2009年9月5日土曜日

#11 鳩山政権は民意を超越できるか

 民主党が勝ち過ぎました。政策で競ったということなら、308議席も取れることはないはずです。誰もが指摘しているように、民主党は反自民党票を集めたのです。本来なら、過半数を少し超える250席くらいが望ましかった。
 まだ社員が500人くらいの中堅企業の組織に、いきなり143人もの新人の正社員が入ったと考えてみてください。民主党は事務局を入れてこれくらいの組織でしょう。組織の運営からして大変な困難を伴います。
 若者諸君が首相の立場になってみれば、その困難さを理解できるはずです。私は永田町で取材源を持たないし、テレビのガチャガチャ番組は頼りにしていないので、情報は新聞や雑誌に限られています。それでも思考はできます。敢えて言えば、活字を読まない種類の若者よりはいくらかましという程度です。ただし、違いは、私は20代から大衆の一人として政治に関心を持ち続けてきたことです。
 もう一度言います。考えてみてください。 
 (以下、敬称を略させていただく)

  新政権は民意を超越できるか

 いろいろと不安が持たれている中、3人の大幹部である鳩山、菅、小沢の中から鳩山首相を現実的に国政を任せられる人材として民主党も有権者も選んだのだ。
 先ず、何より選挙の勝利について小沢選対本部長の貢献を過大評価しないでもらいたい。なぜなら小沢選挙プロが今回の総選挙の指揮を取らなくても、多少当選者の数は減っていたかもしれないが、民主党の勝利は変わらなかっただろうからだ。政権交代の大波が押し寄せていた。
 鳩山代表は組閣の前段として、小沢代表代行を党幹事長に選んだ。
 私が言うまでもなく、党務の実質最高責任者になった小沢幹事長が新人当選者たちの小沢チルドレンを率いて、党内最大派閥として新政権に隠然たる影響力を行使することが懸念される。しかし、逆の見方をすれば、国家の政治を担う内閣から彼を退けたと言える。世間で言われるように、彼自身が首相になる野心を捨てきれないのなら、策謀を捨てて実績によって首相を目指すべきだ。私は彼に総務大臣をやってほしかった。
 長年自民党によって取り組まれてきた霞が関改革は、橋本内閣の98年に「中央省庁改革基本法」が成立、森内閣の2001年1月に施行された。これによって省庁の数は半減したものの、全体の課の数はほとんど減っていないと言われる。何よりも省庁支配の構造はまだ改革されていない。今、巨大官庁の総務省を改革の本丸として着手すれば他の官庁に小沢手法が及ぶと期待していた。
 新政権は、労使関係に喩えて言うなら、経営経験がない労組幹部が急に経営者になったようなものだ。つまり、霞が関改革では官僚権力の改革と各省の大労組を相手にしなければならない。このためにも自治大臣の経験がある小沢は、持ち前のリーダーシップを発揮するのにこれ以上の適材はいない。彼の手腕を見たかった。

 彼の主導で93年につくった社・公・民の細川内閣がスキャンダルでつぶれた後、羽田牧(現民主党最高顧問)政権に置き換え、また悪い虫が出て59日で同志の羽田を退陣に追い込んだ前歴がある。
仮の話として、鳩山首相が堅持しようとする社民党との連立関係が切れるなら、参議院で過半数割れして法案が通らない事態になる。この時、小沢は参議院のリベラル派自民党か公明党に対して切り崩しを試みるかもしれない。彼には朝飯前のことだろう。
隠然たる影響力によって政権の獅子身中の虫になることは、彼の政治家としてのキャリアに花を咲かせることにならないだろう。
 
次に、野党になった自民党に要望。小泉元首相が遊説で「自民党も一度野党になるといい」と発言しているが、私も共感する。最近の自民党は、企業経営で言えば、株価が低迷しているにもかかわらず、大きく変わる市場に緊急対応もできない、株価が急落してからでは打つ手も限られる倒産寸前の大企業みたいなもの。小泉元首相が唱えた「自民党をぶっ壊す」という公約が彼の引退と同時に現実になったことは皮肉だった。
 企業は倒産すると会社更生法の適用を受けて、経営者がガラポンされる。自民党も倒産したつもりで、党内外の保守派議員を結集することで、本当の保守党として再編してほしい。民主党という政権を担当できる対抗政党が育った今、田中元首相が言っていた「自民党は総合商社。右から左まで、専門分野を持つ人材がそろっている」という国民政党はもう要らない。自民党自体が構造改革を求められているのだ。
 それ、倒産企業が優良企業に生まれ変わった例はいくらでもあるではないか。

 最後は、#9に書いたことで、民主党に再度しつこく要望したい。
 それは高速道路の無料化。もともと民主党が自民党の1000円料金に悪乗りしたことが間違いだった。次世代のためにあるべき総合交通体系については以前に提唱したことがあるので、詳しくは改めて書きたい。要するに、若者世代に残すべき交通体系とは、国情の利点を最大に生かすために、道路・鉄道・飛行機・フェリーをトータルで考えることだ。予算化した上で大型コンピューターを駆使して最適モデルをつくってほしい。
 大勢に惑わされず、高速道路の無料化については社民党の福島党首が異論を唱えている。新聞記事から引用する。
 「交通が渋滞し、(配送品などの)遅配が増えるのではないか。莫大な税金がかかる。二酸化炭素が増えてしまい、環境の問題でいかがか」
 これが良識だ。もっとも、私の次世代のための総合交通体系についてはメディアに出てこない。私は高速道路無料化ではこれが最大の問題だと信じる。早い話、高速道路をタダなら使うという利用者は要らないのだ。
 

 与党も野党も、国が内外で直面している国難には目をつぶり、自分だけの利益に釣られる愚かな類の大衆に対して、無節操な撒き餌をしてきた。新政権は撒き餌を一時さて置いて、果敢に大きな国の課題に取り組んでもらいたい。たとえマニフェストの撒き餌に反することでもよい。4年後に帳尻を合わせればよいのだ。
 いざ政権についてみて、公約と現実が違うことはいくらでもあるだろう。識者が「マニフェストの公約を修正することも変更することも認めない」と意見を述べているが、気にすることはない。
 
 結びとして批判を覚悟の上で言うが、民意の言いなりになるだけなら政治家は要らない。はたして鳩山首相は民意を超越できるか?
今は鳩山首相の政治を見よう。
 


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