2012年6月26日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#26、6月,2012   大阪に別れ、大阪の若者よさらば

  7月1日から富山市で新生活を始めます。アメリカから帰国して茨木に17年間住みました。その間に両親が亡くなって、自由の身柄になったのを区切りに新天地を求めることにしたのです。死んで骨になってから京都にある家族の墓に帰って来ます。
高校(茨木高校卆)の仲間とスポーツクラブの親しいグループに持ってもらった送別会の席で、「富山の家は田んぼに囲まれているのか?」と訊かれました。都心の外れにあるマンションの周囲には田んぼがまったくありません。どうも大阪では富山にあまり馴染みがないようです。
 さて、2010年5月から2年余り、『言論大阪』を書いてきました。今回が最後ですから少しは諸君の生活に役立つことを書いてみましょう。


会話を磨こう  
   先日、よく通った梅田のカフェに行った。ここはいつも若者客でいっぱいで、コーヒーが安く、隣りの席との間隔が狭いので隣りの話声がよく聞える。私には若者の声を聞ける貴重な場所だった。盗み聞きなどと言うなかれ。  隣席に若い男二人が据わった。二人が席を立つまで観測していた。驚いたことに、その間ひと言ふた言を除いて各々が黙々と自分のスマフオを見ていた。せっかく友達と会ったのに会話をしない。もったいないことだ。
   大学で英語だけを使う経営学概論を教えていた時、息抜きに二人か三人を名指しして、何でも選んで自由会話をやらせた。英語で平均より高いレベルを持つ彼らが会話をできない。次に日本語でやらせてみたが。うまくできない。「これでは外国人と会っても英語で会話できないよ」と彼らにアドバイスした。そう、日本語で会話できなければ、英語でできるわけがない。「英語で考えろ?」なんて現実に合わない。  
   諸君、先ずは日本語の会話を磨こう。今のままでは、日本でも海外でも、会合やパーティに出ても初対面の人と会話できずに壁の花になるだろう。 試みに、一ヶ月でいい、スマフオを使うことを止めてみよう。会話の上達にとどまらず、新しく考える時間を見つけるだろう。


困難克服にオパレーション・チャートを
  このチャートは、第二次大戦中に英国陸軍が開発したオパレーション・リサーチ(OR)は、この技法の一部とされる。今日では巨大なコンピューターソフトが開発され、民間の経営管理システムとして応用されている。会社勤めをしながら夜に通っていたアメリカの大学院(中退)の科目で習った。 ORはさておいて、チャートは簡単なことだ。 もし困難やトラブルに遭ったなら、4段階で整理をしてみる。頭の中では多くの問題があるように思えることが、整理してみるとそれほどでないことが分かり、すっきりする。   


第一段。白紙に鉛筆で(私の場合)トラブルの大項目をすべて書き、周辺にその関連することを小項目として書く。整理はせずに、ただ項目を思いつくままに書き上げる。
第二段.全項目を眺めて、相互に関連することを矢印と括弧で結びつける。
第三段.別の白紙に大項目を中心にして整理してみる。
第四段.実行の優先順にExcelでチャートをつくる。チャートは縦に項目、横に実行する週ごとの時系列を入れる。  

 会社では,このチャートが新製品開発や、プラントの設計から建設までの管理に広く使われている。私の引越し準備にもチャートを使って管理してきた。記憶で頭を使う必要がないので悠々と事を進められる。


大阪を出てみよう
 好きな仕事に就いていない、非正規社員で給料が少ない、あるいは失業している諸君に対し、求職を全国に広げて大阪を出てみることを勧めたい。武者修行に出るつもりで、大阪にいつか帰ってもよいので、新しい町に永住する覚悟は要らない。
 中国人はすごい。国内で就職できない技術者も労働者も酷暑のアフリカで働いている。テレビの番組によれば、工学部卒の若者でさえ掘立小屋で自炊の共同生活をしている。中国政府は受注した建設工事でもインフラ整備でも自国民を大量に送り込むことが基本。日本が海外工事の労働者として現地人を使うのとは対照的だ。この違いには中国政府の遠大な移民戦略があると私は見ている。  
 韓国もかつてはそうだった。35年も昔、私が出張の帰りに金浦空港に入ると、ロビーに韓国人の群れでごったがえしの様だった。その中に多くの女性が泣いていた。訊いてみると、炎暑のアラブの国で建設労働者として出かける夫や子供の見送りに来ているのだった。まるで戦場に送る兵士を見送っているようだった。当時、韓国政府が外貨稼ぎのために行っていた国策だった。  
 日本もそうだった。戦後でさえ貧しい時代に国策として南米に移民を送っていた。どの国でも我々は先人の犠牲の上に今日の繁栄がある。世界有数の先進国になった今の日本では、日本人の労働者を海外で受け入れをしてくれない。  アフリカやアラブに出ることを思えば、国内移住は容易なことだ。  今の環境から出てみることは、きっと貴重な経験をもたらすはずだ。価値観も広まり、外の世間がよく分かる。


大阪都が気になる  
 大阪府と大阪市の改革がめざましい。歴代知事も大阪市長もできなかったことを、これだけよくやるなあ、と思うくらい成果を挙げている。読売の6月20日朝刊が大阪改革をまとめて書いている。諸君はどれだけ知っているか? 無理して大阪都にする必要は少ない。もっと大きく大阪府、奈良県、和歌山県を統合して関西県をつくってほしい。
 もともと大阪都構想は橋下前知事・大阪市長の発案ではない。  今から15年前、小著『大阪がかわる 地方がかわる』(三一書房刊)の中で、「大阪府と大阪市の東京都化」という節で書いている。今でもあんなに公選の区長と区議会議員をつくって税金を使ってよいのか、という疑問を持っている。  一部を引用してみよう。    


 大阪には別の大合併話が市民や経済人の間で語られている。それは、大阪市と大阪府を一体化する、 言わば東京都化する構想である。何度か聞いた話をまとめてみると、「大阪府はドーナッツのように真ん中に 大阪市に穴を開けられて府政の障壁になっている」、「府政を敷く上で大阪市をコントロールできない」、それに 日本のどこでも耳にする話で、「大阪府と大阪市の関係がうまくゆかない」といったところだ。いずれにしても、ネガティブな側面だけを挙げて、「東京都のように一体になったらうまくゆくのに」という方向に収斂されてゆく。 23 区を東京市――昔には存在した――を独立させ、法的にもあいまいな首都としての現在の地位をはっきりさせ ることである。(以下略)

 大阪の将来を担う諸君はどう考えるか?  諸君に困難な時代を生き抜いてほしいと祈る。            
        (完)


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