2016年2月7日日曜日

#153 大統領選挙と「刑事コロンボ」----アメリカはますます金持ち天国

 
 いよいよアメリカ大統領選挙の党員集会と予備選挙が始まりました。
 私は滞米中に4回の大統領選挙を身近に見たり、アメリカ人の声を聞いてきましたが、今回の候補選びには明らかにアメリカ社会の変質を感じています。
 どこが変わったのか?  
  そして、次世代の諸君は日本の社会をどう変えたいですか?

◇ 共和党トランプ候補の人気  

  大統領候補の選挙運動は11月の投票日の1年前から始まる。翌年2月、今頃からアイオワ州の党員集会を皮きりに、7月の全国大会で党の大統領候補が選ばれるまで、各州の党員集会または予備選挙が延々と行われる。
   党員集会ではトランプ候補の支持率が落ちて他候補に僅差で2位になるという意外な結果になった。
 アメリカの長い選挙運動中に、メディアが徹底的に経歴を調べあげて暴露することから、例えば、不祥事、不倫、嘘がばれて撤退させられる破目になることは珍しくない。トランプ候補も経歴を洗われている中で、一つメディアが報道しないことがある。
 あれは私が滞米中の1980年代、トランプは祖父の代から受け継いだ不動産事業に加えてカジノ、航空会社など過大な投資をして会社を破産させた。本人も自己破産した。これは事業だから仕方ないが、問題は破産しても、年額50万ドルの生活費を生活権として裁判所から認可されたことだ。当時、平均の年所得は4万ドルくらいの時代だ。メディアも市民の間でも批判が高まった。私も理不尽だと思った。会社破産でも自己破産でも、出資者に対して、言わば、借金を踏み倒したのだ。
 メディアは忘れたのか、違法ではないので批判しないのか?アメリカ市民も忘れた。 それからカムバックした彼が「不動産王」と呼ばれている。彼にはアメリカは天国なのだろう。

  ◇ 民主党サンダース候補が善戦  

 他方、民主党のサンダース候補はこれも本命のクリントン候補にわずか1%の差に詰めよった。  
 私には社会主義者と称するサンダース候補の肉薄に驚いた。以前には考えられない結果だった。
 アメリカでは社会主義者は嫌われる。私が見てきた民主党候補のエドワード・ケネディ上院議員が最良の候補だった。彼は裕福なケネディ家の出身でありながら生涯弱者に肩入れし、社会政策に力を尽くした。情熱的な演説と千両役者のような風貌で人を引付けた。 しかし、社会主義者とか左派のレッテルを貼られて全国大会で敗れた。
 一方、カリフォルニア知事を経験した元映画スターの共和党リーガン候補は3度目の挑戦で共和党候補に選ばれ、そして大統領になった。保守または右派の時代だった。 今、社会主義が表面に出てきた。アメリカは変わった。

◇ 「刑事コロンボ」とアメリカ社会

 今、民放BSテレビ曲でアメリカでも人気があった「刑事コロンボ」が毎日夕方に放映されている。滞米中に観たものもある。  アメリカの会社の同僚から勧められたのがきっかけで英語の勉強に役立ち、会食の席でもよく話題になったのでよく観た。このドラマが人気を博したのは、野心いっぱいの俳優、弁護士、芸術家、医者など成功者が完全犯罪狙いの殺人を犯し、コロンボに仕掛けを見破られて破滅する物語だ。広大な庭園に囲まれ、大邸宅に住み、ベンツのコンバーチブル(オープンカー)やロールスロイスを乗り回し、別荘を持つ彼らの生活が一見華やかに見えながら、実はぎりぎりの生活であり、金のために殺人をしなければならない。それがコロンボによって崩されていく。 一般の市民に快感を与えてくれ、共感を覚えるのだ。
 他方、コロンボと言えば、よれよれのレインコートに着古した背広で、ワイシャツに古いネクタイのいでたち、車も年代物の小型プジョー(フランス製)という設定。そして小男ときている。虚栄の金持ちからは低く見られ、職務上行く高級レストランでは差別扱いを受ける。庶民にとって正義の味方なのだ。
 「刑事コロンボ」は週に一回、一度中断されたが、復活して計79回が放映され、テレビドラマの秀作になった。  私はロスに住んだことがないからよく分からないが、住んでいた町でもペンシルベニア州でもこんな大邸宅に住み、派手な生活をする金持ちを見たことがない。

アメリカは変わるのか

 ここ10年かそこら、アメリカ社会では統計からも明らかに貧富の格差が広がった。富の集中はすさまじいらしい。 アメリカに住み始めた頃、アメリカ人は金持ちに対する妬みがすくなく、むしろ尊敬の念を持っていると感じた。それが社会主義者の台頭により、どう変わるのだろうか。
  日本でも貧富の格差が広がっていると言われる。しかし、日本の金持ちはそれほど贅沢な生活をしていないように思う。                (完)  


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