2011年11月29日火曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#20,12月,2011  ダブル選挙の始末記ーー若者の投票が選挙を動かした

 大阪のダブル選挙は知事も大阪市長も維新の会候補が完勝しました。特に大阪市長選挙では、私が本稿の前回で期待した通り、若者世代が立ち上がったことで投票率を前回選挙より12%以上引き上げ、40年振りに61%の高率になりました。
 多くの若者世代が投票に行ったというのは私の推測ですが、根拠はあります。例えば、20代の投票率が共産党と公明党の青年組織を除けば10%台という記事を見たことがあります。
 若者諸君、よくやってくれました!

テレビの速報が暴走 
 今回のダブル選挙では、開票が始まったばかりでNHKも民放局も当選確実を伝えた。開票30分後には当選者の記者会見が行われた。いくらこれまでの出口調査の実績があるとは言え、これはやり過ぎだ。あるテレビは投票終了前に当選確実を伝えた。
 選挙の詳しい分析では新聞にかなわないテレビが速報によって特徴を出さなければならないにしても、例は少ないが、当選確実の取り消しをしたことがある。テレビはせめて半分の開票が終わるまでは当選確実の報道を自粛すべきだ。
 因みに、私が滞米中の80年代に大統領選挙でテレビの速報が競争の度を超えて、東部と3時間の時差がある西部ではまだ投票中である時に当選確実を報道したことがある。これでは西部の投票者の中には棄権者が出る。この時に世間の批判が強く起こり、その後テレビ各局は自粛を申し合わせした。

大阪都実現の前にステップがある 
 私は橋下新市長の登場を喜ぶ一人であるが、大阪都構想を必ずしも支持していない。本当にこれがベストかどうか疑っているからだ。橋下市長も市民の約30%が「よく分からない」と新聞のアンケート調査を認めている。
 先ずできることからステップを踏んで実行してほしいことがある。
 それは、大阪市区の統合を進めることだ。これなら自治体法を変えなくてもやれる。そして、大阪都構想の障害にならない。
 人口270万人の大阪市に24もの区があることはクレージーだ。1989年に東区と南区を統合して中央区とし、同年に北区が大淀区を合併して以来、22年間も24区のままだ。人口840万人、面積620㎢の東京23区に比べて、人口270万人、面積220㎢の大阪市とは比較にならない。大阪市には人口10万人を超える区が半分以下しかなく、最大は平野区の20万人で最少は浪速区の5万人。歴代市長も市議会も市民サービスの向上として24もの区役所をそのまま放置してきたものだ。市民も無関心だった。橋下市長の大阪都構想はここに着眼したのかもしれない。
 
大阪都より関西県をつくる 
 本稿#6「大阪市は大き過ぎない、大阪府が小さいのだ」で、私は大阪府、奈良県、和歌山県が合併して関西県をつくることを提唱した。関西県の新県庁所在地は奈良市にする。
 他方、大阪市は隣接市いくつかと合併して横浜市を超える日本第二の都市を復活させる。横浜市の人口は370万人であるが、面積は大阪市の倍もあるのだ。橋下前知事の大きな器量をもってすれば、小さい大阪府をこねまわしてもしようがない。大阪市が長年現状維持にとどまってきたのは不思議なくらいだ。
 不思議なことと言えば、江戸時代の旧藩をいくつかまとめた明治の廃藩置県が今もそのままになっていること。関西県が先駆けになって、岡山県と鳥取県、広島県と島根県、香川県と徳島県などの合併が実現してほしいもの。 
 これも将来の道州制への障害にならず、そのステップとして考えればよい。もっとも私は道州制も必要かどうか疑問に思っている。もう半世紀も議論しているだけで、実現までは遠い。若者世代が決めることになるだろう。
 些細なことであるが、私は「道州制」の名前が気に食わない。「新州制」か「自治州制」にすべきだ。なぜなら、北海道は一語で島あるいは地域の名前であり、ごく稀な例外はあるが北海と道を切り離して使われることがないからだ。私はかつて東京都を除く全国で県に統一することを提唱したことがある。従って北海道県と呼ぶべきなのだ。そして今は北海道州と呼ぶべきだ。このことは鹿児島県と比較すれば分かる。鹿児島県を鹿児島と県に区切っても通用する。九州も九州州でよいが、提案されている福岡州よりはましだ。

大阪都構想が分からない?
 既成政党を脅かす存在になったことから、政治家は「大阪都の中身が分からない」と言う。構想自体は明確であるのだから、これは構想が「ベストかどうか分からない」と言うべきだろう。
 橋下構想の最大の効果は、大阪全体の改革の必要性を府民に向かって強く知らしめたことだろう。府民にその必要性を一つの形として認識させ、無関心を一掃した。そのために投票率が上がった。
 橋下市長殿、あせることはない。大阪改革の提唱は受け入れられた。これから行政の現実を知り、民意も考慮しつつ具体的な政策の詰めに取り掛かってほしい。そして「現在の大阪都構想がベストかどうか?」を常に考えてほしい。段階的に目標を達成すればよいのだ。

若者よ、一つ要求せよ
 大阪市が長年提供している敬老パスは、70歳以上の高齢者、約30万人に市交通機関の無料乗車サービスだ。年間予算は27億円と言われる。全国の政令都市で唯一のサービスだ。平松前市長は一度は利用上限を3000円に定めることを提案したが、議会に拒否された。
 選挙中には両候補とも「敬老パスを継続する」と公約していた。「継続する」は守るにしても、形を変えることは公約違反にならないだろう。上限を設ける、あるいは他市でやっているように一回の乗車を100円に割引するという施策がある。
 若者諸君、27億円の半分でも半分以下でもよいから、浮いた予算を若者の雇用や公的機関で訓練するための予算に振り向けることを要求する時だ。いろいろな点で経済振興に働く。
 天は自ら助けるものを助ける!


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