2014年5月7日水曜日

#114 「北京たより」の民間交流ーー個と集団を分けて考える

 4月16日、テレビのスポーツニュースで見たアジア・チャンピオン大会で日本・中国戦のサッカー試合はひどかったな。中国の2選手がボールに絡まない日本選手に対して故意に肘鉄をくわせたり、脚を蹴っ飛ばしたりしました。 諸君は腹を立てたでしょう。私もむかつきました。
  そこでです。二人の悪玉選手にも別人の顔があるかもしれないと考えたことがありますか?暴力の違反行為に対して声援を送る中国人観衆にも別の顔があるかもしれないと考えたことがありますか?

  今回、北京に活動拠点を半分移しているI氏からの「北京たより」を紹介します。

◇ 「個」と「集団」に分けて考えられるか?  

 中国の選手は、同格と思っている日本からどうしても点が取れない苛立ち、日頃持たされている反日感情があって思わず退場覚悟で暴力をふるったのだろう。自制心がある日本人選手から殴り返されないことを知っていた。これがヨーロツパチームの選手ならパンチをくらっていたに違いない。
 上海での政府後援の反日デモでは、中国人の若者たちが日本のデパートを襲って商品を略奪し、日本食レストランを破壊した。襲われた側は無抵抗で、警官も取り締まらなかった。 この時、一人の中国人が、彼ら暴徒の中にはデモが終わってから日本車のショウルームに車を見に行くような連中がいると言っていた。要するに、サッカー選手と同じでうさ晴らしをやったのだ。
 私が若い頃なら、「あのバカモンが」と腹を立てただろう。しかし、今は感性が鈍くなり、自制心も強くなったから、「待てよ。あの集団の中には善玉もいるはずだ。集団ひとからげで考えてはいけない」と思う。そう、実際には暴力を許さない善玉の中国人もいるのだ。

  ◇ 「北京たより」と個々の民間交流  

  商社の中国事業を統括するI氏からこれまで「上海たより」を度々寄稿していただきました。彼は最近月の半分くらいは北京で仕事をするようになり、民間交流の顔として活躍されています。今回は「北京たより」を寄せてもらいました。私の裁量で一部削除して諸君に紹介します。
  末尾には、中国に関心がある諸君のために、I氏からの参考文献を記します。
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 「北京たより」   

  清華大学での日本語スピーチコンテストに続いて、今回も女子学生の目立たずとも大切な実務的貢献によって会の感動が深まりました。 木寺大使のスピーチもとてもユーモアに溢れ、垣根を低くする語り口で満場の共感を呼びました。記念撮影のあとは、握手よりもフリーハグでお開きでした。大使より別れ際に「若い人たちをしっかり支援してくださいね」と強く握手をされました。そこでシナヤカにハグをする機転が利かなかったので、次回の別の会合での愉しみに残しておきます。

   「隗より始めよ(先従隗始)」。 本来の『戦国策』での郭隗さんの昭王への建策(就職活動?)の意味とは、異なった用法が一般化しています。曰く、大事業を起こすには、身近なところから着手するべし。言い出しっぺから動きなさい。

  二日後の深夜にメールが届きました。 「突然の会場変更などありましたが、多くの方のご支援、ご指導により無事開催することができました。 当日は、中国人学生30名、日本人学生30名の計60名の参加でした。
 当初、当活動には中国人学生109名、日本人学生41名の計150名が登録していました。ですので、報告会には100名ほどの参加を予想していたのですが、急な会場変更などで参加人数が減ってしまったのではないかと考えています。 ただ、当初予定していた100名の合唱を披露することができませんでしたが、私たちの想いは伝えられたのかなと思います」

 太閤園、大横川、富岡八幡宮、柳橋「大黒家」店先、代々木上原からの小田急線沿線、茨木弁天と、今年は櫻に恵まれました。櫻狩の仕上げは北京西方の玉淵潭。金朝時代から 続く景勝の地。石碑によれば、東湖と西湖に分かれた敷地北西の一角に、1973年日本から多くの大山櫻が植樹された、それ以降に山東櫻などを植え足して「櫻なら玉淵潭」と呼ばれるまでになったようです。湖岸の八重櫻の下で、焼き栗を剥きながら、対岸から流れてくる毛沢東賛歌の懐メロ斉唱を聴くとも無く聞いていました。    (了)  

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■「僕らの日中友好@北京・我们的中日友好@北京」 ・Flickr(写真):https://www.flickr.com/photos/109475294@N02/sets/ ※これまでの活動全てを振り返ることが出来ます。 チェックしてみて下さい!
■「僕らの日中友好@上海・我们的中日友好@上海」※2013年3月に行った上海での活動 ・优酷(映像):http://v.youku.com/v_show/id_XNjI4NDE2ODEy.html ・YouTube(映像):http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=jWOfNwIAzJc ■Next Vision Asia ・facebook: https://www.facebook.com/NextVisionAsia ・Twitter: https://twitter.com/NextVisionAsia
(参考書物)   
 リービ英雄    『星条旗が聞こえない部屋』『我的日本語』
 カズオ・イシグロ 『わたしたちが孤児だった頃』   
 楊 逸      『時が滲む朝』 (以上三名は米英中のバイリンガル作家、中国現代史を背景にした作品)  
 道上尚史  『外交官が見た「中国人の対日観」』→前駐中国公使・現駐韓国公使  
 村上春樹  『中国行きのスロウボート』『ねじまき鳥クロニクル』 →春樹ワールドの背後にある中国近代史。神戸とノモンハン事件。
 中島 一  『中国人とはいかに思考し、どう動く人たちか』 →過激な装丁に惑わされずに読めば帯文とは異なる冷静さと緻密さ。  
   榎本泰子   『上海』→専門は音楽史研究。上海オタクの臭みもない。   
 堀田善衛   『上海にて』→ 1945年から1946年の青春の上海

5/11追記. 読者からの意見。「理性で抑制している個人の中にも善玉と悪玉が共存している」        


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