がまともに高くなります。若者グループも5年間の安全運転の実績が出るまではゴールド運転者になれないのです。
 ただし、保険料値上げには政府の認可が必要だから、陰の行政指導によって各社が保険料を一律にすることに対して警戒が必要です。必ず各社から合見積もりを取りましょう。

 いよいよ総選挙まで3週間、すでに街頭では選挙戦に入っています。今回はばらばらの話題を書いてみることにします。皆さんの参考資料にしてください。あくまで、参考です。

 
 見えてきた総選挙の行方
 
◆ 先般、法制審議会が成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げることを諮問した。これは民法だから、関連の法律が300以上になり、改正が実現するまでには何年もかかると言われる。因みに、昨年成立した国民投票法では投票権が18歳まで含まれることが決まっている。
 世界ではすでに18歳になっている国が多いが、アメリカでは州毎に18~21歳に分かれている。しかし、50州のうち45州では18歳になっているから、いずれ全州で18歳になるだろう。私が滞米中に知った議論では、18歳から徴兵制が適用されるので、選挙権も18歳にすべきだという理由が主流だった。しかし、私の周囲では18歳の成人は未熟だという意見が多かった。
 個人差がある成熟度は、18歳が一律に未熟だとする意見には疑問がある。逆に、20歳なら成熟とする意見にも疑問を持つ。いずれにしても難しい問題だ。

◆ 前回、郵政選挙と言われた総選挙で、通りがかりに梅田で小泉首相の演説に出くわした。大変な人だかりの中で、ギャルの群れが携帯電話やデジカメで首相を競い合って撮影していた。彼女たちは演説をどこまで聴いていたか? 投票に行くのか? 彼女たちは未熟さもあろうが、政治について無知か無関心が問題なのだ。私はこんなことを考えていた。
 法制審議会の諮問に対して、若者世代には「関係ない」、「18歳も20歳も変わらない」というコメントをメディアが伝えていた。私も18歳も20歳も変わらない、という意見を持たされる。かつて江戸時代には、20歳で年増、30歳では大年増と言われたという。なんで日本の若い女はあんなに子供っぽいのだろうか。

◆ シンガポールの首相だったリー・クワン・ユーがどこかのスピーチで、「独身者は1票、家族持ちには2票を与えるべきだ」という発言をしたことが、アメリカのメディアが伝えたことがある。アメリカでは、もともと一党独裁体制を敷くリー王朝は人気がない。彼もアメリカ嫌いなのか、渡米した話を聞いたことがない。それが日本では対照的に彼は高名だ。
 因みに、日本で女性に選挙権が与えられたのは、戦後の1947年のこと。戦前には一定の税を納める者に選挙権が与えられた時代があった。

◆ 自民党も民主党もあるべき国政の政策より選挙戦略を優先して、次世代にお荷物を残すようなバラマキ政策ばかり。民主党は右から左までの寄り合い所帯だと批判されるが、自民党もすでに内情では変わらない。
 どうやら今回の選挙では野党が本格的な政権を取る見通しになってきた。民主党政権に対して、二つだけ注文をつけたい。
 一つ目は、高速料金の無料化。こんなことをしたら、経済・経営の原則から大きく外れることになる。高速道路の利用者が受益者負担をしないばかりでなく、日本の大きな運輸体系にマイナスになるからだ。次世代のためには、道路、鉄道、フェリー、航空を総合した運輸政策を考えなければならない。世界的に見ても、四つの主要な島が海に囲まれる日本ほど、大型コンピューターを駆使してこういう総合政策を打てる国はない。早い話、せっかくここまで育ってきたフェリーが受けるダメジをどうするのか?    
 二つ目は、子育て支援と高校の授業料をタダにすること。バラマキ支援ではなく、弱者救済に絞るべきだ。苦しい人が自ら申請して支援を受ける形にしない限り、単に社会規律の緩みを招くことになる。
 民主党政権は、4年間の期間を前提にし、政権に就いて誤りと知れば、逞しい良心に従い、公約を変えることにためらうなかれ。4年後、公約の実行率5割なら充分に評価できる。

◆ 私の分裂投票。前回の総選挙では小選挙区は民主党候補、比例区は自民党に投票した。衆議員の補欠選挙でも民主党候補に投じた。彼は2回続けて落選し、惜敗率が70%を超えたにも関わらず、復活当選できなかった。地方では60%の惜敗率で比例区に復活当選した例があるのに。
 今回はどちらも民主党を選ぶつもりであるが、民主党の鳩山、菅、小沢の3幹部は勇退して次世代のリーダーがいいと願っていた。ナンバー3から上がってきた鳩山代表に挑戦の機会を与えてみたい、長くブルペンで投げてきた鳩山投手に実戦で先発の機会を与えようという気持ちだ。民主党の経済政策と外交・安全保障政策には甚だ不安を感じるまま、「ここは自民党より新政権の方がまし」という世論の大勢に従おうと思っている。国政を担うことになれば、政策が変わるだろう。
 それにしても、論理、あるいは原理・原則を重視する私自身、選挙の苦労人に返り咲きしてもらいたいという情実に左右される。選挙とは難しいものだ。(完)

