2012年10月25日木曜日

Long and Winding Road to China Democracy

   #78 中国の民主化は進むか――習近平新政権の重い課題


 中国政府の指導者の中で、今の共産党一党独裁がこれから10年も長く続くとは考えていないでしょう。胡錦濤国家主席の10年は、党大会で掲げた農業改革に進展がなく、まして民主化の方向付けは現状維持にとどまりました。 相対する民主主義国、日本の政治、特に政党政治の現状について大使館からの情報を知るにつけ、中国政府はこんな複数政党制度を受け入れることに恐れを持つでしょう。 実際、野党が解散日と投票日を決めて首相に要求するなんて異常の沙汰です。たとえ話合い解散の前例があっても、首相が受け入れるなら日本の憲政史上で悪例となります。
  基本的に野党も赤字公債法案と衆議員の定数是正に賛成しているのですから、国会の審議に応じないのは国会議員の報酬を日に日に無駄にしているのです。職務放棄です。 他方、民主党内部には今解散すると選挙に不利になるという理由で早期解散に反対する議員がいます。私には解散を先延ばしすれば民主党に有利になるという考え方が分からない。いっそう首相が重要法案を成立させた上で、野党ご指定日より早く電撃解散をやればいいと思いますね。
  話がそれました。 さて、習政権はどこまでやれるのか?
 今回は、中国より早く民主化を実行した近隣諸国について書いてみます。

インド  
 私はかねてから人口13億人の中国では、先進国のような民主主義制度は無理であり、形がどんなであれ、強権の政府が統治するしかない、と信じてきた。だから、中国政府の政体を民主主義の変形である「会社民主主義」と呼んで現実的に支持してきた。
 ところが、友達の一人が異論を唱えた。「巨大人口は問題じゃない。12億人のインドではちゃんと民主主義が定着している」と。  
 このインドは長く中国と国境紛争をしており、1962年には突然中国軍が紛争地域に攻め入った。武力に優る中国軍がこの地域戦争に勝利し、インド軍には4000人の戦死者が出た。今も小競り合いの紛争が続いている。

 ◇ ロシア  
 長く共産党一党独裁を敷いていたソ連が消滅し、旧ソ連はロシアと周辺の8ヶ国が独立した。イスラム圏のほかに、当時ウクライナのような大国がロシアから分離されたことに驚いたものだ。   
 共産党独裁による体制に限界がきていたこともあるが、エリツェンという強力な民主化リーダーを得たことで大きな混乱が起きなかった。後継者の統治にけちをつければいくつもあるだろうが、国民による大統領の直接選挙が定着している。
 民主主義にはさまざまな形態があり、どれも完全なものはないのだ。ロシアの体制移行は中国の参考になるだろう。

ミャンマー  
 中国と国境を接するミャンマーでも、最近、軍事政権から民主主義体制に移行した。これからは民主化の過程でリーダーの人材を得られるかどうかが鍵だ。政権打倒のリーダーと建国のリーダーとは違う資質が求められるからだ。
 ミャンマーの民主化要求を流血なしに実現した群衆に比べ、市民意識と階層の広がりの点においてネット紅衛兵とは比べものにならない。

中国の民主化は進むか  
 民主化の2条件は、資本の原始的蓄積と教育水準の二つと言われる。
 中国は経済発展のお陰で充分の資本を持つにいたったが、民主化教育については手もつけていない。中国政府にとって、国民に民主化の教育をすることは諸刃の剣になるから、危ないことなのだ。
  今や周辺諸国が民主化を実現しているのに、中国と北朝鮮だけが取り残されている。 土地の所有も許されない農民と、労働組合を組織することも許されない労働者が人口で90%も占める現状を改革することは、中国政府には巨大な重荷だろう。
 他方、役人、100万人以上の軍隊、1億人の富裕層は現状のままでハッピーだから、既得権を手放さない。これらは保守派または守旧派のグループであり、改革を望まない。そして政府の改革に立ちはだかる。ああ、政府も大変だ。

尖閣島紛争はがまんの持久戦
 中国は漁業監視船と海洋監視船の二重布陣に加え、海軍艦艇が遠巻きに尖閣島近海を示威している。他方、日本は海上保安庁の一枚。これでは持久戦に耐えられない。東日本の巡視艇を沖縄に集めて交代勤務の余裕を持たなければならない。
  海上自衛隊は、中国が「来い、来い」をして一触即発を待っているようなものだから、喧嘩プロに誘いこまれておいそれと出ていけない。さしあたり、東日本と北海道の海難の備えは自衛隊が海上保安庁の巡視艇を肩代わりするしかないだろう。
  日本企業も辛いが、ここは我慢してしのぐ時だ。中国の工場がストや暴動を起こす時には、中国内か国外に迅速に移転すると良い。その動きを見せるだけでも効果がある。ネット紅衛兵が暴れれば、同胞が職を失い、共同出資している国営企業も減収になることが認識される。日本の旅行関連業界も中国から観光客が激減して苦しい。これにも半面があり、中国業界も苦しいのだ。 このように日本企業が業績を悪くする一方で中国企業も被害を受けるのだ。
 よく考えてみれば、日本企業には対応の選択肢があるのに対して、中国側の対応策は限られている。日本のメディアは日本側の被害ばかり強調しているから、惑わされてはいけない。
  先日、中国外務省の広報官が、「日本政府は経済不振の批判をかわすために尖閣島問題を起こした」と言っていた。これは中国政府のことだろう。「すべて日本が悪い」とする彼らはなんとそらぞらしいことを言っているのか。そう言えば、例の国営企業が起こした毒餃子事件でも中国政府は謝罪していない。
 これに対し、日本政府の海外向け広報は弱い。各国に対する説得も「尖閣島に関して領有権問題は存在しない」、「歴史的事実と国際法に照らしても日本固有の領土である」というのでは効果に欠ける。「中国は尖閣島に関心を持たず、1970年代から急に領有権を主張し始めた」の一点に絞るべきだ。                 (完)


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