2012年9月16日日曜日

Long and Winding Road to China Democracy

 

   #73 中国の離島国有化戦略――ドンパチに抗する手はあるか?


 前回、日韓関係について書きましたところ、追加の情報をいただきました。韓国政府と韓国人の自制心について二つのことを追記します。 一つ目は、1983年にカムチャッカでソ連の戦闘機によって大韓航空機が撃墜されたこと。260人の犠牲者が出ました。二つ目は、1987年に北朝鮮の工作員によってラングーン(現在、ヤンゴン)で韓国政府の閣僚がテロで暗殺された上に大韓航空機が爆破されたこと。115人の犠牲者が出ました。 いずれに対しても、韓国は報復の反撃ができず、じっと耐えました。この国は感情を抑制し、我慢の子を強いられる事件に度々遭ってきています。 日本はこんな事件に遭わずにこられていますが、いざ起きれば日本人はどう対応するのでしょうか。そして、諸君たちは? 今回は、中国の離島国有化戦略について考えてみます。

中国の離島支配の強行はすごい  
 竹島紛争と同時並行で、中国と尖閣諸島をめぐって関係が悪化している。日本国が島の土地権者との賃借契約を買い上げて国有化しただけなのに中国政府とネット紅衛兵が強硬姿勢を見せる。  尖閣諸島に限らず、中国政府の島盗り戦略はすごい。
 なにしろベトナム沖合いの西沙島は1974年に内戦中のベトナムとの海戦に勝って中国が領有した。以来実効支配。  
 フィリピンに近い南沙島は、中国ほか4か国が領有を主張している。
 もう一つ、台湾よりホンコンに近い東沙島は、台湾が飛行場を建設し、軍隊を駐留させて実効支配している。中国が目くじらを立てないのは、いずれ台湾島をまるごと支配できると考えているのだろう。  
 当然、見えてくることは、国際社会からいかに嫌われようとも、海南島に海軍大基地を建設し、ここを拠点にして東シナ海から南シナ海にいたる全公海を領海として支配しようとしている。こんなむちゃくちゃな野望がまかり通るのは、中国政府が人民解放軍を抑えられない証ではないか。
 今、日本政府が尖閣諸島を国有化したことに対し、中国政府も人民も反発を強めている。日本のメディアは、例によって、政府が対中国外交にぐらついていると安易に報道したが、 私はそう思わない。中国政府は型通りの対応をしているのであって、こんなことで日本政府が原則を守ることにぐらついているはずがない。今は小泉首相時代にならって突っ張り外交をやることだ。

ネット紅衛兵と元祖紅衛兵  
 私は本稿で何度か中国のデモ隊群衆を「ネット紅衛兵」と呼んできた。彼らはかつて文革時代に猛威をふるった紅衛兵といくつか共通点があるからだ。
 
 先ず、彼らは一面的な教育の産物であり、自分たちに不利な情報に無知であること。デモの目的がなんであれ、政府は彼らを泳がすしかない。尖閣諸島が長年国と地権者の間で賃借契約がされていたことも知らない。  
 二つ目は、改革が閉塞状態に置かれ、デモが共感を呼び一時のうさ晴らしになっている。 毛沢東語録の赤い冊子が今はネットの呼び掛けに変わった。  
 三つ目は、オリジナル紅衛兵は政治も何も分からない少年たちだったが、今も大半は学生、失業者、低所得者層で教養水準が低いと見られている。
 四つ目は、紅衛兵が過去の歴史・文化遺産を破壊し、教養人を攻撃したが、今は日本を標的にして攻撃している。どちらも政府批判は直接の目的にしていない。  中国政府が表向きだけは群衆の取締りをしているが、日本企業、日本商店、日本人への攻撃に対する取り締まりはいかにも甘い。中でも略奪を許していることは国家の恥であるはずだ。日本のメディアも指摘しているように、彼らにガス抜きをやらせて、攻撃の矛先が政府に向かないようにしていることは確かだろう。

 かつて鄧小平は、「ネズミを取るなら猫の色は黒でも白でもよい」と名言を吐いた。つまり、共産主義から逸脱しても国家に税金を払う者は良い者なのだと意味したのだろう。  私が中国政府要人の立場なら、本来農民と労働者のための共産党が今は両者をないがしろにしている根本的な矛盾をネット紅衛兵が知ることを恐れる。私ごときが知ることだから、当然、中国政府は認識している。中国政府はこのまま行けるのだろうか?

ハングル紅衛兵とニッポン紅衛兵
 前回書いた韓国のデモ隊群衆をハングル紅衛兵と呼んでみよう。ネットの呼びかけで集まっていることは中国ネット紅衛兵と似ているが、テレビの映像で見ていると、彼らには世代に広がりがあることと、ネット紅衛兵より教養水準が高そうだ。そのためか暴動も略奪もなく自制が利いているようだ。  
 他方、サッカーの国際試合にどこでも行く若者愛国者、ニッポン紅衛兵は国際紛争について国家をどう考えているだろうか?  仮に、現実の問題であるが、中国軍が尖閣諸島に上陸したら日本はどう対応すべきか、を問うてみたい。なにしろ相手は国際世論を気にかけないし、ドンパチに躊躇しないのだよ。  「自衛隊が反攻すべきだ」という意見に対し、「人も住んでいない島で戦闘して犠牲者を出すべきではない」という意見が出るだろう。へたすると、国論が二分されるかもしれない。もし犠牲者が出たら、政府はメディアで批判を浴びるだろう。メディアが視聴者数と購読者数におもねるのは、政治家が有権者目当てに国家観に触れてこなかったこととよく似ている。
 諸君は国家をどう思うか、国家観が問われている。       (完)  


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