 
 

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2009年7月25日土曜日

#8 若者が軽視される政治環境

 #6、#7と続けてプロ野球について書きましたが、プロ野球組織NPBの本体事業の改革については後日書くことにします。何しろ組織が主導してストライク・ボールのカウント順を国際標準のボール・ストライク順にも変えられない、日本の飛ぶ球を大リーグ球または国際球に統一することも長年できないのですから、全体の経営改革などどうなることやら。大リーグ組織がプロ野球興行全体の経営主体であることに比べると、日本プロ野球組織は権限を持たない下宿屋の管理人みたいなもので、経営にはタッチさせてもらえないのです。世間の誰もが組織強化の意見を出していても動きは鈍い。
 コース料理に喩えると、WBCが前菜ならアジア・シリーズはデザートに相当するだけで、主料理の本体事業を改革しないことには、プロ野球の発展には限界があります。主料理が美味くないレストランはいつか繁盛しなくなることは、経営の道理でしょう。
 ところで、先日、投稿で#6に誤認があることを指摘されました。記憶に頼り、検証に手抜きするとこんなミスをしてしまいます。忙しいなどとは言い訳になりません。#6本文中に赤字で追記しました。お詫びします。
 今回は、総選挙が決まったことだし、硬い話に戻って若者世代が置かれる政治の不利について書きます。

 若者が軽視される政治環境
 やっと衆議院が解散されて8月30日の投票日が決まった。
 私にとっても今度の選挙では難しい選択を迫られている。今も政党の選択に迷っている。長年私は日本には保守党も労働党(労働組合党ではない)もないことが、政党政治が発展するための阻害要因になっていると考えてきた。自民党は保守党を衣で覆い、国民政党の名のもとに支持票を広く集めて長期政権を担ってきたが、実は国民政党というのはまやかしだ。
 他方、民主党は個人や中小企業主体、社会政策重視の政策に的を絞れず、保守派から伝統的な左派を含む、やはり実体は国民政党だ。
 今度の選挙後に民主党政権ができることは確実だろう。一党で過半数を取れるか、あるいは他党との連合与党になるかは分からない。与野党含めて大きな政党再編になる可能性は少ないだろう。選挙戦術のため自民党を離れたり、新党結成をもくろむ議員が出ているが、彼らが目指す政党が何であるのか今は分からない。しかし、選挙後は大衆迎合から脱皮してしっかりと保守政党の確立に貢献してもらいたい。他方、民主党も国民政党から脱皮して多少の犠牲を払っても長期的に労働党を目指してほしい。

 ここで、若者世代が軽視されていることに入ろう。
 一つの実例として、後期高齢者医療制度を取り上げてみる。先般、「早く死ねということか」、「姥捨て山制度か」、「年金から天引きするのはけしからん」とかメディアが75歳以上世代の声を大きく取り上げた。実は、08年4月から施行された新制度はすでに06年6月に法律が国会を通っているのだ。さらに、私も含む前期高齢者も要件によっては医療保険料を年金から天引きされる。私はどうせ払わなければならないものは、銀行引き落としが年金天引きになろうが変わりはないから文句は言わない。
 70歳以上の年間医療コストが一人当たり86万円もかかり、平均の3倍にもなっているからには、国として何か手を打たなければならない。そこで、従来の老人医療制度を廃止して個人負担が増える新医療制度をつくった。より良い制度があれば将来改訂すればよい。高齢者に限らず、個人に不利になる制度には誰もが反対するものだ。政府は特に世論(本当に世論なのか?)に対応していないが、メディアの騒ぎも三日で静かになり、人は忘れた。
 
