2009年10月8日木曜日

#15 英会話くそくらえの気概

 台風18号は珍しく陸を北上する進路を取り、予測された水害より大きな風害が出ました。死者4人であったことは不幸中の幸いです。台風のため私の出張が中止になり、予定が混乱しました。このため時間ができて本稿をものにすることができました。こんな短い間隔で続けて書けることはめったにないでしょう。

 さて、本題に入るとして、今年1月に小学校5年から英語教育が必修になりました。全国的で実施されるのは2021年からということです。 これまで16年間は英語教育が総合学習の中で「国際理解」の名目で行われてきましたから、必修に格上げされたことになります。
 文部科学省と英語教育の早期化を唱える推進派は、「これで日本の国際化が進む」とか「英語に親しむ子供が増える」とか言っています。しかし、新聞、月刊誌、テレビなどメディアで彼らの意見を知ると、彼らの目的は英語教育ではなく、英会話教育なのです。これは危ない。その上、年間35時間の授業によりたかが英会話の出来不出来で子供たちが差別化され、英語に親しむどころか、早くから英語嫌いの子供をつくる反面を見落としています。
 若い世代の皆さんが子供さんの教育に惑わされないように、小学校英語の与える影響を考えてみましょう。


  ☆ アメリカの話

  日本の在米子会社で経理責任者をしていた友達が、ある日、私に電話の中でこんな悩みを話してくれた。彼が工場のある田舎町に家族とともに赴任して3ヶ月が経った頃、幼稚園に通う次男がこんなことを言い出した。
 「ボクは英語が嫌い。アメリカの生活もいやだ」
 最初、私は環境が大きく変わったことによる順応の初期トラブルだと思った。よくある話。しかし、親父が言った次の言葉で私はぐっと慎重になった。
 「この坊主は変わり者でね、浪花節が大好きで、子供にしては感心するほどうまい。意見をはっきり言いよる」
 うーん、と間を置いて私は言った。
 「そりゃ、面白い子だね。見どころがあると思うよ。親が初期トラブルとして様子を見るか、それとも子供の意向を汲むか、難しいところだね」
 他人はこれ以上入っていけない。雑談をして電話を切った。

 一年も経った頃、彼と話す機会があった。次男坊のことを尋ねた。
 「実家を守っているばあさんと住むと言って、さっさと九州に帰りよった。ワイフと長男も帰国するから、オレは単身赴任になりそうや」
 次男は浪花節をのひのびと唸っている様を思い浮かべた。

☆ 台湾と韓国の早期英語教育

 
 韓国では1997年に小学3年から公立学校で英語教育が始まった。韓国の英語熱はすさまじく小学生対象の英語塾が多数あり、最も極端な例は、韓国の教育では英語がうまくならないという理由で、母親が伴って子供をシンガポールやオーストラリアに留学させるそうだ。韓国の友達によると、ホンコン人やシンガポール人が英語によって国際化に有利に立っているということから、政府が影響を受けたのだという。彼は韓国にとってそんなに英語が大事なのか、と疑問を持っていた。

 台湾では2001年に小学5年から英語教育が導入され、2005年に小学1年からに変えられた。
 私は台湾には会社の仕事と執筆で毎年1~2回行っているので、現場の事情に直接出会っている。是非を語るには事例が少ないが、事実だけをを紹介してみよう。 日本企業時代に初めて台湾に出張した1975年、民間企業とは日本語、官営大企業の幹部とは片言の英語で打合せした。いずれも技術内容であったので、特に不自由はなかった。それから34年後、国立研究所で数人の打合せでは出席者全員がアメリカ留学経験者で、多少の訛りはあっても英会話に堪能であり、私も自由に英語を話せるようになっていたので、打合せは実にスムースだった。ところが、民間企業の技術者たちとの打合せでは、彼らの英語も日本語も中途半端なため、通訳の助けが必要だった。昔のように、日本語に堪能な台湾人は70歳以上の世代に限られてきている。
 本省人と呼ばれる台湾の多数派は、北京語と台湾語の二つを話し、さらに英語と日本語に堪能であることは実に困難なことだ。

☆ 小学校の英語教育推進派の貧しい意見


 数年前、NHKテレビ番組で小学校の英語教育について賛成派と反対派の4人の論者が意見を述べていた。要点を絞ると、教授はひたすら「英語は日本の国際化にとって重要であり、これで小学生も世界に目を開ける」の一点張り。もう一人の高名というジャーナリストは「記者としてアメリカに一年滞在した時、パーティにおいてさえアメリカ人とまともに会話できず、恥ずかしく悔しい思いをしたので、これからの子供たちにはこんな思いをさせたくない」と言う。二人とも反対派のように論理的説明をできず、賛成の根拠は国際化の御旗と恥ずかしい思いだけだった。> 英語教育について私が知らない根拠があるのかもしれないが、二人の意見は私が周囲で聞く母親たちのあせりみたいなものだ。

☆ インターネット時代の英語

 インターネットで商談を進める場合、相手の顔が見えないので、正しい英文、つまり、文法が正しい英文を書かなければ信用を得られない。先ず、書く前に読めなければならないことは言うまでもない。いちいち他人に翻訳してもらうのでは、金も時間もかかる。
 私は今、日本の従来型の読み・書き・文法中心の英語教育が見直される時期だと思う。早い話、私が英語にうまくなったのは、古いと言われる学校教育のお陰だ。私は30歳から英会話に真剣に取り組むようになった。もう一つ、最近NHKの日本語に批判を強めているが、他方、感謝もしている。私の英会話はもともとNHKラジオ英会話によって上達した。英会話なら30歳でもいつでも始められる。多少日本人訛りがあっても、例えば、アメリカに留学したり、生活したりすれば訛りも取れていく。正確であれば、日本人訛りのどこが悪い!私が知る英語の名手はほとんど30歳を過ぎてから英会話を始めている。
 
 これまでいくつか英語教育について書いてきたが、そのまとめとして立命館大学の教育論文誌『外国語教育におけるFD研究』(立命館大学教育科学研究所刊、1999年)に「実務英語と大学教育の役割」と題して書いた論文がある。論文と言っても難しい内容ではない。諸君が、あるいは子供さんがどんなレベルの英語を目指すかという点で参考になるだろう。
 英会話なんてくそくらえ、と書きたかったが、論文では省略した。希望の方にはコピーを送る。まあ、せめてコピー・郵送代80円切手2枚を同封してほしい。
 住所は、567-0027 大阪府茨木市西田中町8-14-503

 それにしても、躾教育、倫理宗教教育、パソコン指導、安全管理に加えて英語教育の負担が増えるとは小学校の先生には重荷を背負った受難の時代だな。 

 

 


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