2011年7月11日月曜日

ネット月刊誌『言論大阪』#15, 7月,2011   関電、これでも民間会社かーー関西経済にダメジを与えた

 
 先日、関西電力が前触れもなく産業界に一律15%の節電を要請することを発表した時、産業界も市民も、そして橋下知事も反発した。私も「普通の民間会社ならこんなやり方はしない」、「何か抜けている」と唐突に感じた。
 関電はどこがおかしいのだろうか?

関電の経営体質に問題がある 
 電力事業は、少数の例外を除いて、全国で地域独占の電力会社によって行われている。つまり、競争がない。当然社内では競争意識が育まれない。これが長く続くと経営者にも幹部にも世間からずれた感覚が持たれる。
 他の民間会社と比較してみよう。値上げは一例であるが、顧客に犠牲を強いる時には、先ず有力顧客を回って打診と説得を試みるものだ。中でも代理店に対する説得から了解を得ることは欠かせないステップだ。ところが、関電には代理店がないし、通常の顧客意識も欠けているだろう。関電は社内の上意下達をそのまま外に持ちだしたも同然。
 発表前に行ったはずの意思決定の会議でこんな意見は出なかったのだろうか?

 「一体、正確にはどれだけの電力が不足するというデータの詳細を詰めたのか?」
 「火力を緊急で復旧したら要請なしで行けるのではないか」
 「東電による節電要請が出されて以来、産業と市民の間では、関西でも節電意識が高まっているから、大げ さに節電要請を出さなくてもよいのではないか。もっと穏やかな広報で行くべきだ」
 「LPGの火力発電を持っている大阪ガスや新日鉄の堺火力に容量拡大をお願いする手もある」(関電と大 阪ガスの仲の悪さはつとに知られていることで、関電が頭を下げるとは思えない)
 「全面発表より個別に大ユーザーにお願いしてみるべきだ」
 「震災対策として関東の大企業が本社補完組織や工場を西日本に移転することを考えている時に、こんな発 表をすれば水を差すことになる。これは関電の問題だけではなく、関西の経済に悪影響を及ぼすことになる ではないか」(こんな思慮もできないのなら、会長は財界トップを辞任すべきだろう)

◇ 停電した時の設備被害、復旧期間
 もし電力使用オーバーで突然の停電により関電の全設備がストップした場合、直接被害がいくらになるのか、また復旧にどれだけの期間がかかるのか?
 誰でも知りたいことであるはずなのに、新聞は伝えない。新聞の役目は、後追いで騒ぐテレビと違って、後追いだけではないだろう。

新たに関電の経営問題 
 節電はこれまでの消費生活を見直す上で時代の要請であり、避けて通れない。関電の節電要請は自社の売上減につながり、緊急時とは言え、自分の首を絞めている半面がある。これまで「ガスより電気がお得」と全電化ハウスを勧められて新居を買った消費者こそいい迷惑だ。
 短絡した節電要請の発表に対して経営者が責任を取るほかに、売上減に伴う社内コストを下げるためには、経営者と幹部の人事刷新を図り、気鋭の人材の登用が求められるだろう。
 これだけの大企業でありながら、今も本社と呼ばずに本店と称している。古い体質の表れかもしれない。
 かねて言われていた電力自由化や発電・売電の分離はまだ早い。先ず関電の自助努力に期待したい。

関電小史の一つ 
 関電の前身は1913年設立の宇治川電気である。関電は1951年のGHQ指令によって電力再編が行われた時にこれを引き継いだ。西天満にある宇治川電気ビルは当時の本社だった。
 ここから私事になるが、私の亡父は宇治川電気の本社から釧路郊外にあった子会社の庶路炭鉱に経理責任者として出向した。私はここで昭和15年に生まれた。謄本によると、出生地は北海道白糠郡白糠村大字庶路村字庶路原野番外地となっている。原野番外地とはすごい住所だといつも思うが、当時は炭鉱のそばに社宅の一群しかなかった。私が生まれる時、父は馬に乗り、半時間かけて産婆さんを呼びに行き、帰りは彼女が馬に乗り自分は手綱を引いて歩きで1時間以上かかったという。
 遠い昔、札幌で学生時代に寮の先輩に連れられてバーに行った時のこと、「オレは道産子だ」と言ったら、大阪弁訛りの北海道弁を話す私に対し、ホステスに「嘘ばっかり」と言われて信じてもらえなかった。
 2歳で西宮に帰ったから、当時のことは何も憶えていない。


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