2017年11月11日土曜日

#184 新高岡に停まる新幹線「かがやき」が週末だけにーー富山篇③

   12月から新幹線特急「かがやき」が新高岡に停車する一日一本が週末だけに減便されることになりました。高岡の官民は反対しています。  
 考えるに、新高岡には毎日1時間毎に10本の各駅停車の「はくたか」があるのに、なぜ「かがやき」にこだわるのか分かりません。「はくたか」は高岡東京間で30分しか違わないのです。
  私は「かがやき」より、名古屋からの「しらさぎ」と大阪からの「サンダーバードを金沢から富山に延長運転する方が地域経済にも観光にも効果があると思います。高岡の官民が運動してきたノウハウを富山の官民に教えてほしい。
 富山県民の若者諸君、運動を起こしませんか。  
 今回、私がかつて会員であった大学の関西同窓会会誌に寄稿した小論を転載して参考に供します。  

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   「大阪から富山が遠くなった」  2016年6月 

 早いもので今年6月に富山移住4年になりました。病気知らずだった私はどういうわけか富山に来てから、前立腺癌、脊柱管狭窄症、右目の白内障・緑内障、心筋梗塞(この賑々しさ!)が健康診断で見つかり、手術を受けました。いずれも治癒し、残るは狭窄症によって弱った脚力を取り戻すためにリハビリを継続中。現在はまあまあ元気、この間墓参りに京都まで日帰りしただけで、もっぱら県内か県境をうろちょろしています。

 (中略)

 JR西日本が大阪からの特急サンダバードをすべて金沢止めにしたことについて書きます。
  もともと登山やビジネス目的を除けば、一般の関西人には富山は馴染みが薄いようです。茨木を離れる前に、2回の送別会に招かれた時、富山についてこんな会話がありました。

   「富山には出張を除いて観光には行ったことがないな」
  「北陸に観光に行ったことがあるが、金沢までで富山には行かなかった」
    「金沢から先の富山までの距離感が分からない」
    「魚を食べに氷見に行ったが、金沢から乗り換えたので富山には行かなかった」

 金沢と富山の距離は、京都神戸間より近いのですが、こういう認識があまりされていないようです。 昨年3月、東京と金沢を結ぶ北陸新幹線が開通し、その結果、富山と東京間はわずか2時間8分で結ばれるようになりました。富山には大きな経済効果がもたらせましたが、反面、かつて大阪、名古屋、富山の経済圏、すなわち50年前に言われていた「三角経済圏」が事実上壊されました。 というのは、大阪発で富山行きの特急「サンダーバード」と名古屋からの「しらさぎ」がすべて金沢止まりになったからです。長い目で見れば、富山経済にはじわじわとダメジが出てくると思います。
 さて、皆さんが富山に来られるとすると、サンダーバードで金沢に着くと、新幹線の金沢富山間のシャトル便である「つるぎ」に乗り換えしなくてはなりません。わずか20分の乗車です。
 昨年、富山に来てスピーチをしたJR西の社長はメリットとして、「大阪から富山まで5分早くなった」と言いました。彼には乗り換えの不便と運賃が高くなったことへの利用者が被る不利に対して配慮する感性がないようです。 少々の赤字路線を合わせて全体で黒字経営することが、公益性もある鉄道事業のあり方であると思うのですが、皆さんはどう考えられますか。
 私は、せめて朝夕1往復のサンダーバートとしらさぎの直行運転を願っていますが、経済が潤っている今、市民の反応は弱い。JR西によれば、JRの在来線が「IR石川鉄道」と「あいの風とやま鉄道」になって2社にレール使用料を払わなくてはならないからだそうです。
  終わりに、富山と金沢について、私は「生活の富山、「観光の金沢」と提唱しています。 皆さんが両市を訪ねてみられると分かることですが、金沢駅に降りると構内は観光客があふれ、巨大な赤門のあたりにはバスとタクシーで大混雑しています。いかにも大観光地の賑わいがあります。戦災に遭わなかったので、城下町そのままの道路です。
  他方、富山駅前は比較的静かなもので、駅舎も平凡です。しかし、他市への旅から帰るとすっきりしていて安らぎを覚えます。 戦後焼野原になったせいで、都市計画に基づいて車道も、歩道も広く、歩道は歩行者と自転車走行者に仕切られています。どの道も街路樹が美しい。雪が積もっても行政と個人が融雪装置を設けて水を流します。茨木では車を運転しなかった家内もここではよく運転します。
  富山市は今コンパクトシティと呼んで、公共施設やマンションを中心部に集める政策を推進しています。アメリカの都市と同じ構想です。かつてどの市でも進めた郊外のニュウタウンで広がったドーナッツ化の見直しと言えるでしょう。 中心部にはライトレールを含めて3本の市内電車が走っています。最新型のライトレールや新旧の車両が走る市電は全国の鉄道ファンに人気があります。
 皆さんが富山の観光と言うと、立山、アルペンルート、五箇山、宇奈月温泉の有名観光地を思うでしょう。しかし、いずれも富山市ではありません。ただ9月1~3日に毎年行われる八尾のおわら風の盆の時には、市内に観光バスがあふれ、数多いホテルが満室になります。八尾は富山市です。  富山経済では観光は第二で、第一は農工漁業が一体の経済が強いことです。世界の先進国は、そして日本も農業が強いので、富山はそのミニチュア版でしょうか。 富山には大企業のほかに中小企業の集積がありますが、必ずしも薬業だけではありません。技術開発力もあります。例を挙げると、農業用水を利用した小水力発電は世界最先端を行っています。これを開発した中小企業は30ヶ所に設置し、インドネシアの農村へ輸出しようとしています。IT産業も盛んで、高層ビルに本社を置くインテックは全国でトップレベルのIT企業です。その他にもIT企業の裾野があります。 
 5月15,16日にG7環境相会議が国際会議場で開催されました。市電の中で観光客から「富山は美しく街路の花を準備しましたね」と言われました。私は「特別ではなく、花が街路に飾られるのは例年のことですよ」と内心得意に応えました。
  富山市41万人、金沢市46万人の人口は10年の間に逆転すると私は予測しています。
  富山には漁港が16もあり、朝水揚げされた魚が豊富で美味いと言われます。スーパーでも魚屋でも朝獲りたての魚を買えます。 東京から来る芸能人は、口を合わせたように富山の魚は美味いと言い、市民もまともに受けているようです。私の体験では寿司屋や料亭では金沢でも東京でも魚は新鮮で美味しいのです。繰り返しますが、富山では新鮮な旬の魚を誰でも買えることが生活の利点なのです。
 これまで書いてきたように、富山は薬と魚だけではないことをお分かりになったと思います。 是非とも有志のグループで富山に来てください。  (完)               


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