2011年12月8日木曜日

#62 今年のプロ野球界を回顧ーー来年はどうなるか?

久しぶりにプロ野球界について書きます。評論家として経営とともにスポーツは私の専門分野でありますが、これまでプロ野球に関しては経営の視点から月刊誌などに書いてきました。
今年もいろいろありました。ざっと振り返ってみましょう。 

◇ 独立リーグとNOMOクラブ 
 去就が不安定だった三重球団は四国アイランドリーグから撤退し、結局、球団を解散した。三重県の立地は四国リーグに参加すること自体無理があったようだ。残念なことではあるが、結果として四国4球団にとっては遠征経費が軽減につながる。
 年末になってクラブ野球の雄、元メジャーリーガーの野茂が持つNOMOベースボールクラブが、堺の使用球場の閉鎖になることから存続の危機に瀕している。このクラブはアマチュアであり、選手が生業を持って練習は夜間に行っているから、移転する球場は照明設備を備えていなければならない。
 さらに、球場の使用が実現しても、地元自治体が地元球団として助成金を出してくれるかどうか。また、移転しても選手の仕事が見つかるかどうか。なんとか切り抜けてほしい。
 プロの独立リーグとアマチュアのNOMOクラブでは、どちらも少数とは言え、12球団のプロ野球に人材を送っているが、選手の将来の生活に関しては独立リーグの方が不安が大きい。
 
◇ 女子プロ野球 
 受けた質問や会合での話をまとめて対談風にしてみよう。
 「あんたが書いた女子プロ野球(本稿#51)で、女子プロの実力は高校野球の下位くらいと評価したが、あれちょっときついのと違うか?」
 「そういう意見はほかにもある。この中で実際に試合を観たのはオレだけやろ。ちょっと技術的に言うとやな、彼女たちは投手でも打撃のパワーでも男に比べて弱い。守備は巧いけど。下位の高校チームの投手を打てないし、投手は打たれる。一試合なら高校に勝てることがあってもリーグ戦をやるなら力の差が出るよ」
 「うん、なるほどな」
 「ほら、11月に第一回女子野球ジャパンカップといのがあってな、これにプロ2球団ともに高校女子野球部に負けた。正確に言うと勝てなかった。というのは同点で規約によって抽選で負けたのや」
 「へえー、そんな大会があったんかいな。ところで、なんで話題になったことがある吉田えりを採用しないのか?」
 「吉田は女子プロの打者に打たれると思うな。なぜかと言うと、女子プロの打者は基本通り手元にしっかり引きつけて打つから、ボールをよく見ている。女子プロでは投手のボールが早くないから、ナックルの効果がそれほど生きないと思うよ」
 「彼女はどうしているの?」
 「アメリカの独立リーグで男たちの中で唯一の女子選手としてやっていると聞く。かつて属していた神戸の独立チームと同じで、話題性があるんだろうな」
 「食っていけるの?」
 「おそらく年収5千ドルももらっているかどうか。食っていけないから親から仕送りを受けているやろな。女子プロ選手は年収200万円だからええわな」
 
◇ 横浜新球団が決まった 
 「横浜DeNAベイスターズ」に決まり、これで親会社の社名を冠しない球団が広島だけになった。元の親会社TBSはこれで年間経費の約20億円の赤字負担が無くなった。DeNA社は球団の経営改善を進めるだろうが、新進のIT企業に重い負担になる。
 今回も読売渡辺会長はIT企業による買収に当初乗り気ではなかったという。彼は楽天加入にも反対した。IT企業が持つ球団は三つになったが、彼はお気に召さないようだ。
 因みに、過去の球団親会社の数をたどると、映画3、新聞4、鉄道8だった。その時代を表していて面白い。若者世代はどこまで知っているだろうか。

◇ 読売巨人騒動 
 読売新聞グループが巨人の清武元代表を相手に訴訟を起こした。本来、清武元代表と渡辺読売会長の個人間の確執なのであるが、読売は総力をあげてきた。これでは会社法に照らして清武側には歩がないから、勝ち目がない戦だ。
 ただ、世間は判官びいきで反渡辺感情が強くなるだろう。
 世間はもう忘れたかもしれないが、近鉄・オリックスの合併騒動の時には、渡辺会長は1リーグ10球団制を推進した。これに対し、私は月刊誌で長文の反対論を書いた。プロ野球史を研究してみると、1リーグ10球団制はプロ野球を読売の事業と考えているから、読売の宿願であるようだ。プロ野球がセ・パ両リーグに分裂するきっかけをつくったのも当時の正力松太郎会長の10球団制構想だった。
 プレーオフ制が実施された時、渡辺会長は「パ・リーグの3位球団と巨人が日本シリーズで対戦できるか」と反対した。皮肉なことに、その巨人が3位でプレーオフに出場し、しかも敗退した。読売にとってはお家の一大事なのだろう。
 お荷物球団が三つもある現状に抜本改革がなされないのでは、いつか1リーグ10球団制構想が復活するかもしれない。これについては、いずれ改めて稿を起したい。

◇ ソフトバンクの皆さん、お疲れ様でした  
 ソフトバンクの選手と関係者にとっては長いシーズンだった。
やっと台湾で行われた11月29日のアジアクラブ選手権で彼らが野球から解放された。日本球団5連覇はならなかった。エース級投手を使わずに予選では9-0で勝った韓国に3-5で負けたのだ。勝って当たり前で、観客が4~7千人しか入らない、メディアも関心を払わないこの大会は日本球団にとって重荷だろう。        (完)


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