 もう一つ最近の例。
 警察庁が70歳以上の高齢ドライバーを対象にした「もみじマーク」のデザインを新しいマークに変えるという。「枯れ葉みたいに見えるから」、「涙のしずくに見えるから」という不評に対処するとか。そもそも10年も前に公募で決まって実施されてきた。物のコストだけではなく、全国警察署が費やさなければならない事務工数を含めれば、何千万円かもっと経費がかかる。ほかにもっと有益な予算の使い道があるはずだ。早い話、10年前の公募は世論の証しだろう。要するに、周囲の運転者からマーク車を注目してもらえる効果があるのに、マークをつけたくない年寄りの一部が文句を言うので、マークのデザインが気に食わないというのはケチを付けているだけなのだ。
 私には今のマークが枯れ葉にも涙のしずくにも見えない。私の目がおかしいのだろうか?車に今のマークをつけることにも抵抗感はない。変更にどのくらい高齢者の広がりがあるのか、変更必要なしという意見が多いのではないか?この例は、安易な大衆迎合だろう。

 
 ここで結び。
 年寄り世代は騒ぐ。そして、選挙の投票率が高いから、政治を動かす力がある。
 他方、若者世代はあまり騒がないし、連帯感も弱い。何よりも20代では投票率が10-20%だと言われるから、政党も重視しない。今は総選挙が近いので、与党は雇用増大、景気回復を錦の旗印にしてむちゃくちゃなバラマキ政策をやっている。しかし、選挙が終わればどんな若者政策を実行するのか分からない。民主党もバラマキに大して変わらない。
 考えてみると、企業が売り上げの大きい有力代理店を重視するように、政党も投票率が高い世代に訴える政策を掲げる。若者も騒がなければならない。どうやって?
 一つできることがある。それは地域で「若者政治ネット」をつくり、インターネットでばらばらの個人が参加していくことだ。職場にも知られず、個人単位で静かに同志を集める。将来は、「若者政治連合ネット」の本部組織をつくる目標を立てる。
 私は中国政府に踊らされて何万人、何十万人の若者が反日キャンペーンをやった時、彼らを「インターネット紅衛兵」と書いたことがある。こんなのはいただけないが、その戦術と力は日本の若者世代が注目するとよい。
 ≪天は自ら助くるものを助くる≫                  (完)

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2009年7月11日土曜日

#7 プロ野球二軍と独立リーグ

 前回、ホリエモンのことに触れたところ、ホリエモン支持者軍団から反発や反感の意見が投稿欄に寄せられました。私は無関心と無反応がいちばん嫌いですから、たとえ個人攻撃を含む意見でも関心を持っていただいたことをありがたいと思います。真面目な話です。
 さて、前回ホリエモンという言葉を使うのに、蔑称のニュアンスがあるのではないかと気になり、事前にインターネットの百科事典Wikipediaで調べたところ、愛称と書かれていたのです。月刊誌の編集者なら「ホリエモンことライブドアの堀江貴文元社長」と訂正したかもしれません。初めて知ったことですが、ホリエモンとは、堀江元社長が持っていた競走馬の名前でした。
 一つ確認しておきますが、球団買収あるいは新球団設立についてオーナー会議が下した結論は、ライブドアより楽天の方が資金力に優る、そしてもっと重要なことは大阪を本拠地にするライブドアより仙台を本拠地とする楽天の事業案が高く評価されたのではなかったか。つまり、ファンの感情ではなく、ビジネスの論理に基づく結論だったのです。楽天の経営スタッフは大阪の野球市場の特性を理解していたのでしょう。(7/19/09筆者注記。この部分は投稿者から指摘の通り、誤認がありました。ライブドアも近鉄が売却に同意しなかったので仙台本拠地を提案しました。記憶に頼り、検証に気を抜いてミスしたことをお詫びします)
 ライブドア支持者が、球団を手放したい近鉄と買いたいライブドアの資金力を比較することは意味がないのです。
 今回、もう一度プロ野球について書きます。

