2011年1月23日日曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#10,2月2011,
大阪市政改革は進んでいるか――新規まき直しの時

 昨年12月、平松大阪市長が就任後3年になった。第4コーナーを回ってホームストレッチに入った。情報発信や情報公開の言葉を多用し、テレビマン出身らしいが、さて大阪市改革はどれだけ進んだのか。
 先日、2011年度予算の素案が発表された。生活保護費の増加など苦しい要因もあるが、3年連続で年度予算の増加を止められない。公債増に頼る財政赤字だ。他方、1年遅れて就任した橋下知事は府年度予算の黒字化を実現した。
 財政危機は大阪市、大阪府ともに最大の問題だった。この一点については、大阪市の改革はまだ手ぬるい。実例に沿って検証してみよう。

地域ネットワーク推進員と民政委員
 ごく最近に報道されたことで、大阪市には独自の「地域ネットワーク委員会」という組織があり、推進員316人に一人当たり年間120万円、計3億6千万円を支出している。
推進員の任務はボランティア活動の組織化や市民の相談だという。推進員は過半が自治会や町会の幹部が兼務しており、これが歴代市長の選挙を支援してきたという一面が指摘されている。
 詳しくはさておき、問題は厚労省が知事の推薦により任命する民生委員との待遇の違いだ。私の身近に民政委員がいることから知ったことは、民政委員の任務は多岐にわたり、高齢者や障害者への支援、生活保護者の相談、その上児童委員を兼務しているので子育て支援や虐待対応の仕事がある。さらに打合せ会や報告会への出席を求められて常勤に準ずるような日常で、単に名誉職ではなく、実務者なのである。これで手当ては大阪市推進員の1/20に過ぎない。
 結論を先に言えば、推進員は要らない。即刻廃止すべきだ。これで3億円以上の予算を削除できる。制度廃止にはそれなりに根拠が必要だから、先ず両委員の職務内容を細かにリストアップし、一週間の活動記録を比較してみればよい。
 まだ他にも大阪市独自の厚遇(?)制度があるのではないか。

地下鉄の民営化
 市長の公約では市営地下鉄を民営化するために住民投票条例を議会に諮ることだった。その後どうなったのか?
 地下鉄が私鉄に比べて職員が多すぎると指摘されてから久しい。経営方式がどう変わるにせよ、現状のままでとどまってよいはずがない。私は相互乗り入れしている阪急と近鉄からの出資を得て第三セクター方式の大阪地下鉄株式会社にすることが現実的と思う。その上で地下鉄と私鉄の間で幹部から一般職員まで相互出向により人材交流をすることだ。
 これで地下鉄会社に清新の空気が生まれ、経営改革につながるだろう。巨大化した組織には常のことで、組織を揺さぶることが停滞に刺激を与えるものだ。

外局の環境局、港湾局、水道局
 市役所本丸から離れている外局の管理が弱いのだろうか、改革が不充分であるようだ。例えば、環境局ではまだ不祥事が出ている。事実上、他の大都市と比較して現在の職員数と給料を公開してほしい。しがらみに守られた組合と向き合うには確固たる論理的根拠 が必要だ。

 港湾局も大阪経済の活性化には思い切って改革することが必要だ。国のスーパー港湾構想より、大阪独自に堺港から尼崎港にいたるまで大阪湾港公団として再編する方が次世代に残すにふさわしい。私が高校生であった時代から、尼崎の市外電話番号は大阪市と同じ(06)だった。当時の電電公社には先見性があったと言えようか。

 市水道局と府水道局の合併は頓挫している。歴史が古い市水道局は技術も高いと自負心を持っており、主導権にこだわる。市町村に給水している、つまり卸売りの府と市民に直接給水している小売りの市との間に事業性格が違う。こんなことが統合の障害になっているという。民間会社なら解決策を見つけることは当たり前のことだ。
 昨年、大阪市内であった水道に関するセミナーに出席した時、スクリーンに映された大阪全体の水道施設地図を見て改めて驚いた。府と市の浄水施設が隣りにあったり、排水菅網が並走したり交錯しているのだ。よくもまあ、こんなことをいつまでもやっているものだ。その上、水余りで両水道とも技術者も施設も過剰になっている。私は水道施設地図を見て一つの発想を得て質問した。「この地図はどこか鉄道の路線図と似ています。当面統合する前に、地下鉄と私鉄が相互乗り入れしているように、府と市の給水網の間で相互乗り入れすることで余剰設備を最適化することはできないのですか?」と。

 昨年11月、大阪市と府下全市町村で構成する「大阪広域水道企業団」が発足した。これで企業団は府庁から独立したことで見かけの府職員数が減ることになる。大阪市水道局とは関わりがないので、肝心の抜本的改革にはならないが、変革の第一歩であることは評価できる。
 現状の無駄は宝の山みたいなものだ。人員と施設を合理化すれば水道料金が下がる。

市議会定数
 議員数と報酬のカットはいくらか実行されたと聞く。議員一人ひとりに月額70万円も支給されていた政務調査費も削減されたという。しかし、まだ89人も議員が居るのでは申し訳のレベルだろう。
市長が任命する内部組織である監査委員会は廃止して議会に移すことで議員の仕事を増やしてはどうか。
 最近大阪市、神戸市、京都市の3市で協議会がつくられた。私があちこちで書いているように、京阪神は交通が便利であるだけで、お互いに風土も市民気質も違うので協議会で話合いをしてもまとまらない。もっとも違いが分かるので参考になるという理屈はあるかもしれない。
 平松市長さん、今は外交より内政の改革に全力投球してほしい。ふんどしを締めなおして攻めのリーダーシップが求められているのですぞ。 つまり、協議よりも実行に迫力を見せてほしい。


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