2013年11月28日木曜日

Long and Winding Road to China Democracy

#105 中国政府は本当に強権か?――人民から浮いている朝廷   


 初めはI氏の「上海たより」から、後半の旅行記を省いて前段の部分を転載します。

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               上海たより(2013年11月) 『泰山』

 前にも触れたことのある「衆口難調」という四字成語を当地の新聞で目にすることが増えました。NHK日中合作ドラマ『西太后』(田中裕子主演。浅田次郎原作)の王俊監督が制作秘話として語った中で、この成語を知りました。
 日中双方からの様々な要求、主張そして干渉が渦巻いて押しつぶされそうになったが、「衆口難調」という言葉を思い出し、何とか乗り切った、という控えめな発言でした。直訳意訳すると、衆人の口を調整するのは難しい→皆の口に合う料理はできない、ということでしょうか。ありていに表現すると、ああ言えばこう言う人たちを調和させることは難しい、という達観の発言とも感じます。この言葉が増える社会が良いのか悪いのか、よく考えてみたいと思います。
 10月26日、27日。北京でようやく開催にこぎつけた「北京-東京フォーラム」も一方的な主張を言い放つ最悪の状態から始まり、調整の方向での努力や福田康夫元首相の提案などにより「北京コミットメント」という形に辿り着いたようです。
 開催前後の当地テレビの英語番組でも、元フランス大使らによる対立回避を目指せ、日中は不可分の共存関係だ、どの国にも色んな人間が居るという発言を流していました。新聞も続けて抑制的な報道が続いています。以前から英語番組や英字新聞はかなり本音のサイン(中国の友人たちは「信号」という単語を使います。先般の田中角栄氏の機上爆睡記事も良く読み込んでいて、明らかな「信号」だと言っていました)。
 うがった見方をすると、フォーラムでは調整の方向性が先にあり、それに到るまでに、各自が「主張」するパーフォーマンスのステージを準備しておいたのではないか?中国元外相の遁走も元防衛相の批難もその文脈に従えば分かりやすくなります。 今回のフォーラムでの「衆口難調」は比較的うまくできたのではないでしょうか?

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中国政府は本当に強権政府なのか

 長い間中国政府を強権政府だと信じてきたが、最近はこれが本当にそうなのかと疑問を感じている。
 公害防止と環境保全の政策を例に取ってみよう。 私がオリンピックの前年に北京を訪れた2007年の冬には、建設ラッシュの最中、政府は登録番号によって自家用車の市内乗り入れを制限したり、排煙量の規制を行って大気汚染を抑制しようとしていた。それでも長年の汚染によって街路樹の多くが灰色に染まっていた。
 オリンピック対策として一時的に効を奏したかもしれないが、北京の友達によると、その後はもっと悪化したという。pm2.5の微粒子汚染もひどい。大気だけではなく、全土で河川、地下水、土壌の汚染が広がっている。10年前、胡錦濤政権に変わった時、重要政策の中に環境改善が挙げられていた。それが今日まで実現しなかった。
  他方、日本では、今の中国と似たような公害汚染の時代、1960年代に官産民一丸で環境改善に取り組み、今日ある基盤をつくった。なぜ強権政府ではない日本がここまでできたのだろうか。私は民度、つまり大衆のモラルと長年の遵法教育の差だと思う。

強権政府の不思議  

 中国の強権政府が強権を使えない内政の課題はまだある。
 その一つは、地方政府をほとんど支配できていないことだ。彼らは「農民はがし」と「農地はがし」によって利得を手にしている。農地をはがして工業団地に変えることはまだしも、彼らの流儀がおかしいのは、団地造成にとどまらず、入居者も決まっていないのに建屋をつくっていることだ。多分、造成だけでは彼らの懐を潤わさないからだろう。
 こんなことは私にも分かるのだから、中央政府には見えているはずだ。それでいて地方政府の改革ができない。  

 つい先日、中国政府が日本の防空識別圏と重複し、尖閣島の上空を含む空域を中国の防空識別圏に指定した。外交交渉も何もなしに一方的に発表した。日頃対日攻勢で海軍に比べて影が薄い空軍が示威をしたのか。中国強権政府は今や野心満々の人民解放軍を抑えられないのだろう。中国が日本のみならず、「アジアの嫌われ者」になって何の得があるというのか。
 宗教宗派対立がない点では、中国の統治はまだ楽だと思っていたが、最近ではキリスト教と疑似キリスト教の信者が1億人に広まったという報道があった。反政府勢力になりかねない彼らを弾圧することは現実的に容易ではない。
  私の感性では、中国政府は地方政府、解放軍、国営企業など既得権益集団の上に乗るだけの朝廷に見えてきた。独裁者政権ではない政党独裁政権の政体に期待をしてきた私は失望している。日本政府も自衛隊も中国の挑発に乗らず、じっと時が来ることを待つしかない。                        (完)


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