プロ野球二軍と独立リーグ
 梅雨模様の日が続く中、からっと晴れた6月28日の日曜、鳴尾浜球場にウエスタンリーグの阪神・広島戦を観に行ってきた。鳴尾浜球場は甲子園球場からバスで10分くらい、総合体育公園の一角にある。
 私はプロ野球の試合を観戦する時には、試合開始の1時間以上前に球場に行き、両軍の打撃と守備の練習を観る。さすがプロ野球と感じさせてくれるからだ。しかし、試合の中盤で球場を去ることが多い。この日も試合開始12時半より1時間早く球場に着いた。公称500人収容とされているが、ざっと数えてみると600人を超える満員。試合が始まると入場制限がなされた。つまり、鉄のゲート前には何十人もの待ち人の列ができていた。因みに、入場料はタダ。私が試合半ばで球場を出ると、入れ替わりに待ち人の一人が入場を許された。
 隣りと後ろの家族連れに尋ねてみると、異口同音に「今夜、甲子園である阪神・横浜戦が満員でチケットを買えなかったので代わりに子供を連れてここに来た」、「インターネットで見たら、今日矢野がマスクをかぶるので来た」と言う。なんとタイガースファンとはありがたいものだ。5位に低迷していても甲子園は連日4万6千人を超える満員のファンで埋まっているという球団の強さよ。
 他方、一昨年、北神戸球場でオリックスの二軍サーパス神戸の試合を観た時には、3千人収容の球場には観客がぱらぱら、閑古鳥が鳴いていた。サーパスはスポンサーの不動産会社の名前であるが、今年は支援を降りた。
 さて、ウエスタンリーグは中日、阪神、オリックス、広島、ソフトバンクの5球団の二軍で構成される中、山口県岩国が本拠の広島カープを除いて、他は一軍と同じ都市にホーム球場がある。本来プロ野球が目指す地域立地にはなっていない。大リーグのマイナー球団が各地に散らばっているのとは大きな違いがある。
 二軍立地のこういう間隙を突かれて、最初のプロ野球独立リーグがプロ野球の空白地域である四国に、2005年に設立された。この四国アイランドリーグは当初4球団からスタートし、2008年には長崎と福岡が加わった。その後北陸・信越にBCリーグ、関西独立リーグが相次いで設立された。
 関西独立リーグは大阪、神戸、明石、和歌山の4球団に加えて来年からは三重が参加することになっている。この中では、大阪と神戸は一軍のみならず二軍の立地とも重複し、三つどもえの立地になっている。これまでは新味があり、メディアで話題に取り上げられてきた(全国紙の大阪版では独立リーグの試合結果が載っても、二軍の結果は出ない)が、最近になってリーグ運営会社が経営から撤退する事態になり、運営組織の再編がなされた。しかし、新組織に衣替えしたところで、市場環境は変わらないので、いずれ大阪か神戸の球団が奈良か大津あたりに移転を余儀なくされるだろう。
 考えてみてほしい。大手のコンビニやスーパーの経営者なら、二軍や独立リーグのような立地は取らない。
 
 前述した阪神・広島二軍戦ではバルディリスが阪神の4番だった。1週間後、彼は一軍に呼ばれてトップバッターとして晴れの舞台にデビュー。最初の打席でいきなりホームランを打った。彼はベネズエラ出身であるが、サンフランシスコの高校を卒業してマイナーリーグで選手生活。芽が出ないことに見切りをつけ、24歳の時来日、1年目は阪神のテストを受けて育成選手としてわずか3万ドルで契約した。2年目の今年は二軍で20万ドルの契約になった。どんなにほっとしただろうか。故障の赤星が復帰するとどうなるのか? バルディリスの活躍にエールを送りたい。  (完)

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2009年6月29日月曜日

#6野球・「関西の野球市場の不思議」

 肩が凝らない話で、私の専門分野の一つであるプロ野球について書いてみます。いずれまとめてプロ野球改革論を月刊誌に出すつもりです。もっとも内外に問題がいっぱいある時期がおさまらないことには、いつ紙面をもらえるか分かりません。

 皆さんは2004年に近鉄とオリックスの球団合併にともなう騒動が起きたことを憶えているだろう。その騒ぎの間に近鉄買収に名乗り出たライブドアのホリエモンが、近鉄の試合が満員の観衆に埋まった大阪ドームに姿を見せた時、近鉄ファンが彼を英雄のように迎えた。他方、一リーグ10球団制支持派が勢いを得ていた。
その最中に、月刊誌『正論』に二リーグ制維持と合併がプロ野球発展の障害になることを本旨とする私の長文の評論が掲載された。月刊誌の読者は限られているので、野球関係者以外からの反応は少なかった。ところが、産経新聞やサンケイスポーツの取材に応えた私のコメントが大きく取り上げられたことから、さすが新聞の影響力は大きいことを思い知ることになった。
いろいろ伝えられた中で、「ホリエモンのライブドアには資金力がない」、「巨大球団のタイガースが市場を支配する阪神地域では他の球団経営は成り立たない」という私のコメントがファンの反感を招き、インターネットで激しく叩かれた。例えば、「近鉄親会社の債務に比べるなら、ライブドアの方が資金力がある。これでも経営コンサルか?」と。因みに、私は経営実践者と経営評論家であり、経営コンサルタントの肩書を掲げたことはない。


