2011年1月29日土曜日

#44 菅首相は覚悟したか――今は総選挙の時期ではない

 通常国会が召集されました。離れて見れば、小沢資金問題が国会の予算案審議に影響を与えることが分かるのに、予算案が成立してからなら政治倫理審査会に出ると言い、事実上出席を拒否しました。あれほど出席に条件をつけないと公言していたにも関わらず。
 対する岡田幹事長と菅首相は、長期戦の城攻めで包囲しながら説得を続けてきました。ここにいたり菅首相が野党の要求に応えて証人喚問に覚悟を決める時でしょう。
 今は、言わば、国難の時です。政府は若者の雇用対策、デフレ脱出と景気対策、年金・税制の一体改革、農業改革の緊急課題に全力を傾ける時。どれも自民党政権がやれなかったことですから、菅首相は覚悟を決めてやり遂げてほしい。政権をひきずり降ろされるより、果敢に実行して討ち死にすることが武士の処し方でしょう。
 若者諸君、良きにつけ悪しきにつけ、世界の若者はインターネットで連帯を深めている。諸君もデモはできないにしても、インターネットで民意を動かそう。

若者の就職を取り巻く環境
 今春の大学卒業生の3人に一人が就職できない。政府はさまざまな緊急対策を講じているが、このような短期的対応は時の政府としてやらなければならない。
 他方、中長期的には政府より民間が対応すべきことだ。
 先ず、企業の独善。これからは採用者の8割を外国人にするという方針を掲げる大企業がある。主に海外の進出先で勤務させるためであろうが、それでも多すぎるのではないか。これからも就職氷河期が続くと言われる状況下、企業は日本人学生の雇用をもっと増やすべきだ。
 「日本の学生より海外の学生の方が優秀」と公言する経営者が居るが、このように日本と海外を分けて括弧でくくることには危険があり、また根拠に乏しい。本当に日本の学生は優秀ではないのか? 私はこれを信じない。なぜなら、日本企業を今日あるまで海外事業を発展させるのに主体的に貢献してきたのは日本人社員であるからだ。海外の人材であれ、日本人の人材であれ、育て方には大きく変わらない。
 他方、卒業後3年まで新卒者扱いにするという企業が出てきた。やっとのことで就職できた人材は、幸運に感謝して忠誠を尽くし、よく働くだろう。
 二つ目は、大学の無責任。就職を希望する卒業生の3割が仕事にありつけないほど学生を入学させてきたことは大学の責任でもある。景気が良くなっても当分2割は就職できないだろう。
 大学は私が言う過剰供給業界の一つだ。これまで少子化の時代を知りながら、巨大私立大学は学部や学科の新増設を続け、供給過剰を招いてきた。その結果、都市近郊に蛸足のようにキャンパスを建設したことが中小大学の存立を危うくしている。まさに大学は弱肉強食の業界だ。
 認可をしてきた文部科学省にも責任がある、という声もあるが、国は基準を満たせば認可することは正しいことであり、国はこれ以上の介入をすべきではない。どの私立大学にも経営学部があり、経営学の専門家が居るにも関わらず、彼らは時代を読む経営の予見を持たないのか?4年制大学だけでも今年の新卒者約55万人中17万人がまだ就職できないという異常さ。大学は責任がある。
 三つ目は、学生自身の問題。大学を選ぶ時に就職することを決めているなら、大学にこだわらず専門学校を選択肢に加えることを再考したらどうか。さらに、省庁や国の機関が設立している航空保安大学校、気象大学校、水産大学校などがあり、実務主体の教育をしている。インターネットで「大学校」を検索するといっぱい出てくる。「校」がつくのは文部科学省が出す学士号の資格が得られないからだ。「高等専門学校」でも検索すると、国立、県立、私立のリストが出てくるよ。
 「大卒」にこだわらず、昔から言われる「手に職をつける」ことは今も有用だ。教養や専門知識を勉強することはいつでもできる。大学を名で選ぶ前に、何になるか、何を目指すか、が問われている。

