2012年11月26日月曜日

Long and Winding Road to China Democracy

 #81 日中関係と日本の対応――どちらが困るか?


 中国特集について八卦見の予測が5年後、10年後にどれだけ当たるか、諸君の評価を待ちましょう。 さて、中国では先日の共産党大会で指導者が交代して新しい時代が始まりました。私が一つ気がついたことは、施政演説の中に掲げる主要政策に農業改革が謳われていないことです。
  確か、前回の全国人民代表大会(全人代)においては農地改革と農業者の地位向上が含まれていました。生産性が低い、農村共同体の衰退、農民の貧困の「三農問題」はどこへ行ったのでしょうか。 なにしろ8億人(最近では3億人という説がある)以上の農民をどうするか、というのは中国政府の最大課題と言ってもよく、体制が揺らぐのはここからだと思います。
 諸君はどう考えますか?  

農民戸籍と都市戸籍の差別

 今時、世界の国々の中で農民に生まれると農民籍に縛られ、都市戸籍が与えられないという法律上の差別がある国は珍しい。 鄧小平の改革開放政策から始まった経済発展は、一面では中国を世界第二の経済大国に押し上げた。
 私の見方では農民に対して二つの戦略が巧妙に組み合わされた。
 一つ目は、中国が世界の工場として発展するためには、低賃金の労働力が必要であり、政府はこのために農民工という二等市民をつくったこと。どの国も安い労働力を国外からの労働者に求めたことに対し、中国政府は国内に求めた点で中国らしさがあった。
 例えば、イギリスやフランスは旧植民地のアフリカやアラブの国から大量の労働者を受け入れた。西ドイツ時代からドイツはトルコやギリシャから労働者を入れた。アメリカは長年にわたって不法、合法のメキシコ人を農業労働者として使っている。 結果として、今日、どの国においても不景気になっても受け入れた外国人労働者が帰国せずに、一部が残留移民として留まる結果、社会問題化している。
 さて日本は?  日本では基幹産業として成長する自動車と関連メーカーにおいて農閑期の農民が季節工として大量に雇われて貢献した。日本の農民が春になれば帰る故郷があって、そこで自分たちの耕作地を保有し、農業の正業に戻ることができる。これに反し、中国では農業を離れた農民工が故郷には帰れず、劣悪な労働条件で都市に住み続けなければならないことに大きな違いがある。
  さらに、高成長の時代に日本政府は、人手不足に対応するため、入国規制の例外措置によって大量の日系ブラジル人を一般労働者として受け入れた。その後不景気になると、彼らを解雇して苦境に陥れた。ブラジルに帰国する組と日本に残留する組に分かれた。各地の自治体と市民は、新移民者として定住した彼らを懸命に支援している。

  二つ目は、広い国土とは言え、8億人の農民を生かすに足る農地がないことを熟知する聡明な中国政府は農民工政策によって大量の農民から「農地はがし」をやった。なぜなら、これをやらない限り、中央と地方の政府が所有する農地を農民に分け与える農地改革を進められないからだ。 さらに「農民はがし」がニュウタウンの建設にも及んでいる。
 各地で郷鎮企業と呼ばれる公営私営の中小企業を設立して農民を移住させる。農民は農地を離れ、与えられた新築のアパートを喜ぶが、彼らも次の世代も農業には戻れない。もっとも、地方のニュウタウンの生活は都市の農民工よりはましかもしれない。
 因みに、中国では開発、土壌や水の汚染、砂漠化などで耕作地が年々減少し、今では自給に必要な1.2億ヘクタールを下回ると言われる。農民一人当たりの農地は0.6ヘクタールで日本の2.7ヘクタールの1/4以下だ。日本では専業農家、あるいはプロ農家の農地拡大が進行中であるが、思いのほか日本農業は競争力がありそうだ。世界ではアメリカの大農地農業より日本型農業の方が参考になるだろう。日本の若者諸君にもこれからの農業には機会が満ちている。

中国政府の対日戦略と日本政府  

 中国政府は尖閣島をめぐる日本との対立について、対日方針を決めた。それは①持久戦、②外交戦、③経済戦の三つだという。 なに、驚くことはない。これを日本政府も同じ取るべき方針と認識しているだろう。そっくりお返しすればいい。政府はへたに和睦を求めず、当面受けて立つことに徹するべきだ。
  特に、経済戦では社会制度、技術開発力、産業基盤などの点で日本が優っている。日中対立によるダメジでは中国の方が大きい。さらに、日本政府より何倍もの内政課題を抱える中国は持久戦にどこまで耐えられるのか。
  当面、中国に進出している日本企業も、日中貿易に従事している日本企業も苦難が続く。気の毒だと思うが、ここは次世代のためにあるべき対等で正常な日中関係を確立する生みの苦しみと考えて耐えてほしい。戦争と違い、砲弾が飛んでこないのだから、我慢できるはずだ。 若者諸君にはさらに雇用機会が減るだろう。
 それでも終戦直後の経済よりはましだ。 私の世代は芋のつる、大根の葉っぱ、ふすま(小麦を粉にした時に出るくず)の団子を食糧にした。南方の戦場の兵士たちにはこれらさえ手に入らなかった。少しは気休めになるだろうか。

◇ 内閣府の「外交に関する世論調査」はおかしい  

 24日に政府が発表した世論調査によると、中国に「親しみを感じる」とする回答が昨年より減って18.0%で最低になったという。私は18.0%もあったことに驚いた。  世論と私の感性の間に生じたギャップを考えてみた。そして、質問が「中国」についてなされたのに対し、私は「中国政府」と受け取ったのだ。  そもそも「中国」について質問することがおかしい。一体「中国」とは何を意味するのか? 内閣府が調査をするなら、「中国政府」と「中国人」に分けて行うべきだ。  
 ここで古い川柳を借りて一句。  
    中国とはオレのことかと中国人言い。                           (完)


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