 私はプロの書き手として、ライブドアの決算書を手に入れてもらい、貸借対照表で内部留保(個人で言えば、預貯金みたいなもの)を見て書いているのである。その後これにさえ粉飾があったことが判明した。ホリエモンが用意した事業計画書では、地元の市民や企業から集める資金で買収するとなっていた。なんのことはない、巨人と阪神の両球団を除いて、どの球団も全力で努力していることだ。
 次のコメント、「阪神地域に2球団は成り立たない」には今も反論が少なくない。こんな大人口地域でセ・リーグとパ・リーグの各1球団は黒字経営できそうに私自身思うが、現実は違うのだ。例えば、神戸のオリックスファンが大阪への本拠地移転に反対して4万人の署名を集めたが、現実には神戸の本拠地球場には多くて2万人、時には1万人を切ることさえある。一体、ファンはどこへ行ったのか?神戸のテレビ局でさえタイガースの放送ばかりで、偶にしかオリックス戦を放送しない。
 言うまでもなく、オリックス球団の経営や外人に過重に頼るなど、問題はある。しかし、これだけの大人口地域で客が入らないことは不思議なことだ。

 さて、締めくくりとして、今回はキミらに何を言いたかったか?
人は感情で動く。これはよろしい。しかし、心の片隅には論理的思考を残してほしい。
何事も、自分に関係ないことでも、「自分ならどうする?」と遊び半分に考えてみることを勧めたい。面白い上に、思考力を豊かにしてくれる。 

        

(完)


≪追記≫大川さん、このブログへのコメントとともにいただいた貴方のホームページはURLが間違っているのか開けません。改めてこのブログに投稿をお願いします。お互いにリンクさせましょう。
                                

 

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2009年5月25日月曜日

#5 受験「知識力と思考力とは何か」

 なんと硬いタイトルにしたものか、と自身で思います。しかし、いくら分かりやすい言葉による表現を心がけるにしても、その分かりやすい言葉が文意を充分伝えられないことがあります。そこで、中には書き手は硬い言葉の使用を逃げない代わりに文章を分かりやすく書こうと努力します。私もそういう書き手の一人です。
 先日、リトルリーグ野球チームの練習を見ていた時に発想したことから、キミらが親であるか、または将来の親になる人たちであるとして、受験勉強の成り立ちを説明してみましょう。

 高校受験でも大学受験でも例えば、実力と呼ばれる中味は記憶力と思考の応用力を合わせたもので、これによって試験点数が決まる。記憶力とは知識をどれだけ暗記で憶えているかということ、応用力とは論理的思考力の一部で(あくまで一部に過ぎない)定理や公式を知識と組み合わせていかに応用できるかということである。この二つがあると「頭が良い」と評価される。言いにくいことであるが、この二つは先天的なもので、努力で高めることはできるが、限界がある。これにある科目について好き嫌いの要素が入ってくる。
 私は頭が悪いとは思わないが、それでも頭の良さでは上には上がいて、中学の時には科学者を志望したこともあるが、能力に限界を感じてあきらめた。同じ頃プロ野球選手になる夢も持ったが、これも実力の限界であきらめた。
 さて、リトルリーグ野球チームの夜間練習が終わると、その中に塾に行く少年が何人かいた。学校の正課に加えて、平日にも何回か塾通い、平日の夜には野球練習、週末には試合という生活のすべてが組織化されている。別の見方をすればすべて与えられた生活になっている。彼らにどれだけ独自に計画し、暇を楽しめる時間があるのだろうか?
 こうして与えられた生活は中学、高校まで続く。子供たちは本当に大きな重荷を課せられている。よく耐えられるものだ。
 私が親なら、もっとも今の厳しい競争をよく知らないが、子供を塾には行かせない。学校の授業に集中させる。正課で理解できないことがあっても、「塾で教えてもらえばええ」となって、授業中の集中力も記憶力も低下させるだろう。集中力は人生を大きく左右する要素なのに。
 また危ないことを言うと、塾に子供を通わせて大学に進学するにしても、せいぜい入学できる大学のランクを一つ上げられるくらいだろう。これでは親の教育投資の効果がない。私なら高校卒業後に本人が望むことなら、一年間予備校に通わせた方が投資の値打ちがあると思う。せめて子供には幼少から高校までは自由な時間を増やせてやりたい。
 運動部なら野球やサッカーもよいが、マイナーの運動部を勧めるだろう。スポーツの世界ははるかに天性の素質がものを言う。運動部の部活で大事なことは、へたに花形選手になることより、密接な仲間意識の経験と身体を鍛えることだ。

 アメリカでも大学進学の競争は厳しい。しかし、一流大学を卒業して有利な仕事は、政府か大企業で出世を狙うか、一流学者になる場合に有利であり、社会ではセールスと技術の分野は大学の名より実力の世界だと言われる。日本の社会もそうなりつつある。社会では記憶力や一部の論理的思考力のほかに、発想力、観察力、実行力、持続力、感性、説得力、体力など紙の試験とは無縁の広範な素養がものを言う。
 日頃の生活をうまく管理すれば、実社会には可能性を見出すことができるはずだ。
 