小沢資金問題、(敬称略)
 小沢資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金問題が取りざたされてから約5年が経つ。なんと長いことか。今に始まったことではない。
 最初は、2006年に陸山会がマンションを10戸、6億円以上の資産を所有しており、しかも小沢個人の名義になっていることを週刊誌が報道したことで資金疑惑が明るみに出た。
 2008年に麻生政権の時、西松建設が海外から現金で日本に持ち込む不法行為により元幹部が逮捕された。検察による捜査の過程で西松建設が東北のダム工事を受注するための工作資金に使われた疑惑が持たれ、元幹部の証言から小沢の名前が出た。その後検察が小沢事務所の秘書と石川衆議院議員を逮捕した。時期が参議員選挙の前で、メディアは政治的意図による国策捜査だと騒いだ。しかし、他の捜査の過程で小沢の名前が出たら検察が捜査に乗り出すことは当然のこと。この時にはメディアには小沢擁護の報道があった。
 もし諸君の上司か友達が刑事事件の容疑者として、取り調べの中で諸君の名前を出したら警察は諸君の捜査をする。我々誰でも日常こんなリスクに取り囲まれている。ところが、今のメディアは様変わりして、まるで小沢を国賊扱いするかのように叩いている。
 私は悪乗りしたくないが、彼の論理と世論に対する認識は狂っていると思う。敢えて政治的戦術を取っているかもしれない。その例が「身の潔白は裁判が決めてくれる。国民か判断してくれる」と繰り返し発言していることだ。
 要するに、周囲の声も私も、彼が刑事事件として有罪になるのかどうかは、最大の関心事ではない。彼に説明してほしいことは、

 ① 昨年度の彼の政治資金が2位の3億円の3倍、9億円と突出している。どうやって集めたのか?
 ② 小沢チルドレンにどのように選挙資金を配布したのか?
 ③ 自由党解散時に政党助成金をどう処分したのか?
 ④ 陸山会が金を受け取ったことは検証されないにしても、ゼネコンに便宜を与えたからこそ東北でダム工事を受注したのではないか?

 私の記憶では、かつて自民党の藤波孝生(故人、元官房長官)は収賄疑惑で、加藤紘一(元官房長官、幹事長)は秘書逮捕で議員辞職し、後に選挙で返り咲いた。金丸信、村上正邦の大物議員も疑惑の捜査で議員辞職した。小沢議員も、選挙のみそぎはとにかくとして、議員辞職すべきだろう。多数の国民は、刑事上の有罪無罪より政治家としての倫理と身の処し方を問うているのだ。

自民党もずれている
 国会の冒頭、代表質問で自民党の谷垣総裁は繰り返し解散・総選挙を要求した。彼も「国民のために」と言う。他の野党も解散を要求している。
 何が「国民のため」か?国民の多数は今解散を望んでいないのだ。総選挙をしたところで、参議院のねじれは変わらないし、民主党も自民党も過半数を取れない。政党再編も小選挙区で現職候補がぶつかるから容易ではない。その間政治が混乱して空白になるだろう。
 緊急対応として若者の就業支援策を実行することと、年金・税制の制度改革に道筋をつけることに自民党は与党に協力すべきだ。若い世代は将来の年金の担い手であり、消費者経済の担い手でもある。そのために予算を付けることは確実に投資を回収できる。
 年度予算も民主党のバラマキ予算の中で緊急でないものはカットするなど修正を求めた上で、速やかに成立させることが次の総選挙で評価される。自民党はかつての野党のように言葉尻をとらえる挙げ足取りを止めて大人(たいじん)の対応を見せるべし。
 私は本来自民党支持者である。しかし、今は与党を支援している。ようやく民主党は野党後遺症から脱して政権政党が分かってきたところだ。年内は菅政権に国政を委ねたい。


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