2018年2月15日木曜日

#190 アメリカでセクハラの高まり――男の立場は弱い

  いつも本稿は友達から「堅い」、「長い」とよく言われます。 私は若者のために真剣に書いているから仕方ないと思っていますが、今回は深刻な話題を軽く書いてみることに努めます。

 ◇ 渡米した頃は自由だった 
 1978年から小さな町にあるアメリカ企業に勤め始めた。田舎町にあるとは言え、 大企業グループであるせいか、社員は垢抜けしていた。この頃はセクハラで騒がれることがなかった。女社員の中には胸を大きく広げた服を着ていて、他と共有する秘書が 私の個室で座って打ち合わせする時には、間近で胸の半分が見えて悩ましかった。
  男の社員が「オッオー」と言うことがよくあった。今はこれはセクハラになる。  
 ある日、会議の前の雑談でジョーク好きの社員が、「夕べはオレと楽しんだかい?」と言ったが、その女性は顔を赤らめて笑った。これもセクハラ。  あの頃は気楽で楽しかった。 

  ◇ 中国共産党の人民服を着せろ 
 私が社長をしていた会社でも胸をはだけた服装の女性社員が何人もいた。ある時、会議でセクハラ対策が議題の一つになった。服装規制をする意見が出た。しかし、服装の自由を理由に反対意見が多かった。 議論が長時間になると多少苛立っていた私は、「もうこのくらいにしよう。中国の人民服を着せたらいい」と言った。みんな笑った
  後で社長室に来た右腕のアメリカ人マネジャーが私に、「社長のジョークは危ない」と忠告された。

 ◇ 大阪時代の偽セクハラ事件
 セクハラ訴訟がメディアで取り上げられるようになった時、友達との雑談で話題になった。この時の会話。

 「私は電車で若い女性の隣には座らないようにしている」 
 「それじゃ後から隣りに若い女性が座ったらどうするんや?」 
 「その時は手を前に組んでじっとしている」 
 「オレは席を立って逃げる」

  懸念していたことが大阪の地下鉄車内で起きた。会社員が女の身体にさわったと騒ぎ、近くにいた男に取り押えられた。誰もが信じただろう。しかし、男女が仲間であることが警察の取調べで分かった。会社員も無実であることを訴え続けた。
  取調べの結果、男女は虚偽の演技であることを自白した。会社員はメディアの報道により、会社の中でも疑われて大きな被害を受けた。警察はよくやった。
  世間ではセクハラに関しては男が疑われ、女の主張が有利だ。男は弱い。

 ◇ アメリカ最高裁判事にセクハラ訴訟 
 1990年初めクラレンス・トーマス判事の最高栽判事の任命をめぐって大きなセクハラ事件が起きた。部下であった女弁護士からセクハラの訴えを起こされたのだ。
  奇妙なことは、セクハラがあったと言いながら、長年ボスのトーマス弁護士に仕え、退職をしなかった。議会委員会に出席し長年受けたセクハラを証言した。私は、「弁護士ならどこでも仕事を取れる。なぜ彼から逃げないのか?」と思った。 
 メディアが一方的に女の味方をして騒ぎ立てた。トーマスに不利な状況で議会は僅差で任命に同意した。時に共和党政権下、保守派のトーマスを支持した。両者とも黒人だった。 今もトーマスは最高栽判事を務めている。
  因みにアメリカの最高栽は、日本の最高栽とは違い、主に憲法に反するかどうかを審査する。

 ◇ アメリカと大阪のハグ 
 帰国後アメリカの町を訪ねると、親しかった人たちが会合を持ってくれる。その中の中高年の女性がハグ(抱きつくこと)で歓迎してくれる。少ないが男もそうする。
  場所が変わって、大阪駅前で勤め帰りの会社員を誰でも掴まえてハグするおばさんが現れた。しかし、多くは逃げる。おばさんは「見知らぬ同志が親密になれる」と言って運動しているのだという。長くは続かなかっただろう。男がやればセクハラで訴えられることになりかねない。
  住んでいた町で、ホテルでパーテイがあり、終わってからいつも世話してもらった中年女性に私が感謝の意味をこめてハグした。少し酔っていた。証人はわんさといてみんな笑っていた。これもセクハラになるかもしれない。

 ◇ 最近のアメリカでのセクハラ暴露 
 最近、アメリカでセクハラの訴えが相次ぎ、映画の大物プロデュウサーや政府関係者が訴えられた。例によって、アメリカでよく見られるヒステリー現象のように、女性運動家たちが、年頭教書演説の議会にそろって黒服で出席して抗議を示した。
  事件は30年も昔のことだ。どうやって検証するのだろうか?

 ◇ 女性にひと言
 私は男の立場で書いてきた。 アメリカでも日本でも女性がセクハラの被害者であることを認識している。加害者の男を支援しているわけではない。分かっていただけるか。      (完)


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