 

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#4インフルエンザ「石原知事のええかっこ」

 前回、悪乗りについて書きました。騒がしい話題をネタに取ることで、後追いすることです。私も前回でやってみましたが、大した発想が要らないので楽に書けます。
 今回も新型の豚インフルエンザをネタにして後追いで書いてみます。
 
 関西における新型インフルエンザの感染が下火になってきた今月の下旬、東京でも少数の感染者が出た頃には政府は緊急対応体制を緩めようとしていた。東京都の石原知事は、「桝添厚労省大臣が張り切ってやってきた」と揶揄しながら、暗に東京都は過剰反応しないという意見をテレビで述べていた。つまり、兵庫県や大阪府が取った全校の休校や公共施設の全面閉鎖は過剰反応だと言いたかったのだろう。本当にそうなのか?
 もともと日本政府の対応はWHOの警告レベルが6段階の中で最悪事態の一歩手前であるフエーズ5まで上げられたことに基づいている。確かに、政府対策本部を設立する、水際防止策を取る、感染者が出た府県に対し一律に休校と施設閉鎖を要求するなどは、欧米政府の対応とは大きな違いが出た。その是非について、あるいはそれが過剰反応だったかどうかはまだ分からないのである。
 もし、東京に最初に多数の感染者が出たとしたら、はたして石原知事は同じ意見を持ったかどうか。世界的にも関西でも感染が下火になり、そしてもっと重要なことは、新型が通常のインフルエンザと変わらない毒性であることが分かってきたからこそ、石原知事はこのような意見を出せた。最初ではなく、後からなら誰でもどうにでも批判できるものだ。
 
 政府は繰り返し、麻生首相までがテレビのスポット広報に出て国民に対し、「正確な情報によって冷静な対応をしてほしい」と呼びかけた。こと正確な情報に関しては問題ありだった。テレビニュースのために私が住む茨木市は被害を被ったのだ。「今茨木には行きたくない」、「今は茨木から来てほしくない」という声が府外の知友人から出た。 
事の次第はと言うと、最初テレビニュースは「茨木市のOO高校で18人の感染者が出た」と報道したことで正確さを欠いた。お陰で茨木市は全体が汚染地域であるかのように視聴者に受けとめられた。当然だろう。ところが、分かってきた実態は、駅から高校にスクールバスで行き来する生徒と教員の感染者のうち、市外居住者が16人であった。
 これで政府による一律指令により、公立の保育所、幼稚園、小学校から高校までが休校になった。さらに、養護施設、図書館、公民館、市民会館などすべての公共施設も閉鎖された。民間の施設も政府方針に逆らえない、親や市民のブレッシャーもあるので公共施設に右へならえ。私の母親が入居している民間の老人ホームにも面会に行けない。
 対応策の緩和について、あるジャーナリストはテレビで「緩和すれば各府県と国の方針がばらばらになる」と言っていた。これはすべて国の方針にすることか?彼は茨木の実態を知ってもそう言えるか?
 もっとも、自治体にとっては国の方針に従う方が楽だろう。後で独自の判断に対して責任を取らなくてすむし、市民も国の判断に対してはあまり文句を言わないからだ。

 さて、私は今回国の緊急対応をどう思うか?キミらはどう思うか?
 昨年か一昨年か、オランダや中国で鳥インフルエンザが初めて人に感染した時には、政府は発生場所と思われる養鶏所を完全封鎖、人の出入りも禁止、鶏はすべて焼却の緊急措置を取った。今回は豚インフルエンザが初めて人に感染した上に人から人へ感染した。未知のウイルスがどう転移するかは誰にも分からない。幸いなことに、豚インフルエンザによる病状は軽かった。これも後になって分かってきたことだ。
 確かに、個人の不便はがまんできるにしても、商売への被害は大きかった。それでも政府の緊急対応はやむを得ない、そして妥当だったと思う。これから何が起きるかもしれないという情勢は、今回の騒ぎがおさまっても変わらない。そのための予行演習として意義が大いにあった。
 最後に警告を一つ。「一つ一つのメディアの報道は事実であっても、事実の組み合わせによっては情報に正確さを欠く」ことがある。

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2009年4月29日水曜日

#3テレビ「草彅事件とNHKテレビ」

 4月24日の午後7時のNHKテレビニュースはひどかった。前夜に起きたSMAPの草彅剛酔っぱらい事件に関する報道です。私は何を書いても世間を騒がす事件に悪乗りすることは嫌いで、これまで一定の距離を置いてきましたが、ここでは自戒を破って悪乗りします。若者の皆さんはどう受け止めたでしょうか。

