2014年2月13日木曜日

#108 世界で荒れる反政府デモーー大衆は分かっているか?

 カイロ、バンコック、キエフで10万人以上の大規模デモが起きています。いつまで続くか?
 一時荒れ狂ったイスタンブール、マドリッド、アテネ、プノンペンでのデモは静かになりましたが、どちらも首相が変わったわけではありません。大衆の不満はガス抜きをしておさまったのでしょうか。  
 民主主義の制度は常に揺すられるものです。逆に言えば、揺すられることこそ民主主義の根幹ですから、私たちはより良いものを求めるのであって、完全を求めることは非現実的なのです。
 私は中国政府の政策を批判する半面、独裁者政権ではない一党独裁の政体を支持し、発展途上国が建国の参考にできる新しい民主主義の形をつくってくれることを期待しています。つまり、大会社のように、優れた人材が競争で昇進し、役員の中から社長が選ばれる組織です。もし社員が投票で社長を選ぶような制度では会社は成り立たない。  
 今の西洋型民主主義は新興国の建国初期には合わない、と私は思っています。  さて、諸君はどう思いますか?

各国のデモの類似と違い  

 エジプトとトルコのデモで共通することは、政権がイスラム教原理主義を強めようとしたことにある。つまり、政治をコーランに基づいて支配を強めようとしたのだ。これに対し、大衆が反発した。
 この両国はもともと「世俗主義」の政治が行われていた。それにしても、マスコミが使う「世俗主義」の訳はいかにも次元が低く聞こえる。「政教分離主義」の言葉を使うべきだ。 「政教分離主義」とは宗教の原理ではなく、法律に基づくことであり、世界の多くで行われている。統治の手段として宗教を利用することは、政治のあるべき姿ではない。  
 自由な価値観を持てる私たちから見れば、なかなか分かりにくい。 バンコック(タイ)の暴動は上記2国とは違う。  
 インラック女性首相は2011年に首相に就任してから、連立与党で議会過半数を支配して政権運営をやってきたが、今回は空港占拠事件に次いで2回目の大規模反政府デモに遭っている。  反政府側の要求は、「インラック首相辞任と選挙の延期」であるから、仮にイ首相が辞任しても民主主義のルールに従って与党から新首相が選ばれる。選挙をしても与党側が勝つことが見込まれている。まして選挙をやらなければ現状維持にしかならない。おそらく新首相が選ばれたところで、反政府側はデモを続けるだろう。これは泥沼闘争だ。  
 これまでタイは軍部によるクーデターは2006年の一回だけで、民主主義が機能してきた国だ。デモ大衆の多くは、不満に乗じられて元副首相の反政府側リーダーの政治的野心のために利用されているのかもしれない。
  私が出張で行っていた70年代のタイは穏やかそのものの国だった。

集団的自衛権の解釈変更

  経済、財政赤字、社会福祉制度、原発事故の後始末など政治課題が多い今、なぜ安倍首相は集団的自衛権の解釈を変えることにこだわるのだろうか? 
 確かに、「我が国は集団的自衛権を有するが、行使はできない」という内閣法制局の解釈はおかしい。集団的自衛権を持つなら行使できることは当然の道理だ。そうかと言って今解釈の変更、まして憲法改訂は緊急を要する課題ではない。  仮の話を二つ挙げて説明してみたい。  

 尖閣諸島に中国軍が上陸するケース。  
 自衛隊は三軍を動員して島を包囲し、中国軍が退去しなければ陸上自衛隊が上陸作戦を敢行する姿勢を見せるだろう。他方、米軍は日米安保条約に基づいて島近海に空母を中心に第七艦隊を派遣し、後方支援に当たる。孤立した中国上陸部隊は撤退するしかない。いくら世論の支持を受けても中国政府はこんな冒険をするとは思えない。

 北朝鮮が嘉手納基地をミサイルで攻撃するケース。  これは米軍基地と日本領土が同時に攻撃対象にされることから、米軍は当然反撃態勢を敷くし、自衛隊も支援しなければならない状況に置かれる。しかし、日米両国軍がミサイルによる迎撃体制が敷かれているので、北朝鮮が攻撃する可能性は少ない。
  日本は集団的自衛権を行使できないとすれば、日米同盟が崩れかねない上に世界は理解に苦しむだろう。
 政府が今は事を急がずに、反対勢力が現実に直面するまで待てばよいのだ。念のため、憲法の歯止めとして日本が脅かされるケース以外には、遠くの国への攻撃に自衛隊の戦闘部隊を派遣しないことだ。あくまで自衛権に限ることが国是である。

日本のデモの実態

 特定秘密保護法をめぐり、国会前にデモの群衆が集まった。テレビニュースのインタビューに答えた群衆の中に、反対の理由を「言論の自由が失われる」と言っていたが、法律を理解していない。 取材とスクープの自由が脅かされ、国の安全保障に関わる情報にとどまらず、官僚が広く情報の囲い込みをする可能性はあるが、だからこそ秘密情報をチェックする機関が必要なのだ。マスコミの真価も問われる。
 国の情報保護については1985年の「スパイ防止法」も、2011年の「秘密保護法」も廃案になっている。日本を取り巻く国際情勢が大きく変わった今、リスクはあっても「秘密保護法」は国家として持つべき法律ではないか。                 (完)


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