2011年8月28日日曜日

#55 原発ヒステリーに染まるな――危ないメディアの構造

 日本全土がメディアによって性急な脱原発に煽られ、それはヒステリー症状を呈しています。メディアは我々を原発に賛成か、反対かの二者択一に追い込み、さらに賛成派は悪で、反対派は善という色分けを強めています。
 若者諸君、なんでも世の中が一方的に流れたら、警戒する必要があります。こういう時には、「待てよ」と立ち止まってください。
 皆さんがこの稿を読まれる時には民主党の新代表が決まっているでしょう。反原発だけには候補者間に対立はなく、争点にはなっていません。しかし、原発は国政の課題の中でほんの一部です。
 
◇ 脱原発の前に技術開発が必要
 核兵器がいつの日か世界において廃絶されることは万人の願いだ。これに何人も異論を持たない。核が安全保障のための抑止力になっているとは言え、我々の生活には直接必要がないものだ。
 他方、原発からはこれまで40年の間、生活に直接恩恵を受けてきた。東日本大震災がなければ、今のように性急な脱原発運動はこれほど大きくならなかっただろう。
 菅首相の発言を伝える新聞では、彼は「脱原発」という言葉を使っていない。「原発依存の社会を変える」と言っている。例によって、メディア、中でもテレビが世論を煽るためにつくった造語だろう。テレビの出演者たちがこれに悪乗りした。彼らの多くは脱原発でテレビに出て飯を食っている。きわめて少数派が性急な脱原発に流されない発言をしたとしても、勢いの中では消されてしまう。
 今、脱原発のためには代替の発電が必要という当たり前の議論はさておいて、私はもっと重要なことが見落とされていると思う。
 世界を見るといい。中国は無理があると思うほど急激に原発の建設を推進しているし、ほかにも原発技術では中後進国が原発を推進している国があまたある。日本も含めて先進国のメーカーが原発を建設しても、その後の保守技術がついていかない。特に、中国の安全技術は危ない。原発技術者の底辺がせまいからだ。もし中国で原発事故が起きれば、放射能が黄砂に乗って日本に流れてくることに対しては防ぎようがない。
 日本だけではなく、世界的に原発が衰退するとなるなら、新たに専門技術者が原発の仕事を選ばなくなるだろう。原発技術からの人離れをどう止めるのか?
 そのために日本が貢献できることがある。
 それは今回の原発事故から学んだ安全技術を総括した上で、さらに研究を進めることだ。具体的には、既存の原発の安全性を高めるほかに、使用済み燃料の処理技術を開発することだ。「もんじゅ」の再処理炉が行き詰まっているが、従来の発想にとらわれない気鋭の技術者を投入して開発を完結することだ。さもなければ、使用済み燃料棒が世界でどこまでも増え続けることになる。
 それでも、いかに処理しても最後には放射能廃棄物が残る。これが原発の究極の問題だ。だからこそ、廃棄物を最小にする再処理技術が必要なのだ。日本はこれによって世界に貢献できる。
 若者よ、千年に一度と言われる大震災に過剰反応するなかれ。若い世代の技術者に世界貢献に挑戦することを強く望みたい。

◇ 菅首相の功罪
 菅首相の功績に関しては、メディアは罪だけしか報道しなかった。
 ところが、首相には大きな功績がある。現実と幻想の違いさえ見定められない鳩山前首相の後を受けて政策を大きく転換したことだ。私は、同じ政党の首相が前首相とまるっきり反対の政策に変えた例をほかに知らない。
 因みに、鳩山前首相の理念と政策を思い出してみよう。
 「命を守る政治」、「友愛外交」、「アメリカと中国に等距離の外交」、「CO2ガス25%削減」(彼は原発維持だったのだろう)、「普天間基地の県外移転」など。
 今日の日本を見れば、彼がいかに国を危うくしたか分かる。菅首相も民主党もよくぞ彼を首相から降ろしてくれたものだ。
 ところが、菅首相は東日本大震災以後、首相から市民運動家に変身してしまった。
 広島と長崎の平和式典において、さらに福島(東京だったか)の反核集会でも反核と反原発をごっちゃにして演説した。退陣の腹を決めてからの最後っ屁だったか。
 菅首相はよく耐えた。なにしろ、会社の取締役や大組織のリーダーも経験したことがない閣僚に足を引っ張られた。中立であるべき西岡参議院議長からは背中に矢を撃たれた。取締役(閣僚)が取締役会(閣議)で社長(首相)に対し、反対意見や批判を述べることは許されるが、外部のメディアに対し発言することはもってのほか。こんなこともわきまえない閣僚の無知さよ。
 若者諸君よ、この経済危機にあって、鳩山前首相も菅首相も、そして直接責任者の海江田経産大臣も、雇用創出をはじめ景気回復などの経済政策には手を打てなかったことは、諸君たちに不幸だった。声を挙げてほしい。

◇ 次期首相
 よもや経済評論家、テレビキャスター出身の海江田大臣が首相に選ばれることはないだろう。祈りたい。
 いまだ政局と選挙にしか頭が働かない小沢元代表と、頭の構造がおかしい鳩山前首相に操られる首相なんて悪夢だ。両者に共通する点は経済音痴だ。
 小沢組長の睨みと金縛りで自主意志を抑えられている新人議員たち。無記名投票の代表選挙で自主投票をやれるかどうか。新人議員たちよ、新しい次代の政治に挑戦してほしい。


Back to TOP  

0 コメント:

編集

Back to TOP