 7時のニュースはNHKの看板ニュース番組で、1秒を惜しんで重要な出来事で編集しなければならないのに、草彅事件をトップニュースとして何分間も報道した。彼が飲んでいたバーや公園の映像に加えて詳細な周辺地図まで付けるというしつこさ。誰がここまで知りたがる? NHKは世間感覚からずれているのだ。
観ているうちに、「何をやっているんだ!」と腹が立った。ニュースの中では、「公然わいせつ罪」、「容疑者」、「現行犯逮捕」、「家宅捜索」という言葉が躍った。これじゃ間違ったイメージを与えられることは必然。蓋を開けてみると、暗闇の中で素っ裸になって大声を上げていただけ。銀座の通りを昼間に裸で飛び回っていたのではない。草彅クンならぬキミらの中にも他人事とは思えなかった人もいるだろう。
 私の推測では、常軌を逸したように見える警察は、「すわっ、麻薬が絡んでいる」と早とちりしたせいではないか。
 ニュースで流された鳩山総務大臣のコメントもひどかったな。たとえ草彅クンが地上デジタル放送の広報モデルとして総務省に起用されていると言え、「心頭から怒りを感じる」というのはこういう場合に使う言葉ではなかろう。私が大臣なら、「芝の上に裸であぐらをかいて気持ち良かっただろうな。親子とも風邪をひかなくて良かった。しかと不注意を反省してほしい」と言うだろう。かんぽの宿の安売りと東京中央郵便局ビル建て替えにクレームを付けて男を上げた大臣にはユーモアがほしかった。

 SMAPに一言。テレビ局や世間に迎合するなかれ。草彅をしっかり守って団結を強め、この際、音楽性を一段高みに上げるためコーラスの練習をやってもらいたい。テナー、バリトン、バスの三部でなくとも、高音と低音の二部で曲にハーモニーを付けて歌ってほしい。自分たちの曲にも、歌謡曲にもハーモニーを付けると美しい曲がある。ビートルズのハーモニーは美しいよ。

 NHKでは管理者の力が弱いようだ。草彅事件について、騒ぎがおさまると、周囲では私の意見と同様の声が出ている。それにしても、ニュース編集の段階で、「しつこ過ぎる」、「時間を取り過ぎる」と言う管理者は一人としていなかったのか?
 最近、NHKテレビに日本語の乱れが多い。これも管理者のレベルが落ちている証だろう。ひょっとすると、管理という仕事を分かっていないのかもしれない。
 NHKに限らず、民放もカタカナ外来語の濫用がますますひどくなっている。一つ例を挙げると、「地デジ」がある。せめて国語の範たるNHKは地上デジタルと正しい用語を使うべきだ。「チデジ」と略して1秒も短縮できないのだ。私は初めて「チデジ」と聞いた時、そんな痔があつたのか、と思った。
 NHKが会ではなく、本語会にならぬよう改革を望みたい。

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2009年4月20日月曜日

#2北朝鮮「キミらの時代にはどうなる?」

私は「若者塾」の執筆頻度を高めたいと思っていますが、今回も月刊誌並みになってしまいました。本当に日が経つのは早いものです。今回は北朝鮮をテーマにします。
 
私は北朝鮮問題の専門家ではないから、キミらの信頼にはならない。メディアが伝える情報しか持っていない点では、大阪の民放テレビのワイドショウに出て政局や国際問題をガヤガヤ話しているお笑いタレントと変わりません。ただ、私は距離を置いて見られる自由な発想が取り柄か。
 さて、今回の北朝鮮によるミサイル発射は、人工衛星の打上げ失敗ではなく、彼らの言うように成功だっただろう。なぜなら、始めから改良型テポドンの飛行距離、燃焼と目標地点到達の制御技術を確認することが目標だったと考えれば、彼らには充分の成果だったのだ。これでアメリカに対する瀬戸際外交の交渉力を強化できることに加えて、かねてから噂されるシリア、イランなどにさらに高価なミサイルを輸出することによって外貨を稼げる。
 これまで北朝鮮の外貨稼ぎは、武器、麻薬、偽ドル札の三品であったが、国際的な監視強化で絞められてきた。ミサイルと核はこれからの有望商品になるのか。ほんまに恐ろしいな。
 韓国の太陽政策も実効なし、六ヶ国協議も北朝鮮には通用しそうもない。この国はすべて自国の利に使うだけで、協定に合意したところで約束を守らないので、手に負えないように見える。
 背景には、中国は北朝鮮の兄貴、ロシアは義兄みたいなもので、韓国、日本、アメリカとは距離を置いていることがある。もし、北朝鮮に政変による混乱が生じれば、中国だけが合法的に北朝鮮に進軍できる。「北朝鮮領内にある自国の資産を保護し、治安を回復する」という名目があるから。韓国にも資産保護の名目があるが、とても手を出せる相手ではない。
 政変が起きるか?金将軍はいつか死ぬから政変は起きるだろう。しかし、直ぐに大混乱が起きるとは限らない。独裁者国家の体制というのはなかなか強固なのだ。北朝鮮は人口2330 万人のうち、正規軍が117 万人、予備役が50 万人。首都ピョンヤンの人口は320 万人。独裁者体制は、軍隊約170万人と首都の320万人を支配すれば容易には崩れない。
 世界では独裁者政権に対し、国外に亡命政権ができたことがあるが、例えば、日本に亡命政権を、仮に形だけでも、つくる動きはない。むしろ朝鮮総連は現体制を支援している。総連の若い世代は北朝鮮がこのままでよいとは思っていないだろうが、行動を取ることは難しい。日本政府もそれを望まないだろう。
 結局、北朝鮮の民主化は我々シニア世代の時代に起きることはなく、キミらの世代に持ち越されそう。とは言え、GDPが韓国の1/20に過ぎない北朝鮮が、核やミサイルの開発を含む軍事費に耐えられなくなる日は必ず来るに違いない。

 先日、大阪市立科学館で全天空に映される特別映画『はやぶさ』を観た「はやぶさ」は2003年5月に打ち上げられた小惑星探査機で、宇宙空間に漂う長さがわずか300メートルの小惑星「イトカワ」にピンポイントで命中させる離れ業をやってのけた。しかも、小惑星に軟着陸させ、金属球を地面に打ち込み、舞い上がる岩石くずを回収して日本に持ち帰るというのだ。「はやぶさ」は7年に及ぶ旅から来年日本に帰還する予定。ここで最もすごいと思ったことは、噴射の補助エンジントラブルや通信断絶のトラブルに見舞われながら、地上の管制本部から遠隔操作でバックアップ機能を使って修復する技術だ。機械の設計も、軌道計算通りに命中させるエンジン制御もさることながら、トラブル修復のソフトが素晴らしい。
 大阪の知力がつくったこの映画をキミらに勧めたい。きっと感激するよ。

 「はやぶさ」の技術は、北朝鮮がそれなりに努力したとしても、ロケットを打ち上げて地球内の目標地に落とすだけのミサイル技術とは比較にならない。そう思いませんか?
                                 (完)

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2009年3月24日火曜日

#1日本経済「山火事と洪水が同時に来た」

 私の考えでは、今の不況は三つの不況が重なっているので深刻さが厳しいのです。
 不況の第一は、過剰供給、つまり供給が慢性的に需要を上回る業界で2007年から始まっていて、小売・流通、中小金融機関、不動産・建設、陸運などの業界があります。急に悪化したように言われている自動車業界もそうです。車の国内販売はこれまで10年以上も減少しているのです。
 不況の第二は、2008年の原油高騰によるものです。一時180円だったレギュラーガソリンは今100円近くまで値下がりしましたが、まだ後遺症が残っています。
 不況の第三は、昨年9月にアメリカから始まって以来の世界金融危機によるもので、これが最大の不況要因です。
 私は今の不況を「山火事と洪水が同時に来た」と言っています。金融危機は一見人災のように考えられますが、つまるところ人間の欲望によるものですから、大なり小なり天災と同じく繰り返されるものでしょう。
 私が17年半アメリカに住んでいた間に、毎年のように西部では山火事、中西部から南部までのミシシッピ川の流域のどこかでは洪水が起きます。政府は大災害指定として国の予算で被害者を支援するだけで、ダムをつくるなど特に対策を講じることはありません。
 被災者には不運ですが、山火事には古い木が燃えて焼け地から新芽が出てきて森を再生します。洪水も土地を肥沃にする効果があります。
 今回の不況においても、過剰供給業界や改革できない企業が淘汰されることは不可避なことです。その代わり、新芽と言うべき新事業や新技術が興るための 土壌が広くなり、日本の産業が再生される効果があります。だから、政府が一時の緊急救済を除いて、従来の経営を変えられない企業もすべて支援することはバラマキになってしまい、生き金の使い道にはならないでしょう。
 
 アメリカの災害犠牲者が悲嘆にくれながら、いつも前向きの姿勢を見せる時に言う言葉があります。Nothing is end of the world と。
  私は苦境になるといつも自分に言ってきました。「どんな困難も戦争と荒地開拓の苦労よりはまし」と。
 

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